消費税のリバースチャージ方式とは:申告が必要な事業者・対象取引・仕訳と申告書の書き方
リバースチャージ方式とは、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」(インターネット広告の配信など)や「特定役務の提供」(国外の芸能人・スポーツ選手など)について、サービスを受けた事業者自身が消費税を申告・納税する仕組みです。ただし当分の間、申告が必要なのは一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけで、簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間と免税事業者は申告の必要がありません。
リバースチャージの申告が必要かどうか【確定】
| 自社のその課税期間 | 申告 | 仕入税額控除 |
|---|---|---|
| 一般課税で、課税売上割合が95%未満 | 必要 | 受けられる |
| 一般課税で、課税売上割合が95%以上 | 不要 | 受けられない |
| 簡易課税を適用 | 不要 | 受けられない |
| 2割特例・3割特例を適用 | 不要 | 受けられない |
| 免税事業者 | 不要 | ― |
「仕入税額控除」は、特定課税仕入れ(リバースチャージの対象になる仕入れ)についての控除です。95%以上・簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間は、経過措置により特定課税仕入れが「なかったもの」とされるため、申告も控除もしません。免税事業者は、そもそも納税義務が免除されています(国税庁 タックスアンサー No.6118)。根拠を含めた表は申告が必要な事業者にあります。
本記事は井手政紀税理士(井手政紀税理士事務所/元 新宿税務署長(第84代)/新宿間税会 税理士部会員)の監修を受けて掲載している記事です。2026年9月26日、令和8年度税制改正等に合わせて全面改訂し、2026年9月28日に監修者の確認が完了しました。
【確定】令和8年度税制改正との関係(2026年9月26日時点)
2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終わり、個人事業者の令和9年分・令和10年分には3割特例が設けられました(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号)。国税庁の「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂)では、3割特例を適用する課税期間も、2割特例と同じく特定課税仕入れはなかったものとされ、リバースチャージの申告は不要です。2割特例が終わった後に一般課税で申告し、課税売上割合が95%未満になる課税期間は、申告が必要になります。
なお、次の経過措置はリバースチャージとは別の制度ですが、混同されやすいため注意してください。2026年10月1日から、免税事業者などからの仕入れについて控除できる割合が80%から70%に下がります。この経過措置は、登録していない国外事業者から受けた消費者向けの電気通信利用役務の提供には適用されません(インボイス制度との関係)。
目次
リバースチャージ方式とは:仕組みと用語
消費税は、通常、商品やサービスを売った事業者(売手)が申告・納税します。リバースチャージ方式では、これが逆になります。国外事業者からサービスを受けた事業者(買手)が、支払った対価の額を課税標準として、消費税と地方消費税を申告・納税します(消費税法5条1項・28条2項・45条1項1号)。同時に、その消費税額は、他の課税仕入れと同じように買手の仕入税額控除の対象になります(同法30条1項)。
国税庁のQ&Aは、輸入貨物の消費税(輸入時に納税し、確定申告で仕入税額控除をする)を例に、リバースチャージ方式は輸入時の納税を確定申告の際に行っていると考えると分かりやすい、と説明しています。一つの取引の消費税が、納税と控除の両方に出てくるのが特徴です(国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(以下「Q&A」)問5)。
用語の整理(特定課税仕入れとは)
| 用語 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 国外事業者 | 所得税法の非居住者である個人事業者と、法人税法の外国法人。日本に支店などがある外国法人も国外事業者です。 | 消費税法2条1項4号の2、Q&A問6 |
| 電気通信利用役務の提供 | インターネットなどを介して行う電子書籍・音楽・ソフトウエアの配信、クラウドサービス、広告の配信・掲載など。電話・インターネット回線の利用といった通信そのものや、ほかの取引に付随してインターネットを使うだけのものは含みません。 | 同法2条1項8号の3、Q&A問2-1 |
| 事業者向け電気通信利用役務の提供 | 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質や取引条件等から、受ける者が通常事業者に限られるもの。 | 同法2条1項8号の4、Q&A問3-1 |
| 特定役務の提供 | 国外事業者が行う、俳優・音楽家その他の芸能人や職業運動家の役務の提供を主な内容とする事業としての役務の提供のうち、他の事業者に対して行うもの(不特定かつ多数の者に対して行うものを除く)。 | 同法2条1項8号の5、同法施行令2条の2、Q&A問7 |
| 特定資産の譲渡等 | 事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供をまとめた呼び方。 | 同法2条1項8号の2、Q&A問7 |
| 特定仕入れ | 事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等。 | 同法4条1項、Q&A問8 |
| 特定課税仕入れ | 課税仕入れのうち、国内で行った特定仕入れ。リバースチャージ方式で申告・納税する対象です。 | 同法5条1項、Q&A問8 |
| 消費者向け電気通信利用役務の提供 | 電気通信利用役務の提供のうち、事業者向けに当たらないもの(国税庁Q&Aでの呼び方)。事業者が受けるものも含みます。 | Q&A問1・問4、国税庁リーフレット |
いつから始まったか
