建設業の消費税とインボイス:一人親方への外注・経過措置70%・簡易課税の事業区分

2026年10月1日以後に完了した外注工事から、一人親方など免税事業者への外注費は、仕入税額相当額の控除割合が80%から70%に下がります。建設業では、このほかにも簡易課税の事業区分(材料を自分で調達する工事は第3種、材料の支給を受けて手間賃だけを受け取る工事は第4種)や、工事の売上をいつ計上するかが、実務でよく問題になります。この記事では、元請と一人親方のそれぞれの立場から、確認することと計算例を説明します。

2026年10月からの要点(建設業)【確定】

立場変わること・確認すること
元請
(一般課税・割合)
免税事業者などインボイスのない外注先への外注費は、10月1日以後に完了した分から70%控除です(9月30日までの完了分は80%)。
元請
(一般課税・上限)
同じ外注先からの外注費が年1億円(税込み)を超える部分には、経過措置を使えません(1億円の上限)。
元請
(簡易課税など)
簡易課税・2割特例・3割特例で申告している場合、外注先が登録しているかどうかは、納める税額に影響しません。
一人親方
(登録済み)
個人事業者の2割特例は令和8年分(2026年分)が最後です。令和9年分・令和10年分は、要件を満たせば3割特例を選べます。
一人親方
(未登録)
免税事業者であれば、消費税の申告・納税は不要です。取引条件を見直す場合は、建設業法などのルールの範囲で元請と協議します。

割合の判定方法は一人親方・免税事業者への外注と経過措置、一人親方の計算方法の選択は一人親方の側:登録と計算方法にあります。

【確定】令和8年度税制改正と取適法(2026年9月26日時点)

免税事業者等からの仕入れの経過措置の見直し(80%から70%・50%・30%へ、1億円の上限)と3割特例の創設は、「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)で決まり、2026年10月1日に施行されます。また、下請法は2026年1月1日から中小受託取引適正化法(取適法)に改められましたが、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の請負契約には、取適法ではなく建設業法が適用されます。

目次
  1. 一人親方・免税事業者への外注と経過措置(70%・1億円上限)
  2. 一人親方の側:登録と計算方法(2割特例・3割特例・簡易課税)
  3. 簡易課税の事業区分:材料持ちは第3種、手間請けは第4種
  4. 当会の計算例(架空の設例3つ)
  5. 工事の売上を計上する時期:引渡しの日が原則
  6. 請求書・出来高検収書の扱い
  7. 建設業に関係する間接税:印紙税と軽油引取税
  8. 取引条件の見直し:建設業法・取適法・独占禁止法
  9. 2026年10月以後の日程
  10. よくある質問
  11. まとめ
  12. 出典・参考資料

一人親方・免税事業者への外注と経過措置(70%・1億円上限)

【確定・2026年10月1日施行】元請が一般課税で申告している場合、インボイス(適格請求書)を発行できない外注先(免税事業者の一人親方、登録していない専門工事業者など)への外注費は、仕入税額相当額(インボイスがあれば控除できた消費税額)の一定割合しか控除できません。この割合が2026年10月1日から下がります(国税庁 インボイスQ&A 問113、国税庁 令和8年度税制改正特集)。

控除できる割合(課税仕入れを行った日で判定)税込550,000円(10%)の外注費の場合
課税仕入れを行った日割合控除できる額(国と地方の合計の目安)
2023年10月1日〜2026年9月30日80%40,000円
2026年10月1日〜2028年9月30日70%35,000円
2028年10月1日〜2030年9月30日50%25,000円
2030年10月1日〜2031年9月30日30%15,000円
2031年10月1日以後0%0円

金額は当会の計算例です。インボイスがあれば控除できる額は 550,000 × 10/110 = 50,000円(国と地方の合計)で、表の額はその割合分です。申告で使う国の消費税分は 550,000 × 7.8/110 × 割合(70%なら27,300円)で計算します。計算方法と記帳例は免税事業者等からの仕入れの経過措置(計算方法と計算例)にあります。

外注費か給与か

一人親方への支払いが、請負の報酬ではなく、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく給与に当たる場合、その支払いはそもそも課税仕入れになりません(消費税法2条1項12号)。国税庁の通達は、区分が明らかでないときは、次のような事項を総合して判定するとしています(消費税法基本通達1-1-1)。

