仕入税額控除の計算方法と要件:全額控除・個別対応方式・一括比例配分方式の違い

仕入税額控除は、売上げにかかる消費税額から仕入れや経費にかかった消費税額を差し引く仕組みで、一般課税(原則課税)で申告する課税事業者が使います。その課税期間の課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上なら全額を控除でき、5億円を超えるか95%未満なら個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。一括比例配分方式を選ぶと、原則として2年間は続けて使う必要があります。控除を受けるには帳簿と請求書等(適格請求書など)の保存が必要で、免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの仕入れは、2026年10月1日から2028年9月30日までは仕入税額相当額の70%までです。

仕入税額控除の計算方法(課税売上高と課税売上割合で決まります)

当てはまる場合控除できる額方式
課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上課税仕入れ等にかかる消費税額の全額全額控除(方式の選択は不要)
課税売上高が5億円を超える、または課税売上割合が95%未満(課税仕入れ等を3つに区分している)課税売上げにのみ要するもの + 共通して要するもの × 課税売上割合個別対応方式
同上課税仕入れ等にかかる消費税額の合計 × 課税売上割合一括比例配分方式(区分をしていない場合はこの方式だけ。2年間継続)

根拠は消費税法30条1項・2項・4項・5項、国税庁 タックスアンサー No.6401です。課税売上割合は、課税売上高を総売上高(いずれも税抜き)で割った割合です(課税売上割合の計算方法と95%ルール)。同じ数字で2つの方式を比べた計算は2方式の比較と計算例にあります。

【確定】先に確認しておきたい2点

  • 2026年10月1日(木)から:免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの仕入れで控除できる割合が、80%から70%になっています(2028年9月30日まで)。同じ仕入先からの仕入れが年1億円(税込み)を超える部分は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から経過措置の対象外です(控除を受けるための要件)。
  • 一括比例配分方式は2年間続ける必要があります:一度選ぶと、原則として2年間は個別対応方式に変更できません(消費税法30条5項。一括比例配分方式)。
目次
  1. 仕入税額控除とは:売上の消費税から仕入れの消費税を引く仕組み
  2. 控除を受けるための要件:帳簿と請求書等の保存
  3. 全額控除できる場合と、できない場合(95%と5億円)
  4. 個別対応方式:課税仕入れ等を3つに区分する
  5. 一括比例配分方式:区分は不要だが2年間継続
  6. 2方式の比較と計算例
  7. 簡易課税との違い
  8. このほかに確認する論点
  9. よくある質問
  10. 出典・参考資料
  11. 改訂履歴

仕入税額控除とは:売上の消費税から仕入れの消費税を引く仕組み

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

売上げにかかる消費税額から、仕入れ等にかかる消費税額を引きます

消費税の納付額は、課税期間中の課税売上げにかかる消費税額から、同じ期間の課税仕入れ等にかかる消費税額を差し引いて計算します。この差引きが仕入税額控除で、控除する額を「仕入控除税額」といいます(消費税法30条1項、国税庁 タックスアンサー No.6451)。課税期間は、原則として個人は1月1日から12月31日まで、法人は事業年度です(No.6351)。

国税分(7.8%)の仕入れにかかる消費税額は、原則として、請求書等に書かれた消費税額等のうち課税仕入れにかかる部分を合計して78/100を掛けて出します(積上げ計算)。売上税額を割戻し計算している場合は、税込の仕入額に7.8/110(軽減税率8%の仕入れは6.24/108)を掛ける方法(割戻し計算)も使えます。地方消費税は、国税分の差引税額に22/78を掛けた額です(No.6391、地方税法72条の83)。申告で納める額を出す全体の手順は、消費税の計算方法(原則課税の手順)で説明しています。

  • 対象になる人:課税事業者です。免税事業者は、仕入税額控除ができません(消費税法30条1項のかっこ書)。新たに開業した事業者など、納税義務が免除されている間は、課税事業者を選択するか、適格請求書発行事業者の登録を受けない限り、控除できません(基通11-1-7、消費税法9条1項・4項)。
  • 課税仕入れ等に含まれるもの:国内での課税仕入れのほか、輸入した課税貨物にかかった消費税額と、特定課税仕入れ(リバースチャージ)が含まれます(消費税法30条1項・2項)。
  • 別の計算になる場合:簡易課税、2割特例、3割特例を使う場合は、実際の仕入れの額ではなく、売上税額をもとに控除額を計算します(簡易課税との違い)。

