インボイス制度とは:仕組みと立場別の対応(2026年10月の改正を反映)
インボイス制度(正式には「適格請求書等保存方式」)は、10%と8%の複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式で、2023年(令和5年)10月1日に始まりました。売り手は税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」として、取引先(課税事業者)から求められたらインボイス(適格請求書)を交付し、買い手は原則として帳簿とインボイスを保存することで仕入税額控除を受けます。2026年10月1日からは、免税事業者などからの仕入れに係る経過措置の控除割合が80%から70%に変わります(詳しくは下の「令和8年度税制改正」ボックスをご覧ください)。
インボイス制度の要点【確定】
| 正式名称 | 適格請求書等保存方式(消費税法30条・57条の2・57条の4) |
|---|---|
| 開始日 | 2023年(令和5年)10月1日 |
| 売り手 | 登録を受けた適格請求書発行事業者だけがインボイスを交付できます。取引先(課税事業者)から求められたら交付し、写しを保存します。 |
| 買い手 | 一般課税で申告する場合は、帳簿とインボイスなどの保存が仕入税額控除の要件です。簡易課税・2割特例・3割特例では仕入税額を売上税額から計算するため、仕入先の登録の有無は納める税額に影響しません。 |
| 登録 | 登録できるのは課税事業者です。登録するかどうかは任意で、免税事業者も登録すれば課税事業者になります。 |
| インボイスがない仕入れ | 一般課税では原則として控除できません。経過措置による割合は仕入れた時期によって変わります(下記参照)。 |
根拠は国税庁 タックスアンサー No.6498(令和8年4月1日現在法令等)とインボイスQ&A 問1(令和8年5月改訂)です。売り手・買い手・免税事業者ごとの確認事項は立場別の確認事項にまとめています。
本記事は井手政紀税理士(井手政紀税理士事務所/元 新宿税務署長(第84代)/新宿間税会 税理士部会員)の監修内容を反映しています。2026年9月26日、令和8年度税制改正等に合わせて全面改訂し、2026年9月28日に監修者の確認が完了しました。
【確定】令和8年度税制改正(2026年9月26日時点)
令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立)で、インボイス制度の経過措置と特例が見直され、2026年10月1日に施行されます。免税事業者などからの仕入れで控除できる割合は80%から70%に下がり、その後は50%、30%と段階的に下がります。同じ仕入先からの仕入れで経過措置を使える上限は、年1億円(改正前は10億円)になります。2割特例は延長されず、個人事業者に限って3割特例が設けられました。要点は経過措置の要約と2割特例と3割特例にまとめています。
目次
インボイス制度とは
【確定・施行済】インボイス制度は、消費税の仕入税額控除を受けるための要件を定めた仕組みです。一定の事項を記載した帳簿と、適格請求書(インボイス)などの請求書等を保存することが、仕入税額控除の要件になっています(消費税法30条7項、国税庁 タックスアンサー No.6498)。インボイスとは、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類で、一定の事項が記載された請求書、納品書、領収書、レシートなどをいいます(No.6498、インボイスQ&A 問1)。
導入の背景:10%と8%の複数税率
2019年(令和元年)10月1日に消費税率が10%に引き上げられたとき、酒類と外食を除く飲食料品と、週2回以上発行される新聞の定期購読に8%の軽減税率が導入されました(国税庁 タックスアンサー No.6102)。同じ事業者の取引にも10%と8%が混ざるため、2019年10月1日から2023年9月30日までは「区分記載請求書等保存方式」がとられ、2023年10月1日から、登録番号と税率ごとの消費税額等を記載するインボイス制度に移りました(インボイスQ&A 問1)。8%になる品目の見分け方は、軽減税率の対象品目で説明しています。
財務省や公正取引委員会などが公表しているQ&Aは、インボイス制度の下でも、売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除し、その差額を納めるという消費税の原則は変わらないと説明しています。あわせて、インボイスに税率や税額が記載されることで、消費税を価格に転嫁しやすくなる面もあるとしています(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q1)。
仕組み:登録・交付・保存
| 段階 | 行う人 | 内容 |
|---|---|---|
| 登録 | 売り手(課税事業者) | 税務署長に登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受けます。登録番号や氏名・名称は、国税庁の公表サイトで公表されます。 |
| 交付 | 売り手 | 取引先(課税事業者)から求められたら、インボイスを交付し、その写しを保存します。 |
| 保存 | 買い手 | 一般課税で申告する場合は、帳簿と受け取ったインボイスを保存して、仕入税額控除を受けます。 |
インボイスQ&A 問1・問2をもとに当会が整理しました。
仕入税額控除との関係
事業者が納める消費税は、売上にかかる消費税額(売上税額)から、仕入れや経費にかかった消費税額(仕入税額)を差し引いて計算します。この差し引く計算を「仕入税額控除」といいます。
売上税額:2,200,000 × 10/110 = 200,000円