  • その仕事を他人が代わりに行うことができるか
  • 仕事をするに当たり、指揮監督を受けるか
  • 引渡し前の完成品が不可抗力で滅失した場合などでも、すでに行った仕事の報酬を請求できるか
  • 材料や用具などを支給されているか

この記事の外注費の説明は、請負の報酬として支払う場合を前提にしています。

影響を受けるのは一般課税で申告する元請

元請の計算方法外注先が未登録の場合の影響理由
一般課税影響する外注費などの課税仕入れごとの消費税額をもとに控除額を計算するため
簡易課税影響しない売上税額にみなし仕入率をかけて控除額を出すため(国税庁 No.6505)
2割特例(2026年9月30日を含む課税期間まで)影響しない控除額は売上税額の8割(問114)
3割特例(個人事業者の2027年分・2028年分)影響しない控除額は売上税額の7割(問114-2)

2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わります。次の課税期間から一般課税で申告する元請は、その課税期間から経過措置の割合の影響を受けます。

80%か70%か:外注工事が完了した日で判定

【確定】どの割合を使うかは、その課税仕入れを行った日で判断します(インボイスQ&A 問113-3)。課税仕入れを行った日は、売手の側の資産の譲渡等の時期の取扱いに準じて決まります(消費税法基本通達11-3-1)。請負は、物の引渡しを要するものは目的物の全部が完成して引渡しを受けた日、物の引渡しを要しないものは役務の全部が完了した日です。建設工事等の引渡しの日には、作業を結了した日、検収を完了した日、使用収益ができることとなった日など、合理的な日を継続して使います(消費税法基本通達9-1-5・9-1-6)。代金を支払った日や請求書の日付では決まりません(問113-3)。

外注工事の例割合
9月20日に着工し、9月30日に完了して引渡しを受けた(代金は10月31日に支払い)80%
9月20日に着工し、10月10日に完了して引渡しを受けた全体が70%(9月中の作業分を日割りしません)
完成した部分ごとに引渡しを受け、その都度代金を支払う特約がある工事のうち、9月30日までに引渡しを受けた部分80%(10月1日以後に引渡しを受けた部分は70%)

1行目と2行目は、問113-3の例(9月21日に始まり10月20日に完了した役務は全体が70%、代金を10月31日に支払っても変わらない)と同じ考え方です。3行目は、部分完成基準(基通9-1-8)を仕入れの側に当てはめた当会の整理です。

未成工事支出金として経理した外注費を、目的物を引き渡した日の課税期間の課税仕入れとしている場合(基通11-3-5)に、80%と70%をどう判定するかは、国税庁のインボイスQ&A(問113-3・問113-4)に説明がありません(2026年9月26日時点)。この経理をしている場合は、所轄の税務署に確認してください。取引ごとの判定の考え方は経過措置の割合を判定する日でも説明しています。

1億円の上限:同じ外注先から年1億円を超える部分は対象外

【確定・2026年10月1日以後に開始する課税期間から】同じ適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年(法人はその事業年度)に1億円を超える場合、超えた部分には経過措置を使えません。改正前の上限は10億円です(問113、国税庁 令和8年度税制改正特集)。上限は外注先ごとに判定するもので、免税事業者等への外注費の総額に対する上限ではありません。

1億円の上限が最初に適用される課税期間(課税期間を短縮していない場合)
事業者最初の課税期間
個人事業者2027年分(2027年1月1日〜12月31日)
12月決算の法人2027年1月1日に始まる事業年度
3月決算の法人2027年4月1日に始まる事業年度
9月決算の法人2026年10月1日に始まる事業年度

表は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるという規定を当てはめたものです。それより前に開始した課税期間の上限は、10億円(2024年10月1日〜2026年9月30日に開始した課税期間)です。詳しくは1億円の上限の説明にあります。

【与党大綱の検討事項・具体案なし】令和8年度の与党税制改正大綱は、この上限について「取引実態等を踏まえ、今後、更なる引下げについて検討する」としています。2026年9月26日時点で、具体的な金額や時期は示されていません(財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正849ページ)。