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 平成27年(2015年)10月1日 | 電気通信利用役務の提供は、役務の提供を受ける者の住所等で国内取引かどうかを判定するようになり、国外から行われるものも課税対象になりました。事業者向けはリバースチャージ方式、消費者向けは国外事業者が申告・納税します。それまで、国外事業者が国外から行う電子書籍や広告の配信などは国外取引で、課税の対象外(不課税)でした。「非課税」とは別の扱いです。 | No.6118、Q&A問1 |
| 平成28年(2016年)4月1日 | 国外事業者が国内で行う芸能・スポーツ等の役務の提供のうち特定役務の提供に、リバースチャージ方式が導入されました。 | 国税庁リーフレット(芸能・スポーツ等) |
| 平成29年(2017年)1月1日 | 国外の支店などで受ける場合と、国外事業者が日本の恒久的施設で受ける場合の内外判定の例外が設けられました(国外の支店・恒久的施設がある場合)。 | 国税庁 質疑応答事例 |
| 令和5年(2023年)10月1日 | インボイス制度が始まり、登録国外事業者制度は令和5年9月30日で廃止されました。 | No.6118 |
| 令和7年(2025年)4月1日 | プラットフォーム課税が始まり、消費者向けの一部は特定プラットフォーム事業者が申告・納税するようになりました。 | No.6568 |
| 令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間 | 2割特例の最後の課税期間です。個人事業者は令和9年分・令和10年分に3割特例を適用でき、その年分もリバースチャージの申告は不要です。 | No.6118、Q&A問5 |
経過措置はいつまでか
申告が必要な事業者を一般課税・課税売上割合95%未満に限る経過措置は、「当分の間」とされていて、終わる時期は定められていません(平成27年改正法附則42条・44条2項)。令和8年6月改訂のQ&A(問5)でも「当分の間」のままです。
対象になる取引・ならない取引
リバースチャージ方式の対象(特定課税仕入れ)になるのは、国外事業者から受ける「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「特定役務の提供」の2種類だけです(No.6118)。
判定の手順
- サービスを提供する相手(契約の当事者)は国外事業者か。国内の事業者なら、通常の国内取引です。仕入税額控除には、原則としてインボイス(適格請求書)の保存が必要です。
- 受けたサービスは「電気通信利用役務の提供」か「特定役務の提供」か。どちらでもなければ、リバースチャージの対象ではありません。役務の種類に応じた一般的な内外判定を行い、国内取引で課税される場合は、提供した事業者が納税します(Q&A問2-1)。
- 電気通信利用役務の提供なら、「事業者向け」に当たるか。当たらなければ消費者向けで、提供した国外事業者が申告・納税します。
- 国外の支店などで受け、国外の事業だけに使うものではないか。これに当たれば国外取引で、対象外です。
- 自社のその課税期間は、一般課税で課税売上割合が95%未満か。そうでなければ特定課税仕入れはなかったものとされ、申告は不要です(申告が必要な事業者)。
対象になる取引・ならない取引の早見表
| 取引の例 | 区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 国外事業者によるインターネット広告の配信・掲載 | 事業者向け電気通信利用役務の提供(役務の性質から事業者向け) | Q&A問3-1・問19 |
| 国外事業者が提供する、ゲームやソフトウエアをインターネット上で販売する場所 | 同上 | Q&A問3-1 |
| 内容を個別に交渉して当事者間で固有の契約を結び、事業者が事業として利用することが契約上明らかなクラウドサービスなど | 事業者向け電気通信利用役務の提供(取引条件等から事業者向け) | Q&A問3-1・問4・問19 |
| 国外の俳優・音楽家などが、国内で事業者に対して行う映画の撮影、テレビへの出演、演劇、演奏 | 特定役務の提供 | Q&A問38-1 |
| 国外のプロスポーツ選手などが、国内の競技大会等に出場するもの(報酬・賞金等を受け取るアマチュア・ノンプロを含む) | 特定役務の提供 | Q&A問38-1 |
| 国外のスポーツ選手やモデルの肩書を持つ非居住者が、国内でテレビやCMに芸能人として出演するもの | 特定役務の提供 | Q&A問38-1・問38-3 |
| 取引の例 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| Webサイトから誰でも申し込めて、事業者以外の申込みを事実上制限できないクラウドサービス・SaaS(「事業者向け」と掲載していても同じ) | 消費者向け電気通信利用役務の提供。国外事業者(プラットフォーム課税の対象は特定プラットフォーム事業者)が申告・納税します。 | Q&A問3-1・問19、No.6568 |
| 広く消費者も対象にした電子書籍・音楽・映像の配信 | 消費者向け電気通信利用役務の提供 | Q&A問4 |
| 契約の相手方が日本の法人(内国法人)で、日本の消費税を含めて請求されるもの | 国内取引。通常の課税仕入れです。 | 消費税法2条1項4号の2 |
| 電話・FAX・インターネット回線の利用など(通信そのもの) | 電気通信利用役務の提供に当たりません。 | Q&A問2-1 |
| ソフトウエアの制作委託(成果物の受取りや指示にインターネットを使うもの)、国外事業者に依頼する情報の収集・分析、国外での訴訟遂行、国外にある資産の管理・運用 | 電気通信利用役務の提供に当たりません。役務の種類に応じて内外判定を行います。 | Q&A問2-1 |
| 国外事業者からのソフトウエアなどの著作権の譲渡・貸付け(受渡しにインターネットを使う場合を含む) | 電気通信利用役務の提供に当たらず、譲渡・貸付けをする者の住所や本店所在地で内外判定します。Q&Aの例では国外取引(課税の対象外)です。 | Q&A問2-2 |
| 非居住者であるスポーツチームの監督・コーチとしての指導 | 特定役務の提供に当たりません(監督・コーチは職業運動家に当たらない)。 | Q&A問38-2 |