仕入税額:1,100,000 × 10/110 = 100,000円
納める消費税(国と地方の合計):200,000 − 100,000 = 100,000円
国税と地方消費税を合わせた概算で、申告のときの端数処理は省いています。
インボイス制度で変わったのは、この仕入税額を差し引くための条件です。一般課税で申告する買い手は、仕入先から受け取ったインボイスを保存していなければ、原則としてその仕入れの消費税額を差し引けません(例外はインボイスがない仕入れの扱い)。国税7.8%と地方消費税に分けた正式な計算や端数処理は、消費税の計算方法で説明しています。
立場別の確認事項(売り手・買い手・免税事業者)
インボイス制度で必要な対応は、立場によって異なります。2026年9月26日時点の法令等に基づき、主な確認事項をまとめました。
| 立場 | 主な義務・要件 | 2026年10月以後に確認すること |
|---|---|---|
| 売り手(インボイス発行事業者) | 課税事業者から求められたらインボイスを交付し、写しを7年間保存します。 | 2割特例で申告している場合は、使える最後の課税期間と、その後の計算方法 |
| 買い手(一般課税で申告) | 帳簿とインボイスを保存します。インボイスのない仕入れは、経過措置の割合だけ控除します。 | 70%への切替え、9月と10月をまたぐ取引の振り分け、1億円の上限が始まる課税期間 |
| 買い手(簡易課税・2割特例・3割特例で申告) | 仕入税額を売上税額から計算するため、仕入先の登録の有無は納める税額に影響しません。 | (2割特例を使っている場合)使えなくなった後の計算方法と、簡易課税へ切り替える場合の届出期限 |
| 免税事業者(登録していない) | 消費税の申告・納税は不要です。インボイスは交付できません。 | 取引先の申告方法、登録するかどうか、取引条件の協議 |
売り手(インボイス発行事業者)
- 取引先(課税事業者)から求められたら、インボイスを交付します。消費者や免税事業者に対しては、交付義務はありません(インボイスQ&A 問10)。3万円未満の公共交通機関の運賃など、交付義務が免除される取引もあります(交付義務が免除される取引)。
- 交付したインボイスの写し(データで提供した場合はそのデータ)を7年間保存します(保存の要点)。
- 記載事項、1円未満の端数処理、返品・値引きのときの返還インボイスは、インボイスの記載事項で確認できます。
- 2割特例で申告している場合は、使える最後の課税期間を確認します。個人事業者は令和8年分(2026年分)が最後で、その後は3割特例、簡易課税、一般課税から選びます(2割特例と3割特例)。
買い手(一般課税で申告する事業者)
- 受け取った請求書の登録番号は、国税庁適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。
- 帳簿とインボイスを7年間保存します(保存の要点)。
- 免税事業者など、登録していない相手からの仕入れは、2026年10月1日以後の分から控除できる割合が70%になります。帳簿には経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載します(国税庁の記載例は「80%控除対象」「免」など。インボイスQ&A 問113)。会計ソフトや経費精算で使っている区分(「80%控除対象」など)は、10月1日以後の取引について70%に更新されているかを確認します。
- 9月30日と10月1日をまたぐ取引は、商品の引渡しを受けた日や、役務が完了した日で割合を判定します(経過措置の要約)。
- 同じ仕入先からの経過措置の対象となる仕入れが、年(法人は事業年度)で税込1億円を超えると、超える部分には経過措置を使えません。いつから適用されるかは、課税期間の開始日で決まります(2026年10月以後の主な日程)。
- 仕入先と取引条件を見直すときは、独占禁止法や取適法に注意します(取引条件を見直すときの注意)。
買い手(簡易課税・2割特例・3割特例で申告する事業者)
簡易課税、2割特例、3割特例は、いずれも売上税額をもとに仕入税額を計算します。そのため、仕入先が登録しているかどうかは、納める税額に影響しません(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q2、インボイスQ&A 問114・問114-2)。ただし、2割特例が終わった後に一般課税で申告する場合は、その課税期間からインボイスの保存が必要になり、経過措置の割合も納める税額に影響します。簡易課税の要件や事業区分は、簡易課税制度のみなし仕入率と届出で説明しています。
免税事業者(登録していない事業者)
- 取引先が消費者、免税事業者、簡易課税や2割特例で申告する事業者であれば、取引への影響は生じないと考えられています(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q2)。3割特例で申告する個人事業者も、売上税額から仕入税額を計算します。
- 一般課税で申告する取引先は、その事業者からの仕入れについて、経過措置の割合(2026年10月1日以後は70%)までしか控除できません。
- 登録するかどうかは事業者の任意です(インボイスQ&A 問10)。登録すると課税事業者になり、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の申告と納税が必要になります(No.6498)。登録した個人事業者は、令和8年分まで2割特例、令和9年分・令和10年分は要件を満たせば3割特例を使えます(2割特例と3割特例)。