課税仕入れとは:対象になるものとならないもの

課税仕入れとは、事業者が事業として、他の者から、資産を譲り受ける・借り受ける、または役務の提供(サービス)を受けることです。ただし、給与等を対価とする役務の提供と、非課税・免税の取引は含まれません(消費税法2条1項12号、No.6451)。仕入れの相手は、課税事業者でも免税事業者でも消費者でもかまいません(基通11-1-3)。ただし、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、原則として控除できません(控除を受けるための要件)。

課税仕入れになるものとならないものの例
支払いの内容課税仕入れか根拠
商品・原材料・事務用品・消耗品の購入、機械・建物・車両・器具備品など事業用資産の購入や賃借なるNo.6451
広告宣伝費、通信費、水道光熱費、修繕費、外注費(加工賃、人材派遣料、警備や清掃の委託料など)、得意先の接待の飲食代なるNo.6451、No.6463
国内の出張旅費・宿泊費・日当(通常必要と認められる部分)なるNo.6459
給料、賃金、賞与、退職金などならない消費税法2条1項12号、基通11-1-2
非課税の取引(土地の購入や賃借、住宅の家賃、保険料、預貯金や貸付金の利子、郵便切手や商品券の購入など)ならないNo.6201
海外出張の旅費・宿泊費・日当など、国内で行う取引ではないもの原則ならないNo.6459、消費税法30条1項(国内において行う課税仕入れ)
金銭による寄附、祝金・餞別・弔慰金、商品券の交付ならないNo.6463
個人事業者の家事のための購入(事業と家事の共用は、事業の部分だけ)ならない基通11-1-1、11-1-4

出典:No.6451 仕入税額控除の対象となるもの、No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い、No.6463 寄附金や交際費の取扱い、No.6201 非課税となる取引、消費税法基本通達 第11章第1節。何が課税・非課税になるかは、課税・非課税・不課税・免税の違いで説明しています。

控除を受けるための要件:帳簿と請求書等の保存

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

課税仕入れ等の税額を控除するには、その事実を記載した帳簿と、事実を証する請求書等の両方を保存する必要があります。請求書等には、適格請求書、適格簡易請求書のほか、仕入明細書など(電子データを含みます)が入ります。保存がない取引の分は、災害などやむを得ない事情を除き、控除できません(消費税法30条7項〜9項、No.6496)。帳簿には、取引の相手方の氏名または名称、取引の年月日、取引の内容(軽減税率の対象なら、その旨)、支払対価の額を書きます(消費税法30条8項1号)。

仕入れの相手や金額によって、必要な書類と控除できる額が変わります。次の表は要点だけをまとめたもので、詳しい内容は、適格請求書の記載事項と書き方と免税事業者等からの仕入れの経過措置で説明しています。

仕入れの場面別:保存する書類と控除できる額(2026年10月6日時点)
仕入れの場面保存する書類控除できる額
適格請求書発行事業者からの仕入れ帳簿と、適格請求書(または適格簡易請求書など)仕入れにかかる消費税額(全額)
免税事業者、消費者、登録のない課税事業者など、適格請求書発行事業者以外からの仕入れ(経過措置)「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を書いた帳簿と、区分記載請求書等と同様の事項が書かれた請求書等仕入税額相当額の一定割合
2026年9月30日まで:80%
2026年10月1日〜2028年9月30日:70%
2028年10月1日〜2030年9月30日:50%
2030年10月1日〜2031年9月30日:30%
2031年10月1日以後:控除できない
税込1万円未満の仕入れ(少額特例)一定の事項を書いた帳簿だけ通常どおり。適格請求書発行事業者以外からの仕入れも対象。2029年9月30日までの仕入れ
3万円未満の公共交通機関の運賃、3万円未満の自動販売機での購入、従業員等への出張旅費など一定の事項を書いた帳簿だけ通常どおり

出典:インボイスQ&A 問113(PDF)(経過措置の割合と帳簿・請求書等)、問111(PDF)・問112(PDF)(少額特例)、No.6496(帳簿のみで足りる取引)。

