消費税の仕訳のしかた:税抜経理と税込経理の違い、仮払消費税・仮受消費税、納付・還付の仕訳例

消費税の仕訳は、税抜経理方式と税込経理方式のどちらかで行い、課税事業者はどちらを選んでもよく、納付する消費税等(消費税と地方消費税)の額はどちらでも同じです。税抜経理方式では、たとえば税込110,000円(10%)の売上を、売上100,000円と仮受消費税等10,000円に分けて記録し、決算で仮受消費税等から仮払消費税等を引いた額を未払消費税等(還付なら未収消費税等)にします。税込経理方式では110,000円をそのまま売上とし、納付額は租税公課(必要経費・損金)で処理します。免税事業者は税込経理方式だけで、簡易課税・2割特例・3割特例では納付額が仮受と仮払の差と一致しないため、差額を雑収入または雑損失にします。

税抜経理方式と税込経理方式の仕訳の違い

項目税抜経理方式税込経理方式
記録のしかた取引の本体の金額と消費税等を分けて記録する消費税等を分けず、税込の金額で記録する
税込110,000円の売上(10%)売上100,000円+仮受消費税等10,000円売上110,000円
税込77,000円の仕入(10%)仕入70,000円+仮払消費税等7,000円仕入77,000円
納付する税額未払消費税等に計上し、納付したときに減らす租税公課として、必要経費・損金にする
還付を受ける税額未収消費税等に計上し、入金されたときに減らす雑収入などとして、総収入金額・益金にする
選べる事業者課税事業者課税事業者と免税事業者(免税事業者はこの方式だけ)

国税庁タックスアンサー(No.6375・No.6901)に基づきます。金額は当会が作った仮の例です。決算・納付・還付の仕訳は決算の精算、簡易課税・2割特例・3割特例は簡易課税・2割特例・3割特例の仕訳で説明します。

【確定】先に押さえる4点

  • 方式は選べます:課税事業者は、税抜経理方式と税込経理方式のどちらを選んでもよく、納付する消費税等の額は同じです。
  • 免税事業者は税込経理方式だけ:帳簿を税抜でつけていても、所得の計算では税込経理方式で計算します(選べる人と継続適用)。
  • 差額の処理:簡易課税・2割特例・3割特例では、仮受消費税等から仮払消費税等を引いた額が納付額より多ければ雑収入、少なければ雑損失にして精算します。
  • 特例の期限:2割特例は、個人事業者は2026年分(令和8年分)、法人は2026年9月30日を含む事業年度が最後です。個人事業者は、要件を満たせば2027年分・2028年分に3割特例を使えます(2割特例、3割特例)。
目次
  1. 税抜経理方式と税込経理方式の違い
  2. 日常の仕訳(売上・仕入・経費、10%と8%)
  3. 決算の精算(仮受消費税等−仮払消費税等)
  4. 中間納付・確定納付・還付の仕訳
  5. 簡易課税・2割特例・3割特例の仕訳
  6. インボイス制度と仮払消費税等
  7. よくある質問
  8. 出典・参考資料
  9. 改訂履歴

税抜経理方式と税込経理方式の違い

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

2つの方式の意味

国税庁の通達では、消費税と地方消費税(以下「消費税等」)の経理を、次の2つの方式に分けています。法人税の通達(直法2-1)と所得税の通達(直所3-8)で、定義は同じです(法人税の通達1(7)(8)、所得税の通達1(7)(8))。

  • 税抜経理方式:消費税等の額と、その取引の本体の金額(対価の額)を区分して記録する方式です。課税売上げの消費税等は「仮受消費税等」、課税仕入れの消費税等は「仮払消費税等」に記録します(国税庁 No.6901)。
  • 税込経理方式:区分せず、消費税等を含めた金額で記録する方式です。

この記事では、国税庁の資料の呼び方に合わせて「仮受消費税等」「仮払消費税等」と書きます。「等」が付くのは、消費税と地方消費税の両方を指すためです。10%のうち、国の消費税が7.8%、地方消費税が2.2%です(国税庁 No.6303、国税7.8%と地方消費税2.2%)。