- 免税事業者に当たるかどうかは、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下かどうかなどで判定します。特定期間の課税売上高などによって納税義務が免除されない場合もあります(課税事業者と免税事業者の判定)。
インボイスの記載事項(適格請求書と適格簡易請求書)
【確定・施行済】インボイス(適格請求書)には、次の6つの事項を記載します。小売業や飲食店業など、不特定かつ多数の者に販売などを行う事業では、記載事項を簡易にした適格簡易請求書(レシートなど)を交付できます(国税庁 タックスアンサー No.6625、消費税法57条の4)。
| 記載事項 | 適格請求書 | 適格簡易請求書 |
|---|---|---|
| ① 発行する事業者の氏名または名称と登録番号 | 必要 | 必要 |
| ② 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| ③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨) | 必要 | 必要 |
| ④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率 | 必要 | 対価の額は必要。適用税率は⑤とどちらか一方 |
| ⑤ 税率ごとに区分した消費税額等 | 必要 | ④の適用税率とどちらか一方 |
| ⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 必要 | 不要 |
消費税額等は、消費税額と地方消費税額の合計額です(インボイスQ&A 問1)。登録番号は、法人番号のある事業者は「T+法人番号」、それ以外の事業者は「T+13桁の数字」です(No.6498)。記載例はインボイスの記載事項と記載例で説明しています。
適格簡易請求書を交付できる事業
適格簡易請求書を交付できるのは、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う次の事業です(インボイスQ&A 問24、消費税法施行令70条の11)。
- 小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります)
- その他これらの事業に準ずる事業で、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
国税庁は、ホテル・旅館の宿泊サービスや航空サービス、レンタカー事業なども含まれる一方、電気・ガス・水道水の供給や電話料金のように、相手方を特定して契約し、個々に行う取引は、一般的には当たらないとしています(インボイスQ&A 問24-2)。
端数処理、返還インボイス、仕入明細書
- 消費税額等の1円未満の端数処理は、1枚のインボイスにつき、税率ごとに1回行います。切上げ・切捨て・四捨五入のどれにするかは任意ですが、商品ごとに端数処理した額を合計する方法は認められません(インボイスQ&A 問57)。
- 返品や値引きなどをしたときは、返還インボイス(適格返還請求書)を交付します。返品や値引きなどの額が税込1万円未満のときは、交付義務がありません(インボイスQ&A 問27)。
- 買い手が作成する仕入明細書なども、記載事項を満たし、相手方の確認を受けたものであれば、インボイスの代わりに保存できます(No.6625)。
交付義務が免除される取引
次の取引は、インボイスを交付することが難しいため、交付義務が免除されています(インボイスQ&A 問1、消費税法施行令70条の9第2項)。
- 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
- 出荷者等が卸売市場で行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります)
- 生産者が農業協同組合、漁業協同組合、森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により、生産者を特定せずに行うものに限ります)
- 3万円未満の自動販売機・自動サービス機による商品の販売等
- 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)
登録の要点
【確定・施行済】
- 登録を受けられるのは課税事業者です。納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出し、登録されると登録番号が通知され、公表サイトで公表されます(インボイスQ&A 問1・問2)。
- 登録するかどうかは事業者の任意です。ただし、登録しなければインボイスを交付できず、一般課税で申告する取引先は、原則として仕入税額控除ができません(インボイスQ&A 問10)。
- 免税事業者は、2029年9月30日を含む課税期間までは、登録申請書に登録希望日(提出日から15日以降の日)を記載すれば、その日から登録を受けて課税事業者になります。課税事業者選択届出書は要りません。2023年10月1日を含まない課税期間に登録した場合は、登録日から2年を経過する日を含む課税期間までは、免税事業者に戻れません(インボイスQ&A 問7)。
- 申請はe-Tax(個人事業者はスマートフォンからも可能)か書面で行います。書面を郵送する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターです(インボイスQ&A 問2)。
- 登録をやめるときは、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出すれば、翌課税期間の初日に登録の効力がなくなります。個人事業者が2027年1月1日から登録をやめる場合は、2026年12月17日(木)が期限です(インボイスQ&A 問13から当会計算)。登録をやめた後に免税事業者になれるかどうかは、基準期間の課税売上高などで別に判定します。