  • 割合は仕入れた日で決まります:商品は原則として引渡しを受けた日、サービスは原則として完了した日で判定し、支払った日では決まりません(控除割合の推移)。
  • 年1億円の上限:同じ仕入先からの経過措置の対象の仕入れが、その年(法人は事業年度)で税込1億円を超える部分は対象外です。2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用され、個人事業者は2027年分からです(1億円の上限)。
  • 少額特例が使える事業者:基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。1万円未満かどうかは1回の取引の金額で判定します(請求書等がなくても控除できる取引)。
  • 保存期間:7年間です。6年目と7年目は、帳簿と請求書等のどちらか一方でかまいません(保存期間)。
  • 影響を受けるのは一般課税の事業者です:簡易課税、2割特例、3割特例の納付額は、経過措置の割合では変わりません(2026年10月1日から変わること)。

経過措置で控除できる額は、課税仕入れ等の税額の一部として、個別対応方式でも一括比例配分方式でも同じように区分して計算に入れます(国税庁「法人用 申告書(一般用)の書き方」(PDF)の設例)。

全額控除できる場合と、できない場合(95%と5億円)

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

課税売上高5億円以下で、課税売上割合95%以上なら全額控除

その課税期間の課税売上高が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等にかかる消費税額の全額を控除できます。この場合、個別対応方式か一括比例配分方式かを選ぶ必要はありません(消費税法30条1項、No.6401)。5億円の要件は、平成24年(2012年)4月1日以後に開始する課税期間から加わりました(国税庁 質疑応答事例「課税売上高が5億円超の場合の仕入税額控除の計算」)。

  • 課税売上高:課税資産の譲渡等の対価の額(輸出などの免税売上げを含みます)の合計から、売上げの返品・値引き・割戻し(税抜き)を引いた額です(消費税法30条6項、No.6405)。
  • 課税期間が1年に満たない場合:課税売上高を月数で割って12を掛けた金額(年換算)で5億円を超えるかを判定します(No.6401の注1)。
  • 課税売上割合が95%以上かどうか:事業者が課税売上割合に準ずる割合の承認を受けていても、95%以上かどうかは、本来の課税売上割合で判定します(No.6401の注2)。
全額控除できるかどうかの判定例(金額は仮の数値、年換算は当会計算)
例課税期間課税売上高年換算の課税売上高課税売上割合結果
A12か月3億円3億円97%全額控除
B12か月6億円6億円100%5億円超なので、個別対応方式か一括比例配分方式
C12か月4億円4億円90%95%未満なので、個別対応方式か一括比例配分方式
D6か月3億円6億円97%年換算で5億円超なので、個別対応方式か一括比例配分方式

例Bのように課税売上割合が100%でも、課税売上高が5億円を超えると全額控除はできません。

課税売上割合とは

課税売上割合は、次の式で計算します。

課税売上割合 = 課税売上高(税抜き)÷ 総売上高(税抜き)

分母の総売上高は、国内の資産の譲渡等の対価の額の合計で、課税売上高と輸出などの免税売上高、非課税売上高を合わせた額です。分子の課税売上高には、輸出による免税売上高が含まれます。不課税の取引は、分母にも分子にも入れません(No.6405)。有価証券の譲渡など、分母に入れる額が一部になるものもあります。詳しい計算と95%ルールは課税売上割合の計算方法と95%ルールで説明しています。

本業が課税売上げだけでも、遊休地を売却した年のように、土地の譲渡(非課税)が加わると、課税売上割合が95%未満になることがあります。

個別対応方式:課税仕入れ等を3つに区分する

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

計算式

個別対応方式では、その課税期間の課税仕入れ等にかかる消費税額を、次の3つに区分します。

  • イ:課税売上げにのみ要するもの(課税資産の譲渡等を行うためにだけ必要なもの)
  • ロ:非課税売上げにのみ要するもの(課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等を行うためにだけ必要なもの)
  • ハ:課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの

仕入控除税額 = イ + (ハ × 課税売上割合)

ロは控除できません。この方式は、3つの区分が明らかにされている場合に限り使えます(消費税法30条2項1号、No.6401)。ハにかける割合は、課税売上割合に代えて、税務署長の承認を受けた課税売上割合に準ずる割合を使うこともできます(下の注意点)。

