IT・Web制作業の消費税:海外サービスのリバースチャージ、海外顧客への輸出免税、課税売上割合

IT・Web制作業の消費税で判断が分かれやすいのは、海外のサービスへの支払いと、海外の顧客への売上です。海外のSaaSやネット広告は、まず請求元を確認します。日本の法人が日本の消費税を上乗せして請求していれば、国内の通常の仕入れです。リバースチャージ方式で申告するのは、国外事業者から広告配信などの「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受け、かつ一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけです。海外の顧客への売上は、日本で行うWeb制作なら輸出免税(課税売上割合の分子と分母に入る)、SaaSなどのインターネット経由のサービスなら国外取引(不課税で、課税売上割合に入れない)です。

IT・Web制作業でよくある取引の扱い【確定】

取引消費税の扱い
国内の顧客へのWeb制作・システム開発・保守課税(10%)
海外の顧客(非居住者)から受注し、日本で行うWeb制作・システム開発輸出免税。課税売上割合の分子と分母に入れる。契約書などの保存が必要
国外に住所・本店がある顧客へのSaaS・アプリ・電子書籍の提供国外取引(不課税)。課税売上割合に入れない
海外系のクラウド・広告で、日本の法人が日本の消費税を上乗せして請求するもの国内の課税仕入れ。インボイスと帳簿の保存で控除
国外事業者から受けるネット広告の配信、アプリの販売場所の提供など(事業者向け)リバースチャージ。申告するのは一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけ
国外事業者のSaaSで、Webで誰でも申し込めるもの(消費者向け)国外事業者が申告・納税。控除には国外事業者の適格請求書が必要
国外の開発会社などに委託し、国外で行われる開発国外取引(不課税)。リバースチャージの対象外で、仕入税額控除の対象にもならない

根拠は国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂)、タックスアンサー No.6405・No.6551・No.6567などです。判定の詳細は各節で説明します。

【確定】2026年10月1日からの変更(令和8年度税制改正)

インボイス発行事業者でない外注先(免税事業者など)からの仕入れで控除できる割合が、80%から70%に下がります。サービスの提供を受けた場合は、提供が完了した日で判定します。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり、要件を満たす個人事業者は2027年分・2028年分に3割特例を使えます。リバースチャージ方式で申告が必要な課税期間(一般課税で課税売上割合95%未満)は国税庁のQ&A(令和8年6月改訂)でも従来どおりで、3割特例を使う課税期間も申告は不要とされています。国外事業者から受ける消費者向けのサービスには、80%・70%などの控除の経過措置は使えません。

目次
  1. 「電気通信利用役務の提供」に当たるかを最初に確認する
  2. 海外のSaaS・広告への支払いとリバースチャージの範囲
  3. 国外事業者の消費者向けサービスとインボイス
  4. 海外の顧客への売上:輸出免税か国外取引か
  5. 課税売上割合の正しい計算
  6. 簡易課税の事業区分と、2割特例・3割特例
  7. フリーランス・外注先への支払い(インボイスと経過措置)
  8. よくある質問
  9. 出典・参考資料
  10. 改訂履歴

「電気通信利用役務の提供」に当たるかを最初に確認する

インターネットを通じたサービスは、消費税法の「電気通信利用役務の提供」に当たるかどうかで、国内取引かどうかの判定方法が変わります(消費税法2条1項8号の3、4条3項)。売る側でも買う側でも、最初に確認する点です。

当たるもの・当たらないもの

当たるもの(国税庁が挙げている例)

  • 電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどのアプリを含む)の配信
  • クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • クラウド上でデータを保存する場所を提供するサービス
  • インターネット広告の配信・掲載
  • ショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金など)
  • ゲームソフトなどを販売する場所をインターネット上で利用させるサービス
  • 宿泊・飲食店の予約サイト(宿泊施設や飲食店から受け取る掲載料など)
  • インターネットを介して行う英会話教室

当たらないもの(国税庁が挙げている例)

  • 電話・FAX・インターネット回線の利用など、情報の伝達を単に媒介するもの(通信)
  • ソフトウエアの制作など
  • 国外にある資産の管理・運用(ネットバンキングを含む)
  • 依頼を受けて行う情報の収集・分析
  • 国外の法務専門家などが行う国外での訴訟の遂行
  • 著作権の譲渡・貸付け

