消費税の2割特例はいつまで?個人・法人別の最終期間と要件・計算
2割特例は、インボイス発行事業者の登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者などが、消費税の納付税額を売上税額の2割にできる経過措置です。基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円以下であることなどが要件で、事前の届出は不要、申告書に「○」を付けて使います。使えるのは令和5年10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日を含む課税期間で、延長はされていません。個人事業者は令和8年分(2026年分)が最後、法人は令和8年9月30日を含む事業年度が最後です。
2割特例を使える最後の課税期間【確定】
| 区分 | 最後の課税期間と申告期限 |
|---|---|
| 個人事業者 | 令和8年分(2026年1月1日〜12月31日) 申告期限:2027年3月31日(水) |
| 3月決算の法人 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 申告期限:2027年5月31日(月) |
| 12月決算の法人 | 2026年1月1日〜2026年12月31日 申告期限:2027年3月1日(月) |
| 9月決算の法人 | 2025年10月1日〜2026年9月30日 申告期限:2026年11月30日(月) |
ほかの決算月は決算月別の早見表にあります。法人の申告期限は、申告期限の延長の特例を受けていない場合の日付です(期限が土日・祝日や年末年始にあたるときは、その後の最初の平日にして当会で計算)。要件を満たす個人事業者は、令和9年分・令和10年分に3割特例を選べます。法人には、3割特例のような特例はありません(2割特例が終わった後の選択肢)。
個人事業者か法人(決算月別)かを選ぶだけで、申告期限までの残り日数を自動で数える2割特例カウントダウン診断ツールも用意しています。
本記事は井手政紀税理士(井手政紀税理士事務所/元 新宿税務署長(第84代)/新宿間税会 税理士部会員)の監修内容を反映しています。2026年9月25日、令和8年度税制改正等に合わせて全面改訂し、2026年9月28日に監修者の確認が完了しました。
【確定】令和8年度税制改正(2026年9月25日時点)
令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立)でも、2割特例の期間は延長されませんでした。2割特例の終了後の2年間(令和9年分・令和10年分)について、個人事業者に限り3割特例が設けられました。また、2割特例・3割特例を使った翌課税期間から簡易課税を選ぶときの届出期限が、その翌課税期間の確定申告期限まで延びました(翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。いずれも2026年10月1日施行です。同じ日から、免税事業者などからの仕入れで控除できる割合は80%から70%に下がります。
目次
2割特例はいつまで使えるか(個人・法人の決算月別)
【確定】2割特例を使えるのは、「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」です(平成28年改正法附則51条の2第1項、国税庁「2割特例の概要」)。2026年9月30日で打ち切られるのではなく、その日を含む課税期間の終わりまで使えます。課税期間は、個人事業者は1月1日から12月31日まで、法人は事業年度です。
個人事業者:令和8年分が最後
- 令和5年10月1日に登録した場合、使えるのは令和5年分(10月1日〜12月31日)、令和6年分、令和7年分、令和8年分の最大4回の申告です。
- 最後の令和8年分(2026年1月1日〜12月31日)の申告期限は、2027年3月31日(水)です。
- 令和9年分(2027年分)からは2割特例を使えません。要件を満たす個人事業者は、令和9年分と令和10年分に3割特例を選べます(個人事業者の3割特例)。
法人:令和8年9月30日を含む事業年度が最後(決算月別の早見表)
事業年度が1年の法人が、各事業年度で2割特例の要件を満たしている場合の、最後の事業年度と申告期限です。
| 決算月 | 最後の事業年度 | その申告期限 |
|---|---|---|
| 1月 | 2026年2月1日〜2027年1月31日 | 2027年3月31日(水) |
| 2月 | 2026年3月1日〜2027年2月28日 | 2027年4月30日(金) |
| 3月 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 2027年5月31日(月) |
| 4月 | 2026年5月1日〜2027年4月30日 | 2027年6月30日(水) |