帳簿と請求書等の要件

【確定】経過措置を受けるには、区分記載請求書等と同様の記載事項(書類の作成者の氏名・名称、取引の年月日、取引の内容、税率ごとに合計した税込金額、交付を受ける者の氏名・名称)がある請求書等と、「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を書いた帳簿の両方を保存します(問113)。帳簿には、取引ごとに「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などと書く方法のほか、記号を付けて別に凡例で意味を示す方法も認められています(問113)。

2026年10月以後は、同じ外注先でも完了日によって80%と70%の取引が混ざります。「70%控除対象」のように割合ごとに区分して書いておくと、集計や後からの確認がしやすくなります(これは当会からの実務上の提案で、法令上の要件ではありません)。外注先が登録しているかどうかは、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号から確認できます。

一人親方の側:登録と計算方法(2割特例・3割特例・簡易課税)

登録しない場合

免税事業者のままであれば、消費税の申告と納税は必要ありません。財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(以下「免税事業者Q&A」)は、取引先(元請)が消費者・免税事業者である場合や、簡易課税・2割特例で申告している場合は、取引への影響は生じないと考えられるとしています(Q2)。取引先が一般課税で申告している場合は、取引先は一人親方への外注費について経過措置の割合(2026年10月1日以後は70%)までしか控除できません(同Q3)。

登録の手続きはインボイス登録のやり方(e-Tax・スマホ・郵送)で説明しています。

登録した場合の計算方法の比較

登録すると課税事業者になり、消費税の申告・納税が必要になります。免税事業者から登録した個人事業者が使える計算方法は、課税期間によって次のとおりです。

計算方法使える期間・主な要件納める税額の目安(売上税額に対する割合)
2割特例2026年9月30日を含む課税期間まで。個人事業者は令和8年分(2026年分、申告期限2027年3月31日)が最後。基準期間(前々年)の課税売上高1,000万円以下など20%
3割特例個人事業者の令和9年分・令和10年分。基準期間の課税売上高1,000万円以下など。法人は使えません30%
簡易課税(第3種:材料を自分で調達する工事)基準期間の課税売上高5,000万円以下。事前の届出が必要30%
簡易課税(第4種:材料の支給を受ける手間請け)同上40%
一般課税簡易課税を選択していなければ一般課税になります実際の課税仕入れによる

割合は、売上税額(国と地方の合計)に対する納付税額のおおよその割合で、実際の申告では端数処理があります。材料を自分で調達する工事では3割特例と簡易課税(第3種)が同じ負担になり、手間請け(第4種)では3割特例のほうが少なくなります(当会の計算例の設例1)。

3割特例の要件と使えない年分は3割特例の対象になる人と主な要件、2割特例の最後の課税期間は2割特例はいつまで使えるかで説明しています。

2割特例・3割特例・簡易課税では、仕入れの税額が売上の税額を上回っても還付は生じません。多額の設備投資などで還付を受けるには、一般課税で申告します。ただし、一般課税で申告する年分に税抜1,000万円以上の棚卸資産や固定資産(高額特定資産)を仕入れると、その後の年分に3割特例や簡易課税を使えなくなる場合があります(3割特例:設備投資を予定している場合)。重機などの購入を予定している場合は、購入の前に確認してください。

簡易課税に切り替える場合の届出の期限

【確定】簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、「消費税簡易課税制度選択届出書」を出して使います。届出の期限は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日です(国税庁 No.6505)。

2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税にする場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに出せば、その翌課税期間から使えます(翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。たとえば令和8年分に2割特例を使った個人事業者が令和9年分から簡易課税にする場合は、2028年3月31日(金)までです(インボイスQ&A 問117)。3割特例を使った後の期限は3割特例:簡易課税の届出期限にあります。

簡易課税の事業区分:材料持ちは第3種、手間請けは第4種

【確定】簡易課税では、建設業は原則として第3種事業(みなし仕入率70%)です。ただし、第3種に当たる事業でも、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」は第4種事業(60%)になります(国税庁 No.6509、消費税法基本通達13-2-4・13-2-7)。財務省の資料も、建設業は一般的に70%だが、材料が支給され工賃のみの請負の場合には60%になると説明しています(財務省「簡易課税制度の概要」)。事業区分は、原則として取引ごとに判定します(基通13-2-1)。