| 非居住者のモデルとしての役務(ファッションショーや雑誌で服を披露するなど) | 特定役務の提供に当たりません。 | Q&A問38-3 |
| 国外事業者が自ら国内の会場で公演を開き、観客にチケットを直接販売するもの | 特定役務の提供に当たらず、国外事業者に納税義務があります。事業者がそのチケットを買った場合は、通常の課税仕入れです。 | Q&A問39 |
| 国外の音楽家を仲介する国外の事業者(演奏する者や、演奏する者を雇用している者以外)に支払う仲介手数料 | 特定役務の提供の対価に当たりません。 | Q&A問40 |
| 来日する国外の選手の滞在費を、ホテルに直接支払った分 | 特定役務の提供の対価に当たらないものとして処理している場合は、帳簿と請求書等を保存して通常の課税仕入れになります。選手側に支払う分は特定課税仕入れです。 | Q&A問41 |
特定役務の提供は、俳優・音楽家その他の芸能人と職業運動家の役務の提供に限られます(消費税法2条1項8号の5、同法施行令2条の2)。講演やセミナーの講師は、国税庁の例示(Q&A問38-1)に含まれていません。なお、インターネットを介して行う英会話教室などは電気通信利用役務の提供に当たり(Q&A問2-1)、事業者向けか消費者向けかを次の基準で判定します。
事業者向けか消費者向けかの見分け方
電気通信利用役務の提供が事業者向けかどうかは、役務の性質と、取引条件等で判定します(Q&A問3-1・問19)。
- 役務の性質から事業者向けになるもの:インターネット広告の配信、ゲームやソフトウエアをインターネット上で販売する場所の提供など。
- 取引条件等から事業者向けになるもの:クラウドサービスなどのうち、内容を個別に交渉し、当事者間で固有の契約を結び、事業者が事業として利用することが契約上明らかなもの。契約書や契約過程の連絡文書で確認します。
- 消費者向けになるもの:Webサイトから申込みを受け付けるサービスは、「事業者向け」と掲載していても、事業者以外からの申込みを事実上制限できなければ消費者向けです。消費者向けは、事業者が受ける場合も含みます(国税庁リーフレット「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について(国内事業者の皆さまへ)」)。
国外事業者の表示義務(表示がなくても申告は必要)
事業者向け電気通信利用役務の提供や特定役務の提供を行う国外事業者は、あらかじめ、相手の事業者に消費税の納税義務がある旨を表示しなければなりません(消費税法62条)。国税庁は、規約や価格表示の場所、カタログ、交渉の際の書類やメールなどに、「日本の消費税は役務の提供を受けた貴社が納税することとなります。」「日本の消費税のリバースチャージ方式の対象取引です。」といった表示をする例を挙げています(Q&A問20)。
ただし、表示の有無は納税義務の成立に影響しません。表示がなくても、受けた役務が特定課税仕入れに当たれば、買手に納税義務が生じます(Q&A問21)。表示は、取引を始めるときに確認する手がかりの一つです(Q&A問19)。
特定役務の提供(芸能・スポーツ)
特定役務の提供は、国外事業者が国内で、対価を得て他の事業者に対して行う、①芸能人としての映画の撮影・テレビへの出演、②俳優・音楽家としての演劇・演奏、③スポーツ競技の大会等への出場などです(Q&A問38-1)。
- 国外事業者が個人事業者で、その本人が①〜③を行う場合も含みます。
- 国外事業者であるスポーツ選手が国内で映画やCMの撮影をして出演料等を受け取る場合は、芸能人として①に含まれます。
- アマチュア・ノンプロなどと称される者でも、競技等の役務の提供で報酬・賞金等を受け取るものは③に含まれます。
- 提供する国外事業者が免税事業者でも、特定役務の提供に当たります(国税庁リーフレット「国外事業者が行う芸能・スポーツ等に係る消費税の課税方式の見直しについて」)。
- 国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行うもの(自ら公演を開いてチケットを直接販売するなど)は除かれます(Q&A問39)。
特定役務の提供の対価を国外事業者に支払う場合は、消費税とは別に、所得税の源泉徴収が必要になることがあります(源泉徴収との違い)。
国外の支店・恒久的施設がある場合
電気通信利用役務の提供の内外判定は、役務の提供を受ける者の住所や本店所在地で行います。国内に本店がある法人の海外支店が受ける場合も、原則として国内取引です(Q&A問12)。そのうえで、平成29年1月1日以後は、事業者向け電気通信利用役務の提供について次の扱いになります(消費税法4条4項ただし書、国税庁 質疑応答事例「リバースチャージ方式による申告を要する者」)。
- 国内事業者が国外事業所等(国外の支店など)で受けるもののうち、国外で行う資産の譲渡等にだけ使うもの:国外取引で、リバースチャージの対象外です。
- 国外事業者が恒久的施設(日本の支店など)で受けるもののうち、国内で行う資産の譲渡等に使うもの:国内取引で、リバースチャージの対象です。その国外事業者が一般課税で課税売上割合95%未満なら、申告が必要です。
取引先が国外事業者かどうかを確かめる
判定の基準は、請求書に書かれた住所ではなく、契約の相手方(役務の提供者)が非居住者・外国法人かどうかです。日本に支店がある外国法人も国外事業者です(Q&A問6)。一方、海外企業のサービスでも、日本の法人が契約の相手方となり日本の消費税を含めて請求していれば、国内取引です。
2026年9月時点で、各社が次のように案内していることを確認しました。契約の相手方は変わることがあるため、最新の契約・規約・請求書で確認してください。
- Google広告:日本の請求先住所のアカウントについて、グーグル合同会社が請求し、10%の消費税が課されます(Google 広告ヘルプ「各国における税金」)。
- AWS:2022年2月1日から、日本国内のアカウントの契約当事者はアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社で、請求書には日本の消費税込みの額が表示されます(AWS「AWS Japan FAQ」)。
このように国内の法人が請求するものは、リバースチャージではなく通常の課税仕入れとして、インボイスを保存して仕入税額控除を行います。
申告が必要な事業者(課税売上割合95%と経過措置)