出典は国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂、PDF)の問2-1です(以下「国境を越えた役務のQ&A」)。

国税庁は、ソフトウエアの制作などは、成果物の受け渡しや制作の指示をインターネットで行っても、インターネットは制作に付随して使われているだけなので、電気通信利用役務の提供に当たらないとしています(問2-1)。Web制作やシステムの受託開発で成果物をインターネットで納品する場合も、同じ考え方で判断すると考えられます。その場合は、役務の提供が行われた場所で国内取引かどうかを判定するので(消費税法4条3項2号)、日本で制作すれば国内取引です。

国内取引かどうかは、受ける側の住所・本店で決まる

電気通信利用役務の提供は、提供する側がどこにいるかではなく、受ける側の住所・居所(個人)、または本店・主たる事務所の所在地(法人)が国内にあるかどうかで判定します(消費税法4条3項3号)。

サービスを受ける相手判定
国外に住所がある個人国外取引(不課税)
国内に住所・居所がない旅行者(日本に滞在中)国外取引(不課税)
日本に本店がある法人の海外支店国内取引(課税)
外国に本店がある法人の日本支店国外取引(不課税)

表の根拠は国境を越えた役務のQ&A 問10〜問12です。相手の住所が国内かどうかは、提供する事業者が、申込み時の住所とクレジットカードの発行国の情報を照らし合わせるなど、客観的で合理的な方法で判定します(問9、消費税法基本通達5-7-15の2)。

「事業者向け」と「消費者向け」の区別(国外事業者から受ける場合)

国外事業者(非居住者である個人事業者と外国法人。日本に支店がある外国法人も含みます。問6)が行う電気通信利用役務の提供は、「事業者向け」とそれ以外(ここでは国税庁のQ&Aにならい「消費者向け」といいます)に分かれ、消費税を納める人が違います。

区分例消費税を納める人
事業者向け役務の性質から事業者向けのもの:インターネット広告の配信、ゲームやソフトウエアの販売場所の提供など。取引条件から事業者向けのもの:個別に交渉して当事者間で固有の契約を結び、事業者が事業に使うことが契約で明らかなクラウドサービスなどサービスを受けた国内の事業者(リバースチャージ方式)
消費者向けWebで誰でも申し込めるクラウドサービス、ソフトウエアや電子書籍の配信など。Webサイトに「事業者向け」と書いてあっても、消費者などの申込みを事実上制限できないものも消費者向け国外事業者(2025年4月1日以後、特定プラットフォーム事業者を通じて対価を受け取るものは、その特定プラットフォーム事業者)

根拠は国境を越えた役務のQ&A 問3-1・問4・問19、国税庁 タックスアンサー No.6568(プラットフォーム課税)です。

海外のSaaS・広告への支払いとリバースチャージの範囲

まず請求元を確認する

海外の会社が提供するサービスでも、日本の法人が契約の相手となり、日本の消費税を上乗せして請求しているものは、国内の通常の課税仕入れです。リバースチャージ方式の対象ではなく、その法人が交付するインボイス(適格請求書)と帳簿を保存して控除します。各社の公表資料では、次のようにされています(2026年9月に確認)。

  • AWS:2022年2月1日から、日本国内のアカウントについて、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が契約の相手となり、日本の消費税を含む請求書を発行するとしています。AWS Marketplaceの一部の製品などは、引き続き米国のAmazon Web Services, Inc.が請求するとしています(AWS よくある質問)。
  • Google広告:会社の住所が日本にあるアカウントは、グーグル合同会社が月別明細書を発行し、10%の消費税がかかるとしています(Google 広告ヘルプ「各国における税金」)。

契約の相手は変わることがあります。社名で判断せず、最新の請求書や契約で、請求元が日本の法人か国外の法人か、日本の消費税と登録番号が書かれているかを確認してください。

リバースチャージの申告が必要な課税期間

国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供と、国外事業者である俳優・音楽家などの芸能人や職業運動家が事業者に対して行う役務の提供(特定役務の提供)を「特定課税仕入れ」といいます。特定課税仕入れは、サービスを受けた国内の事業者が、支払った金額を課税標準として申告・納税します。ただし当分の間、申告が必要なのは次の表の1行目の課税期間だけです。