申請の手順は、インボイスの登録申請の手続き(e-Tax・書面)で説明しています。
保存の要点(7年間・データで受け取った場合)
【確定・施行済】
- 受け取ったインボイスなどの請求書等と帳簿は、課税期間の末日の翌日から2か月(消費税の申告期限の延長特例を受けている法人は3か月)を経過した日から7年間保存します。6年目と7年目は、帳簿か請求書等のどちらか一方を保存すればよいとされています(No.6625)。
- 交付したインボイスの写しや、提供したインボイスのデータも、交付・提供した日を含む課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します(インボイスQ&A 問79)。
- 「欠損金が生じた事業年度の帳簿書類は10年間」という保存期間は、法人税法上のもので、消費税法の保存期間とは別の規定です(国税庁 タックスアンサー No.5930)。
データで受け取ったインボイス
消費税の仕入税額控除のためには、データで受け取ったインボイスを、電子帳簿保存法に準じた措置をとってデータのまま保存するほか、整然とした形式及び明瞭な状態で紙に出力して保存することも認められています(インボイスQ&A 問102)。一方、所得税・法人税では、電子取引で受け取ったデータは、電子帳簿保存法7条により、データのまま保存することとされています。保存方法の詳細は国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイトで確認できます。
インボイスがない仕入れの扱い
【確定】一般課税で申告する事業者は、インボイスのない仕入れについて、原則として仕入税額控除ができません(消費税法30条7項、インボイスQ&A 問113)。例外として、次の3つがあります。
| 区分 | 主な対象 | 期限 |
|---|---|---|
| 帳簿の保存だけで控除できる取引 | 3万円未満の公共交通機関の運賃、3万円未満の自動販売機・自動サービス機からの購入、郵便ポストに差し出した郵便(切手類のみを対価とするもの)、従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費等など。帳簿に一定の事項を記載します。 | 定めなし |
| 少額特例 | 基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者が行う、税込1万円未満の仕入れ | 2029年9月30日までの仕入れ |
| 経過措置 | 免税事業者、消費者、登録していない課税事業者からの仕入れ。区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存します。 | 2031年9月30日までの仕入れ(割合は段階的に下がります) |
根拠は国税庁 タックスアンサー No.6496、国税庁「少額特例の概要」、インボイスQ&A 問111、問113です。帳簿の保存だけで控除できる取引には、このほか古物・質物・建物・再生資源などを棚卸資産として購入する場合などがあります(No.6496)。少額特例の「1億円」は事業者の規模の基準で、経過措置の「1億円」の上限とは別のものです。
免税事業者等からの仕入れの経過措置(2026年10月から70%)
【確定・2026年10月1日施行】
令和8年度税制改正で、この経過措置の期限が2年延び、2026年10月1日以後の割合が見直されました(国税庁 令和8年度税制改正特集、インボイスQ&A 問113)。割合は、仕入れた日で決まります。
| 仕入れた日 | 割合 | 控除できる額 | 控除できない額 |
|---|---|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 (令和5年10月〜令和8年9月) | 80% | 80,000円 | 20,000円 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 (令和8年10月〜令和10年9月) | 70% | 70,000円 | 30,000円 |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 (令和10年10月〜令和12年9月) | 50% | 50,000円 | 50,000円 |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 (令和12年10月〜令和13年9月) | 30% | 30,000円 | 70,000円 |
| 2031年10月1日以後 | 0% | 0円 | 100,000円 |
金額は、インボイスがあれば控除できた消費税額等100,000円(1,100,000円×10/110)に割合をかけた、国税と地方消費税を合わせた目安です。正式には国税分を「税込の仕入額×7.8/110×割合」で計算します(70%なら54,600円。地方消費税分はその22/78の15,400円で、合計70,000円)。改正前は、2026年10月から2029年9月までが50%、2029年10月以後は控除できない予定でした(財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF))。
割合は仕入れた日で判定し、同じ仕入先からの仕入れがその年(法人は事業年度)で税込1億円を超える部分には使えません。経過措置を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、適用を受ける旨を記載した帳簿を保存します(インボイスQ&A 問113)。