区分の具体例

課税仕入れ等の区分の例
区分例根拠
イ 課税売上げにのみ要するものそのまま他に売る商品の仕入れ。課税資産の製造だけに使う原材料・容器・包装材料・機械装置・工具器具備品。課税資産にかかる倉庫料・運送費・広告宣伝費・支払手数料・外注加工賃。得意先に配る試供品基通11-2-10、11-2-14
ロ 非課税売上げにのみ要するもの販売用の土地の造成にかかる課税仕入れ。賃貸用住宅の建築にかかる課税仕入れ(住宅の貸付けに使う建物の取得には、別の制限があります)。国内にある土地だけを売るときの仲介手数料(当会の整理)基通11-2-15
ハ 共通して要するもの課税売上げと非課税売上げの両方がある事業の事務所の家賃・光熱費・通信費(当会の整理)。株券の発行にあたって支払う印刷費や引受手数料のような、資産の譲渡等に当たらない取引のための課税仕入れ。土地と建物を一括して売るときの仲介手数料(合理的な按分をしない場合)基通11-2-16、質疑応答事例(土地付建物の仲介手数料)

出典:消費税法基本通達 第11章第2節、国税庁 質疑応答事例「土地付建物の仲介手数料の仕入税額控除」。「当会の整理」と書いた例は、通達の定義(ロは「非課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要なもの」、ハは「課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に共通して要するもの」)にあてはめたもので、実際の区分は、事業の内容や使い方によって変わります。

土地と建物を一括して売った場合の仲介手数料は、共通して要するものに当たります。ただし、譲渡代金を土地の部分と建物の部分に合理的に区分しているときは、その割合で手数料を、課税売上げにのみ要するものと非課税売上げにのみ要するものに分けて、個別対応方式を適用できます。たとえば、土地8,000万円・建物2,000万円で売った場合の仲介手数料は、20%を課税売上げにのみ要するもの、80%を非課税売上げにのみ要するものとして扱えます(質疑応答事例の設例)。

注意点

  • すべての課税仕入れ等を区分します:課税売上げにのみ要するものだけを抜き出して、残りをすべて共通扱いにすることは認められません(基通11-2-18)。
  • 区分は、仕入れを行った日の状況で行います:その日に区分が明らかでなくても、その日の属する課税期間の末日までに明らかになったときは、その区分で適用できます(基通11-2-20)。
  • 共通のものを合理的な基準で細かく分けることもできます:原材料・包装材料・倉庫料・電力料のように、生産実績などの合理的な基準で課税売上げ用と非課税売上げ用に分けられるものを、その基準で区分しているときは、その区分で適用して差し支えありません(基通11-2-19)。
  • 課税売上割合に準ずる割合:使用人の数、使用面積などの合理的な割合を使えます。納税地の税務署長の承認が必要で、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、適用を受けようとする課税期間の末日までに承認を受けておきます。末日までに申請書を提出し、翌日から1か月以内に承認を受けたときは、その課税期間の末日に承認があったものとみなされます(消費税法30条3項、No.6417)。
  • 申告書では:付表2-3の⑲欄に課税売上げにのみ要するもの、⑳欄に共通して要するものを書き、㉑欄の計算式で控除する額を出します(国税庁「法人用 申告書(一般用)の書き方」)。

帳簿を付けるときに、勘定科目や摘要で「課税売上用」「共通」などを区分しておくと、期末に区分をそろえやすくなります(当会の整理)。申告書の全体の書き方は消費税申告書の書き方(付表2-3)で説明しています。

一括比例配分方式:区分は不要だが2年間継続

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

計算式

一括比例配分方式は、課税仕入れ等にかかる消費税額の合計に、課税売上割合をそのまま掛ける方式です。

仕入控除税額 = 課税仕入れ等にかかる消費税額の合計 × 課税売上割合

イ・ロ・ハの区分は要りません。課税仕入れ等を区分していない場合は、この方式だけが使えます(消費税法30条2項2号)。区分していても、この方式を選べます(同30条4項)。課税売上割合に準ずる割合は使えません(No.6401)。

どちらの方式を使うかについて、消費税法30条は事前の届出を求めていません(簡易課税の届出とは異なります)。申告書の参考事項の欄で、個別対応方式・一括比例配分方式・全額控除のいずれかに○印を付けて示します(国税庁「法人用 申告書(一般用)の書き方」)。