自社の課税期間リバースチャージの申告その分の仕入税額控除
一般課税で、課税売上割合が95%未満必要できる(個別対応方式または一括比例配分方式で計算)
一般課税で、課税売上割合が95%以上不要(特定課税仕入れはなかったものとされる)できない
簡易課税不要考慮しない
2割特例(2026年9月30日を含む課税期間まで)不要考慮しない
3割特例(個人事業者の2027年分・2028年分)不要考慮しない
免税事業者不要(納税義務がない)―

根拠は国境を越えた役務のQ&A 問5・問24・問25・問26、国税庁 タックスアンサー No.6118です。

間違えやすい点

  • 国外事業者が「リバースチャージ方式の対象です」と表示していなくても、該当する取引であれば、サービスを受けた側に納税義務があります(問21)。表示は国外事業者の義務です(消費税法62条、問20)。
  • 相手が国外の免税事業者でも、事業者向け電気通信利用役務の提供であれば対象です(問23)。
  • 「課税売上割合に準ずる割合」の承認を受けていて、その割合が95%以上でも、課税売上割合が95%未満であれば申告が必要です(問22)。
  • 95%以上かどうかは課税期間ごとに決まり、期末まで確定しません。一般課税の事業者は、特定課税仕入れの金額を他の課税仕入れと区分して管理しておく必要があります(問43)。
  • 国内の事業者が国外の事業所で受け、国外で行う取引にだけ使うものは国外取引で、リバースチャージ方式の対象外です(問5、消費税法4条4項ただし書)。
  • 特定課税仕入れの金額は、課税売上割合の計算に入れません(問28)。

リバースチャージ方式の対象にならない海外への支払い

  • 国外の開発会社やフリーランスにソフトウエアの制作を委託し、作業が国外で行われるもの:制作は電気通信利用役務の提供に当たらないため(問2-1)、役務の提供が行われた場所で判定し、国外取引になります(消費税法4条3項2号)。課税仕入れに当たらないため、仕入税額控除の対象にもなりません。
  • 国外事業者から、ソフトウエアを日本で販売する権利など、著作権の利用の許諾を受ける取引:著作権の貸付けとして、許諾する側の住所などで判定し、国外取引になります(問2-2、消費税法施行令6条1項7号)。その権利を使って日本の利用者にインターネットで配信する売上は、国内取引として課税されます。
  • Webで誰でも申し込める国外事業者のSaaSなど(消費者向け):次の節のとおり、国外事業者が申告・納税します。

計算例:課税売上割合が95%未満の課税期間

IT・Web制作業では非課税売上が生じにくいのが実際のところですが、社有の不動産を売却した課税期間など、大きな非課税取引があると課税売上割合が95%を下回ることがあります。当会の計算例(架空の設例)です。一般課税の株式会社が、社有地を売却した課税期間の例です。国内外のWeb制作の売上(輸出免税を含む)が税抜45,000,000円、土地の譲渡(非課税)が5,000,000円で、課税売上割合は90%(45,000,000 ÷ 50,000,000)です。この課税期間に、国外事業者に広告配信の料金1,000,000円を支払いました。ほかの取引と、申告のときの端数処理は考えない単純化した例です。

手順計算金額
① 課税標準に加える額支払った金額そのまま(110分の100をかけない)1,000,000円
② 特定課税仕入れに係る消費税額(国)1,000,000 × 7.8%78,000円
③ 控除できる額(一括比例配分方式)78,000 × 90%70,200円
④ 差引(国)78,000 − 70,2007,800円
⑤ 地方消費税7,800 × 22/782,200円
⑥ 納める額の増加分7,800 + 2,20010,000円

個別対応方式で、この広告がWeb制作(課税売上)のためだけのものであれば、78,000円の全額を控除でき、納める額は増えません。課税売上と非課税売上に共通するものであれば、控除できる額は一括比例配分方式と同じ70,200円です。課税標準と税額の計算は国境を越えた役務のQ&A 問5・問17・問18、控除の方式はタックスアンサー No.6401によります。仕訳(税抜経理でも税込経理でも、支払った金額だけを計上します。問43)と申告書の書き方は、リバースチャージ方式の解説で説明しています。

帳簿に書くこと(インボイスは不要)

特定課税仕入れの仕入税額控除は、インボイスがなくても、次の事項を書いた帳簿を保存すれば受けられます(消費税法30条7項・8項、問27)。

  1. 相手方の氏名または名称
  2. 特定課税仕入れを行った年月日
  3. 特定課税仕入れの内容
  4. 支払った対価の額
  5. 特定課税仕入れに係るものである旨(帳簿に「特定」と付記する程度でかまいません)