納付する税額は、課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を引いて計算します(消費税法30条1項)。経理方式は、所得税・法人税の所得金額の計算のしかたを決めるもので、この申告の計算は変わりません。計算は消費税の計算方法、申告書の書き方は消費税申告書の書き方で説明しています。

選べる人と継続適用

課税事業者は、どちらの方式を選んでもよく、どちらでも納付する消費税等の額は同額です(国税庁 No.6375)。

免税事業者は、帳簿を税抜経理方式でつけていても、所得の計算では税込経理方式を使います。仮受消費税等・仮払消費税等がないものとして、消費税等の額は売上や仕入・経費などの額に含めます(国税庁 No.6905(法人)、国税庁 No.6909(個人))。課税事業者になるかどうかは消費税の基本で説明しています。

国税庁の通達とタックスアンサーで「継続適用を条件として」とされているのは、棚卸資産の取得だけを固定資産・繰延資産と別の方式にする場合(個人事業者は山林の取得も)と、簡易課税・2割特例・3割特例で仮払消費税等を「支払対価×10/110」にする場合(仮払消費税等を「支払対価×10/110」にする特例)です。当会が確認した範囲では、経理方式を選び直せる年数を制限する定めは、国税庁の資料に出てきません。ただし、国税庁の「消費税経理通達関係Q&A」(令和5年12月改訂)問1-2は、法人が採用する会計処理は原則として継続適用が求められるとしたうえで、インボイス制度の導入を契機に税込経理方式へ変更する場合は、法人税法上は特に問題とはならないとしています。

併用できる組み合わせと、できない組み合わせ

選んだ方式は、すべての取引に同じように適用するのが原則です(No.6905・No.6909)。そのうえで、売上などを税抜経理方式で記録している課税事業者には、次の組み合わせが認められています。

税抜経理方式と税込経理方式の併用
場面取扱い
売上は税抜経理方式固定資産・繰延資産・棚卸資産の取得に係る取引、または販売費・一般管理費などの経費の支出に係る取引の、どちらか一方を税込経理方式にできます。
棚卸資産の取得継続して適用することを条件に、固定資産・繰延資産と別の方式にできます。
個々の資産・経費ごと個々の固定資産や個々の経費ごとに方式を変えることはできません。消費税と地方消費税で方式を変えることもできません。
売上は税込経理方式仕入・経費を税抜経理方式で記録していても、所得の計算は税込経理方式で行います。
個人事業者で複数の所得がある不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得のうち2以上の所得を生ずる業務を行うときは、所得の種類ごとに方式を選べます。

出典:国税庁 No.6905、No.6909、法人税の通達2・3、所得税の通達2・2の2・3。併用すると、仮受消費税等−仮払消費税等と納付額・還付額が一致しません。その差額は、法人は益金に、個人事業者は総収入金額に算入します(国税庁 No.6913)。

法人と個人事業者の違い

経理方式に関する法人と個人事業者の違い
項目法人個人事業者
課税期間原則として事業年度原則として1月1日から12月31日
仮受−仮払と納付額の差額その事業年度の益金・損金その年の事業所得等の総収入金額・必要経費
税込経理方式の納付額・還付額申告書を提出した日の属する事業年度の損金・益金申告書を提出した日の属する年の必要経費・総収入金額
2割特例2026年9月30日を含む事業年度が最後2026年分が最後
3割特例使えない2027年分・2028年分(要件あり)

出典:法人税の通達4・6・7・8、所得税の通達4・6・7・8、国税庁 No.6351(課税期間、2割特例・3割特例)、国税庁 令和8年度税制改正特集(3割特例)。事業者ごとの特徴は個人事業主の税金と法人の税金で説明しています。

日常の仕訳(売上・仕入・経費、10%と8%)

