簡易課税制度とは:事業区分・みなし仕入率・計算方法と届出の期限
簡易課税制度は、売上にかかる消費税額(売上税額)に、事業の種類ごとに決められた「みなし仕入率」(第1種90%〜第6種40%)をかけた額を仕入れの消費税額とみなして、納付税額を計算する方法です(消費税法37条)。基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下で、「消費税簡易課税制度選択届出書」を出した課税事業者が使えます。
仕入れのインボイスを集計しなくても納付税額を計算できますが、原則として適用を受けたい課税期間が始まる前に届出が必要で、選んだら2年間は続けて適用します。
簡易課税の要点【確定】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 納付税額 | 売上税額 ×(1 − みなし仕入率) |
| 使える事業者 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、届出書を出した課税事業者(恒久的施設のない国外事業者を除く) |
| みなし仕入率 | 第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%。原則として取引ごとに判定 |
| 届出の期限 | 原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで。個人事業者が令和9年分から使う場合は2026年12月31日(木)。土日・祝日や年末年始でも延びません |
| 続けて使う期間 | 原則2年間。やめるときも届出書が必要 |
| 令和8年度改正 | 2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税にする場合は、その翌課税期間の確定申告期限まで届出できます |
事業区分の判定は間違えやすい取引の事業区分、届出期限は届出書の提出期限と2割特例・3割特例の後の期限(決算月別)にまとめています。
本記事は井手政紀税理士(井手政紀税理士事務所/元 新宿税務署長(第84代)/新宿間税会 税理士部会員)の監修内容を反映しています。2026年9月26日、令和8年度税制改正等に合わせて全面改訂し、2026年9月28日に監修者の確認が完了しました。
【確定】令和8年度税制改正(2026年9月26日時点)
所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)でも、2割特例は延長されず、令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者には令和9年分・令和10年分の3割特例が設けられ、2割特例・3割特例を使った翌課税期間から簡易課税を選ぶときの届出期限は、その翌課税期間の確定申告期限までになりました(翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。いずれも2026年10月1日施行です。簡易課税制度選択届出書は、2026年10月1日以後に提出する分の様式が別に用意されています。第1種〜第6種のみなし仕入率は変わっていません。
このほか、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%にする案と、それに合わせた簡易課税の特例が閣議決定されています。法律はまだ成立していないため、【予定・法案未成立】の節で分けて説明します。
目次
簡易課税制度とは:売上税額とみなし仕入率で納付税額を計算する
【確定】簡易課税制度は、中小事業者の納税事務の負担に配慮して設けられた制度で、事業者の選択により、売上げに係る消費税額をもとに仕入れに係る消費税額を計算します(国税庁 タックスアンサー No.6505)。仕入れや経費の消費税額を1件ずつ集計する必要はなく、仕入税額控除のためのインボイスなどの保存も要りません(財務省「簡易課税制度の概要」(PDF))。
計算式:一般課税との違い
= 売上税額 ×(1 − みなし仕入率)
ここでいう売上税額は、課税標準額に対する消費税額から、売上げの返品・値引きなど(売上げに係る対価の返還等)の消費税額を差し引いた額です(消費税法37条1項1号)。国の消費税の税率は7.8%(軽減税率は6.24%)で、地方消費税はその22/78です。一般課税の計算手順は消費税の計算方法(一般課税の手順)で説明しています。
使える事業者の要件
- 課税事業者であること:簡易課税は、課税事業者が納付税額を計算するときの方法です。課税事業者になるかどうかの判定は消費税の基本(課税事業者と免税事業者の判定)をご覧ください。
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること:基準期間は、個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度です。課税売上高は税抜きの金額で、輸出取引の売上高を含み、売上げの返品・値引きなどの金額を差し引きます(国税庁「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」(令和8年10月1日以後提出用、PDF))。
- 届出書を出していること:「消費税簡易課税制度選択届出書」を、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに、納税地の所轄税務署長に出します(届出書の提出期限)。
- 国外事業者は恒久的施設があること:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、課税期間の初日に国内に恒久的施設(支店・事務所など)を持たない国外事業者は、簡易課税を使えません(No.6505)。
一般課税・簡易課税・2割特例・3割特例の違い
| 項目 | 一般課税 | 簡易課税 | 2割特例 | 3割特例 |
|---|---|---|---|---|
| 納付税額 | 売上税額 − 実際の仕入税額 | 売上税額 ×(1 − みなし仕入率) | 売上税額 × 20% | 売上税額 × 30% |
| 使える事業者 | すべての課税事業者 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下 | インボイス登録(または課税事業者の選択)がなければ免税事業者となる課税期間で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下など | 2割特例と同様の要件を満たす個人事業者(法人は使えません) |
| 使える期間 | ― | ― | 令和8年9月30日を含む課税期間まで(終了) | 令和9年分・令和10年分 |
| 事前の届出 | 不要 | 必要 | 不要(申告書に付記) | 不要(申告書に付記) |
| 続けて使う義務 | ― | 原則2年間 | なし | なし |
| 仕入税額控除のためのインボイスの保存 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
| 還付 | 仕入税額が売上税額より多ければ受けられる | 通常は生じない | 通常は生じない | 通常は生じない |
出典:国税庁 タックスアンサー No.6505、インボイスQ&A 問114-2(PDF)、問117-3(PDF)、国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(PDF)。
事業区分とみなし仕入率(第1種〜第6種)