| 5月 | 2026年6月1日〜2027年5月31日 | 2027年8月2日(月) |
| 6月 | 2026年7月1日〜2027年6月30日 | 2027年8月31日(火) |
| 7月 | 2026年8月1日〜2027年7月31日 | 2027年9月30日(木) |
| 8月 | 2026年9月1日〜2027年8月31日 | 2027年11月1日(月) |
| 9月 | 2025年10月1日〜2026年9月30日 | 2026年11月30日(月) |
| 10月 | 2025年11月1日〜2026年10月31日 | 2027年1月4日(月) |
| 11月 | 2025年12月1日〜2026年11月30日 | 2027年2月1日(月) |
| 12月 | 2026年1月1日〜2026年12月31日 | 2027年3月1日(月) |
表は、法律の「令和8年9月30日までの日の属する課税期間」という定めから当会が作成しました。申告期限は、課税期間の末日の翌日から2か月以内という原則に、期限が土曜日・日曜日・祝日などの休日や12月29日〜31日にあたる場合はその翌日(翌日も休日ならさらに翌日)になる扱い(国税通則法10条2項)を当てはめたものです。消費税の申告期限の延長の特例(消費税法45条の2)を受けている法人は、延長後の期限になります。設立1期目など事業年度が1年でない場合も、令和8年9月30日を含むかどうかで判定します。
2割特例は延長されていない(個人事業者は3割特例へ)
国税庁のリーフレットは、2割特例は令和8年9月30日までの日を含む課税期間で終わると明記しています。令和8年度税制改正では、2割特例の終了後の2年間(令和9年分・令和10年分)について、個人事業者に限って3割特例が設けられました。法人は、2割特例の最後の事業年度の次から、一般課税か簡易課税で申告します(国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(PDF))。
2割特例とは
納付税額を売上税額の2割にする経過措置
【確定・施行済み】2割特例の正式な名称は「小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置」で、根拠は平成28年改正法(所得税法等の一部を改正する法律)附則51条の2です。国税庁は「インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置」として案内しています。
一般課税では、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を差し引いて納付税額を出します。2割特例では、仕入れ側の消費税額を集計する代わりに、売上税額の8割を控除します(特別控除税額)。その結果、納付税額は売上税額の2割になります。
仕入れの額に関係なく計算できるので、受け取ったインボイスを集計する必要はありません。ただし、売上は税率(10%・8%)ごとに分けて集計します(国税庁「2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き」(PDF))。インボイス制度そのものの仕組みは、インボイス制度の概要で説明しています。
一般課税・簡易課税のどちらを選んでいても使える
- 事前の届出は要りません。申告のときに、申告書に2割特例を適用する旨を付記して使います(平成28年改正法附則51条の2第3項)。
- 課税期間ごとに、2割特例を使うかどうかを選べます。一度使ったら続けて使わなければならない、という制限はありません。
- 簡易課税制度選択届出書を出している事業者でも、申告のときに2割特例を選べます(国税庁「2割特例の概要」)。
対象になる人・ならない人
【確定】国税庁のインボイスQ&A(令和8年5月改訂)問115・問116と、国税庁のフローチャートに基づく内容です。
基本の考え方:登録がなければ免税事業者になる課税期間
2割特例の対象は、インボイス発行事業者の登録がなかったとしたら、消費税の納税義務が免除される(免税事業者になる)課税期間です。課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった免税事業者も含まれます。次の3点を確認します。
- インボイス発行事業者の登録を受けている
- 基準期間(個人は前々年、事業年度が1年の法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下
- 特定期間(個人は前年1月1日〜6月30日、法人は原則として前事業年度の開始の日から6か月間)の課税売上高が1,000万円以下(課税売上高の代わりに、給与等の支払額の合計で判定してもかまいません。国外事業者を除きます)