取引事業区分(みなし仕入率)根拠
材料を自分で調達して施工する工事第3種(70%)No.6509、基通13-2-4
元請などから材料の支給を受け、手間賃(加工賃)だけを受け取る工事(いわゆる手間請け)第4種(60%)基通13-2-4なお書き・13-2-7、財務省資料
請け負った建設工事の全部を他の事業者に施工させる場合第3種(70%)基通13-2-5(2)
自分で建築した住宅を販売する場合第3種(70%)基通13-2-4(注)2
他の者が建築した住宅を購入して、そのまま販売する場合第1種(90%)または第2種(80%)基通13-2-4(注)2
事業に使っていた車両や重機などを売却する場合第4種(60%)基通13-2-9

3行目は消費税の事業区分としての取扱いで、建設業法の一括下請負の禁止(22条)とは別の問題です。

2種類以上の事業をしている場合は、事業ごとに売上を区分して計算します。区分していない売上には、その中で最も低いみなし仕入率が適用されます。1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合は、その事業のみなし仕入率を全体に適用できる特例もあります(No.6505)。計算方法は簡易課税制度の事業区分で説明しています。材料の一部だけを自分で調達する場合など、区分の判断に迷う取引は、所轄の税務署に確認してください。

当会の計算例(架空の設例3つ)

次の3つは、当会が作成した架空の設例です。実在の事業者の数値ではありません。いずれも標準税率10%の取引だけとし、2026年9月26日時点の法令等に基づいて、申告書と同じ端数処理(課税標準額は千円未満、消費税額と地方消費税額は百円未満を切捨て)で計算しています。

設例1:登録した一人親方(個人、材料を自分で調達)

前提:2023年10月1日に登録して課税事業者になった個人事業者。基準期間の課税売上高は1,000万円以下。年間の工事の売上は税込7,700,000円(すべて材料を自分で調達する工事)。一般課税で計算する場合の課税仕入れ(材料・燃料・工具など)は税込1,650,000円。

設例1の納める税額単位:円
計算方法差引税額(国)地方消費税納める税額
2割特例(令和8年分まで)109,20030,800140,000
3割特例(令和9年分・令和10年分)163,80046,200210,000
簡易課税(第3種)163,80046,200210,000
(参考)同じ売上がすべて手間請けの場合の簡易課税(第4種)218,40061,600280,000
一般課税(課税仕入れ 税込1,650,000円)429,000121,000550,000

課税標準額:7,700,000 × 100/110 = 7,000,000円/売上税額(国):7,000,000 × 7.8% = 546,000円

控除額:2割特例 546,000 × 80% = 436,800円、3割特例と第3種 546,000 × 70% = 382,200円、第4種 546,000 × 60% = 327,600円、一般課税 1,650,000 × 7.8/110 = 117,000円

差引税額は売上税額から控除額を引き百円未満を切捨て、地方消費税は差引税額 × 22/78(百円未満切捨て)です。

この設例では、令和8年分は2割特例が最も少なく、令和9年分・令和10年分は3割特例と簡易課税(第3種)が同じ額です。手間請けが中心の場合は、令和9年分・令和10年分は3割特例のほうが簡易課税(第4種)より少なくなります。3割特例が終わる令和11年分からは、簡易課税と一般課税の比較になります。

設例2:地域の工務店(法人・一般課税)

前提:3月決算の法人で、課税期間は2027年4月1日〜2028年3月31日(期間の全部が70%の期間)。課税売上は税込110,000,000円。登録している業者からの課税仕入れは税込66,000,000円。免税事業者の一人親方(複数)への外注費は税込22,000,000円で、1人あたりの外注費は年1億円を大きく下回る。課税売上割合は95%以上、課税売上高は5億円以下で、課税仕入れの税額を全額控除できる。

設例2の納める税額単位:円
一人親方への外注費の扱い外注費の控除額(国)差引税額(国)地方消費税納める税額
(比較)全員が登録している場合1,560,0001,560,000440,0002,000,000
全員が未登録・70%1,092,0002,028,000572,0002,600,000
(参考)割合が80%の場合1,248,0001,872,000528,0002,400,000
(参考)割合が50%の場合780,0002,340,000660,0003,000,000
(参考)割合が30%の場合468,0002,652,000748,0003,400,000
(参考)経過措置の終了後(0%)03,120,000880,0004,000,000