【確定】簡易課税では、事業を第1種から第6種までの6つに区分し、区分ごとのみなし仕入率で仕入税額を計算します(消費税法施行令57条、国税庁 タックスアンサー No.6509)。
事業区分とみなし仕入率の一覧
| 事業区分 | みなし仕入率 | 納付税額の割合(売上税額に対して) | 該当する事業 |
|---|---|---|---|
| 第1種事業 | 90% | 10% | 卸売業(他の者から購入した商品を、その性質・形状を変更しないで他の事業者に販売する事業) |
| 第2種事業 | 80% | 20% | 小売業(他の者から購入した商品を、その性質・形状を変更しないで販売する事業で、第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業 |
| 第3種事業 | 70% | 30% | 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業。第1種・第2種に当たるものと、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く |
| 第4種事業 | 60% | 40% | 第1種・第2種・第3種・第5種・第6種以外の事業(飲食店業など)。第3種から除かれる加工賃などを対価とする役務の提供も含む |
| 第5種事業 | 50% | 50% | 運輸通信業、金融業・保険業、サービス業(飲食店業に当たるものを除く)。第1種〜第3種に当たるものを除く |
| 第6種事業 | 40% | 60% | 不動産業 |
「該当する事業」は国税庁 タックスアンサー No.6509の説明を要約しました。納付税額の割合は「1 − みなし仕入率」で、端数処理による差は除いています。
判定の手順:取引ごとに判定する
- 取引ごとに判定する:どの事業区分に当たるかは、原則として、事業者が行う取引(課税資産の譲渡等)ごとに判定します(消費税法基本通達13-2-1)。同じ店でも、取引によって区分が変わります。
- 仕入れた商品をそのまま売る取引:他の者から購入した商品を、性質・形状を変更しないで販売する取引は、事業者への販売なら第1種、それ以外(消費者への販売)なら第2種です(消費税法施行令57条6項、基本通達13-2-2)。
- それ以外の取引:おおむね日本標準産業分類(総務省)の大分類をもとに、製造業・建設業などは第3種、運輸通信業・金融業・保険業・サービス業(飲食店業を除く)は第5種、不動産業は第6種と判定します(基本通達13-2-4)。どれにも当たらない飲食店業などは第4種です。
基本通達13-2-4は、第5種のサービス業等を、日本標準産業分類の大分類のうち情報通信業、運輸業・郵便業、金融業・保険業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)としています(消費税法基本通達 第13章第2節「事業区分の判定」)。
間違えやすい取引の事業区分(通達番号つき)
国税庁の通達とタックスアンサーで確認できる例です。「根拠」の番号は消費税法基本通達の番号です。
| 取引 | 事業区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 仕入れた商品に自社の商標やネームを貼って販売する | 事業者向けは第1種、消費者向けは第2種 | 13-2-2(1) |
| 組立式の家具を組み立てて販売する、仕入れた商品を箱詰めなどで組み合わせて販売する | 事業者向けは第1種、消費者向けは第2種 | 13-2-2(2)(3) |
| 業務用の商品を事業者に販売し、事業者への販売であることが帳簿や書類で明らか | 第1種 | タックスアンサー No.6509 |
| 食料品の小売店が、仕入れた食料品に、その店で一般的に行われる軽微な加工をして同じ店で販売する | 第2種 | 13-2-3 |
| 農家が野菜・米など飲食料品を販売する | 第2種 | 13-2-4(注)1 |
| 農家が花・植木など飲食料品以外を販売する | 第3種 | 13-2-4(注)1 |
| 自分で焼いたパンを店頭で消費者に販売する(製造小売) | 第3種 | 13-2-4、13-2-6 |
| 自分で焼いたパンを他の事業者に販売する | 第3種 | 13-2-4 |
| 仕入れたパンをそのまま販売する | 事業者向けは第1種、消費者向けは第2種 | 13-2-2 |
| 建設業で、材料を自分で調達して施工する | 第3種 | 13-2-4 |
| 建設業で、材料の支給を受けて加工賃(手間賃)だけを受け取る | 第4種 | 13-2-4なお書、13-2-7、財務省「簡易課税制度の概要」(注2) |
| 請け負った建設工事(第3種に当たるもの)の全部を他の業者に委託する | 第3種 | 13-2-5(2) |
| 自分で原材料を購入し、指示した条件で加工を委託して完成品を販売する(製造問屋) | 第3種 | 13-2-5(1) |
| 顧客から特注品の製造を受注し、他の者に製造を委託して顧客に引き渡す | 原則として第3種 | 13-2-5(1)なお書(令和8年の通達改正で明記) |
| 天然水を採取して瓶詰めなどにし、飲用として販売する | 第3種 | 13-2-5(3) |
| 新聞・書籍などの発行・出版 | 第3種 | 13-2-5(4) |
| 他の者が建てた住宅を購入してそのまま販売する(自ら建築しない建売業) | 第1種または第2種 | 13-2-4(注)2 |
| 自分で建てた住宅を販売する | 第3種 | 13-2-4(注)2 |
| 製造業で出た加工くず・副産物を売却する | 第3種 | 13-2-8 |
| 卸売業・小売業で出た段ボールなどの不要物品を売却する | 第4種(元の事業区分で処理することも認められる) | 13-2-8 |
| 取引 | 事業区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 飲食店で、飲食の設備を使って客に飲食させる(店内飲食) | 第4種 | 13-2-8の2 |
| 飲食店の出前(店で出すものと同じ種類の調理済みのもの) | 第4種 | 13-2-8の2(注)1 |
| 飲食店が、自分で作った飲食物を持ち帰り用として販売する | 第3種(製造小売) | 13-2-8の2(注)1 |
| 飲食の設備を持たず、自分で作った飲食物を宅配だけで販売する | 第3種(製造小売) | 13-2-8の2(注)2 |
| 旅館・ホテルの宿泊(「1泊2食付き」のように食事代込みで料金を決めている場合は全額) | 第5種 | 13-2-4(6)、タックスアンサー No.6509 |
| 旅館・ホテルの飲食の提供で、宿泊料と区分して領収するもの、宿泊者以外も利用できる宴会場・レストランでの提供 | 第4種 | 13-2-8の2 |
| ソフトウェア開発などの情報通信業、運輸業 | 第5種 | 13-2-4(1)(2) |
| 物品のレンタル(物品賃貸業) | 第5種 | 13-2-4(4) |
| 税理士・弁護士・デザインなどの専門サービス | 第5種 | 13-2-4(5) |
| 美容室・理容室の施術 | 第5種 | 13-2-4(7) |
| 美容室が仕入れた化粧品などを、そのまま客に販売する | 第2種 | 13-2-2 |
| 学習塾などの教育、医療・福祉(消費税が課税されるもの) | 第5種 | 13-2-4(8)(9) |
| 不動産の仲介・管理、事業用の建物の貸付け | 第6種 | 13-2-4 |
| 駐車場業(土地の貸付けとして非課税になるものを除く) | 第6種 | 13-2-4、日本標準産業分類 小分類693 駐車場業(総務省) |