基準期間と特定期間の詳しい説明は、国税庁 タックスアンサー No.6501(納税義務の免除)にあります。課税事業者と免税事業者の違いは、消費税の基本(課税事業者と免税事業者の違い)でも説明しています。
判定の手順(国税庁のフローチャートの順)
国税庁の「インボイス発行事業者の『2割特例』適用可否フローチャート」(令和6年9月版、PDF)の判定の順を、問いの向きをそろえて書き直すと、次のとおりです。
| 順 | 確認すること | はい | いいえ |
|---|---|---|---|
| 1 | インボイス発行事業者の登録を受けているか | 2へ | 使えません |
| 2 | 申告する課税期間は、令和5年10月1日をまたぐ課税期間か(同日から始まる課税期間は「いいえ」) | 3へ | 4へ |
| 3 | 課税事業者選択届出書の提出により、令和5年9月30日以前から課税事業者になっていたか | 使えません | 4へ |
| 4 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、特定期間の課税売上高(または給与等の支払額)も1,000万円以下か | 5へ | 使えません |
| 5 | 下の「2割特例を使えない課税期間」の表のどれかに当たるか | 使えません | 使えます |
「令和5年10月1日をまたぐ課税期間」は、同日より前に始まり、同日以後に終わる課税期間です。同日から始まる課税期間は、2では「いいえ」に進みます(国税庁のフローチャートの注)。
使えない場合は、一般課税(インボイスの保存が必要)か簡易課税で申告します。
「もともと課税事業者」「課税事業者選択届出書を出した」場合
- もともと課税事業者だった事業者がインボイス発行事業者の登録をした場合でも、登録した課税期間の翌課税期間以後で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として2割特例を使えます(国税庁「2割特例の概要」)。
- 課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった免税事業者も、2割特例の対象です。使えないのは、令和5年10月1日より前から課税選択で課税事業者になっていて、同日を含む課税期間の申告をする場合(インボイスQ&A 問116)や、課税選択から2年以内に一般課税で調整対象固定資産を仕入れたため免税事業者に戻れない課税期間(問115)などです。
2割特例を使えない課税期間
次の課税期間は、登録していても2割特例を使えません(インボイスQ&A 問115・問116)。
| 区分 | 2割特例を使えない課税期間 |
|---|---|
| 国外事業者 | 課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者の、令和6年10月1日以後に開始する課税期間 |
| 売上の規模 | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間 |
| 売上の規模 | 特定期間の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えるため、免税事業者になれない課税期間 |
| 相続・合併・分割 | 相続・合併・分割の特例で免税事業者になれない課税期間(相続の場合、登録日が相続の日以前で、ほかの理由がなければ使えます) |
| 新設法人 | 資本金1,000万円以上の新設法人、または特定新規設立法人(課税売上高が5億円を超える事業者などに支配されている新設法人)として、免税事業者になれない課税期間 |
| 高額な資産の仕入れ | 課税事業者を選択してから2年以内に、一般課税で調整対象固定資産(1取引の税抜価格が100万円以上の、棚卸資産以外の資産)を仕入れて、免税事業者に戻れない課税期間 |
| 高額な資産の仕入れ | 新設法人・特定新規設立法人の特例を受けた課税期間中に、一般課税で調整対象固定資産を仕入れて、免税事業者になれない課税期間 |
| 高額な資産の仕入れ | 一般課税で高額特定資産(1取引の税抜価格が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産)を仕入れて、免税事業者になれない課税期間 |
| 高額な資産の仕入れ | 一般課税で金・白金の地金等を税抜合計200万円以上仕入れて、免税事業者になれない課税期間 |
| 課税期間の短縮 | 課税期間を1か月または3か月に短縮している課税期間 |
| 制度開始前からの課税選択 | 令和5年10月1日より前から課税事業者選択届出書により課税事業者で、同日を含む課税期間 |
新設法人と特定新規設立法人の説明は、国税庁 タックスアンサー No.6503(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)にあります。登録日から課税事業者になる経過措置を使って登録した事業者は、課税事業者選択届出書を出していないので、課税選択後2年以内の調整対象固定資産の行には当たりません(問115)。