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

税抜経理方式と税込経理方式の仕訳例

10%でも8%(軽減税率)でも、仮受消費税等・仮払消費税等の科目は同じです。税抜経理方式では、課税売上げは仮受消費税等、課税仕入れ(経費の支払いを含む)は仮払消費税等に分けます。非課税や対象外の取引には消費税等がないため、仮受消費税等・仮払消費税等は使いません(法人税の通達1(12)(13))。税抜経理方式の記帳は、取引のたびに行うのが原則ですが、事業年度の終了の時(個人事業者は12月31日)に一括して行うこともできます。ただし、仮払消費税額を仕入れのつど帳簿に記載する「帳簿積上げ計算」を使う場合は除きます(法人税の通達4、所得税の通達4)。次の表の金額と科目名は、当会が作った例です。

日常の仕訳例(税抜経理方式と税込経理方式)
取引方式借方貸方
掛けで売り上げた(10%、税込110,000円)税抜経理売掛金 110,000円売上 100,000円/仮受消費税等 10,000円
税込経理売掛金 110,000円売上 110,000円
現金で売り上げた(8%、飲食料品、税込54,000円)税抜経理現金 54,000円売上 50,000円/仮受消費税等 4,000円
税込経理現金 54,000円売上 54,000円
掛けで仕入れた(10%、税込77,000円)税抜経理仕入 70,000円/仮払消費税等 7,000円買掛金 77,000円
税込経理仕入 77,000円買掛金 77,000円
掛けで食材を仕入れた(8%、税込21,600円)税抜経理仕入 20,000円/仮払消費税等 1,600円買掛金 21,600円
税込経理仕入 21,600円買掛金 21,600円
消耗品を現金で買った(10%、税込5,500円)税抜経理消耗品費 5,000円/仮払消費税等 500円現金 5,500円
税込経理消耗品費 5,500円現金 5,500円

消費税等の額は、税込金額×10/110(8%は8/108)で出して分けました(当会計算)。国税庁も、税抜経理方式と税込経理方式の仕訳例を示しています(国税庁 No.6375の具体例)。

金額の出し方は、税抜金額がわかるときは税抜金額×10%(8%は8%)、税込金額だけがわかるときは税込金額×10/110(8%は8/108)です。インボイスに書く消費税額は、1枚の請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理をします(国税庁 No.6371)。仕入れのつど仮払消費税額を帳簿に記載する「帳簿積上げ計算」では、1円未満は切り捨てか四捨五入です(国税庁 No.6351)。計算式と早見表は消費税の計算方法にあります。

【予定・法案未成立】飲食料品の消費税率1%と仕訳(2026年10月6日時点)

2026年9月15日に閣議決定された大綱は、2027年4月1日から2029年3月31日までの飲食料品の消費税率を1%(国と地方の合計)に引き下げる案です。国税庁の特設サイトは、法案が国会で可決・成立した場合の内容と説明しています(国税庁 消費税率引下げ特設サイト)。この案に伴う経理処理の説明は、2026年10月6日時点で確認できていません。

決算の精算(仮受消費税等−仮払消費税等)

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

精算の仕訳

税抜経理方式では、課税期間の終了の時に、仮受消費税等の合計から仮払消費税等の合計(控除対象外消費税額等に相当する金額を除きます)を引きます。この金額が、納付すべき消費税等の額の基になります。納付すべき税額は未払消費税等、還付を受ける税額は未収消費税等として計上します(国税庁 No.6901、法人税の通達6、所得税の通達6)。

次の例1は、一般課税(原則課税)で税抜経理方式を使う1年分です。すべて課税取引で、仕入れ・経費の消費税等は全額を控除できるものとします。申告の計算は、課税標準額(税込売上×100/110・100/108、1,000円未満切捨て)に7.8%・6.24%をかけて売上税額(国)、税込仕入×7.8/110・6.24/108(割戻し計算)で仕入税額(国)を出し、差引税額と地方消費税(差引税額×22/78)は100円未満を切り捨てます(国税庁 No.6351、国税庁 No.6371、地方消費税の百円未満の切捨ては地方税法20条の4の2第3項)。