選んだら2年間継続する

一括比例配分方式で計算した事業者は、その方式で計算した課税期間の初日から、同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間で、続けてこの方式を適用した後でなければ、個別対応方式に変更できません(消費税法30条5項)。区分をしなかったため、一括比例配分方式でしか計算できなかった場合も、この条文の対象です(同30条2項・5項)。

課税期間が暦年(1年)の個人事業者が、2027年分で一括比例配分方式を選んだ場合(当会の整理)
課税期間使える方式
2027年分(選んだ年)一括比例配分方式
2028年分(初日から2年を経過する日までに開始する課税期間)一括比例配分方式を続ける
2029年分以後個別対応方式に変更できる(課税仕入れ等の区分が明らかな場合)
  • 全額控除になった年も、続けたことになります:一括比例配分方式を適用した課税期間の翌課税期間以後に、課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上になり、全額控除になった課税期間があっても、その課税期間は一括比例配分方式を継続して適用したものとして扱われます(基通11-2-21)。
  • 逆向きの制限はありません:個別対応方式を使える事業者が一括比例配分方式に変えることについて、2年間の制限は書かれていません(消費税法30条4項・5項)。

2方式の比較と計算例

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。計算例は当会が作った仮の数値です。

比較表

個別対応方式と一括比例配分方式の比較
項目個別対応方式一括比例配分方式
計算式イ + ハ × 課税売上割合課税仕入れ等の税額の合計 × 課税売上割合
区分イ・ロ・ハの3つに区分する(すべての課税仕入れ等)不要
課税売上割合に準ずる割合承認を受ければ、ハに使える使えない
継続制限なし(一括比例配分方式に変更するのも自由)選んだ課税期間から2年間は、個別対応方式に変更できない
事務の手間多い(区分の管理が必要)少ない
有利になりやすい場合課税売上げにのみ要する仕入れが多く、非課税売上げにのみ要する仕入れが少ない非課税売上げにのみ要する仕入れが多い(課税売上げにのみ要する仕入れが少ない)

出典:消費税法30条2項〜5項、No.6401、No.6417。「事務の手間」「有利になりやすい場合」は、次の計算をもとにした当会の整理です。

どちらが有利かの考え方

2つの式を引き算すると、ハ(共通して要するもの)は、どちらの方式でも課税売上割合を掛けるので、差に影響しません。差を決めるのは、イとロだけです(当会計算)。

個別対応方式の控除額 − 一括比例配分方式の控除額 = イ × (1 − 課税売上割合) − ロ × 課税売上割合

この差がプラスなら個別対応方式が有利で、マイナスなら一括比例配分方式が有利です。言い換えると、イがロの「課税売上割合 ÷ (1 − 課税売上割合)」倍より大きければ、個別対応方式が有利です。

個別対応方式が有利になる目安(当会計算)
課税売上割合イがロの何倍を超えると個別対応方式が有利か
90%9倍
75%3倍
50%1倍
30%約0.43倍(3/7倍)

表のとおり、課税売上割合が高いほど、個別対応方式が有利になるために必要なイの倍率は大きくなります。たとえば90%なら、イがロの9倍を下回るとき、一括比例配分方式のほうが有利です。反対に、課税売上割合が低いときは、イがロの数分の1しかなくても、個別対応方式が有利になることがあります。また、一括比例配分方式を選ぶと2年間は変更できないので、翌年の仕入れの見込みも含めて考える必要があります。経過措置(免税事業者等からの仕入れ)で控除できる額も、イ・ロ・ハのどれかに入れて同じ式で比べます。

例1:遊休地を売った年の商品販売会社(個別対応方式が有利)

前提は次のとおりです。課税期間は1年で、取引はすべて10%の仮の数値です。仕入れは適格請求書を保存し、全額が控除の要件を満たしているものとします。

  • 課税売上高(商品の販売、税抜き):60,000,000円
  • 非課税売上高(遊休地の売却):20,000,000円
  • 課税売上割合:60,000,000 ÷ (60,000,000 + 20,000,000)= 75%(5億円以下ですが95%未満なので、全額控除はできません)
  • 売上税額(国税分):60,000,000 × 7.8% = 4,680,000円
例1の課税仕入れ(税抜額と、国税分7.8%の消費税額)
区分仕入れの内容税抜額消費税額(国税分)
イ商品の仕入れ30,000,000円2,340,000円
ロ遊休地の売却にかかる仲介手数料660,000円51,480円
ハ事務所の家賃2,400,000円、光熱費360,000円、通信費240,000円3,000,000円234,000円
合計―33,660,000円2,625,480円
例1の計算結果(当会計算、Pythonで検算)
方式仕入控除税額の計算(国税分)仕入控除税額差引税額(国)地方消費税納付額の合計
個別対応方式2,340,000 + 234,000 × 75%2,515,500円2,164,500円610,500円2,775,000円
一括比例配分方式2,625,480 × 75%1,969,110円2,710,800円764,500円3,475,300円
差―546,390円――700,300円