| 事業で使っていた車両・備品などの固定資産を売却する | 第4種 | 13-2-9 |
| 住宅の貸付け、土地の譲渡・貸付け(1か月未満の貸付けなどを除く) | 非課税のため、事業区分の対象になりません | タックスアンサー No.6201 |
出典:消費税法基本通達 13-2-1〜13-2-10、国税庁 タックスアンサー No.6509・No.6201、財務省「簡易課税制度の概要」、総務省 日本標準産業分類 大分類K(PDF)。個別の業種の区分は、国税庁の質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分」でも確認できます。
第3種・第4種・第5種の違い
検索でも質問の多い「3種と4種」「4種と5種」の分かれ目を、通達の考え方で整理しました。
| 分かれ目 | 第3種(70%) | 第4種(60%) | 第5種(50%) |
|---|---|---|---|
| 材料を誰が用意するか(建設・製造) | 自分で材料を調達して施工・製造する | 材料の支給を受け、加工賃だけを受け取る | ― |
| 飲食物の提供のしかた | 自分で作った飲食物の持ち帰り販売、宅配専門の販売(製造小売) | 店内飲食、出前 | ― |
| サービス業かどうか | ― | 飲食店業 | 飲食店業以外のサービス業、運輸通信業、金融業・保険業 |
| 加工賃を受け取る事業 | ― | 日本標準産業分類で製造業等に当たる事業の加工賃 | 日本標準産業分類でサービス業等に当たる事業は、加工賃でも第5種 |
根拠:基本通達13-2-4、13-2-6、13-2-7(注)、13-2-8の2、13-2-8の3。第4種は、ほかの区分に当たらない事業の受け皿で、事業で使っていた固定資産の売却も第4種です(13-2-9)。
売上は事業区分ごとに分けて記帳する
2種類以上の事業を営む事業者が、課税売上げを事業ごとに区分していない場合、区分していない部分には、その中で最も低いみなし仕入率が適用されます(No.6505)。取引ごとにどの区分に当たるかが帳簿や請求書で分かるようにしておくことが大切です。売上げの返品・値引きなどで区分していない部分は、売上げの帳簿などをもとに合理的に区分します(基本通達13-2-10)。区分しなかった場合の税額の違いは計算例で示しています。
業種ごとの計算例や年間の税務スケジュールは業種別の税務ガイド(10業種)にまとめています。
簡易課税の計算方法と計算例
【確定】計算の決まりは国税庁 タックスアンサー No.6505によります。以下の計算例は当会の試算で、売上はすべて税率10%、売上げの返品・値引きや貸倒れはないものとしています。
計算の手順
- 税率ごとに課税標準額を出します(税込みの課税売上高 × 100/110。千円未満切捨て)。
- 課税標準額 × 7.8%(軽減税率の売上は6.24%)で、消費税額(国税)を出します。
- 消費税額 × みなし仕入率で、控除対象仕入税額を出します。2種類以上の事業がある場合は、下の計算例②〜④のとおりです。
- 消費税額 − 控除対象仕入税額 = 差引税額(百円未満切捨て)
- 地方消費税 = 差引税額 × 22/78(百円未満切捨て)
- 納付税額 = 差引税額 + 地方消費税
税率10%の売上だけなら、「税抜売上 × 10% ×(1 − みなし仕入率)」でもほぼ同じ額になりますが、申告書では上の手順で国税と地方消費税を分けて計算します。
計算例①:小売業(第2種)だけの場合
税抜の課税売上高3,000万円(税込3,300万円)の小売業者の場合です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 課税標準額 | 33,000,000 × 100/110 | 30,000,000円 |
| 消費税額(国税) | 30,000,000 × 7.8% | 2,340,000円 |
| 控除対象仕入税額 | 2,340,000 × 80% | 1,872,000円 |
| 差引税額 | 2,340,000 − 1,872,000 | 468,000円 |
| 地方消費税 | 468,000 × 22/78 | 132,000円 |
| 納付税額 | 468,000 + 132,000 | 600,000円 |
計算例②:2種類の事業で、75%に届かない場合
小売業(第2種)2,000万円とサービス業(第5種)1,000万円、合計3,000万円(いずれも税抜)の場合です。小売業の割合は3分の2(約66.7%)で75%に届かないため、次の③の特例は使えません。事業ごとの消費税額にそれぞれのみなし仕入率をかけて合計します(No.6505の簡便法。返品や貸倒れの回収がないこの例では、原則法で計算しても同じ額です)。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 消費税額(国税) | 30,000,000 × 7.8% | 2,340,000円 |
| 控除対象仕入税額 | 小売 1,560,000 × 80% + サービス 780,000 × 50% | 1,638,000円 |
| 差引税額 | 2,340,000 − 1,638,000 | 702,000円 |
| 地方消費税 | 702,000 × 22/78 | 198,000円 |
| 納付税額 | 702,000 + 198,000 | 900,000円 |
控除対象仕入税額は消費税額の70%に当たり、全体としてのみなし仕入率は70%になります。
計算例③:1種類の事業が75%以上を占める場合(75%特例)
2種類以上の事業を営み、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合は、その事業のみなし仕入率を全体に適用できます(No.6505の特例計算イ)。特例は使っても使わなくてもよく、納付税額が少ないほうを選べます。小売業(第2種)2,400万円(80%)とサービス業(第5種)600万円(20%)の場合で比べます。
| 項目 | 事業ごとに計算 | 75%特例(全体に80%) |
|---|---|---|
| 消費税額(国税) | 2,340,000円 | 2,340,000円 |
| 控除対象仕入税額 | 1,731,600円 | 1,872,000円 |
| 差引税額 | 608,400円 | 468,000円 |
| 地方消費税 | 171,600円 | 132,000円 |
| 納付税額 | 780,000円 | 600,000円 |
事業ごとの計算の控除対象仕入税額は、1,872,000 × 80% + 468,000 × 50% = 1,731,600円です。この例では75%特例のほうが180,000円少なくなります。
計算例④:3種類以上の事業で、2種類の合計が75%以上の場合
3種類以上の事業を営み、特定の2種類の事業の課税売上高の合計が全体の75%以上を占める場合は、その2種類のうちみなし仕入率の高いほうの事業にはその率を、それ以外の売上には2種類のうち低いほうの率を適用できます(No.6505の特例計算ロ)。卸売業(第1種)1,500万円、小売業(第2種)1,000万円、サービス業(第5種)500万円の場合、卸売業と小売業の合計は2,500万円で、全体の約83.3%です。
| 項目 | 事業ごとに計算 | 特例(第1種は90%、残りは80%) |
|---|---|---|
| 消費税額(国税) | 2,340,000円 | 2,340,000円 |
| 控除対象仕入税額 | 1,872,000円 | 1,989,000円 |
| 差引税額 | 468,000円 | 351,000円 |
| 地方消費税 | 132,000円 | 99,000円 |