取引ごとの判定日、10月をまたぐ締め請求書の分け方、記帳の例、1億円の上限の計算は、免税事業者等からの仕入れの経過措置(70%控除と1億円上限の詳細)で説明しています。
登録した小規模事業者の特例:2割特例の終了と3割特例
【確定】インボイス発行事業者の登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者などには、納める税額を売上税額の一定割合にできる特例があります。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり、令和8年度税制改正で、個人事業者に限って3割特例が設けられました(No.6498、国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(PDF))。
| 項目 | 2割特例 | 3割特例 |
|---|---|---|
| 対象 | インボイス発行事業者の登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者など(個人・法人) | 同様の個人事業者のみ(法人は使えません) |
| 使える期間 | 2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間。個人事業者は令和8年分(2026年分)が最後 | 令和9年分(2027年分)と令和10年分(2028年分) |
| 納める税額 | 売上税額の20% | 売上税額の30% |
| 主な要件 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなど | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなど |
| 手続き | 事前の届出は不要。申告書に適用を受ける旨を付記 | 事前の届出は不要。確定申告書に適用を受ける旨を付記 |
課税標準額:5,500,000 × 100/110 = 5,000,000円
売上税額(国):5,000,000 × 7.8% = 390,000円
2割特例:390,000 × 20% = 78,000円、地方消費税 78,000 × 22/78 = 22,000円 → 納付額 100,000円
3割特例:390,000 × 30% = 117,000円、地方消費税 117,000 × 22/78 = 33,000円 → 納付額 150,000円
- 2割特例・3割特例を使った課税期間の次の課税期間から簡易課税を選ぶ場合は、その課税期間の確定申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出せば間に合います(次の課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。令和8年分に2割特例を使った個人事業者が令和9年分から簡易課税にするなら、期限は2028年3月31日(金)です(インボイスQ&A 問117)。
- 3割特例と簡易課税のどちらの納付税額が少なくなるかは、業種によって異なります。国税庁は、小売業であれば簡易課税のほうが少なくなる例を示しています(インボイスQ&A 問117-3)。
- 法人は、2割特例の最後の事業年度の次から、一般課税か簡易課税で申告します。
法人の決算月別の最後の課税期間は2割特例はいつまで使えるか(個人・法人別)、使えない年分や業種別の比較は3割特例(令和9年分・令和10年分の個人事業者)で説明しています。
取引条件を見直すときの注意(独占禁止法・取適法)
【確定・施行済】財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、国土交通省の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(2026年1月30日改正)は、免税事業者との取引条件を見直すこと自体は直ちに問題となるものではないとしています。そのうえで、取引上優越した地位にある事業者が次のような行為をすると、独占禁止法(優越的地位の濫用)、取適法、建設業法上の問題となるおそれがあると説明しています(Q7)。
- 取引対価の引下げ:再交渉が形式的なもので、免税事業者が仕入れのときに支払った消費税額も払えないような価格を一方的に設定すること
- 商品・役務の成果物の受領拒否、返品:仕入先が免税事業者であることを理由に、受領を拒むことなど
- 協賛金等の負担の要請等:価格を据え置く代わりに、協賛金や販売促進費などの負担を求めること
- 購入・利用強制:価格を据え置く代わりに、取引と関係のない商品や役務の購入を求めること
- 取引の停止:著しく低い価格を一方的に設定し、応じない相手との取引を停止すること
- 登録事業者となるよう強く求めること(慫慂等):課税事業者になるよう要請すること自体は問題ではありませんが、応じなければ取引価格を引き下げる、取引を打ち切るなどと一方的に通告すること
取適法は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)を改正したもので、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、2026年1月1日に施行されました(公正取引委員会「取適法」)。独占禁止法と取適法のどちらも適用できる行為には、通常は取適法が適用されます。建設工事の下請契約については、取適法ではなく建設業法が適用されます(同Q&A Q7)。相談窓口は、同Q&A(財務省掲載のPDF)の別紙に記載されています。
2026年10月以後の主な日程