例1:仮受消費税等・仮払消費税等と申告の計算(当会計算)単位:円
項目10%8%合計
課税売上(税抜)17,456,7002,345,60019,802,300
仮受消費税等1,745,670187,6481,933,318
課税仕入れ・経費(税抜)9,876,5001,234,50011,111,000
仮払消費税等987,65098,7601,086,410
仮受消費税等−仮払消費税等――846,908
課税標準額(千円未満切捨て)17,456,0002,345,000―
売上税額(国)1,361,568146,3281,507,896
仕入税額(国)770,36777,032847,399
差引税額(100円未満切捨て)――660,400
地方消費税(100円未満切捨て)――186,200
納付額(国+地方)――846,600

仮受消費税等から仮払消費税等を引いた846,908円と、納付額846,600円の差は308円です。課税標準額の千円未満の切捨てや、差引税額・地方消費税の百円未満の切捨てなどで生じる差です(当会計算)。決算の仕訳は次のとおりです。

例1:決算と納付の仕訳(中間納付がない場合)
時点借方貸方
決算:仮受消費税等と仮払消費税等を精算仮受消費税等 1,933,318円仮払消費税等 1,086,410円/未払消費税等 846,600円/雑収入 308円
納付:確定申告の納付額を支払う未払消費税等 846,600円現金預金 846,600円

借方1,933,318円=貸方(1,086,410円+846,600円+308円)で一致します。納期限は消費税の納付期限をご覧ください。

差額が出たときの処理

課税期間の終了の時の「仮受消費税等−仮払消費税等」と、その課税期間の納付すべき消費税等の額(還付なら、仮払−仮受と還付を受ける額)に差額が出たときは、法人はその事業年度の益金または損金に、個人事業者はその年の事業所得等の総収入金額または必要経費に算入します(法人税の通達6、所得税の通達6、国税庁 No.6901)。納付額より多ければ益金・総収入金額、少なければ損金・必要経費です。

国税庁は、簡易課税のときの差額の科目を、多い場合は雑収入、少ない場合は雑損失と示しています(国税庁 No.6513)。一般課税の差額の科目名に通達の指定はありませんが、国税庁の「消費税経理通達関係Q&A」の仕訳例(令和5年12月改訂問5・問6)も、少ない場合の差額を雑損失としています。差額が大きいときは、簡易課税・2割特例・3割特例を使っていないか(簡易課税・2割特例・3割特例の仕訳)、インボイスのない仕入れの消費税等を全額仮払消費税等にしていないか(インボイス制度と仮払消費税等)、税抜経理方式と税込経理方式を併用していないか(併用)を確認してください。

控除できない仮払消費税等(控除対象外消費税額等)

税抜経理方式で、課税売上高が5億円を超える課税期間や課税売上割合が95%未満の課税期間は、仕入税額の全額を控除できないことがあります。控除できなかった仮払消費税等を「控除対象外消費税額等」といい、所得税・法人税の計算では次のように処理します(国税庁 No.6921)。控除できる仕入税額は仕入税額控除、課税売上割合は課税売上割合と95%ルールで説明しています。

控除対象外消費税額等の処理
区分処理
経費など、資産以外に係るもの法人は全額をその事業年度の損金にします(交際費等に係る分は、交際費等の額に加えて損金不算入額を計算します)。個人事業者は全額をその年の必要経費にします。
資産に係るもの(1) 資産の取得価額に算入し、以後の償却費などで損金・必要経費にします。(2) 課税売上割合が80%以上、棚卸資産に係るもの、1つの資産で20万円未満のいずれかなら、損金経理した金額を損金にします(個人事業者は全額を必要経費にします)。(3) それ以外は「繰延消費税額等」として資産計上し、60で割って月数をかけた額の範囲で損金・必要経費にします(取得した事業年度・年は2分の1)。

中間納付・確定納付・還付の仕訳

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

中間納付があるときの仕訳(税抜経理方式)

前の課税期間(個人は前年、法人は前事業年度)の消費税の年税額(地方消費税を含みません)が48万円を超える事業者には、原則として中間申告が必要です。48万円超400万円以下は年1回で、中間納付税額は、前の課税期間の確定消費税額の6/12と、その22/78の地方消費税です(国税庁 No.6609、消費税の中間申告)。中間申告で納付した税額は、確定申告の際に控除されます(国税庁 No.6611)。