差引税額は、売上税額4,680,000円から仕入控除税額を引いた額の百円未満を切り捨てた額です(一括比例配分方式は2,710,890円→2,710,800円)。地方消費税は差引税額 × 22/78の百円未満を切り捨てた額です(No.6371、地方税法20条の4の2第3項)。仕入控除税額の差546,390円は、イ2,340,000円×25% − ロ51,480円×75% と一致します。納付額の差が仕入控除税額の差にぴったり比例しないのは、端数を切り捨てるためです。

例1では、課税売上げにのみ要する仕入れ(イ)が、非課税売上げにのみ要する仕入れ(ロ)の約45倍あり、目安の3倍を大きく超えるので、個別対応方式が有利です。一括比例配分方式では、商品の仕入れにかかった消費税まで75%しか控除できません。

例2:住宅と店舗を貸している不動産賃貸業(一括比例配分方式が有利)

前提は次のとおりです。課税期間は1年で、取引はすべて10%の仮の数値です。

  • 課税売上高(店舗・事務所の家賃、税抜き):12,000,000円
  • 非課税売上高(住宅の家賃):28,000,000円
  • 課税売上割合:12,000,000 ÷ 40,000,000 = 30%
  • 売上税額(国税分):12,000,000 × 7.8% = 936,000円
  • イ(課税売上げにのみ要するもの):店舗の修繕費 税抜500,000円(消費税額39,000円)
  • ロ(非課税売上げにのみ要するもの):賃貸住宅の修繕費 税抜5,000,000円(消費税額390,000円)
  • ハ(共通して要するもの):建物の管理委託料 税抜2,000,000円(消費税額156,000円)
  • 合計:税抜7,500,000円(消費税額585,000円。いずれも国税分7.8%)
例2の計算結果(当会計算、Pythonで検算)
方式仕入控除税額の計算(国税分)仕入控除税額差引税額(国)地方消費税納付額の合計
個別対応方式39,000 + 156,000 × 30%85,800円850,200円239,800円1,090,000円
一括比例配分方式585,000 × 30%175,500円760,500円214,500円975,000円
差―89,700円――115,000円

差は、一括比例配分方式のほうが有利な額です。仕入控除税額の差89,700円は、イ39,000円×70% − ロ390,000円×30% = −89,700円と一致します。賃貸住宅の修繕費は、住宅の貸付けのためにだけ要する費用として区分した例です。住宅の貸付けに使う建物の取得にかかる課税仕入れ等には、別の制限があります(このほかに確認する論点)。

例2では、非課税売上げにのみ要する仕入れ(ロ)が大きく、課税売上げにのみ要する仕入れ(イ)が小さいので、一括比例配分方式が有利です。課税売上割合が30%のとき、イがロの約0.43倍を超えなければ、個別対応方式は有利になりません。

この2つの例は、仕組みを確かめるための仮の数値です。実際の有利不利は、仕入れの内容、課税売上割合、翌年以降の見込みによって変わります。個別の判断は、税務署や税理士にご相談ください。

簡易課税との違い

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

簡易課税制度は、実際の課税仕入れ等の額ではなく、売上げにかかる消費税額に事業の種類ごとの「みなし仕入率」を掛けた額を、仕入れにかかる消費税額として控除する制度です。事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者が、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に使えます(No.6505)。

一般課税の仕入税額控除(この記事)と簡易課税の違い
項目一般課税(全額控除・個別対応方式・一括比例配分方式)簡易課税
控除額の基礎実際の課税仕入れ等にかかる消費税額売上げにかかる消費税額 × みなし仕入率
課税売上割合使う(95%の判定と、個別対応方式・一括比例配分方式の按分)使わない(非課税売上げは売上税額にも事業区分の判定にも含めない)
使える条件課税事業者届出書を提出した課税事業者で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下
事前の届出不要原則として、適用を受ける課税期間の初日の前日までに、届出書の提出が必要(2割特例・3割特例を使った後には、期限の特例があります)
継続個別対応方式は制限なし。一括比例配分方式は2年間選択したら、原則として2年間は継続して適用する
還付控除額が売上税額より大きいと、還付になる売上税額より多くは控除できないため、通常は還付にならない(当会の整理)