| 納付税額 | 600,000円 | 450,000円 |
事業ごとの計算は 1,170,000 × 90% + 780,000 × 80% + 390,000 × 50% = 1,872,000円、特例は 1,170,000 × 90% +(780,000 + 390,000)× 80% = 1,989,000円です。
事業区分ごとに売上を区分していない場合
計算例②の売上を事業ごとに区分していなかった場合、区分していない売上の全体に、その中で最も低い第5種の50%が適用されます(No.6505)。控除対象仕入税額は2,340,000 × 50% = 1,170,000円、差引税額1,170,000円、地方消費税330,000円で、納付税額は1,500,000円です。区分した場合(900,000円)より600,000円多くなります。
申告書と試算ツール
簡易課税で申告するときは、簡易課税用の申告書と、付表4-3(税率別消費税額計算表)・付表5-3(控除対象仕入税額等の計算表)を使います(国税庁「消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方」)。各欄の書き方は消費税申告書の書き方をご覧ください。一般課税と簡易課税の納付税額の目安は、消費税計算ツール(納付税額の試算)で比べられます。3割特例との比べ方は次の節で説明しています。
簡易課税を選ぶかどうかの判断
実際の仕入税額の割合とみなし仕入率を比べる
一般課税の納付税額は、実際の課税仕入れの税額で決まります。売上税額に対する実際の仕入税額の割合が、自分の事業区分のみなし仕入率より低ければ簡易課税のほうが、高ければ一般課税のほうが、納付税額は少なくなります。売上も仕入れもすべて税率10%なら、この割合は「税抜の課税仕入れ等 ÷ 税抜の課税売上高」と同じです。
従業員に支払う給与は課税仕入れに当たりません(消費税法2条1項12号)。そのため、人件費の割合が大きく、課税仕入れの少ない事業ほど、実際の割合が低くなり、簡易課税が有利になりやすくなります。反対に、仕入れや外注費、設備投資が多い年は、一般課税のほうが有利になります。
| ケース | 一般課税 | 簡易課税(第5種) |
|---|---|---|
| 通常の年:税込の課税仕入れ等660万円(仕入税額・国468,000円) | 1,400,000円の納付 | 1,000,000円の納付 |
| 設備投資の年:税込の課税仕入れ等2,750万円(仕入税額・国1,950,000円) | 500,000円の還付 | 1,000,000円の納付 |
売上税額(国)は20,000,000 × 7.8% = 1,560,000円です。一般課税の仕入税額は税込の課税仕入れ等 × 7.8/110(割戻し計算)で、通常の年は差引税額1,092,000円+地方消費税308,000円、設備投資の年は控除不足還付税額390,000円+地方消費税110,000円です。簡易課税は差引税額780,000円+地方消費税220,000円です。この例では、税抜の課税仕入れ等が税抜の課税売上高の50%(第5種のみなし仕入率)を超える年は、一般課税のほうが納付税額が少なくなります。
ご自身の課税売上高・事業区分・課税仕入れ等を入れて、一般課税と簡易課税のどちらが有利かをすぐに試算したい場合は、簡易課税と原則課税、どっちが得?消費税 有利判定シミュレーターをご利用ください。
還付が見込まれる年と、2年継続・届出の制限
- 多額の設備投資をする年や、輸出取引が多く売上の多くが輸出免税になる年は、一般課税なら仕入税額の還付を受けられることがあります。簡易課税では、通常、還付税額は生じません(インボイスQ&A 問117-3)。輸出免税の仕組みは輸出免税と消費税の還付で説明しています。
- 簡易課税は選んだら原則2年間続けます。設備投資などの予定がある場合は、届出の前に2年分の見通しを立てておく必要があります(2年間は続けて適用する)。
- 一般課税で申告する年に高額特定資産(税抜1,000万円以上の棚卸資産や固定資産)などを仕入れると、その課税期間の初日から3年を経過する日を含む課税期間の初日の前日まで、簡易課税の届出書を出せなくなります(届出書を出せない期間)。
3割特例(個人事業者の令和9年分・令和10年分)との比較
【確定】3割特例の納付税額は、業種にかかわらず売上税額の30%です。簡易課税の納付税額の割合(第1種10%〜第6種60%。一覧表の3列目)と比べると、第1種・第2種は簡易課税、第3種は同じ、第4種〜第6種は3割特例のほうが少なくなります。国税庁のインボイスQ&A 問117-3も、小売業なら簡易課税のほうが納付税額が少なくなるという例です。
3割特例は事前の届出が要らず、年分ごとに申告のときに選べますが、使えるのは要件を満たす個人事業者の令和9年分・令和10年分だけで、法人は使えません(問114-2)。業種別の金額の比較、要件、使えない年分は3割特例の要件・計算と簡易課税との比較で説明しています。2割特例・3割特例の翌年分から簡易課税に移る場合の届出期限は、2割特例・3割特例の後の期限をご覧ください。
簡易課税の届出と手続き(期限・様式・制限・2年継続)
届出書の提出期限(原則と特例)
【確定】「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は、原則として、提出した日を含む課税期間の翌課税期間から生じます。そのため、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出す必要があります(届出書の記載要領 2⑴)。期限を過ぎて出した場合は、希望した課税期間ではなく、その次の課税期間から適用されます。
| 適用を受けたい課税期間など | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人事業者が令和9年分(2027年1月1日〜)から | 2026年12月31日(木) | 消費税法37条1項、No.6505 |
| 12月決算の法人が2027年1月1日に始まる事業年度から | 2026年12月31日(木) | 同上 |
| 3月決算の法人が2027年4月1日に始まる事業年度から | 2027年3月31日(水) | 同上 |
| 9月決算の法人が2026年10月1日に始まる事業年度から | 2026年9月30日(水) | 同上 |
| 事業を開始した課税期間から(新規開業・法人設立) | その課税期間の末日 | 記載要領 2⑴、タックスアンサー No.6629(注3) |
| 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者になる課税期間から(令和5年10月1日〜令和11年9月30日の日を含む課税期間) | 登録日を含む課税期間の末日 | No.6505、国税庁リーフレット |
| 2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から | その翌課税期間の確定申告期限(翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、その翌課税期間の末日) | 平成28年改正法附則51条の2第6項・51条の3第5項、インボイスQ&A 問117 |
開業時のほかの届出は新規開業時の注意点にまとめています。登録日を含む課税期間の特例については、国税庁リーフレット「簡易課税制度を選択する場合の届出書の提出時期の特例(PDF)」に記載例があります。
2割特例・3割特例の後に簡易課税へ移る場合の期限(決算月別)