【確定】特定課税仕入れがあっても、リバースチャージ方式で申告する必要があるのは、一般課税で申告し、その課税期間の課税売上割合が95%未満の事業者に限られます(No.6118、Q&A問5)。
| 自社のその課税期間 | リバースチャージの申告 | 特定課税仕入れの仕入税額控除 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 一般課税で、課税売上割合が95%未満 | 必要(支払対価の額を課税標準に含める) | 受けられる(個別対応方式または一括比例配分方式で計算) | 消費税法5条1項・30条1項、Q&A問5 |
| 一般課税で、課税売上割合が95%以上 | 不要(特定課税仕入れはなかったものとされる) | 受けられない | 平成27年改正法附則42条、Q&A問24 |
| 簡易課税制度を適用 | 不要(同上) | 受けられない(計算に含めない) | 平成27年改正法附則44条2項、Q&A問25 |
| 2割特例を適用(令和8年9月30日を含む課税期間まで) | 不要(同上) | 受けられない(計算に含めない) | 平成28年改正法附則51条の2第4項、Q&A問25 |
| 3割特例を適用(個人事業者の令和9年分・令和10年分) | 不要(同上) | 受けられない(計算に含めない) | 平成28年改正法附則51条の3第4項、Q&A問25 |
| 免税事業者 | 不要(納税義務が免除されている) | ―(申告しない) | 消費税法9条1項、Q&A問26 |
95%以上・簡易課税・2割特例・3割特例の扱いは、「当分の間」の経過措置です。これらの課税期間は、特定課税仕入れがなかったものとして消費税法を適用するため、申告しないだけでなく、仕入税額控除だけを受けることもできません(No.6118)。免税事業者は、経過措置によるのではなく、特定課税仕入れについても納税義務が免除されているため、申告は不要です。簡易課税制度の仕組みは簡易課税制度、課税事業者と免税事業者の判定は課税事業者と免税事業者の違いで説明しています。
課税売上割合95%の判定で注意すること
- 課税期間ごとに判定します。前の課税期間が95%以上でも、その課税期間が95%未満なら申告が必要です。
- 課税売上割合は、課税売上高(輸出などの免税売上高を含む)を、課税・免税・非課税の売上高の合計で割って計算します(No.6405)。特定課税仕入れの金額は、分母にも分子にも入れません(Q&A問28)。
- 「課税売上割合に準ずる割合」の承認を受けていて、その割合が95%以上でも、経過措置は課税売上割合で判定します。課税売上割合が95%未満なら申告が必要です(Q&A問22)。
- 非課税売上が多いと、95%を下回ることがあります。非課税になる主な取引は、土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、預貯金や貸付金の利子、社会保険医療、介護保険サービス、学校教育の授業料などです(No.6201)。一定の有価証券や金銭債権の譲渡は、譲渡対価の5%を分母に入れます(No.6405)。
- 特に不動産業と医療業は非課税売上の比重が大きく、95%を下回りやすい業種です。業種ごとの留意点は不動産業の消費税と医療業の消費税(課税売上割合と非課税売上)で解説しています。
相手の国外事業者が免税事業者でも対象
特定課税仕入れは、受けた役務の種類で決まります。提供した国外事業者が免税事業者でも、役務が事業者向け電気通信利用役務の提供に当たれば、受けた事業者の特定課税仕入れになり、一般課税で課税売上割合が95%未満なら申告が必要です(Q&A問23)。
申告した金額は売上高の判定に含めない
リバースチャージで申告した特定課税仕入れの支払対価の額は、自社の売上ではありません。事業者免税点制度や簡易課税制度を使えるかどうかの判定に使う基準期間の課税売上高には含めません(Q&A問15)。
2割特例が終わった後に確認すること
- 2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間までです。個人事業者は令和8年分、法人はこの日を含む事業年度が最後です(2割特例はいつまで使えるか)。
- 個人事業者は、要件を満たせば令和9年分・令和10年分に3割特例を適用でき、その年分もリバースチャージの申告は不要です(3割特例の要件と計算)。
- 法人と、3割特例を適用しない個人事業者が課税事業者として申告する場合は、一般課税か簡易課税です。簡易課税ならリバースチャージの申告は不要で、一般課税で課税売上割合が95%未満になる課税期間は、申告が必要です。
- 2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間から簡易課税にする場合は、届出期限の特例があります(簡易課税に切り替える場合の届出期限)。
- 課税売上割合が95%以上の事業者は、2割特例が終わった後も、95%以上である限りリバースチャージの申告は必要ありません。
税額の計算と計算例
特定課税仕入れの課税標準は、支払った対価の額そのものです。国外事業者との間で消費税相当額の受払いはないため、通常の課税仕入れのように110分の100を掛けて税抜きにする必要はありません(Q&A問17)。控除する消費税額(国税)は、支払対価の額に100分の7.8を掛けて計算します(Q&A問18)。
計算例(一括比例配分方式、課税売上割合80%)
前提:一般課税の事業者が、国外事業者によるインターネット広告の配信に1,000,000円を支払った。その課税期間の課税売上割合は80%で、仕入税額控除は一括比例配分方式で計算する。ほかの取引は考えない(国税庁Q&A問5の計算イメージと同じ前提)。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 課税標準に加える額 | 支払対価の額そのもの | 1,000,000円 |
| ② 特定課税仕入れに係る消費税額(国税) | 1,000,000円 × 7.8/100 | 78,000円 |
| ③ 控除できる額(国税) | 78,000円 × 80% | 62,400円 |
| ④ 差引(国税) | ② − ③ | 15,600円 |
| ⑤ 地方消費税 | 15,600円 × 22/78 | 4,400円 |
| ⑥ この取引で増える納付税額 | ④ + ⑤ | 20,000円 |