課税標準額:110,000,000 × 100/110 = 100,000,000円/売上税額(国):100,000,000 × 7.8% = 7,800,000円

登録業者からの課税仕入れの税額:66,000,000 × 7.8/110 = 4,680,000円/一人親方への外注費の控除額:22,000,000 × 7.8/110 × 割合(全員が登録していれば割合を掛けず1,560,000円)

差引税額:7,800,000 − 4,680,000 − 外注費の控除額(百円未満切捨て)/地方消費税:差引税額 × 22/78(百円未満切捨て)

取引の金額を変えない場合、外注先が全員未登録だと、70%の期間の納める税額は全員が登録している場合より600,000円多く、割合が80%だった場合より200,000円多くなります。「(参考)」の行は、同じ金額の取引がそれぞれの割合の期間にあった場合の比較です。

設例3:同じ外注先から年1億円を超える場合(3月決算の法人)

前提:一般課税で申告する3月決算の法人。1億円の上限が最初に適用される2027年4月1日開始の事業年度に、登録していない同じ専門工事業者への外注工事が完了し、その合計が税込122,000,000円(すべて10%、70%の期間)。

部分経過措置控除額(国)控除額(国と地方の目安)
1億円までの部分使える(70%)約496万円約636万円
1億円を超える部分(2,200万円)使えない0円0円

1億円までの部分:100,000,000 × 7.8/110 × 70% = 約4,963,636円(国と地方の合計の目安は 100,000,000 × 10/110 × 70% = 約6,363,636円)

超える部分:経過措置を使えれば 22,000,000 × 7.8/110 × 70% = 1,092,000円(国と地方の合計の目安は 22,000,000 × 10/110 × 70% = 1,400,000円)を控除できた部分ですが、上限を超えるため控除できません。

上限は外注先ごとに判定するので、ほかの外注先への外注費はこの1億円に合算しません。同じ法人でも、2027年3月31日に終わる事業年度の上限は10億円です。

工事の売上を計上する時期:引渡しの日が原則

【確定】請負による売上(資産の譲渡等)の時期は、物の引渡しを要する請負では目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日です(基通9-1-5)。建設工事等の引渡しの日は、作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日など、工事の種類・性質や契約の内容に応じて合理的と認められる日のうち、事業者が継続して使っている日です(消費税法基本通達9-1-6)。

場面売上を計上する時期根拠
原則目的物の全部を完成して引き渡した日基通9-1-5・9-1-6
完成した部分を引き渡すごとに、その割合に応じて代金を受け取る特約や慣習がある場合など(部分完成基準)引き渡した部分ごとに、その引渡しの日基通9-1-8
資材の値上がりなどに応じた値増金契約で定められている値増金は引渡しの日。相手方との協議で確定する値増金は、その金額が確定した日基通9-1-7
法人税・所得税で工事進行基準を適用している工事(長期大規模工事など)工事進行基準で収益に計上した各事業年度(各年)の課税期間に計上することができる(選択)消費税法17条
引渡し前に受け取る前受金・中間金(出来高払い)受け取った時ではなく、上のいずれかの時期基通9-1-5からの当会の整理

消費税法17条の特例を使う場合は、申告書にその旨を付記します(同条4項)。この特例で工事の途中に売上を計上した部分については、インボイスを交付する義務はありません。交付の義務は、工事の完成(引渡し)の時に生じます(インボイスQ&A 問40、消費税法57条の4第1項)。

引渡しより前に代金を受け取る場合、前もってインボイスを交付することもできます。交付した後、引渡しの時までに記載事項が変わった場合は、修正したインボイスを交付します(インボイスQ&A 問39)。

元請の側の外注費も、原則として外注工事の引渡しを受けた日の課税仕入れです(基通11-3-1)。自社の工事のために未成工事支出金として経理した課税仕入れは、継続して適用することを条件に、目的物を引き渡した日の課税期間の課税仕入れとすることも認められています(消費税法基本通達11-3-5)。