国外事業者の消費者向けサービスとインボイス

Webで申し込む海外のSaaSなど、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供は、国外事業者が日本の消費税を申告・納税します。受けた側のリバースチャージは不要です。仕入税額控除を受けるには、通常の仕入れと同じく、帳簿と、その国外事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存が必要です(国境を越えた役務のQ&A 問29)。

  • 適格請求書発行事業者でない国外事業者から受けたものには、国内の免税事業者からの仕入れと違い、80%・70%・50%・30%を控除できる経過措置は使えません(問29)。
  • 基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者が、2029年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れは、少額特例により帳簿の保存だけで控除できます。国外事業者から受けた消費者向けのサービスにも使えます(問29、国税庁 少額特例の概要)。
  • 2025年4月1日以後、国税庁長官の指定を受けた特定プラットフォーム事業者(アプリストアなど)を通じて国外事業者から購入したアプリなどは、その特定プラットフォーム事業者が申告・納税します。控除には、その特定プラットフォーム事業者が交付する適格請求書を保存します(問1・問29、タックスアンサー No.6568)。
  • 以前の登録国外事業者制度は2023年9月30日で廃止され、インボイス制度に移りました(問1)。

アプリなどを販売する側の場合

国内の事業者が、アプリストアなどのデジタルプラットフォームを通じて消費者向けのサービスを提供する場合は、プラットフォーム課税の対象ではなく、提供する事業者自身が申告・納税します(タックスアンサー No.6568)。国外に住所がある利用者への提供は国外取引です(問10)。ストアの運営者が国外事業者である場合、販売場所の提供の対価として支払う手数料は、事業者向け電気通信利用役務の提供に当たります(問3-1)。一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間は、リバースチャージ方式の申告が必要です。

海外の顧客への売上:輸出免税か国外取引か

海外の顧客への売上は、何を提供するかで扱いが分かれます。どちらも日本の消費税はかかりませんが、課税売上割合の計算での扱いが違います。

取引扱い課税売上割合
日本で行うWeb制作・システム開発・デザインなどを、非居住者に提供する輸出免税分子と分母に入れる
SaaS・アプリ・電子書籍などを、国外に住所・本店がある顧客に提供する国外取引(不課税)入れない
国外事業者の代理店として、日本の顧客との契約の代行などを行い、国外事業者から手数料を受け取る輸出免税分子と分母に入れる

根拠は、1行目が消費税法7条1項5号と消費税法施行令17条2項7号、2行目が消費税法4条3項3号と国境を越えた役務のQ&A 問10、3行目が同Q&A 問3-2(契約書などの保存が必要)です。課税売上割合での扱いはタックスアンサー No.6405によります。

輸出免税にならない役務

非居住者に対する役務の提供は、一般的には輸出免税になります。ただし、次のものは免税になりません(消費税法施行令17条2項7号、消費税法基本通達7-2-16、タックスアンサー No.6567)。

  • 国内にある資産の運送や保管
  • 国内での飲食や宿泊
  • これらに準ずるもので、国内で直接便益を受けるもの(国税庁は、非課税とされていない日本語学校等における語学教育などを例に挙げています)
  • 国内にある不動産の売買・交換・貸借の代理や媒介(2026年10月1日以後に行うもの。2026年3月31日までに結んだ契約に基づくものは、改正前の規定で輸出免税)

一方、国内で行ったサービスでも、効果が国内で終わらず帰国後も続くもの(国税庁の例:非居住者の腕時計の修理、弁護士などが行う法律相談)は免税です(タックスアンサー No.6567)。

「非居住者」の範囲と、日本に支店がある外国法人

ここでいう非居住者は、外国為替及び外国貿易法の非居住者で、日本に住所・居所がない個人と、日本に主たる事務所がない法人です。ただし、外国法人の日本の支店・出張所などは居住者とみなされます(タックスアンサー No.6551)。

そのため、日本に支店などがある外国法人への役務の提供は、原則としてその支店などを経由したものとされ、輸出免税になりません。ただし、次の両方を満たす場合は、輸出免税として扱ってよいとされています(消費税法基本通達7-2-17、国税庁 質疑応答事例「国内に営業所を有する非居住者に対する役務の提供」)。