⑥は、1,000,000円 × 10% × (1 − 80%)= 20,000円と同じです。課税売上割合が95%以上の課税期間や、簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間であれば、この取引の申告も控除もないため、納付税額は変わりません。
実際の申告では、特定課税仕入れの支払対価の額を課税資産の譲渡等の対価の額と合わせて課税標準額とし、千円未満を切り捨てます。差引税額と地方消費税額は百円未満を切り捨てます。上の表は、この取引だけを取り出した計算です。原則課税(一般課税)の計算の流れは原則課税(一般課税)の計算手順をご覧ください。
個別対応方式の場合
個別対応方式では、特定課税仕入れを、課税売上げにのみ要するもの、非課税売上げにのみ要するもの、共通して要するものに区分して控除額を計算します(消費税法30条2項1号)。同じ1,000,000円の広告でも、用途によって結果が変わります。
| 用途の区分 | 控除できる額(国税) | 増える納付税額(国税+地方) |
|---|---|---|
| 課税売上げにのみ要する | 78,000円 | 0円 |
| 非課税売上げにのみ要する | 0円 | 100,000円 |
| 共通して要する(課税売上割合80%) | 62,400円 | 20,000円 |
非課税売上げにのみ要する場合の100,000円は、国税78,000円と地方消費税22,000円(78,000円×22/78)の合計です。課税売上割合に準ずる割合の承認を受けている場合、共通して要するものは、その割合で控除額を計算します(Q&A問22)。
仕訳と会計処理(国税庁Q&Aの仕訳例)
国税庁のQ&A問43は、税抜経理方式の事業者が、事業者向け電気通信利用役務の提供(特定課税仕入れ)の対価10,000円(消費税等相当額は対価の10%で1,000円)を支払った場合の仕訳を、次の2つの例で示しています。
| 例 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 仕訳例1 | 特定課税仕入れ 10,000円 | 支払対価(現金) 10,000円 |
| 仕訳例2 | 特定課税仕入れ 10,000円 仮払金 1,000円 | 支払対価(現金) 10,000円 仮受金 1,000円 |
- 仕訳例1:特定課税仕入れでは、買手に申告・納税義務があるため、国外事業者との間で消費税等に相当する金銭の受払いはなく、対価の額と区分する消費税等の額はありません。そのため、支払った対価をそのまま計上します。税抜経理方式・税込経理方式のどちらでも同じです。
- 仕訳例2:税抜経理方式で伝票会計を行う事業者が、決算処理などの都合で、消費税等に相当する額を仮払金・仮受金などの仮勘定で経理する方法です。この場合、法人税の所得の計算では、仮受金・仮払金として経理した金額を仮受消費税等・仮払消費税等の額として扱います(平成元年3月1日付直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」5の2)。
本記事の計算例(インターネット広告1,000,000円)に当てはめると、次のとおりです。国税庁の仕訳例は借方を「特定課税仕入れ」と表示していますが、ここでは費用の内容が分かるように、勘定科目(広告宣伝費)と税区分(特定課税仕入れ)を分けて書いています。
| 方法 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 仕訳例1の方法 | 広告宣伝費 1,000,000円(税区分:特定課税仕入れ) | 普通預金 1,000,000円 |
| 仕訳例2の方法 | 広告宣伝費 1,000,000円(税区分:特定課税仕入れ) 仮払金 100,000円 | 普通預金 1,000,000円 仮受金 100,000円 |
会計ソフトの税区分と管理
- 一般課税で申告し、特定課税仕入れを行った課税期間の課税売上割合が95%未満のときは申告が必要になるため、特定課税仕入れの対価の額は、他の課税仕入れの対価の額と区分して管理する必要があります(Q&A問43)。
- 「対象外(不課税)」の区分で記帳すると、課税売上割合が95%未満になった課税期間に、申告に必要な金額の集計から漏れるおそれがあります。
- 課税売上割合は課税期間の取引をもとに計算するため、95%以上になる見込みの年でも、特定課税仕入れとして区分して記録しておくと集計しやすくなります。
- 税区分の名称は会計ソフトによって違います。各ソフトの案内で確認してください。
帳簿の記載事項と保存(インボイスは不要)
特定課税仕入れの仕入税額控除は、適格請求書(インボイス)などの保存がなくても、次の事項を書いた帳簿の保存だけで受けられます(消費税法30条7項・8項2号、Q&A問27)。
- 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
- 特定課税仕入れを行った年月日
- 特定課税仕入れの内容
- 特定課税仕入れに係る支払対価の額
- 特定課税仕入れに係るものである旨
5の「特定課税仕入れに係るものである旨」は、帳簿に「特定」と付記するなど、後から特定課税仕入れだと確認できる表示で差し支えありません(Q&A問27)。
| 年月日 | 相手方 | 内容 | 支払対価の額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年11月30日 | XYZ Ltd.(シンガポール) | インターネット広告の配信(11月分) | 1,000,000円 | 特定 |
帳簿は、閉鎖した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月(消費税の申告期限の延長の特例を受けている法人は3か月)を経過した日から7年間保存します(No.6625)。
申告書の書き方(付表1-3・付表2-3・第二表)
特定課税仕入れの金額を書く欄は、一般用の申告書にあります。各様式の注記のとおり、これらの欄は、課税売上割合が95%未満で、特定課税仕入れがある事業者だけが記載します。簡易課税・2割特例・3割特例で申告する場合は記載しません。
以下は、国税庁「消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方(法人用)」(令和7年11月作成。令和7年10月1日以後に終了する課税期間用)の設例に沿った説明です。設例では、特定課税仕入れ(課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの)が2,400,000円、課税売上割合が90.24…%で、個別対応方式を選んでいます。