出典:No.6505 簡易課税制度、国税庁 令和8年度税制改正特集。「課税売上割合」の行は簡易課税制度(事業区分・みなし仕入率・届出)の記載に合わせています。

みなし仕入率は、第1種事業(卸売業)90%、第2種事業(小売業など)80%、第3種事業(製造業・建設業など)70%、第4種事業(その他)60%、第5種事業(サービス業など)50%、第6種事業(不動産業)40%です(No.6505)。事業区分の判定は簡易課税の事業区分で説明しています。

2割特例(売上税額の2割を納付)と3割特例(個人事業者の令和9年分・10年分で、売上税額の3割を納付)も、実際の仕入れの額を使わない計算です。そのため、免税事業者等からの仕入れの経過措置の割合が変わっても、納める額は変わりません(2割特例、3割特例)。どの計算方法が有利かを比べる方法は簡易課税制度の「どちらを選ぶか」で説明しています。

このほかに確認する論点

【確定】2026年10月6日時点の法令等に基づく。

仕入税額控除には、この記事で扱った計算のほかに、別の調整や制限があります。この記事では名前と概要だけを挙げます。該当しそうな場合は、条文や国税庁の資料で確認するか、税務署や税理士にご相談ください。

仕入税額控除に関する別の論点(概要のみ)
論点概要根拠・参考
調整対象固定資産建物・機械・車両・器具備品などで、税抜100万円以上のものです。課税売上割合が仕入れの課税期間から3年目に著しく変動したとき、また、課税業務用と非課税業務用の間で転用したときに、仕入控除税額を調整します消費税法33条〜35条、No.6421
居住用賃貸建物住宅の貸付けに使う建物のうち、高額特定資産などに当たるものの取得にかかる課税仕入れ等の税額は、仕入税額控除の対象になりません。後から課税賃貸用に使ったときなどの調整もあります消費税法30条10項・35条の2、国税庁 消費税法改正のお知らせ(令和2年4月、PDF)
仕入れの返品・値引き・割戻し仕入れにかかる対価の返還等を受けたときは、その分の消費税額を課税仕入れ等の税額から差し引きます。個別対応方式・一括比例配分方式でも、区分に応じて調整します消費税法32条
特定課税仕入れ(リバースチャージ)国外事業者から受ける事業者向けの電気通信利用役務の提供(広告の配信など)や特定役務の提供に、国内の事業者が申告納税する仕組みですリバースチャージ方式、No.6451
免税事業者から課税事業者になった場合の棚卸資産免税事業者が課税事業者になった場合などの、棚卸資産にかかる消費税額の調整です消費税法36条、No.6491
国・地方公共団体などの特定収入国・地方公共団体や公共・公益法人等に特定収入があるときの仕入控除税額の調整です消費税法60条4項、No.6495

消費税法34条・35条・36条の条文名は、e-Gov法令検索で確認しました。居住用賃貸建物の取得にかかる課税仕入れ等の税額の扱い(住宅の貸付けに使う建物か、店舗などか)や、調整の細かい要件は、この記事では扱いません。

よくある質問

仕入税額控除とは何ですか?

売上げにかかる消費税額から、仕入れや経費にかかった消費税額(課税仕入れ等にかかる消費税額)を差し引く仕組みです。一般課税(原則課税)で申告する課税事業者が使い、免税事業者は使えません。簡易課税、2割特例、3割特例では、実際の仕入れの額ではなく売上税額をもとに控除額を計算します。〔国税庁 No.6451、消費税法30条1項〕

個別対応方式と一括比例配分方式は、どちらが有利ですか?