基準期間の課税売上高の数え方(免税だった期間は税抜きにしない)
基準期間の中に免税事業者だった期間があるときは、その期間の売上をそのまま(税抜きにせず)課税売上高に数えます。インボイス発行事業者(課税事業者)になった後の期間の売上は、税抜きの金額で数えます(国税庁「2割特例用 確定申告の手引き」)。
計算方法と計算例
【確定】計算の手順は国税庁「2割特例用 確定申告の手引き」の設例と同じです。計算例の金額は当会で計算しました。
計算の手順
- 課税標準額:税込の課税売上 × 100/110(8%の分は100/108)。税率ごとに出し、千円未満を切り捨てます。
- 消費税額:課税標準額 × 7.8%(8%の分は6.24%)
- 特別控除税額:(消費税額 − 売上げの返品・値引きなどに係る消費税額)× 80%
- 差引税額:消費税額 − 特別控除税額 − 返品・値引きなどに係る消費税額。百円未満を切り捨てます。
- 地方消費税:差引税額 × 22/78。百円未満を切り捨てます。
- 納付額:差引税額 + 地方消費税
目安として、納付額は税込売上の約1.8%(8%の売上は約1.5%)です(国税庁の手引き)。
計算例①(10%のみ・税込売上5,500,000円)
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 課税標準額 | 5,500,000 × 100/110(千円未満切捨て) | 5,000,000円 |
| ② 消費税額 | 5,000,000 × 7.8% | 390,000円 |
| ③ 特別控除税額 | 390,000 × 80% | 312,000円 |
| ④ 差引税額 | 390,000 − 312,000(百円未満切捨て) | 78,000円 |
| ⑤ 地方消費税 | 78,000 × 22/78(百円未満切捨て) | 22,000円 |
| ⑥ 納付額 | 78,000 + 22,000 | 100,000円 |
同じ売上で簡易課税(第5種事業、みなし仕入率50%)を使うと250,000円です。
計算例②(10%のみ・税込売上8,800,000円)
特別控除税額 624,000 × 80% = 499,200円 → 差引税額 124,800円
地方消費税 124,800 × 22/78 = 35,200円 → 納付額 160,000円
計算例③(10%と8%の売上がある場合)
飲食料品など軽減税率(8%)の対象品目の売上がある場合は、税率ごとに課税標準額と消費税額を出してから合計します。
| 手順 | 10% | 8% | 合計 |
|---|---|---|---|
| 税込の課税売上 | 6,600,000 | 2,160,000 | |
| ① 課税標準額(×100/110、×100/108、千円未満切捨て) | 6,000,000 | 2,000,000 | |
| ② 消費税額(×7.8%、×6.24%) | 468,000 | 124,800 | 592,800 |
| ③ 特別控除税額(×80%) | 474,240 | ||
| ④ 差引税額(百円未満切捨て) | 118,560 → 118,500 | ||
| ⑤ 地方消費税(×22/78、百円未満切捨て) | 33,423 → 33,400 | ||
| ⑥ 納付額 | 151,900円 |
単位は円です。⑤の計算途中の1円未満は切り捨てています。
税込売上から出した税額(600,000円+160,000円=760,000円)の20%で概算すると152,000円ですが、申告では国の消費税(7.8%・6.24%)で計算して法律どおりに端数を処理するため、151,900円になります。
自分の数字で試算する
消費税計算ツールでは、年間の売上と仕入を入れて、一般課税(ツール上の表記は「原則課税」)・簡易課税・2割特例の納税額を比べられます。申告での計算手順の全体は、消費税の計算方法で説明しています。
手続き:事前の届出は不要、申告書に「○」を付ける
【確定】国税庁「2割特例用 確定申告の手引き」(令和7年11月版)に基づく内容です。
- 申告書第一表の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」欄に「○」を付けます。第一表は、簡易課税制度を選択している事業者は簡易課税用、選択していない事業者は一般用を使います。
- 第二表と、付表6「税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕」を作成します。貸倒れなどがなければ、簡易版の付表6で計算できます。
- 個人事業者は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、金額を入力して申告書を作成できます(国税庁「2割特例用 確定申告の手引き」)。