請求書・出来高検収書の扱い

インボイスの記載事項

【確定】インボイスには、①登録番号を含む発行者の氏名・名称、②取引の年月日(一定期間分をまとめて作る場合はその期間)、③取引の内容、④税率ごとに区分した対価の額の合計額と適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥交付を受ける事業者の氏名・名称を記載します(消費税法57条の4第1項、国税庁 No.6625)。記載例はインボイスの記載事項6項目と記載例にあります。

値増金は別のインボイスで

引渡しの日に請負代金のインボイスを交付し、その後の協議で値増金が確定した場合は、値増金について別にインボイスを交付します。そのインボイスの対価の額と消費税額等は、値増金の金額をもとに記載します(インボイスQ&A 問35)。

元請が作る出来高検収書

【確定】元請が下請の工事の出来高を検収し、その内容と出来高に応じた金額を書いた「出来高検収書」を作って支払っている場合、仕入明細書等の記載事項(下請の登録番号など)を満たし、下請の確認を受けた出来高検収書は、仕入税額控除のために保存する書類として扱われます(消費税法基本通達11-6-7、インボイスQ&A 問97)。

ただし、下請が適格請求書発行事業者でなくなったことにより、適格請求書の交付ができないと判明した場合は、出来高検収書で控除の対象とした消費税額を、その工事の完了日が属する課税期間の課税仕入れに係る消費税額から控除します(同)。下請の登録の状況は、工事の完了時にも確認しておく必要があります。

建設業に関係する間接税:印紙税と軽油引取税

工事請負契約書の印紙税

【確定・2027年3月31日までに作成する契約書】建設工事の請負に関する契約書のうち、記載された契約金額が100万円を超えるものは、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成されるものについて、印紙税が軽減されています(国税庁 No.7108)。

課税事業者が作る契約書で、消費税額等を区分して記載している場合(「請負金額1,100万円 うち消費税額等100万円」など)や、税込価格と税抜価格の両方を記載している場合は、消費税額等を印紙税の記載金額に含めません。「消費税額等10パーセントを含む」「請負金額1,100万円(税込)」のような書き方では、消費税額等が明らかとはいえないため、税込の金額が記載金額になります(国税庁 No.7124)。

当会の計算例:2027年3月31日までに作成する建設工事の請負契約書
契約金額の書き方記載金額印紙税額(軽減後)
請負金額1,100万円 うち消費税額等100万円1,000万円5,000円
請負金額1,100万円(税込)1,100万円10,000円

軽減後の税額は、記載金額500万円超1,000万円以下が5,000円、1,000万円超5,000万円以下が10,000円です(No.7108)。

免税事業者には課されるべき消費税がないため、免税事業者が契約書に「消費税額等」として金額を区分して書いても、その金額は記載金額に含めます。この考え方はNo.7124の(注)で受取書等を例に示されていますが、同じ理由付けは工事請負契約書にも及ぶと解されます(No.7124)。

【要望段階】国土交通省は、令和9年度税制改正要望で、この軽減措置の延長を求めています(財務省 令和9年度税制改正要望(国土交通省))。延長されるかどうかは、2026年9月26日時点で決まっていません。

重機・車両の軽油代と軽油引取税

【確定】軽油引取税は、特別徴収義務者である特約業者等が販売する場合(特約業者等から販売の委託を受けたサービスステーション等が販売する場合を含みます)、請求書や領収書等で明らかにして区分されていれば、消費税の課税標準に含まれません。特別徴収義務者に当たらないサービスステーション等が販売する場合は、課税標準から軽油引取税を控除できません(国税庁 No.6313)。課税標準に含まれない軽油引取税の部分は、買い手の側でも課税仕入れの対価に含めないので、仕入税額控除の対象になりません。

軽油引取税の当分の間税率(旧暫定税率)は2026年4月1日に廃止され、同日以後の引取り等にかかる税率は1キロリットルあたり15,000円(1リットルあたり15.0円)です。それより前の引取り等には32,100円が適用されます(東京都主税局)。たとえば、2026年4月1日以後に特約業者等から軽油を5,000リットル購入した場合、区分して示される軽油引取税は75,000円(15.0円 × 5,000リットル)で、この部分は仕入税額控除の対象外です(当会の計算例)。