【確定・2026年10月1日施行】2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税を使う場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間の初日の前日に出したものとみなされます(平成28年改正法附則51条の2第6項・51条の3第5項、インボイスQ&A 問117(PDF))。この「確定申告期限まで」の扱いは、翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合に使えます。翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、見直し前のとおり、その翌課税期間中(末日まで)に出します。
| 特例を使った年分 | 簡易課税を始める年分 | 届出書の提出期限 |
|---|---|---|
| 令和7年分に2割特例 | 令和8年分 | 2027年3月31日(水) |
| 令和8年分に2割特例 | 令和9年分 | 2028年3月31日(金) |
| 令和9年分に3割特例 | 令和10年分 | 2029年4月2日(月) |
| 令和10年分に3割特例 | 令和11年分 | 2030年4月1日(月) |
個人事業者の消費税の確定申告期限は翌年3月31日で、土曜日・日曜日にあたるときは翌月曜日です。令和7年分の例はインボイスQ&A 問117、令和11年分の例は国税庁リーフレットに載っている例です。ほかは同じ決まりに当てはめて当会が日付を確認しました。
自社の決算月の行だけを確認すれば足ります。
| 決算月 | 2割特例を使える最後の事業年度 | 簡易課税を始める事業年度 | 届出書の提出期限 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 2026年2月1日〜2027年1月31日 | 2027年2月1日〜2028年1月31日 | 2028年3月31日(金) |
| 2月 | 2026年3月1日〜2027年2月28日 | 2027年3月1日〜2028年2月29日 | 2028年5月1日(月) |
| 3月 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 2027年4月1日〜2028年3月31日 | 2028年5月31日(水) |
| 4月 | 2026年5月1日〜2027年4月30日 | 2027年5月1日〜2028年4月30日 | 2028年6月30日(金) |
| 5月 | 2026年6月1日〜2027年5月31日 | 2027年6月1日〜2028年5月31日 | 2028年7月31日(月) |
| 6月 | 2026年7月1日〜2027年6月30日 | 2027年7月1日〜2028年6月30日 | 2028年8月31日(木) |
| 7月 | 2026年8月1日〜2027年7月31日 | 2027年8月1日〜2028年7月31日 | 2028年10月2日(月) |
| 8月 | 2026年9月1日〜2027年8月31日 | 2027年9月1日〜2028年8月31日 | 2028年10月31日(火) |
| 9月 | 2025年10月1日〜2026年9月30日 | 2026年10月1日〜2027年9月30日 | 2027年11月30日(火) |
| 10月 | 2025年11月1日〜2026年10月31日 | 2026年11月1日〜2027年10月31日 | 2028年1月4日(火) |
| 11月 | 2025年12月1日〜2026年11月30日 | 2026年12月1日〜2027年11月30日 | 2028年1月31日(月) |
| 12月 | 2026年1月1日〜2026年12月31日 | 2027年1月1日〜2027年12月31日 | 2028年2月29日(火) |
提出期限は、簡易課税を始める事業年度の消費税の確定申告期限(事業年度の末日の翌日から2か月以内)です。期限が土曜日・日曜日・祝日や12月29日〜1月3日にあたるときは、その翌日以後の最初の平日になります(インボイスQ&A 問117(注2)、国税通則法10条2項)。この表は当会が計算したもので、12月決算の日付は国税庁リーフレットの例と一致します。消費税の申告期限の延長の特例(消費税法45条の2)を受けている法人は、延長後の期限が提出期限です。
なお、令和7年9月期に2割特例を使った9月決算の法人が、令和8年9月期(2026年9月30日に終わる事業年度)から簡易課税にする場合は、見直し前のルールが適用され、令和8年9月期中の2026年9月30日(水)までに出す必要があります(問117の例)。
期限が休日の場合と、提出の方法
- 「適用を受けたい課税期間の初日の前日まで」「その課税期間の末日まで」という期限は、その日が土曜日・日曜日・祝日などでも延長されません(国税庁 タックスアンサー No.6629(注2)、インボイスQ&A 問117(注3))。
- 郵便や信書便で出した場合は、通信日付印に表示された日に提出したものとみなされます(No.6629(注2))。
- 2026年12月31日(木)は行政機関の休日(12月29日〜1月3日)にあたり、税務署の窓口では受け付けていませんが、期限は延びません。e-Tax、郵送、税務署の時間外収受箱への投函で提出できます(国税庁 D1-22 消費税簡易課税制度選択届出手続、行政機関の休日に関する法律1条)。e-Taxの利用可能時間は、e-Taxホームページで確認してください。
- 提出先は納税地を所轄する税務署長です。個人事業者はe-Taxソフト(WEB版)の「マイページ」から届け出ることもできます(D1-22)。
2026年10月1日以後に提出する届出書の様式
【確定】国税庁の手続ページ(D1-22)には、届出書と記載要領が「令和8年9月30日以前提出用」と「令和8年10月1日以後提出用」に分けて掲載されています。2026年10月1日以後に出す場合は、以後提出用を使います。以後提出用の記載要領では、2割特例の後の提出期限が「翌課税期間の確定申告期限まで」に改められ、3割特例(平成28年改正法附則51条の3第5項)の後に簡易課税を選ぶ場合が加わっています。
- 2割特例・3割特例の後の特例や、登録日を含む課税期間の特例で適用を受ける場合は、届出書の該当欄(附則の規定により適用を受けたい旨の欄)に「1」と記載します。
- 「① 適用開始課税期間」には、簡易課税の適用を受けたい課税期間の初日と末日を書きます。「② ①の基準期間」「③ ②の課税売上高」には、その基準期間と、基準期間の税抜きの課税売上高(輸出取引の売上高を含み、売上げの返品・値引きなどの金額を含まない額)を書きます。
- 「事業の内容」には具体的な事業内容を、「事業区分」には第1種〜第6種のうち該当するものを数字で書きます。
- 「提出要件の確認」欄のイ〜ニは、課税事業者を選択している事業者(イ)、新設法人・特定新規設立法人(ロ)、高額特定資産の仕入れ等などをした事業者(ハ)、金地金等の仕入れが200万円以上の事業者(ニ)が、次の届出書を出せない期間に当たらないかを確認して書く欄です。
出典:国税庁「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」(令和8年10月1日以後提出用、PDF)。9月30日以前提出用の記載要領と文面を比べて、違いを確認しました。
届出書を出せない期間(選択の制限)
直前に高額な設備投資(100万円以上の資産や、1,000万円以上の棚卸資産・固定資産の仕入れなど)をした事業者や、新設法人が対象です。通常の売上規模で設備投資の少ない事業者には関係しません。