- 申告書の各欄の書き方は消費税申告書の書き方(2割特例の申告書作成)、電子申告はe-Taxでの消費税の確定申告で説明しています。
申告した後で、2割特例を使う・使わないは原則として変えられない
2割特例を適用して(または適用せずに)申告した後で、修正申告や更正の請求によって、2割特例を適用しないこと(または適用すること)に変えることは、原則としてできません(国税庁「2割特例用 確定申告の手引き」)。申告の前に、一般課税・簡易課税との比較を済ませておきます。
簡易課税・一般課税との比較
【確定】みなし仕入率と各方法の違いは、国税庁のタックスアンサーとインボイスQ&Aに基づきます。
3つの方法の違い
| 項目 | 一般課税 | 簡易課税 | 2割特例 |
|---|---|---|---|
| 納付税額の出し方 | 売上税額 − 仕入税額(実額) | 売上税額 − 売上税額 × みなし仕入率 | 売上税額 × 20% |
| 使える事業者 | すべての課税事業者 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下 | 登録がなければ免税事業者になる課税期間(上記の要件) |
| 事前の届出 | 不要 | 必要(原則、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで) | 不要(申告書に付記) |
| 続けて使う義務 | ― | 原則2年間 | なし(課税期間ごとに選べる) |
| 仕入税額を出すためのインボイスの保存 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 還付 | 仕入税額が多ければ受けられる | 通常は生じない | 通常は生じない |
出典:国税庁 タックスアンサー No.6505、インボイスQ&A 問117-2、国税庁「2割特例の概要」。
業種別:簡易課税と2割特例のどちらが少ないか
簡易課税の納付税額は、売上税額に「1 − みなし仕入率」をかけた額です。2割特例の20%と比べると、次のようになります(売上税額に対する割合で、端数処理による差は除きます)。
| 事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 | 簡易課税の納付割合 | 2割特例(20%)と比べると |
|---|---|---|---|---|
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% | 10% | 簡易課税のほうが少ない |
| 第2種事業 | 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡) | 80% | 20% | 同じ |
| 第3種事業 | 農林漁業(飲食料品の譲渡以外)、製造業、建設業など | 70% | 30% | 2割特例のほうが少ない |
| 第4種事業 | その他の事業(飲食店業など) | 60% | 40% | 2割特例のほうが少ない |
| 第5種事業 | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業など | 50% | 50% | 2割特例のほうが少ない |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% | 60% | 2割特例のほうが少ない |
国税庁も、卸売業なら簡易課税のほうが2割特例より納付税額が少なくなると説明しています(インボイスQ&A 問117-2)。2種類以上の事業をしている場合は、事業ごとに区分して計算します。事業区分の判定は簡易課税の事業区分とみなし仕入率で説明しています。
個人事業者が令和9年分・令和10年分に使える3割特例(納付割合30%)と比べると、みなし仕入率から計算して、第1種・第2種は簡易課税のほうが少なく、第3種は同じ、第4種〜第6種は3割特例のほうが少なくなります。国税庁のインボイスQ&A 問117-3は、小売業なら簡易課税のほうが少なくなるという例です。業種別の金額の比較は3割特例と簡易課税の業種別比較表にまとめています。
一般課税を選んだほうがよい場合
多額の設備投資などで、仕入れの消費税額が売上の消費税額を上回る課税期間は、一般課税で申告すれば還付を受けられます。2割特例や簡易課税では、通常、還付税額は生じません(インボイスQ&A 問117-2)。2割特例は課税期間ごとに選べるので、簡易課税を選択していなければ、還付が見込まれる課税期間は一般課税で申告できます。ただし、一般課税で高額特定資産などを仕入れると、その後の課税期間で2割特例を使えなくなる場合があります(2割特例を使えない課税期間)。
2割特例が終わった後の選択肢