【確定】令和8年度税制改正と、インボイスQ&Aに基づいて当会が整理しました。曜日と「15日前の日」は当会で計算しています。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年10月1日(木) | 免税事業者などからの仕入れで控除できる割合が80%から70%に(同日以後の仕入れ)。3割特例と、簡易課税の届出期限の特例の規定が施行 |
| 2026年10月1日以後に開始する課税期間 | 経過措置の上限が年1億円に。事業年度が1年の法人の場合、9月決算の法人は2026年10月1日、10月決算の法人は2026年11月1日、個人事業者と12月決算の法人は2027年1月1日(2027年分)、3月決算の法人は2027年4月1日に始まる課税期間から |
| 2026年12月17日(木) | 個人事業者が2027年1月1日から登録をやめる場合の、登録取消届出書の提出期限 |
| 2026年12月31日(木) | 個人事業者が2割特例を使える最後の年分(令和8年分)が終わる |
| 2027年3月31日(水) | 個人事業者の令和8年分の消費税の申告期限(2割特例を使える最後の申告) |
| 2028年3月31日(金) | 令和9年分の申告期限(3割特例を初めて使える申告)。令和8年分に2割特例を使い、令和9年分から簡易課税にする場合の届出期限 |
| 2028年10月1日(日) | 経過措置の割合が70%から50%に |
| 2029年9月30日(日) | 少額特例(税込1万円未満)の対象となる仕入れの期限。免税事業者が登録希望日から登録できる経過措置は、この日を含む課税期間まで |
| 2030年10月1日(火) | 経過措置の割合が50%から30%に |
| 2031年10月1日(水) | 経過措置が終わり、インボイスのない仕入れは控除できなくなる |
よくある質問
インボイス制度はいつから始まりましたか。
2023年(令和5年)10月1日です。2019年10月1日から2023年9月30日までの区分記載請求書等保存方式に代わり、複数税率に対応した仕入税額控除の方式として始まりました。〔国税庁 タックスアンサー No.6498、インボイスQ&A 問1〕
インボイス発行事業者の登録は、必ず受けなければなりませんか。
登録を受けるかどうかは事業者の任意です。ただし、登録を受けなければインボイスを交付できないため、一般課税で申告する取引先は、原則として仕入税額控除ができません(経過措置により一定割合は控除できます)。取引先が消費者、免税事業者、簡易課税や2割特例で申告する事業者であれば、取引への影響は生じないと考えられています。〔インボイスQ&A 問10、免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q2〕
インボイスがない仕入れは、仕入税額控除がまったくできませんか。
一般課税では原則としてできません。ただし、免税事業者などからの仕入れは、経過措置により仕入税額相当額の一定割合を控除できます(2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%)。3万円未満の公共交通機関の運賃など帳簿の保存だけで控除できる取引や、一定規模以下の事業者の税込1万円未満の仕入れ(少額特例、2029年9月30日まで)もあります。〔インボイスQ&A 問1・問111・問113〕
2026年10月1日から何が変わりますか。
免税事業者などからの仕入れで控除できる割合が、同日以後の仕入れから80%から70%になります。同じ仕入先からの仕入れで経過措置を使える上限は、同日以後に開始する課税期間から年1億円(税込み。改正前は10億円)になります。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり、個人事業者は要件を満たせば2027年分・2028年分に3割特例を使えます。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕
9月に始まり10月に終わる作業の代金は、80%と70%のどちらで計算しますか。
課税仕入れを行った日で判定します。役務の提供は原則として全部が完了した日、商品は原則として引渡しを受けた日です。9月21日に始まり10月20日に完了した役務は、全体が70%になります。〔インボイスQ&A 問113-3〕
3割特例は法人も使えますか。
使えません。インボイス発行事業者の登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者が、要件を満たす場合に、令和9年分(2027年分)と令和10年分(2028年分)に使える特例です。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕
取引先から登録を求められました。応じなければなりませんか。
登録するかどうかは事業者の任意です。取引先が課税事業者になるよう要請すること自体は独占禁止法上問題となるものではありませんが、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法や取適法上、問題となるおそれがあります。〔インボイスQ&A 問10、免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q7〕
適格簡易請求書(レシートなど)では、何を省略できますか。
書類の交付を受ける事業者の氏名・名称を省略でき、適用税率と税率ごとの消費税額等は、どちらか一方の記載でかまいません。交付できるのは、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります)など、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業です。〔国税庁 タックスアンサー No.6625、インボイスQ&A 問24〕
インボイスは何年保存しますか。