  1. 外国法人の国外の本店などとの直接の取引で、日本の支店などが、その役務の提供に直接にも間接にもかかわっていないこと
  2. 日本の支店などの業務が、その役務の提供に係る業務と同種、または関連する業務でないこと

SaaSなどの電気通信利用役務の提供は判定の方法が違います。外国に本店がある法人の日本支店への提供は国外取引(不課税)、日本に本店がある法人の海外支店への提供は国内取引(課税)です(問12)。

輸出免税に必要な書類

非居住者に対する役務の提供で輸出免税を受けるには、相手との契約書その他の書類で、次の事項が書かれたものを保存します(消費税法7条2項、消費税法施行規則5条1項4号)。保存期間は、その取引を行った課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。書類は電子データ(電磁的記録)でもかまいません(同5条4項、タックスアンサー No.6551)。

  1. 自社の氏名または名称と、その取引に係る住所等
  2. 取引を行った年月日
  3. 役務の内容
  4. 対価の額
  5. 相手の氏名または名称と、その取引に係る住所等

輸出免税の売上には消費税がかからないため、請求額に消費税を上乗せしません。

仕入税額控除と、簡易課税を選んでいる場合

輸出免税の売上のための課税仕入れ(外注費、ツールの利用料など)も、仕入税額控除の対象です(タックスアンサー No.6551)。国外取引(不課税)の売上のための課税仕入れも控除の対象で、個別対応方式では「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分します(消費税法基本通達11-2-11)。

一方、簡易課税は、売上税額にみなし仕入率をかけて控除額を出すため(消費税法37条)、消費税がかからない輸出免税の売上からは控除額が生まれません。海外の売上が多い事業者では、一般課税と簡易課税で納める額の差が大きくなることがあります。

当会の計算例(架空の設例)です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の株式会社で、国内の売上が税抜25,000,000円、海外の顧客(非居住者)へのWeb制作の売上(輸出免税)が10,000,000円、課税仕入れ等が税込22,000,000円(すべて10%で、全額を控除できるもの)の場合です。課税売上割合は100%です。

項目一般課税簡易課税(第5種)
売上税額(国)25,000,000 × 7.8% = 1,950,00025,000,000 × 7.8% = 1,950,000
控除額(国)22,000,000 × 7.8/110 = 1,560,0001,950,000 × 50% = 975,000
差引税額(国)390,000975,000
地方消費税(× 22/78)110,000275,000
納付額500,0001,250,000

単位は円です。輸出免税の10,000,000円は、一般課税では課税売上割合を通じて控除に反映されますが、簡易課税の控除額には影響しません。この例では簡易課税のほうが750,000円多くなります。

課税仕入れが売上税額を上回る課税期間は、一般課税なら還付になることがありますが、簡易課税では還付を受けられません。簡易課税は、使いたい課税期間の初日の前日までに届出が必要で、原則として2年間はやめられません(タックスアンサー No.6505)。海外の売上の見通しも含めて選ぶ必要があります。輸出免税の制度全体は輸出入と消費税で説明しています。

課税売上割合の正しい計算

課税売上割合は、一般課税で仕入税額を全額控除できるかどうかと、リバースチャージ方式の申告が必要かどうかを決める割合です。課税期間ごとに、税抜の金額で計算します(タックスアンサー No.6405)。

課税売上割合 = 課税売上高(税抜・輸出免税を含む) ÷ 総売上高(税抜)
売上などの種類分子(課税売上高)分母(総売上高)
国内の課税売上(国内の顧客へのWeb制作やSaaSの提供など)入れる入れる
輸出免税の売上(非居住者へのWeb制作など)入れる入れる
非課税の売上(預金や貸付金の利子、住宅の貸付け、土地の譲渡など)入れない入れる
有価証券や金銭債権などの譲渡(一部を除く)入れない譲渡対価の5%だけ入れる
国外取引(国外の顧客へのSaaSやアプリの提供など)入れない入れない
特定課税仕入れ(リバースチャージの対象の支払い)入れない入れない
売上の返品・値引き・割戻し差し引く差し引く
貸倒れになった売上含めたまま含めたまま