次の例2は、例1の事業者で、前の課税期間の確定消費税額(国税)が624,000円、年1回の中間申告をした場合です。中間納付は、国312,000円と地方消費税88,000円の合計400,000円で、確定申告で納付する額は、国348,400円(660,400−312,000)と地方消費税98,200円(186,200−88,000)の合計446,600円です(当会計算)。

例2:中間納付がある場合の仕訳(税抜経理方式)
時点借方貸方
中間納付:中間申告の税額を支払う仮払金 400,000円現金預金 400,000円
決算:仮受消費税等と仮払消費税等を精算し、中間納付額を差し引く仮受消費税等 1,933,318円仮払消費税等 1,086,410円/仮払金 400,000円/未払消費税等 446,600円/雑収入 308円
確定納付:確定申告の納付額を支払う未払消費税等 446,600円現金預金 446,600円

借方1,933,318円=貸方(1,086,410円+400,000円+446,600円+308円)で一致します。「仮払金」は当会が付けた科目名の例で、国税庁の資料には中間納付した税額の科目の指定がありません。中間納付額は課税仕入れの消費税等ではないため、仮払消費税等とは別の科目で記録して、精算の金額を合わせるのが当会の整理です。

還付を受けるときの仕訳(税抜経理方式)

還付を受ける税額は未収消費税等に計上し、入金されたときに減らします(国税庁 No.6901)。「仮払消費税等−仮受消費税等」と還付される額に差額があれば、納付のときと同じく益金・損金(個人は総収入金額・必要経費)に算入します(法人税の通達6)。還付金に相当する消費税額に1円未満の端数があるときは切り捨てです(国税庁 No.6371)。

次の例3は、設備投資が大きい年で、課税売上が税抜4,000,000円、課税仕入れ・経費(設備を含む)が税抜12,000,000円(いずれも10%)、仕入れ・経費の消費税等は全額を控除できる場合です。仮受消費税等は400,000円、仮払消費税等は1,200,000円です。売上税額(国)は4,000,000円×7.8%=312,000円、仕入税額(国)は税込13,200,000円×7.8/110=936,000円で、国の還付は624,000円、地方消費税の還付は624,000円×22/78=176,000円、合計800,000円です(当会計算)。

例3:還付の仕訳(税抜経理方式)
時点借方貸方
決算:仮受消費税等と仮払消費税等を精算仮受消費税等 400,000円/未収消費税等 800,000円仮払消費税等 1,200,000円
還付金が入金された普通預金 800,000円未収消費税等 800,000円

借方(400,000円+800,000円)=貸方1,200,000円で一致します。還付を受ける申告書の書き方は消費税申告書の書き方で説明しています。

税込経理方式のときの仕訳

税込経理方式では、納付すべき消費税等の額は租税公課として必要経費・損金に、還付を受ける額は雑収入などとして総収入金額・益金にします。計上する時期は、申告に係るものは申告書を提出した日の属する年(事業年度)、更正・決定に係るものはその日の属する年(事業年度)です。申告期限が来る前に、納付すべき額を未払金に、還付を受ける額を未収入金に計上したときは、その計上した事業年度(個人事業者は年)に算入できます。法人は、未払金は損金経理により、未収入金は収益の額として計上した場合です(国税庁 No.6901、法人税の通達7・8、所得税の通達7・8)。

例1〜例3と同じ金額の仕訳(税込経理方式)
時点借方貸方
中間納付額400,000円を支払った租税公課 400,000円現金預金 400,000円
確定申告の納付額446,600円を支払った租税公課 446,600円現金預金 446,600円
例3の還付金800,000円が入金された普通預金 800,000円雑収入 800,000円

中間申告書に記載する税額の扱いについて、国税庁の資料に独立した説明は見当たりません。上の表の中間納付の仕訳は、納税申告書に記載された税額の取扱い(国税庁 No.6901)を当てはめた当会の整理です。年間の納付額846,600円は、中間納付400,000円と確定納付446,600円に分かれて租税公課になります(当会計算)。