2026年10月以後の日程

日付内容関係する人
2026年10月1日免税事業者等からの課税仕入れの控除割合が70%になる(2028年9月30日まで)。この日以後に開始する課税期間から1億円の上限(9月決算の法人は2026年10月1日に始まる事業年度から)一般課税で申告する元請
2027年1月1日個人事業者と12月決算の法人に1億円の上限が適用される最初の課税期間が始まる。3割特例の対象の最初の年分(令和9年分)が始まる元請、登録した一人親方
2027年3月31日(水)令和8年分(2割特例の最後の年分)の個人事業者の消費税の申告期限。建設工事の請負契約書の印紙税の軽減措置は、この日までに作成するものが対象登録した一人親方、契約書を作る事業者
2027年4月1日3月決算の法人に1億円の上限が適用される最初の事業年度が始まる一般課税で申告する元請
2028年3月31日(金)令和9年分の申告期限。令和8年分に2割特例を使った個人事業者が令和9年分から簡易課税にする場合の届出期限登録した一人親方
2028年10月1日控除割合が50%になる(2030年9月30日まで)一般課税で申告する元請
2030年10月1日控除割合が30%になる(2031年9月30日まで)一般課税で申告する元請
2031年10月1日経過措置が終わり、インボイスのない仕入れは控除できなくなる一般課税で申告する元請

2027年3月31日と2028年3月31日は平日のため、申告期限は繰り下がりません。消費税の申告と納付の期限は消費税の納付期限(個人・法人)で説明しています。

よくある質問

一人親方(免税事業者)への外注費は、2026年10月から何%控除できますか。

2026年10月1日から2028年9月30日までに行った課税仕入れは、仕入税額相当額の70%を控除できます。2026年9月30日までの分は80%です。割合は支払日ではなく、外注工事の完了(引渡し)の日で判定します。元請が簡易課税・2割特例・3割特例で申告している場合は、納める税額に影響しません。〔インボイスQ&A 問113・問113-3〕

9月に着工し10月に完了した外注工事は、80%と70%のどちらですか。

原則として全体が70%です。課税仕入れを行った日は外注工事の完了(引渡し)の日で判定し、着工から9月30日までの作業分を日割りすることはありません。完成した部分ごとに引渡しを受ける特約がある工事は、引渡しを受けた部分ごとに判定します。〔インボイスQ&A 問113-3、消費税法基本通達9-1-5・9-1-6・9-1-8・11-3-1〕

1億円の上限は、免税事業者への外注費の合計で判定しますか。

いいえ。同じ外注先ごとに、その年(法人はその事業年度)の経過措置の対象となる課税仕入れの合計額(税込み)で判定し、1億円を超えた部分に経過措置を使えません。2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用され、個人事業者は2027年分、3月決算の法人は2027年4月1日に始まる事業年度からです。〔インボイスQ&A 問113、国税庁 令和8年度税制改正特集〕

手間請けの一人親方は、簡易課税の第何種ですか。

元請などから材料の支給を受け、手間賃だけを受け取る工事は第4種(みなし仕入率60%)です。材料を自分で調達して施工する工事は第3種(70%)です。事業区分は取引ごとに判定します。〔国税庁 No.6509、消費税法基本通達13-2-4・13-2-7、財務省「簡易課税制度の概要」〕

登録した一人親方は、2割特例と3割特例をいつまで使えますか。

2割特例は令和8年分(2026年分)が最後で、その申告期限は2027年3月31日です。令和9年分・令和10年分は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの要件を満たせば、3割特例(納める税額は売上税額の30%)を使えます。3割特例は個人事業者だけの制度で、法人は使えません。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕

未登録の下請に、下請代金から消費税相当額を差し引いて支払ってもよいですか。

合意なく一方的に差し引くと、建設業法上の問題となる場合があります。元請負人が取引上の地位を不当に利用して、免税事業者である下請負人と合意することなく下請代金を一方的に減額し、その工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合は、建設業法19条の3第1項(不当に低い請負代金の禁止)に違反する行為として問題となります。国土交通省は、工事完了後の請求段階で下請負人がインボイス発行事業者でないと分かり、消費税相当額の一部または全部を一方的に支払わないことにした事例を、この規定の問題として示しています。〔免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A、国土交通省 建設業法上の考え方の一事例〕