根拠はタックスアンサー No.6405、No.6201(非課税となる取引)、国境を越えた役務のQ&A 問28、消費税法施行令48条です。

計算例:国外取引と輸出免税の扱いで結果が変わる

当会の計算例(架空の設例)です。一般課税の株式会社で、課税期間の売上(税抜)が次のとおりの場合です。

売上区分金額
国内の顧客へのWeb制作・システム開発課税40,000,000円
海外の顧客(非居住者)から受注したWeb制作輸出免税10,000,000円
海外に住む利用者へのSaaSの提供国外取引(不課税)6,000,000円
預金の利子非課税20,000円
計算の仕方式課税売上割合
正しい計算50,000,000 ÷ 50,020,00099.96%
誤り:国外取引のSaaSを分母に入れた50,000,000 ÷ 56,020,00089.25%
誤り:輸出免税の売上を分子から外した40,000,000 ÷ 50,020,00079.96%

割合は小数点以下第3位を切り捨てて表示しています。

正しく計算すると95%以上で、課税売上高も5億円以下なので、仕入税額を全額控除できます。この課税期間は、国外事業者の広告配信などを受けていてもリバースチャージ方式の申告はしません。誤った計算では95%未満となり、必要のない按分や、必要のないリバースチャージ方式の申告をすることになります。

95%と5億円の判定

課税期間の課税売上高が5億円以下(課税期間が1年に満たない場合は年換算)で、かつ課税売上割合が95%以上であれば、仕入税額を全額控除します。どちらかを満たさない場合は、個別対応方式か一括比例配分方式で控除額を計算します。一括比例配分方式を選ぶと、2年間は続けて適用します。「課税売上割合に準ずる割合」の承認を受けていても、95%以上かどうかは本来の課税売上割合で判定します(タックスアンサー No.6401)。申告で納める税額を出す手順全体は、消費税の計算方法(原則課税の手順)で説明しています。

簡易課税の事業区分と、2割特例・3割特例

IT・Web制作業の事業区分

簡易課税の事業区分は、おおむね日本標準産業分類を基に、取引ごとに判定します。国税庁は、IT・Web制作業に関係する業種を次のように示しています。

事業事業区分(みなし仕入率)
ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業第5種(50%)。ソフトウエアの設計を外注先に依頼して設計させ、顧客に納品する事業も第5種
インターネット附随サービス業第5種(50%)
デザイン業、広告業第5種(50%)
新聞業、出版業、広告制作業第3種(70%)
仕入れたパソコンなどを、形を変えずに販売する事業者への販売は第1種(90%)、それ以外は第2種(80%)
自社で使っていた固定資産の売却第4種(60%)

根拠はタックスアンサー No.6509、国税庁 質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分(G情報通信業ほか)」「同(L学術研究、専門・技術サービス業ほか)」です。国税庁は、これらの表は目安で、例示のない取引は個別に判定する必要があるとしています。事業区分の考え方と届出は簡易課税制度の事業区分で説明しています。

2割特例の終了と3割特例

【確定】2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間まで使えます。個人事業者は2026年分、12月決算の法人は2026年12月期、3月決算の法人は2027年3月期が最後です(2割特例はいつまで)。その後、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者は、要件を満たせば2027年分と2028年分に3割特例を使えます。法人は使えません。

第5種の簡易課税では売上税額の50%を納めるのに対し、3割特例では30%なので、3割特例のほうが納める額は少なくなります。業種ごとの比較は3割特例の業種別の比較表にまとめています。2割特例・3割特例を使った課税期間の次の課税期間から簡易課税に移る場合は、その課税期間の確定申告期限までに届出書を出せばよい特例があります(次の課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合。タックスアンサー No.6505)。

当会の計算例(架空の設例)です。海外との取引がなく、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の第5種(ソフトウエア業など)の事業者で、課税期間の売上(税抜)が8,000,000円の場合、制度ごとに納める消費税額は次のとおりです(100円未満切り捨て)。

税抜売上高8,000,000円(国内取引のみ)の場合当会の計算例
制度国税地方消費税納める額の合計
簡易課税(第5種、みなし仕入率50%)8,000,000×7.8%×50%=312,000円312,000×22/78=88,000円400,000円
2割特例8,000,000×7.8%×20%=124,800円124,800×22/78=35,200円160,000円
3割特例8,000,000×7.8%×30%=187,200円187,200×22/78=52,800円240,000円

みなし仕入率・2割・3割のいずれも売上高だけで納める額が決まり、課税仕入れの金額は関係しません。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで、3割特例はインボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者の2027年分・2028年分に限られます(前述)。海外の顧客への売上がある場合の一般課税との比較は前述の計算例のとおりです。