消費税法上、受け取ったインボイスと帳簿、交付したインボイスの写しは、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します。受け取った側は、6年目と7年目は帳簿かインボイスのどちらか一方の保存でかまいません。消費税の申告期限の延長特例を受けている法人が受け取ったインボイスと帳簿は、課税期間の末日の翌日から3か月を経過した日から7年間です。〔国税庁 タックスアンサー No.6625、インボイスQ&A 問79〕
免税事業者は、年の途中から登録できますか。
できます。2029年9月30日を含む課税期間までは、登録申請書に登録希望日(提出日から15日以降の日)を記載すれば、その日から登録を受けて課税事業者になります。課税事業者選択届出書の提出は要りません。2023年10月1日を含まない課税期間に登録した場合は、登録日から2年を経過する日を含む課税期間までは、免税事業者に戻れません。〔インボイスQ&A 問7〕
まとめ
- インボイス制度は、2023年10月1日に始まった、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式です。登録を受けた売り手がインボイスを交付し、一般課税で申告する買い手は帳簿とインボイスを保存して仕入税額控除を受けます。
- 登録は任意です。登録しない事業者からの仕入れは、一般課税で申告する取引先では経過措置の割合までしか控除できません。簡易課税・2割特例・3割特例で申告する取引先には、納める税額の面での影響はありません。
- 経過措置の割合は、2026年10月1日以後の仕入れから70%になり、2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%、2031年10月1日以後は0%です。同じ仕入先からの上限は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から年1億円です。
- 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者は2027年分・2028年分に3割特例を選べ、法人は一般課税か簡易課税で申告します。
出典・参考資料
いずれも2026年9月25日・26日に内容を確認しました。本記事は2026年9月26日時点の法令等に基づいています。
国税庁 タックスアンサー
- No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)(令和8年4月1日現在法令等)
- No.6625 適格請求書等の記載事項(令和8年4月1日現在法令等)
- No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存(令和8年4月1日現在法令等)
- No.6102 消費税の軽減税率制度
- No.6501 納税義務の免除
- No.5930 帳簿書類等の保存期間
国税庁 インボイスQ&A(令和8年5月改訂)
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(全文、PDF)
- 問1(概要)、問2(登録の手続)、問7(免税事業者の登録)、問10(登録の任意性)、問13(登録の取りやめ)
- 問24・問24-2(適格簡易請求書)、問27(返還インボイス)、問57(端数処理)、問79(写しの保存期間)、問102(データの保存方法)
- 問111(少額特例)、問113(経過措置)、問113-3(割合の判定時期)、問114(2割特例)、問114-2(3割特例)、問117(簡易課税の選択)、問117-3(3割特例と簡易課税)
国税庁 特設ページ・リーフレット
- インボイス制度特設サイト
- インボイス制度 令和8年度税制改正特集
- リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年5月改訂、PDF)
- 2割特例 特設ページ
- 少額特例の概要
- 国税庁適格請求書発行事業者公表サイト
- 電子帳簿等保存制度特設サイト
財務省・公正取引委員会・法令
- 財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(2026年1月30日改正。財務省掲載のPDF)
- 公正取引委員会「取適法」
- 財務省 第221回国会における財務省関連法律(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)
- 財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF)
- 消費税法(30条・57条の2・57条の4)
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)(7条)
改訂履歴と監修について
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2025年7月3日:公開
- 2026年9月25日:令和8年度税制改正に合わせて、経過措置の割合と期間、2割特例・3割特例、保存期間、電子インボイスの保存方法、取適法の記述を訂正
- 2026年9月26日:全面改訂(冒頭で制度の定義と要点に答える形にし、立場別の確認事項、登録と保存の要点、インボイスがない仕入れの扱い、2割特例と3割特例の比較、2026年10月以後の日程、よくある質問を追加。経過措置の詳しい説明は専用の記事に移し、この記事では要約の表にしました。図(SVG)はHTMLの表に置き換えました)
監修の状況は、冒頭の「監修について」のとおりです。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。