課税仕入れ等の区分によって変わります。ハ(共通して要するもの)は、どちらの方式でも課税売上割合を掛けるので差が出ず、差を決めるのはイ(課税売上げにのみ要するもの)とロ(非課税売上げにのみ要するもの)です。個別対応方式の控除額から一括比例配分方式の控除額を引いた差は「イ × (1 − 課税売上割合) − ロ × 課税売上割合」で、プラスなら個別対応方式が有利です(当会計算)。課税売上割合が75%なら、イがロの3倍を超えると個別対応方式が有利になります。〔国税庁 No.6401〕

一括比例配分方式は、2年間続けなければなりませんか?

はい。一括比例配分方式で計算した課税期間の初日から、同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間で、続けてこの方式を適用した後でなければ、個別対応方式に変更できません。課税期間が1年の場合は、選んだ年とその翌年の2年間です(当会の整理)。その後に全額控除になった課税期間があっても、一括比例配分方式を続けたものとして扱われます。個別対応方式から一括比例配分方式に変えることには、2年間の制限は書かれていません。〔消費税法30条5項、基通11-2-21、No.6401〕

仕入税額を全額控除できるのは、どんなときですか?

その課税期間の課税売上高が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上のときです。課税期間が1年に満たない場合は、課税売上高を年換算して5億円と比べます。課税売上割合が100%でも、課税売上高が5億円を超えると全額控除はできません。〔国税庁 No.6401、質疑応答事例(課税売上高が5億円超の場合)〕

課税仕入れとは何ですか?給与や海外での支払いは対象になりますか?

事業者が、事業として他の者から資産を譲り受ける・借り受ける、または役務の提供を受けることです。給与等を対価とする役務の提供は含まれないので、給料や賞与は対象になりません。海外への出張のための旅費・宿泊費・日当も、原則として課税仕入れになりません。非課税の取引(土地の購入、住宅の家賃、保険料など)も対象外です。〔国税庁 No.6451、No.6459、No.6201〕

仕入税額控除を受けるための要件は何ですか?インボイスは必要ですか?

課税仕入れ等の事実を記載した帳簿と、請求書等(適格請求書、適格簡易請求書、仕入明細書など)の両方の保存が原則です。保存期間は7年間で、6年目と7年目はどちらか一方でかまいません。3万円未満の公共交通機関の運賃や出張旅費など、帳簿だけで足りる取引もあります。詳しくは適格請求書の記載事項と書き方で説明しています。〔国税庁 No.6496〕

免税事業者からの仕入れは、2026年10月から何%控除できますか?

2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れは、仕入税額相当額の70%です。2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%で、2031年10月1日以後は控除できません。2026年9月30日までの仕入れは80%のままで、割合は仕入れた日(引渡しや役務の完了の日)で判定します。〔インボイスQ&A 問113(PDF)、問113-3(PDF)〕

個別対応方式で、土地の仲介手数料や事務所の家賃はどう区分しますか?

土地と建物を一括して売ったときの仲介手数料は、共通して要するものに当たります。譲渡代金を土地と建物に合理的に区分しているときは、その割合で、課税売上げにのみ要するものと非課税売上げにのみ要するものに分けられます。国内にある土地だけを売るときの仲介手数料は、非課税売上げにのみ要するものに当たります(当会の整理)。課税売上げと非課税売上げの両方がある事業の事務所の家賃・光熱費・通信費は、通達の定義にあてはめると、共通して要するものに当たります(当会の整理。実際の区分は、事業の内容や使い方によって変わります)。〔国税庁 質疑応答事例(土地付建物の仲介手数料)、基通11-2-10〜11-2-16〕

簡易課税とは何が違いますか?

簡易課税は、実際の仕入れの額を使わず、売上げにかかる消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率(40%〜90%)を掛けた額を控除します。事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に使えます。一般課税の仕入税額控除のように、課税売上割合で按分することはありません。〔国税庁 No.6505〕

出典・参考資料

いずれも2026年10月6日に内容を確認しました。

国税庁 タックスアンサー

国税庁 通達・質疑応答事例・インボイス関係

法令(e-Gov法令検索)

消費税法の条文は、2026年10月1日施行の改正を反映した版(e-Gov法令検索)で確認しました。計算例は、当会がPythonで検算した仮の数値です。国税庁のタックスアンサーは、令和8年4月1日現在の法令等に基づく内容を確認しました。

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年10月6日:公開(同日時点の法令等と、国税庁・e-Govの資料に基づく)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断(どの方式が有利か、課税仕入れ等の区分など)については、所轄の税務署や、税理士などの専門家にご相談ください。

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