簡易課税・2割特例・3割特例のどれを使う課税期間も、リバースチャージ方式の申告は不要です(申告が必要な課税期間)。

フリーランス・外注先への支払い(インボイスと経過措置)

インボイス発行事業者でない外注先(免税事業者など)への外注費は、インボイスがないため本来は仕入税額控除ができませんが、経過措置により一部を控除できます。割合は仕入れた日で決まり、デザインや開発などの役務は、提供が完了した日で判定します。9月に始まって10月1日以後に完了した制作は、全体が70%です(インボイスQ&A 問113-3)。

インボイスのない外注費 税込1,100,000円(10%)の場合当会の計算例
提供が完了した日控除できる割合国の消費税分国と地方の合計の目安
2026年9月30日まで80%62,400円80,000円
2026年10月1日〜2028年9月30日70%54,600円70,000円
2028年10月1日〜2030年9月30日50%39,000円50,000円
2030年10月1日〜2031年9月30日30%23,400円30,000円
2031年10月1日以後0%0円0円

国の消費税分は 1,100,000 × 7.8/110 × 割合、目安は 1,100,000 × 10/110 × 割合で計算しています(インボイスQ&A 問130)。

  • 控除を受けるには、区分記載請求書と同様の事項が書かれた請求書等と、経過措置の適用を受ける旨を書いた帳簿の保存が必要です。
  • 同じ仕入先からの仕入れが年1億円を超える部分には、経過措置を使えません(2026年10月1日以後に開始する課税期間から。それまでは10億円)。
  • 国外事業者から受ける消費者向けのサービスには、この経過措置は使えません(前述)。

割合の根拠、10月をまたぐ請求書の分け方、帳簿の書き方は、インボイスがない仕入れの経過措置(70%控除と1億円上限)で詳しく説明しています。

給与に当たる支払いは課税仕入れではない

外注費として処理していても、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づいて、給与等を対価として労務を提供してもらうものは、課税仕入れになりません(タックスアンサー No.6451、消費税法基本通達11-1-2)。

外注先との取引条件を見直すとき

免税事業者である外注先との取引条件を、インボイス制度を踏まえて見直すこと自体は、直ちに問題になるものではありません。ただし、再交渉が形式的なもので、買い手の都合だけで、免税事業者が仕入れのときに支払っていた消費税額も払えないような著しく低い価格を設定すると、独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題になります。取引が取適法(2026年1月1日に下請法から改正・改称)の対象となる情報成果物作成委託などに当たる場合は、取適法の規制も受けます(公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」Q7、公正取引委員会 取適法)。

よくある質問

AWSやGoogle広告の利用料は、リバースチャージの対象ですか?

日本の法人が契約の相手となり、日本の消費税を上乗せして請求しているものは、国内の通常の課税仕入れで、リバースチャージの対象ではありません。各社の公表資料では、AWSは2022年2月1日から日本国内のアカウントについてアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が契約の相手となり(AWS Marketplaceの一部の製品などを除く)、Google広告は会社の住所が日本にあるアカウントについてグーグル合同会社が10%の消費税を含めて請求するとしています(2026年9月に確認)。契約の相手は変わることがあるため、最新の請求書で請求元と登録番号を確認してください。〔AWS よくある質問、Google 広告ヘルプ「各国における税金」〕

海外のSaaSを使っています。リバースチャージの申告は必要ですか?

Webで誰でも申し込めるSaaSは、「事業者向け」と表示していても、消費者などの申込みを事実上制限できなければ消費者向け電気通信利用役務の提供に当たり、国外事業者が日本の消費税を申告・納税します。自社のリバースチャージは不要で、仕入税額控除には国外事業者が交付する適格請求書の保存が必要です。個別に交渉して固有の契約を結び、事業者が事業に使うことが明らかなものは事業者向けに当たり、一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけリバースチャージの申告が必要です。〔国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A 問3-1・問5・問29〕

課税売上割合が95%以上なら、リバースチャージの分は何もしなくてよいですか?

その課税期間の特定課税仕入れはなかったものとされ、申告も仕入税額控除もしません。ただし、95%以上かどうかは課税期間が終わるまで確定しないため、特定課税仕入れの金額は他の課税仕入れと区分して管理しておく必要があります。簡易課税・2割特例・3割特例を使う課税期間も、申告は不要です。〔国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A 問5・問24・問25・問43〕

海外の会社から受注したWeb制作は、輸出免税ですか? 不課税ですか?