【確定】次の場合は、それぞれ定められた期間、簡易課税制度選択届出書を出せません(消費税法37条3項、記載要領(注)3〜6)。事業を開始した課税期間から適用を受ける場合など、政令で定める場合は除かれます。
| 該当する場合 | 届出書を出せない期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 課税事業者を選択した事業者が、課税事業者となった日から2年を経過する日までに開始した各課税期間中に、調整対象固定資産(1つの取引単位の税抜価額が100万円以上の、棚卸資産以外の資産)を仕入れた | 仕入れた日を含む課税期間の初日から3年を経過する日を含む課税期間の初日の前日まで | 消費税法37条3項1号 |
| 新設法人・特定新規設立法人が、基準期間のない事業年度に含まれる各課税期間中に、調整対象固定資産を仕入れた | 同上 | 37条3項2号 |
| 一般課税で申告する課税期間(簡易課税・2割特例・3割特例の適用を受けない課税期間)中に、高額特定資産(1つの取引単位の税抜価額が1,000万円以上の棚卸資産・調整対象固定資産)を仕入れた | 同上(自ら建設等をした高額特定資産は、建設等に要した額の累計が1,000万円以上となった課税期間の初日から、建設等が完了した課税期間の初日以後3年を経過する日を含む課税期間の初日の前日まで) | 37条3項3号 |
| 高額特定資産である棚卸資産などについて、棚卸資産に係る消費税額の調整(消費税法36条1項・3項)の適用を受けた | 適用を受けた課税期間の初日以後3年を経過する日を含む課税期間の初日の前日まで | 37条3項4号 |
| 一般課税で申告する課税期間中に、金・白金の地金等を仕入れ、その課税期間の仕入れの合計額(税抜)が200万円以上になった | 仕入れた日を含む課税期間の初日から3年を経過する日を含む課税期間の初日の前日まで | 37条3項5号 |
- 届出書を出した後、同じ課税期間中に上の場合に当たることになったときは、出した届出書は提出がなかったものとみなされます(消費税法37条4項、記載要領(注)7)。
- 新設法人や特定新規設立法人であること自体は、制限の理由になりません。制限されるのは、基準期間のない事業年度中に調整対象固定資産を仕入れた場合です(記載要領(注)3)。
- 例:個人事業者が令和8年分(一般課税で申告)に高額特定資産を仕入れた場合、令和8年1月1日から3年を経過する日(2028年12月31日)を含む令和10年分の初日(2028年1月1日)の前日までは届出書を出せません。届出書を出せるのは2028年1月1日以後で、簡易課税を使えるのは最短で令和11年分からです(当会が規定に当てはめて計算)。
2年間は続けて適用する(やめるときの手続き)
簡易課税をやめるときは、やめたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を出します。ただし、事業を廃止した場合を除き、選択届出書の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日を含む課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を出せません(No.6505)。つまり、少なくとも2年間は簡易課税で申告することになります。
| 簡易課税を始めた課税期間 | 不適用届出書を出せる日 | 一般課税に戻れる最初の課税期間 |
|---|---|---|
| 個人事業者:令和9年分(2027年1月1日〜) | 2028年1月1日以後 | 令和11年分(2029年1月1日〜) |
| 3月決算の法人:2027年4月1日に始まる事業年度 | 2028年4月1日以後 | 2029年4月1日に始まる事業年度 |
当会が規定に当てはめて計算しました。不適用届出書は、戻りたい課税期間の初日の前日(上の例では2028年12月31日、2029年3月31日)までに出す必要があります。
5,000万円を超えた年があっても、届出の効力は続く
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えて簡易課税を使えない課税期間や、1,000万円以下で免税事業者になる課税期間があっても、選択届出書の効力はなくなりません。その後、基準期間の課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下になった課税期間は、不適用届出書を出していない限り、再び簡易課税が適用されます(記載要領(注)1、No.6505)。一般課税に戻りたい場合は、不適用届出書を出しておく必要があります。
期限に間に合わなかった場合・災害などの場合
- やむを得ない事情で期限までに届出書を出せなかった場合は、事情を書いた申請書を出して税務署長の承認を受ければ、期限内に出したものとみなされます(国税庁 タックスアンサー No.6633)。
- 災害その他やむを得ない理由で被害を受け、簡易課税の適用を受ける(またはやめる)必要が生じた場合は、税務署長の承認を受けて、災害等のあった課税期間などから適用を受ける(やめる)ことができます(No.6632)。
令和8年度税制改正と簡易課税
【確定】令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)のうち、簡易課税に関係するものは次のとおりです。いずれも2026年10月1日施行です(国税庁 インボイス制度 令和8年度税制改正特集)。
| 改正 | 内容 | 簡易課税との関係 |
|---|---|---|
| 2割特例の終了 | 延長されず、令和8年9月30日を含む課税期間まで。個人事業者は令和8年分が最後 | 法人は、2割特例の最後の事業年度の次から一般課税か簡易課税で申告します。いつまで使えるかは2割特例はいつまで使えるか(個人・法人の決算月別)で説明しています |
| 3割特例の新設 | 個人事業者の令和9年分・令和10年分、納付税額は売上税額の30% | 簡易課税との比較は3割特例との比較をご覧ください |
| 簡易課税の届出期限の特例 | 2割特例・3割特例を使った翌課税期間の確定申告期限まで届出できる | 決算月別の期限 |
| 届出書の様式 | 2026年10月1日以後提出用の様式と記載要領 | 様式の説明 |
| 免税事業者等からの仕入れの経過措置 | 控除できる割合が80%から70%に(2026年10月1日〜2028年9月30日)。同じ相手先から年1億円を超える仕入れには使えない(2026年10月1日以後に開始する課税期間から) | 簡易課税では仕入税額をみなし仕入率で計算するため、この割合の影響を受けません。詳しくは免税事業者等からの仕入れの経過措置(70%控除と1億円上限)をご覧ください |
【予定・法案未成立】飲食料品の消費税率1%と簡易課税の特例
2026年9月26日時点の状況
2026年9月15日に「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。法律はまだ成立していません。国税庁の資料も、今後、法案が国会に提出され、審議を経て可決・成立した場合の内容として公表されています(国税庁 消費税率引下げ特設サイト)。法律が成立し、取扱いが確定したら、この節を更新します。
大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品(現在、軽減税率8%の対象となっている飲食料品と同じ範囲)の消費税率を1%(国と地方の合計)にするとしています。酒類と外食は10%のままです。対象品目の考え方は軽減税率の対象品目、酒類の税については酒税の仕組みと2026年10月1日の税率改正で説明しています。引下げ案の全体像(対象範囲、期間、事業者の実務)は飲食料品の消費税1%はいつから(2027年4月からの引下げ案と事業者の実務)にまとめています。簡易課税については、国税庁のパンフレットとQ&Aに次の特例が示されています。