| 様式 | 欄 | 書く内容 | 国税庁の設例 |
|---|---|---|---|
| 付表1-3 | ①-2 特定課税仕入れに係る支払対価の額 | 税率7.8%適用分(B欄)と合計(C欄)に、特定課税仕入れの支払対価の額を書きます。対価の返還等を直接減額して経理している場合は、減額後の金額です。 | 2,400,000円 |
| 付表1-3 | ① 課税標準額 | ①-1(課税資産の譲渡等の対価の額)と①-2の合計から、千円未満を切り捨てた額です。 | 280,873,400円+2,400,000円=283,273,400円→283,273,000円 |
| 付表1-3 | ② 消費税額 | 特定課税仕入れの支払対価の額は①に含まれるため、その7.8%分も②に含まれます。 | 2,400,000円×7.8/100=187,200円を加算(売上税額は積上げ計算) |
| 付表1-3 | ⑤-2 特定課税仕入れの返還等対価に係る税額 | 特定課税仕入れについて値引きなどを受け、直接減額していない場合に書きます。 | なし |
| 付表2-3 | ⑬ 特定課税仕入れに係る支払対価の額 | 支払対価の額から、特定課税仕入れに係る対価の返還等の金額を控除した後の金額です。 | 2,400,000円 |
| 付表2-3 | ⑭ 特定課税仕入れに係る消費税額 | (返還等を控除する前の支払対価の額×7.8/100)−(対価の返還等の金額×7.8/100)です。 | 2,400,000円×7.8/100=187,200円 |
| 付表2-3 | ⑰ 課税仕入れ等の税額の合計額 | ⑭を含めて合計します。 | 7.8%適用分に187,200円を含む |
| 付表2-3 | ⑲・⑳(個別対応方式) | 用途の区分に応じて、⑭の金額を振り分けます。 | 共通して要するものとして⑳に187,200円を含む |
| 第二表 | ⑨ 特定課税仕入れに係る支払対価の額の合計額(7.8%適用分) | 付表1-3の①-2 B欄を転記します。 | 2,400,000円 |
| 第二表 | ⑩ 同(⑧・⑨の合計) | 付表1-3の①-2 C欄を転記します。 | 2,400,000円 |
| 第二表 | ⑲ 特定課税仕入れの返還等対価に係る税額 | 付表1-3の⑤-2 C欄を転記します。 | なし |
- 付表2-3で課税売上割合を計算するときは、特定課税仕入れの金額を考えません。設例の課税売上割合は、295,873,400円÷327,873,400円=90.24…%です。
- 一括比例配分方式を選ぶ場合は、⑭を含む課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を掛けて、控除する税額を計算します。
- 第二表(課税標準額等の内訳書)は、「令和8年9月30日以前に開始した課税期間用」と「令和8年10月1日以後に開始する課税期間用」に分かれています。個人事業者の令和8年分は前者を使います(国税庁「消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」)。当会で2026年9月26日に両方の様式を確認したところ、⑨・⑩・⑲の欄の番号と名称は同じでした。
申告書全体の作り方は消費税申告書の書き方(原則課税)、電子申告の手順はe-Taxで消費税を申告する方法をご覧ください。
値引きや返金を受けたとき
- リバースチャージで申告した特定課税仕入れについて、値引きなどで対価の返還等を受けた場合は、付表1-3の⑤-2欄などで調整します(対価の返還等を直接減額して経理している場合を除く)。
- 課税売上割合95%以上・簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間に行った特定課税仕入れは、なかったものとされています。後の課税期間に対価の返還等を受けても、消費税法32条(仕入れに係る対価の返還等)や38条の2第1項(特定課税仕入れに係る対価の返還等)の規定は適用されません(Q&A問34)。
- 免税事業者だった課税期間の特定課税仕入れについて、課税事業者になってから返還等を受けた場合や、課税事業者のときに申告した特定課税仕入れについて、免税事業者になってから返還等を受けた場合も、これらの規定は適用されません(Q&A問35・問36)。
消費者向けの電気通信利用役務・インボイス制度との関係
消費者向けは国外事業者が申告・納税する
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、事業者向けに当たらないもの(消費者向け)は、原則どおり、提供した国外事業者が申告・納税します(国外事業者申告納税方式)。国外事業者にも事業者免税点制度が適用されます(Q&A問13)。令和7年4月1日以後、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向けの電気通信利用役務の提供で、国税庁長官の指定を受けた特定プラットフォーム事業者を介して対価を受け取るものは、その特定プラットフォーム事業者が申告・納税します(プラットフォーム課税、No.6568)。
買手の仕入税額控除の違い
| 項目 | 事業者向け電気通信利用役務の提供 | 消費者向け電気通信利用役務の提供 |
|---|---|---|
| 申告・納税する者 | 受けた事業者(一般課税で課税売上割合95%未満の課税期間に限る) | 提供した国外事業者(プラットフォーム課税の対象は特定プラットフォーム事業者) |
| 買手の控除に必要な書類 | 帳簿のみ(インボイスは不要) | 帳簿と、国外事業者(プラットフォーム課税の対象は特定プラットフォーム事業者)が交付する適格請求書等 |
| 相手が登録していない場合の経過措置(80%・70%・50%・30%) | 関係しない | 適用されない |
| 少額特例(税込1万円未満) | 関係しない | 適用を受けられる |
出典:Q&A問27・問29、国税庁リーフレット(国内事業者の皆さまへ、令和8年6月改訂)。