日本で行うWeb制作は、成果物をインターネットで納品しても、ソフトウエアの制作などと同じく電気通信利用役務の提供には当たらないと考えられ、国内取引です。相手が非居住者(日本に支店などがない外国法人など)であれば輸出免税で、契約書などの保存が必要です。相手が日本に支店などを持つ外国法人の場合は、国外の本店との直接の取引で日本の支店が関与していないなどの要件を満たさない限り、輸出免税になりません。〔国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A 問2-1、タックスアンサー No.6567、消費税法基本通達7-2-17〕

海外の利用者に提供しているSaaSの売上は、課税売上割合に入れますか?

入れません。SaaSなどの電気通信利用役務の提供は、受ける側の住所や本店が国外にあれば国外取引(不課税)で、課税売上割合の分子にも分母にも入りません。日本で行ったWeb制作を非居住者に提供した輸出免税の売上は、分子と分母の両方に入ります。〔タックスアンサー No.6405、国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A 問10〕

輸出免税にするには、どんな書類が必要ですか?

非居住者に対する役務の提供では、相手との契約書その他の書類で、自社の名称と住所等、取引の年月日、役務の内容、対価の額、相手の名称と住所等が書かれたものを、7年間保存します。電子データでもかまいません。〔消費税法施行規則5条、タックスアンサー No.6551〕

月額のサービス料金は、毎月インボイスを出さなければいけませんか?

適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできます。また、記載事項の一部を書いた契約書と、取引の事実を示す書類(通帳の記録や振込金受取書など)をあわせて保存して要件を満たす方法も、国税庁のQ&Aで示されています(事務所家賃の例)。〔インボイスQ&A 問95〕

インボイス登録をしていないフリーランスへの外注費は、どれだけ控除できますか?

2026年10月1日から2028年9月30日までに提供が完了したものは、仕入税額相当額の70%です(それより前に完了したものは80%)。その後は50%、30%と下がり、2031年10月1日以後は控除できません。帳簿に経過措置の適用を受ける旨を書くなどの要件があり、同じ仕入先から年1億円を超える部分は対象外です(2026年10月1日以後に開始する課税期間から)。〔インボイスQ&A 問113-3、国税庁 令和8年度税制改正特集〕

IT・Web制作業の簡易課税の事業区分は何ですか?

ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット附随サービス業、デザイン業、広告業は第5種事業(みなし仕入率50%)です。ソフトウエアの設計を外注先に依頼して顧客に納品する事業も第5種です。一方、出版業と広告制作業は第3種事業(70%)で、仕入れた機器を形を変えずに販売する分は第1種か第2種です。事業区分は取引ごとに判定します。〔タックスアンサー No.6509、国税庁 質疑応答事例〕

2割特例が終わった後、IT・Web制作業のフリーランスはどうなりますか?

2割特例は、個人事業者では2026年分が最後です。インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者は、要件を満たせば2027年分と2028年分に3割特例(売上税額の30%を納める)を使えます。第5種の簡易課税(売上税額の50%を納める)より、納める額は少なくなります。法人は3割特例を使えません。〔国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」〕

出典・参考資料

いずれも2026年9月25日・26日に内容を確認しました。本文は2026年9月26日時点の法令等に基づいています。

国税庁 国境を越えた役務の提供・プラットフォーム課税

国税庁 輸出免税・課税売上割合・仕入税額控除・簡易課税

国税庁 インボイス制度・令和8年度税制改正

法令(e-Gov法令検索)

公正取引委員会・事業者の公表資料

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年5月15日:公開
  • 2026年9月25日:経過措置の割合と期間、海外サービスとリバースチャージ方式、海外の顧客への役務の提供(輸出免税)と課税売上割合の記述を訂正
  • 2026年9月26日:全面改訂(電気通信利用役務の提供の判定、リバースチャージ方式の申告が必要な課税期間、輸出免税と国外取引の区別、課税売上割合の計算、簡易課税の事業区分を一次資料に基づいて書き直し。根拠を確認できない数値・事例、年間スケジュールと節税ポイントの節を削除)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。計算例は当会が作成した架空の設例です。個別の取引の判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。

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