簡易課税・2割特例・3割特例の仕訳

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

納付額が仮受と仮払の差と一致しない理由

簡易課税制度では、仕入控除税額を、売上げに係る消費税額にみなし仕入率をかけて計算し、実際に支払った消費税等の額は使いません。そのため、納付すべき税額は、仮受消費税等の合計から仮払消費税等の合計を引いた金額と一致しません。決算で、その差額を次のように精算します(国税庁 No.6513)。

  • 仮受−仮払が、納付すべき税額より多い:差額を雑収入として、総収入金額・益金に算入します。
  • 仮受−仮払が、納付すべき税額より少ない:差額を雑損失として、必要経費・損金に算入します。

精算する時期は、差額が生じた課税期間を含む年または事業年度です。2割特例・3割特例を使った場合も同じ経理処理です(国税庁 No.6901の注記)。3割特例は、インボイス発行事業者の登録を受けたことで免税事業者から課税事業者になった個人事業者が、2027年分・2028年分の申告で使える特例で、法人は使えません(国税庁 令和8年度税制改正特集)。制度は簡易課税制度、2割特例、3割特例で説明しています。

数値例

簡易課税の例は、飲食店(第4種事業、みなし仕入率60%)で、税抜の課税売上が30,000,000円(すべて10%)の場合です。売上税額(国)2,340,000円から、控除額1,404,000円(×60%)を引いた936,000円が差引税額、地方消費税が264,000円(×22/78)で、納付額は1,200,000円です。2割特例・3割特例の例は、税抜の課税売上5,000,000円(すべて10%)、税抜の仕入れ・経費1,500,000円で、売上税額(国)390,000円の20%・30%が納付する国税です。納付額は、2割特例が国78,000円+地方22,000円=100,000円、3割特例が国117,000円+地方33,000円=150,000円です(当会計算)。

簡易課税・2割特例・3割特例の差額と決算仕訳(税抜経理方式、当会計算)単位:円
ケース仮受仮払納付額決算仕訳(借方)決算仕訳(貸方)
簡易課税 ケースA(税抜仕入・経費20,000,000円)3,000,0002,000,0001,200,000仮受消費税等 3,000,000/雑損失 200,000仮払消費税等 2,000,000/未払消費税等 1,200,000
簡易課税 ケースB(税抜仕入・経費12,000,000円)3,000,0001,200,0001,200,000仮受消費税等 3,000,000仮払消費税等 1,200,000/未払消費税等 1,200,000/雑収入 600,000
2割特例500,000150,000100,000仮受消費税等 500,000仮払消費税等 150,000/未払消費税等 100,000/雑収入 250,000
3割特例(個人事業者)500,000150,000150,000仮受消費税等 500,000仮払消費税等 150,000/未払消費税等 150,000/雑収入 200,000

ケースAは仮受−仮払1,000,000円が納付額1,200,000円より200,000円少ないため雑損失、ケースBは1,800,000円が1,200,000円より600,000円多いため雑収入です。2割特例は350,000円が100,000円より250,000円多く、3割特例は350,000円が150,000円より200,000円多いため、どちらも雑収入です(当会計算)。税込経理方式を選んでいる場合は、納付額を租税公課にするだけで、この精算はありません(税込経理方式のときの仕訳)。

仮払消費税等を「支払対価×10/110」にする特例

簡易課税を使う事業者は、仕入先が適格請求書発行事業者かどうかにかかわらず、仕入税額控除を受けられます。そこで、税抜経理方式の場合、継続適用を条件に、すべての課税仕入れの仮払消費税等を「支払対価の額×10/110(軽減税率の対象は8/108)」としてよいことになっています。2割特例を使う事業者も同じで、国税庁は3割特例でも同様の処理を認めています(国税庁 No.6375、法人税の通達1の2、所得税の通達1の2)。取引先ごとにインボイスの有無を区分する手間を省くための取扱いです。