工事の売上は、前受金や出来高の入金時に計上しますか。

原則として、入金時ではなく、目的物の全部を完成して引き渡した日に計上します。完成した部分を引き渡すごとに代金を受け取る特約などがある場合は引き渡した部分ごとに計上し、法人税・所得税で工事進行基準を適用している工事は、選択により工事進行基準で計上できます。〔消費税法基本通達9-1-5・9-1-6・9-1-8、消費税法17条〕

元請が作る出来高検収書で、仕入税額控除を受けられますか。

仕入明細書等の記載事項(下請の登録番号など)を満たし、下請の確認を受けた出来高検収書であれば、その保存により仕入税額控除を受けられます。ただし、下請が適格請求書発行事業者でなくなったことにより、適格請求書の交付ができないと判明した場合は、出来高検収書で控除の対象とした消費税額を、その工事の完了日が属する課税期間の課税仕入れに係る消費税額から控除します。〔消費税法基本通達11-6-7、インボイスQ&A 問97〕

工事請負契約書の印紙税は、消費税を含めた金額で判定しますか。

課税事業者が作る契約書で、消費税額等を区分して記載している場合や、税込価格と税抜価格の両方を記載している場合は、消費税額等を含めない金額で判定します。「税込」とだけ書いた場合は、税込の金額で判定します。建設工事の請負に関する契約書の軽減措置は、2027年3月31日までに作成するものが対象です。〔国税庁 No.7124・No.7108〕

一人親方への支払いが給与に当たる場合、消費税はどうなりますか。

雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく給与は、課税仕入れになりません。請負の報酬か給与かの区分が明らかでないときは、他人が代わりに作業できるか、指揮監督を受けるか、材料や用具を支給されているかなどを総合して判定します。〔消費税法2条1項12号、消費税法基本通達1-1-1〕

まとめ

  • 一般課税で申告する元請は、免税事業者などインボイスのない外注先への外注費を、2026年10月1日以後に完了(引渡し)した分から70%しか控除できません。割合は支払日ではなく、工事が完了した日で判定します。
  • 2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同じ外注先からの仕入れが年1億円(税込み)を超える部分に経過措置を使えません。個人事業者は2027年分、3月決算の法人は2027年4月1日に始まる事業年度からです。
  • 簡易課税・2割特例・3割特例で申告する元請は、外注先の登録の有無で納める税額が変わりません。
  • 簡易課税の事業区分は、材料を自分で調達する工事が第3種(70%)、材料の支給を受けて手間賃だけを受け取る工事が第4種(60%)です。登録した個人の一人親方は、令和8年分まで2割特例、令和9年分・令和10年分は要件を満たせば3割特例を使えます。
  • 工事の売上は、原則として目的物を引き渡した日に計上します。下請代金を一方的に減額して原価割れとなる場合は、建設業法19条の3の問題になります。

出典・参考資料

いずれも2026年9月26日に内容を確認しました。

国税庁 インボイス制度・令和8年度税制改正

国税庁 タックスアンサー

国税庁 消費税法基本通達

財務省

公正取引委員会・国土交通省

その他・法令

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年5月15日:公開
  • 2026年9月25日:令和8年度税制改正(2026年10月1日施行)に合わせて、経過措置の割合と期間、2割特例・3割特例の記述を訂正
  • 2026年9月26日:全面改訂。一人親方・免税事業者への外注費の経過措置(割合の判定日、1億円の上限、帳簿の書き方)、簡易課税の事業区分(手間請けは第4種)、工事の売上を計上する時期、出来高検収書と値増金のインボイス、印紙税と軽油引取税、建設業法・取適法の説明を追加。根拠を確認できなかった記述(建設業の事業者数・市場規模、公共工事の入札でインボイスの登録が要件になっているとする記述、業種ごとの仕入比率の目安と、それをもとにした納税額の比較など)を削除し、「下請法」の記述を取適法と建設業法に、「工事進行基準は法人で原則適用」とする記述を消費税法17条の説明に改めました。計算例は架空の設例として作り直し、申告書と同じ端数処理で計算し直しました。

本記事は2026年9月26日時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としています。個別の取引の判断については、所轄の税務署や税理士などの専門家にご確認ください。

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