- 国外事業者から受けた消費者向けの電気通信利用役務の提供は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて一定割合を控除できる経過措置(2026年9月30日までは80%、2026年10月1日からは70%など)の対象になりません(Q&A問29)。経過措置の割合と期間は免税事業者等からの仕入れの経過措置(80%・70%・50%・30%)で説明しています。
- 少額特例は、基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者が、令和11年(2029年)9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存だけで控除を受けられる経過措置です(Q&A問29、国税庁「少額特例の概要」)。
インボイス制度全体の仕組みはインボイス制度の概要をご覧ください。
登録国外事業者制度の廃止(令和5年9月30日)
平成27年10月1日から令和5年9月30日までは、国外事業者から受けた消費者向けの電気通信利用役務の提供は、原則として仕入税額控除ができず、国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受けたものに限って控除できました(登録国外事業者制度)。この制度は令和5年9月30日で廃止され、インボイス制度に移行しました。令和5年9月1日に登録国外事業者で、登録の取消しを求める届出書を出していなかった者は、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされました。その場合、困難な事情があれば、令和6年3月31日までは5桁の登録番号の記載等もできました(No.6118)。
源泉徴収との違い(芸能・スポーツの報酬)
リバースチャージ方式は消費税の制度で、所得税の源泉徴収とは別の制度です。特定役務の提供の対価などを非居住者や外国法人に支払う場合は、両方を確認します。
- 非居住者や外国法人に、日本国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得を支払う者は、原則として、支払いの際に所得税及び復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税及び復興特別所得税)を源泉徴収します。法人税ではありません。
- 人的役務の提供事業の対価の税率は20.42%です。
- 租税条約により免除・軽減される場合があり、その適用を受けるには、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」などを支払者を経由して税務署長に提出します。
出典:国税庁 タックスアンサー No.2884(令和8年4月1日現在法令等)。どの所得に当たるかで扱いが変わるため、個別の判断は税務署や税理士に確認してください。
よくある質問
リバースチャージ方式の経過措置はいつまでですか。
「当分の間」とされていて、終わる時期は定められていません。令和8年6月改訂の国税庁Q&Aでも「当分の間」のままです。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問5〕
課税売上割合が95%以上なら、仕入税額控除だけ受けることはできますか。
できません。一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間は、特定課税仕入れはなかったものとされるため、申告をせず、仕入税額控除もしません。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問24、タックスアンサー No.6118〕
2割特例や3割特例で申告する場合、リバースチャージの申告は必要ですか。
必要ありません。2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間まで)や3割特例(個人事業者の令和9年分・令和10年分)を適用する課税期間は、簡易課税制度を適用する課税期間と同じく、特定課税仕入れはなかったものとされます。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問25、タックスアンサー No.6118〕
免税事業者が海外のネット広告を利用した場合、申告は必要ですか。
必要ありません。免税事業者は、特定課税仕入れについても納税義務が免除されています。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問26〕
請求書や規約に「リバースチャージの対象」という表示がない場合はどうなりますか。
表示の有無は納税義務の成立に影響しません。受けた役務が特定課税仕入れに当たり、自社が一般課税で課税売上割合95%未満の課税期間であれば、申告が必要です。国外事業者には表示の義務がありますが、表示がなくても買手の納税義務はなくなりません。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問21、消費税法62条〕
広告を配信した国外事業者が免税事業者でも、リバースチャージの対象ですか。
対象です。提供された役務が事業者向け電気通信利用役務の提供に当たれば、提供者が免税事業者でも、受けた事業者の特定課税仕入れになります。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問23〕
課税売上割合に準ずる割合の承認を受けていて、その割合が95%以上の場合も申告は不要ですか。
不要にはなりません。経過措置は課税売上割合で判定するため、課税売上割合が95%未満であれば申告が必要です。この場合、特定課税仕入れの仕入控除税額は、承認を受けた課税売上割合に準ずる割合で計算します。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問22〕
Webサイトから申し込んだ海外のクラウドサービス(SaaS)はリバースチャージの対象ですか。
誰でもWebサイトから申し込めて、事業者以外の申込みを事実上制限できないサービスは、「事業者向け」と掲載していても消費者向け電気通信利用役務の提供に当たり、リバースチャージの対象ではありません。国外事業者(プラットフォーム課税の対象は特定プラットフォーム事業者)が消費税を申告・納税します。買手の仕入税額控除の要件は「消費者向けの電気通信利用役務・インボイス制度との関係」をご覧ください。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問3-1・問19・問29〕