インボイス制度と仮払消費税等

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

2023年10月1日以後は、適格請求書等の記載に基づく税額がない課税仕入れは、原則として仕入税額控除を受けられません。所得税・法人税では、仕入税額控除を受ける消費税等の額が仮払消費税等とされるため、インボイスのない仕入れに仮払消費税等を立てても、原則として取引の対価の額に含めて所得を計算します。ただし、経過措置や簡便な取扱いがあります(国税庁 No.6375)。

仮払消費税等にする金額(税抜経理方式)
仕入れの種類仮払消費税等にする金額
インボイスがある課税仕入れインボイスの記載に基づく消費税等の額
免税事業者などからの仕入れで、経過措置により一部を控除できる場合従来の仮払消費税等の額に、控除できる割合をかけた額。残りは、仕入や経費の額(資産なら取得価額)に含める
上の仕入れで、消費税等を区分せずに記録した場合(経過措置の期間中)仮払消費税等はないものとして所得を計算することも認められる
税込1万円未満の仕入れで、少額特例を使うもの支払対価の額×10/110(軽減税率は8/108)
簡易課税・2割特例・3割特例を使う課税期間の課税仕入れ継続適用を条件に、すべての課税仕入れについて、支払対価の額×10/110(軽減税率は8/108)

出典:国税庁 No.6375、法人税の通達と所得税の通達の経過的取扱いと1の2。少額特例は、2029年9月30日までに行う税込1万円未満の仕入れが対象です(対象になる事業者の要件は消費税の計算方法で説明しています)。

経過措置で控除できる割合は、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日からは70%、2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%で、2031年10月1日以後は控除できません(国税庁 リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(PDF))。割合の改正の内容や1億円の上限は免税事業者等からの仕入れの経過措置で説明しています。

免税事業者への外注費(税込110,000円、10%)の仕訳例:税抜経理方式(当会計算)
仕入れた日控除割合借方貸方
2026年9月30日まで80%外注費 102,000円/仮払消費税等 8,000円現金預金 110,000円
2026年10月1日から2028年9月30日まで70%外注費 103,000円/仮払消費税等 7,000円現金預金 110,000円

仮払消費税等は、110,000円×10/110×控除割合です。50%の期間は5,000円、30%の期間は3,000円です。国税庁の通達の改正履歴は2023年12月27日付が最新で、令和8年度税制改正による控除割合の見直し(2026年10月1日から)は通達の本文に反映されていません。「消費税経理通達関係Q&A」も、見直し前の割合で書かれています(2026年10月6日に確認)。

よくある質問

消費税の仕訳は、税抜経理と税込経理のどちらにすればよいですか?

課税事業者は、どちらを選んでもよいとされ、納付する消費税等の額は同じです。違いは、税抜経理方式が消費税等を仮受消費税等・仮払消費税等に分けて記録し、納付額を未払消費税等で処理するのに対し、税込経理方式は分けずに記録し、納付額を租税公課で処理する点です。免税事業者は税込経理方式だけです。どちらを選ぶかなど個別の判断は、税務署や税理士にご相談ください。〔国税庁 No.6375、国税庁 No.6901〕

仮払消費税と仮受消費税は何が違いますか?

仮受消費税等は、課税売上げに係る消費税等の額を、売上の本体の金額と区分して記録する科目です。仮払消費税等は、課税仕入れ等に係る消費税等の額を区分して記録する科目です。決算で、仮受消費税等の合計から仮払消費税等の合計(控除対象外消費税額等に相当する金額を除く)を引いた額が、納付すべき消費税等の額の基になります。〔法人税の通達1(12)(13)・6、国税庁 No.6901〕

仮受消費税と仮払消費税の差額は、どう仕訳しますか?