【確定】3割特例、簡易課税の届出期限の見直し、免税事業者等からの仕入れの控除割合の変更は、令和8年度税制改正(令和8年法律第12号)によるもので、2026年10月1日に施行されます(3割特例を使えるのは令和9年分から)。登録の取りやめに関する部分は、現行の制度です。
- 個人事業者:令和9年分と令和10年分は、3割特例・簡易課税・一般課税から選べます。令和11年分からは、簡易課税か一般課税です。
- 法人:2割特例の最後の事業年度の次の事業年度から、簡易課税か一般課税で申告します。3割特例は使えません。
- 共通:登録をやめて免税事業者に戻る方法もありますが、手続きの期限と、取引先への影響があります(免税事業者に戻る場合の注意)。
個人事業者は3割特例を選べる(令和9年分・令和10年分)
3割特例(小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置)は、個人事業者であるインボイス発行事業者が、令和9年分と令和10年分に、納付税額を売上税額の3割にできる特例です(平成28年改正法附則51条の3)。2割特例と同じく、登録(または課税事業者選択届出書の提出)がなければ免税事業者になる課税期間が対象で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが要件です。事前の届出は不要で、確定申告書に適用を受ける旨を付記します。法人は使えません(国税庁 令和8年度税制改正特集、インボイスQ&A 問114-2)。
計算例①の売上(税込5,500,000円)なら、3割特例の納付額は150,000円です。要件、使えない課税期間、手続きは3割特例の要件・計算・簡易課税との比較で説明しています。
簡易課税に切り替える場合の届出期限(特例)
簡易課税制度選択届出書は、原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出します。2割特例または3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税を選ぶ場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに出せばよいことになりました(令和8年度税制改正による見直し。翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、見直し前のとおり、その翌課税期間中(末日まで)に出します(インボイスQ&A 問117)。
| 事業者 | 特例を使った課税期間 | 簡易課税を始める課税期間 | 届出の期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 9月決算の法人 | 令和7年9月期(2割特例) | 令和8年9月期 | 2026年9月30日(その課税期間中) | 国税庁の例 |
| 個人事業者 | 令和7年分(2割特例) | 令和8年分 | 2027年3月31日 | 国税庁の例 |
| 10月決算の法人 | 令和7年10月期(2割特例) | 令和8年10月期 | 令和8年10月期の申告期限(2027年1月4日) | 国税庁の例(日付は当会計算) |
| 9月決算の法人 | 令和8年9月期(2割特例) | 令和9年9月期 | 2027年11月30日 | 当会計算 |
| 12月決算の法人 | 令和8年12月期(2割特例) | 令和9年12月期 | 2028年2月29日 | 国税庁の例 |
| 個人事業者 | 令和8年分(2割特例) | 令和9年分 | 2028年3月31日 | 当会計算 |
| 3月決算の法人 | 令和9年3月期(2割特例) | 令和10年3月期 | 2028年5月31日 | 国税庁の例 |
| 個人事業者 | 令和10年分(3割特例) | 令和11年分 | 2030年4月1日 | 国税庁の例 |
申告期限の延長の特例を受けている法人は、延長後の期限が届出の期限になります。申告期限が休日などにあたるときは翌日以後になりますが、「その課税期間中」に出す場合は、末日が休日でも延びません(インボイスQ&A 問117の注)。国税庁の例は、問117と令和8年度税制改正特集(PDF)、上のリーフレットによります。
簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に限って使え、選んだら原則として2年間続ける必要があります。届出の手続きは簡易課税の選択・不適用の手続きをご覧ください。
一般課税で申告する場合
一般課税では、仕入れや経費の消費税額を実額で差し引くため、受け取ったインボイスと帳簿の保存が必要です。インボイス発行事業者でない仕入先(免税事業者など)からの仕入れは、経過措置により一定の割合だけ控除でき、その割合は2026年10月1日から70%になります(2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%、2031年10月1日以後は控除できません)。詳しくは免税事業者等からの仕入れの経過措置(70%控除と1億円上限)をご覧ください。