リバースチャージの取引に、インボイス(適格請求書)は必要ですか。
必要ありません。特定課税仕入れの仕入税額控除は、相手方の氏名又は名称、年月日、内容、支払対価の額、特定課税仕入れに係るものである旨を書いた帳簿の保存だけで受けられます。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問27、消費税法30条7項・8項〕
仕訳では仮払消費税や仮受消費税を使いますか。
国税庁Q&Aの仕訳例1では使いません。特定課税仕入れの対価として支払った額をそのまま計上し、税抜経理方式・税込経理方式のどちらでも同じです。伝票会計などで仮払金・仮受金を使う方法(仕訳例2)もあり、その場合、法人税の計算では仮払消費税等・仮受消費税等として扱います。〔国税庁 国境を越えた役務の提供Q&A 問43〕
海外の音楽家やスポーツ選手に報酬を払う場合、源泉徴収も必要ですか。
消費税のリバースチャージとは別に、所得税の源泉徴収が必要になる場合があります。非居住者や外国法人に支払う人的役務の提供事業の対価は、原則として20.42%の税率で源泉徴収します(租税条約により免除・軽減される場合があります)。〔国税庁 タックスアンサー No.2884〕
相談先
- 一般的な質問は、国税庁のタックスアンサーや電話相談センターで確認できます。具体的な書類や事実関係を確認する必要がある相談は、所轄の税務署で面接相談を受けられます。面接相談は、電話で事前に予約します(国税庁リーフレット)。新宿で使える窓口は新宿の無料の税務相談窓口にまとめています。
- 2026年10月1日から、全国の税務署で総合窓口の受付時間が原則9時から15時までになります。新宿間税会は、新宿税務署長からの周知依頼を受けて会員に案内しています(税務署の総合窓口の受付時間の変更(2026年10月から))。
- 取引ごとの判定や申告書の作成は、税理士に相談することもできます。
まとめ
- リバースチャージ方式の対象は、国外事業者から受ける事業者向け電気通信利用役務の提供(インターネット広告の配信など)と特定役務の提供(国外の芸能人・スポーツ選手など)です。
- 申告が必要なのは、一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけです。95%以上・簡易課税・2割特例・3割特例の課税期間は、特定課税仕入れがなかったものとされ、申告も仕入税額控除もしません。免税事業者も申告不要です。
- 課税標準は支払った対価の額そのもので、国税の消費税額はその7.8%です。仕入税額控除は、個別対応方式または一括比例配分方式で計算します。
- 仕入税額控除に必要なのは、特定課税仕入れである旨などを書いた帳簿の保存だけです。特定課税仕入れは、ほかの課税仕入れと区分して記録します。
- 2割特例の終了後に一般課税で申告し、課税売上割合が95%未満になる事業者は、リバースチャージの申告が必要になります。
出典・参考資料
いずれも2026年9月26日に内容を確認しました(AWSの案内は2026年9月25日に確認)。本記事は2026年9月26日時点の法令等に基づいています。
国税庁 国境を越えた役務の提供
- タックスアンサー No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係(令和8年4月1日現在法令等)
- 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A(平成27年5月、令和8年6月改訂、PDF)
- 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について(国内事業者の皆さまへ、令和6年7月、令和8年6月改訂、PDF)
- 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について(資料一覧)
- 国外事業者が行う芸能・スポーツ等に係る消費税の課税方式の見直しについて(平成27年5月、PDF)
- 質疑応答事例「リバースチャージ方式による申告を要する者」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)
- タックスアンサー No.6568 プラットフォーム課税
国税庁 申告書・課税売上割合・帳簿
- 法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方(令和7年11月、PDF)
- 消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等
- タックスアンサー No.6405 課税売上割合の計算方法、No.6201 非課税となる取引、No.6625 適格請求書等の記載事項(保存期間)
- インボイス制度 令和8年度税制改正特集、少額特例の概要
- タックスアンサー No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率(令和8年4月1日現在法令等)
財務省・法令
- 財務省 第221回国会における財務省関連法律(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号)
- 消費税法(2条・4条・5条・9条・28条・30条・45条・62条)
事業者の公表資料(契約の相手方の確認)
改訂履歴と監修について
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2025年7月14日:公開
- 2026年9月25日:誤記を訂正(導入前の課税関係、対象取引の例示、2割特例・3割特例の課税期間と免税事業者の扱い、税額の計算、仕訳と税区分、源泉徴収の税目、インボイス制度との関係)
- 2026年9月26日:全面改訂(令和8年度税制改正への対応。用語の表、対象になる取引・ならない取引の早見表、申告が必要な事業者の表、計算例、国税庁Q&Aに沿った仕訳、帳簿の記載例、申告書の欄、消費者向けとの比較、よくある質問を追加。図をHTMLの表に置き換え)
監修の状況は、冒頭の「監修について」のとおりです。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。