決算で、仮受消費税等を借方、仮払消費税等を貸方にして相殺し、残りを未払消費税等(貸方)にします。還付になるときは、残りを未収消費税等(借方)にします。端数などで納付額と差額が出たときは、法人は益金・損金に、個人事業者は総収入金額・必要経費に算入します。簡易課税・2割特例・3割特例では、仮受−仮払が納付額より多ければ雑収入、少なければ雑損失です。例1では差額308円を雑収入にしました(当会計算)。〔国税庁 No.6901、国税庁 No.6513〕

未払消費税の仕訳と、消費税を納付したときの仕訳は?

税抜経理方式では、決算で未払消費税等を貸方に計上し、納付したときに未払消費税等を借方、現金預金を貸方にして減らします。例1の納付額846,600円なら、納付時は「未払消費税等 846,600円/現金預金 846,600円」です(当会計算)。税込経理方式では、納付したときに租税公課を借方、現金預金を貸方にします。〔国税庁 No.6901〕

消費税の還付を受けたときの仕訳は?

税抜経理方式では、決算で還付される額を未収消費税等として借方に計上し、入金されたときに普通預金などを借方、未収消費税等を貸方にします。税込経理方式では、還付を受ける額を雑収入などとして総収入金額・益金にします。例3の還付金800,000円なら、税抜経理方式の入金時は「普通預金 800,000円/未収消費税等 800,000円」です(当会計算)。〔国税庁 No.6901〕

消費税の中間納付をしたときの仕訳は?

国税庁の資料に、中間納付した税額の科目の指定は見当たりません。当会の例(例2)では、税抜経理方式の中間納付額を、課税仕入れの消費税等ではないため仮払消費税等とは別の科目(仮払金)で記録し、決算で確定納付額から差し引いています。税込経理方式の中間納付額を租税公課にしている点も、当会の整理です。中間納付額は、確定申告の際に納付税額から控除されます。〔国税庁 No.6609、国税庁 No.6611〕

簡易課税のときの仕訳は、一般課税と何が違いますか?

簡易課税では、納付税額がみなし仕入率で決まるため、仮受消費税等−仮払消費税等と納付額が一致しません。仮受−仮払が納付額より多ければ差額を雑収入、少なければ雑損失にして、差額が生じた課税期間を含む年・事業年度に精算します。継続適用を条件に、すべての課税仕入れの仮払消費税等を「支払対価×10/110(軽減税率は8/108)」とすることも認められています。〔国税庁 No.6513、国税庁 No.6375〕

2割特例・3割特例のときの仕訳は?

簡易課税と同じ考え方で、納付額と仮受−仮払の差額を雑収入または雑損失にします。2割特例は、個人事業者は2026年分、法人は2026年9月30日を含む事業年度が最後です。3割特例は、個人事業者の2027年分・2028年分で、法人は使えません。〔国税庁 No.6901、国税庁 No.6375、国税庁 No.6351〕

免税事業者は、仮払消費税・仮受消費税を使えますか?

所得税・法人税の計算では、免税事業者は税込経理方式を使います。帳簿を税抜経理方式でつけていても、仮受消費税等・仮払消費税等がないものとして、消費税等の額は売上や仕入・経費などの額に含めて計算します。〔国税庁 No.6905、国税庁 No.6909〕

インボイスのない仕入れの仮払消費税は、どうなりますか?

原則として、仮払消費税等として区分して記録した額も、取引の対価の額に含めて所得を計算します。経過措置の期間中は、従来の仮払消費税等の額に、控除できる割合(2026年10月1日から2028年9月30日までは70%)をかけた額を仮払消費税等とし、残りを仕入や経費の額に含めます。簡易課税・2割特例・3割特例を使う課税期間は、継続適用を条件に、すべての課税仕入れを「支払対価×10/110(軽減税率は8/108)」で仮払消費税等にできます。〔国税庁 No.6375、国税庁リーフレット(PDF)〕

出典・参考資料

いずれも2026年10月6日に内容を確認しました。

国税庁(タックスアンサー)

国税庁(通達・Q&A・改正関係)

法令(e-Gov法令検索)

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年10月6日:公開(同日時点の法令等と、国税庁の資料に基づく)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。経理方式の選択や、仕訳の科目・金額など、個別の判断については、所轄の税務署や、税理士などの専門家にご相談ください。

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