計算方法の特例:飲食料品の売上税額と同じ額を仕入税額にする
簡易課税で申告する場合、業種区分にかかわらず、飲食料品の販売(1%対象)の売上税額と同じ額を仕入税額とし、それ以外の売上税額にはみなし仕入率をかけた額を加えて控除します。2割特例・3割特例を使う場合も同様とされています(国税庁 Q&A 問3-6)。
| 売上の内容 | 売上金額(税額) | 仕入税額の計算 |
|---|---|---|
| 飲食料品の小売(税率1%) | 2,000万円(20万円) | 売上税額と同額:20万円 |
| 雑貨などの小売(第2種、80%) | 300万円(30万円) | 30万円 × 80% = 24万円 |
| イートイン(外食、第4種、60%) | 100万円(10万円) | 10万円 × 60% = 6万円 |
| 合計 | 売上税額 60万円 | 仕入税額 50万円、納付税額 10万円 |
75%ルールは飲食料品を除いて判定する
この特例を受ける場合、75%ルール(計算例③・④)の判定と計算は、飲食料品(1%対象)の取引を除いて行います。国税庁 Q&A 問3-7の例では、飲食料品の小売2,500万円、雑貨などの小売(第2種)800万円、イートイン(第4種)200万円の場合、飲食料品を除いた1,000万円のうち雑貨などの小売が80%(800万円 ÷ 1,000万円)で75%以上になるため、第2種の80%を飲食料品以外の売上全体に適用できます。
一般課税に切り替えるための届出の特例
飲食料品の販売を行う簡易課税の事業者が、2027年4月1日を含む課税期間中に不適用届出書を出せば、その課税期間から一般課税で申告できるとされています。その課税期間には、2年間の継続適用の要件は適用しません。届出書の「参考事項」欄には「飲食料品特例」と記載します。税率の引下げで売上税額が減り、一般課税なら還付が見込まれる場合を想定した特例です(国税庁パンフレット(令和8年9月、PDF)、国税庁 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(PDF))。
インボイス制度と簡易課税
- 売り手として:インボイス発行事業者は、取引先の課税事業者から求められたらインボイスを交付する義務があります(消費税法57条の4)。簡易課税を選んでいても同じです。登録の手続きはインボイス発行事業者の登録手続で説明しています。
- 買い手として:簡易課税では、仕入税額控除のためにインボイスを保存する必要はありません(財務省「簡易課税制度の概要」)。仕入先がインボイス発行事業者かどうかで、納付税額は変わりません。一般課税の場合の扱いは上の表のとおりです。
- 帳簿書類:所得税や法人税では、帳簿や書類の保存が別に定められています(タックスアンサー No.2080、No.5930)。簡易課税を選んでも、領収書などを捨ててよいわけではありません。
- 登録した課税期間からの適用:免税事業者が令和11年9月30日を含む課税期間までにインボイス登録を受けて課税事業者になった場合は、その課税期間中に届出書を出せば、その課税期間から簡易課税を使えます(提出期限の表)。
インボイス制度の全体像はインボイス制度の概要をご覧ください。
よくある質問
簡易課税の届出書はいつまでに出せばよいですか。
原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までです。個人事業者が令和9年分から使う場合は2026年12月31日、3月決算の法人が2027年4月1日に始まる事業年度から使う場合は2027年3月31日です。事業を開始した課税期間、インボイス登録で課税事業者になった課税期間、2割特例・3割特例を使った翌課税期間には、提出期限の特例があります。〔国税庁 タックスアンサー No.6505〕
簡易課税でも、仕入れの領収書やインボイスは保存が必要ですか。
消費税の仕入税額控除のためにインボイスなどを保存する必要はありません。ただし、所得税や法人税では帳簿や書類の保存が別に定められているため、領収書などは保存しておく必要があります。〔財務省 簡易課税制度の概要、国税庁 タックスアンサー No.2080・No.5930〕
課税売上高が5,000万円を超えたらどうなりますか。
簡易課税を使えるかどうかは基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高で判定するため、影響するのは2年後の課税期間です。その課税期間は簡易課税を使えませんが、届出の効力はなくならず、その後の基準期間の課税売上高が1,000万円超5,000万円以下になれば、不適用届出書を出していない限り、再び簡易課税が適用されます。〔国税庁 届出書の記載要領、No.6505〕
事業ごとに一般課税と簡易課税を選び分けられますか。
できません。簡易課税は事業者ごとに選ぶ制度で、適用を受ける課税期間は、すべての事業の売上について事業区分ごとのみなし仕入率で計算します。〔消費税法37条1項、国税庁 タックスアンサー No.6505〕
簡易課税で還付を受けられますか。
仕入控除税額は売上税額にみなし仕入率をかけて計算するため、仕入れや設備投資が多くても、通常、還付税額は生じません。ただし、中間申告で納めた税額が確定申告の税額を上回る場合は、その差額が還付されます。〔インボイスQ&A 問117-3、消費税法53条〕
課税売上割合や非課税の売上は、簡易課税の計算に関係しますか。
簡易課税の仕入控除税額は売上税額にみなし仕入率をかけて計算するため、一般課税のように課税売上割合で仕入税額を按分することはありません。住宅の貸付けや土地の譲渡などの非課税の売上は課税売上げではないため、売上税額にも事業区分の判定にも含めません。〔国税庁 タックスアンサー No.6505・No.6201〕
2割特例を使っていました。2026年10月以降はどうなりますか。
2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までです。個人事業者は令和8年分が最後で、令和9年分・令和10年分は要件を満たせば3割特例を使えます。法人は、最後の事業年度の次から一般課税か簡易課税で申告します。2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税を使う場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば間に合います。〔国税庁 令和8年度税制改正特集、インボイスQ&A 問117〕
3割特例と簡易課税はどちらが有利ですか。
売上税額に対する納付税額の割合は、3割特例が30%、簡易課税が第1種10%〜第6種60%です。みなし仕入率から計算すると、第1種・第2種は簡易課税、第3種は同じ、第4種〜第6種は3割特例のほうが少なくなります。3割特例を使えるのは要件を満たす個人事業者の令和9年分・令和10年分だけです。多額の設備投資などで還付が見込まれる年は、一般課税とも比べます。〔インボイスQ&A 問117-3〕
届出期限の日が土日・祝日の場合や、期限を過ぎた場合はどうなりますか。
「適用を受けたい課税期間の初日の前日まで」という期限は、土日・祝日でも延長されません。郵送した場合は、通信日付印の日に提出したものとみなされます。期限を過ぎて出した届出書は、提出した日を含む課税期間の翌課税期間から効力が生じます。やむを得ない事情で間に合わなかった場合は、承認を受ければ期限内に出したものとみなされる特例があります。〔国税庁 タックスアンサー No.6629・No.6633〕