免税事業者に戻る場合の注意
- 登録をやめるには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出します。翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに出すと、翌課税期間の初日に登録の効力がなくなります。この日を過ぎると、翌々課税期間の初日からになります(インボイスQ&A 問13)。個人事業者が2027年1月1日から登録をやめる場合は、2026年12月17日(木)が期限です。この「15日前の日」は、土日・祝日などにあたっても翌日には延びません(問13)。
- 令和5年10月1日を含まない課税期間に、登録日から課税事業者になる経過措置を使って登録した免税事業者は、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、登録をやめても免税事業者に戻れません(平成28年改正法附則44条5項、問13)。
- 課税事業者選択届出書を出している事業者が免税事業者に戻るには、別に「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出が必要です(問13)。免税事業者になるのは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であるなどの条件を満たす課税期間です。
- 登録をやめると、一般課税で申告している取引先は、その事業者からの仕入れを経過措置の割合(2026年10月1日からは70%)でしか控除できなくなります。簡易課税・2割特例・3割特例で申告している取引先の税額には影響しません(免税事業者等からの仕入れの経過措置と1億円上限)。
期限の早見表(2026年9月〜2030年)
【確定】日付の元になる規定は、すべて成立し、施行日も決まっています。「当会計算」とした日付は、そのルールに当てはめて当会が計算したものです。法人の日付は、申告期限の延長の特例を受けていない場合です。
| 日付 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2026年9月30日(水) | この日を含む課税期間までが2割特例の対象。令和7年9月期に2割特例を使った9月決算の法人が、令和8年9月期から簡易課税にする場合の届出期限 | 国税庁 |
| 2026年10月1日(木) | 3割特例の規定と、見直し後の簡易課税の届出期限の特例が施行。免税事業者等からの仕入れの控除割合が80%から70%に | 財務省解説・国税庁 |
| 2026年11月30日(月) | 9月決算の法人の令和8年9月期(2割特例の最後)の申告期限 | 当会計算 |
| 2026年12月17日(木) | 個人事業者が2027年1月1日から登録をやめる場合の、登録取消届出書の提出期限 | 当会計算(ルールは国税庁) |
| 2027年3月1日(月) | 12月決算の法人の令和8年12月期(2割特例の最後)の申告期限 | 当会計算 |
| 2027年3月31日(水) | 個人事業者の令和8年分(2割特例の最後)の申告期限。令和7年分に2割特例を使い、令和8年分から簡易課税にする場合の届出期限 | 国税庁 |
| 2027年5月31日(月) | 3月決算の法人の令和9年3月期(2割特例の最後)の申告期限 | 当会計算 |
| 2027年11月30日(火) | 9月決算の法人が令和9年9月期から簡易課税にする場合の届出期限 | 当会計算 |
| 2028年2月29日(火) | 12月決算の法人が令和9年12月期から簡易課税にする場合の届出期限 | 国税庁 |
| 2028年3月31日(金) | 令和8年分に2割特例を使った個人事業者が、令和9年分から簡易課税にする場合の届出期限 | 当会計算 |
| 2028年5月31日(水) | 3月決算の法人が令和10年3月期から簡易課税にする場合の届出期限 | 国税庁 |
| 2028年10月1日(日) | 免税事業者等からの仕入れの控除割合が70%から50%に | 国税庁 |
| 2030年4月1日(月) | 令和10年分に3割特例を使った個人事業者が、令和11年分から簡易課税にする場合の届出期限 | 国税庁 |
| 2030年10月1日(火) | 免税事業者等からの仕入れの控除割合が50%から30%に | 国税庁 |
消費税の納付期限は申告期限と同じです。納付の方法や延滞税は、消費税の納付期限をご覧ください。
よくある質問
2割特例はいつまで使えますか。延長されましたか。