建設業の一人親方は第何種ですか。
建設業は第3種です。ただし、材料を自分で調達せず、材料の支給を受けて加工賃(手間賃)だけを受け取る場合は第4種になります。〔消費税法基本通達13-2-4・13-2-7、財務省 簡易課税制度の概要〕
事業で使っていた車や備品を売ったときの事業区分は何ですか。
事業者が自分で使っていた固定資産などの売却は、第4種です。〔消費税法基本通達13-2-9〕
簡易課税制度の移り変わりと会報の記録
簡易課税制度は、1989年の消費税導入のときから設けられています。適用上限と事業区分は、次のように改められてきました(財務省「消費税の中小事業者に対する特例措置の推移」(PDF))。
| 時期 | 適用上限(基準期間の課税売上高) | みなし仕入率の区分 |
|---|---|---|
| 創設時 | 5億円 | 90%・80%の2区分 |
| 平成3年改正 | 4億円 | 90%・80%・70%・60%の4区分 |
| 平成6年秋の税制改革等(平成9年4月施行) | 2億円 | 90%・80%・70%・60%・50%の5区分 |
| 平成15年度改正(平成16年4月施行) | 5,000万円 | ― |
| 平成26年度改正 | ― | 90%〜40%の6区分。金融業・保険業を第4種から第5種(50%)へ、不動産業を第5種から第6種(40%)へ(法人は平成28年3月決算から、個人は平成28年分から) |
| 平成30年度改正 | ― | 軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業を第2種(80%)に(令和元年10月1日を含む課税期間から) |
新宿間税会の会報『たっくす』にも、当時の案内が残っています。第16号(1989年8月)の「消費税の届出はお済ですか」は、基準期間の課税売上高が5億円以下の事業者に、簡易課税制度選択届出書の提出を呼びかけています。この記事は、本来の期限の9月30日が土曜日にあたるため提出期限を10月2日と案内していますが、現在の届出書の期限(初日の前日まで)は、休日でも延長されない扱いです(期限が休日の場合)。第22号(1992年8月)の「署からのお知らせ」欄の消費税法Q&Aは、改正で設けられた簡易課税の特例(1種類の事業が全体の75%以上を占める場合など)を解説しています。
新宿間税会の活動は新宿間税会についてをご覧ください。
まとめ
- 簡易課税は、売上税額にみなし仕入率(第1種90%〜第6種40%)をかけた額を仕入税額とみなす計算方法で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が、届出によって選べます。
- 事業区分は原則として取引ごとに判定し、製造小売は第3種、材料支給の加工賃は第4種、店内飲食は第4種、自家製の持ち帰り販売は第3種、飲食店業以外のサービス業は第5種です。売上を区分しないと、最も低い率が適用されます。
- 2種類以上の事業がある場合は、1種類で75%以上、または3種類以上で2種類の合計が75%以上なら、特例で計算できます。
- 届出は原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(個人の令和9年分は2026年12月31日)で、休日でも延長されません。選んだら原則2年間は続けて適用します。
- 2割特例・3割特例を使った翌課税期間から簡易課税に移る場合は、その翌課税期間の確定申告期限まで届出できます。3割特例との比較は3割特例との比較をご覧ください。
自分の事業区分や、どの方法を選ぶかの判断に迷うときの無料の相談先は、新宿で税金の相談をしたいとき(無料の公的な相談窓口)にまとめています。
出典・参考資料
いずれも2026年9月25日〜26日に内容を確認しました。
国税庁 タックスアンサー・通達
- No.6505 簡易課税制度(令和8年4月1日現在法令等)
- No.6509 簡易課税制度の事業区分
- No.6629 消費税の各種届出書(届出書の提出期限、休日と郵送の扱い)
- No.6632 災害等により簡易課税制度の適用を受ける(受けることをやめる)必要が生じた場合
- No.6633 やむを得ない事情により簡易課税制度選択届出書の提出が間に合わなかった場合
- No.6201 非課税となる取引
- No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度、No.5930 帳簿書類等の保存期間
- 消費税法基本通達 第13章第2節 事業区分の判定(13-2-1〜13-2-10)
国税庁 届出の手続・様式
- D1-22 消費税簡易課税制度選択届出手続(令和8年9月30日以前提出用・令和8年10月1日以後提出用の様式)
- 消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等(令和8年10月1日以後提出用、PDF)
- リーフレット「簡易課税制度を選択する場合の届出書の提出時期の特例」(PDF)
国税庁 令和8年度税制改正・インボイスQ&A
- インボイス制度 令和8年度税制改正特集
- リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年5月改訂、PDF)
- インボイスQ&A 問114-2(3割特例)、問117(2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択)、問117-3(3割特例と簡易課税制度)
飲食料品の消費税率引下げ(予定・法案未成立)
- 国税庁 消費税率引下げ特設サイト
- 国税庁 パンフレット(令和8年9月、PDF)、飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(PDF)
- 内閣官房 飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(2026年9月15日閣議決定、PDF)
財務省・総務省・法令
- 財務省 簡易課税制度の概要(PDF)
- 財務省 消費税の中小事業者に対する特例措置の推移(PDF)
- 財務省 第221回国会における財務省関連法律(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)
- 総務省 日本標準産業分類 大分類K 不動産業,物品賃貸業(PDF)
- 消費税法(2条・37条・45条・53条・57条の4)、国税通則法(10条)、行政機関の休日に関する法律(1条)
改訂履歴と監修について
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2025年7月3日:公開
- 2026年9月25日:75%特例の説明と計算例、2割特例の期限、選択の制限、事業区分の判定例(パン屋)などの誤りを訂正
- 2026年9月26日:全面改訂(事業区分の節を前に移し、通達番号つきの判定例と第3種・第4種・第5種の違いを追加。計算例を法定の端数処理で計算し直し、75%特例の2つの型と区分しない場合を追加。届出期限の具体例(決算月別、2割特例・3割特例の後の特例)、2026年10月1日以後提出用の様式、2年継続と効力の継続、3割特例との比較、飲食料品1%案(法案未成立)の特例を追加。根拠を確認できない記述と図を削除)
監修の状況は、冒頭の「監修について」のとおりです。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。