令和8年9月30日を含む課税期間までで、延長はされていません。個人事業者は令和8年分(申告期限は2027年3月31日)が最後です。法人は令和8年9月30日を含む事業年度が最後で、3月決算なら令和9年3月期(2026年4月1日〜2027年3月31日)です。個人事業者は、要件を満たせば、令和9年分・令和10年分に3割特例を選べます。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕
2割特例が終わった後、法人はどう申告しますか。
2割特例の最後の事業年度の次の事業年度から、一般課税か簡易課税で申告します。3割特例は個人事業者だけが対象で、法人は使えません。簡易課税にする場合の届出期限は、簡易課税に切り替える場合の届出期限の表で確認できます。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕
2割特例を使うのに届出は必要ですか。
必要ありません。申告書第一表の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」欄に「○」を付け、付表6を使って計算します。〔国税庁 2割特例用 確定申告の手引き〕
簡易課税の届出書を出していても2割特例を選べますか。
選べます。2割特例は、一般課税と簡易課税のどちらを選択している場合でも、申告のときに適用できます。〔国税庁 2割特例の概要〕
もともと課税事業者でした。2割特例は使えますか。
インボイス発行事業者の登録をした課税期間の翌課税期間以後で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として使えます。〔国税庁 2割特例の概要〕
課税事業者選択届出書を出していますが、2割特例は使えますか。
原則として使えます。ただし、令和5年10月1日より前から課税選択で課税事業者になっている場合の同日を含む課税期間や、課税選択から2年以内に一般課税で調整対象固定資産を仕入れて免税事業者に戻れない課税期間などは使えません。〔インボイスQ&A 問115・問116〕
新設法人や法人成りした会社でも使えますか。
資本金1,000万円以上の新設法人や特定新規設立法人として納税義務が免除されない課税期間は使えません。それ以外は、登録を受けていて要件を満たせば使えます。設立2期目は、設立1期目に特定期間がある場合、その課税売上高(または給与等の支払額)でも判定します。〔インボイスQ&A 問115、国税庁 タックスアンサー No.6501・No.6503〕
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた年はどうなりますか。
その課税期間は2割特例を使えません。判定は課税期間ごとに行います。基準期間に免税事業者だった期間があるときは、その期間の売上を税抜きにせずに数えます。〔インボイスQ&A 問115、国税庁 2割特例用 確定申告の手引き〕
2割特例を使った翌年(翌期)から簡易課税にするには、いつまでに届出が必要ですか。
翌課税期間の確定申告期限までに消費税簡易課税制度選択届出書を出せば、その翌課税期間から簡易課税を使えます。翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間中(末日まで)に出します。たとえば令和8年分に2割特例を使った個人事業者が令和9年分から簡易課税にする場合は、2028年3月31日までです。〔インボイスQ&A 問117〕
2割特例と簡易課税はどちらが有利ですか。
簡易課税の納付税額は、売上税額×(1−みなし仕入率)です。みなし仕入率から計算すると、卸売業(第1種)は簡易課税のほうが少なく、小売業など(第2種)は同じで、第3種〜第6種は2割特例のほうが少なくなります。国税庁のQ&A 問117-2も、卸売業なら簡易課税のほうが少なくなるという例です。多額の設備投資などで還付が見込まれる課税期間は、一般課税で申告すれば還付を受けられます。〔インボイスQ&A 問117-2〕
申告した後で、2割特例を使う・使わないを変えられますか。
2割特例を適用して(または適用せずに)申告した後で、修正申告や更正の請求によって適用しないこと(または適用すること)に変えるのは、原則としてできません。〔国税庁 2割特例用 確定申告の手引き〕
まとめ
- 2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間まで使える経過措置で、延長はされていません。
- 個人事業者は令和8年分(申告期限2027年3月31日)が最後です。要件を満たす個人事業者は、令和9年分・令和10年分に3割特例を選べます。
- 法人は令和8年9月30日を含む事業年度が最後で、その後は一般課税か簡易課税です。
- 使えるかどうかは課税期間ごとに、基準期間・特定期間の課税売上高と、使えない課税期間に当たらないかで判定します。
- 2割特例・3割特例を使った翌課税期間から簡易課税にする場合、翌課税期間が2026年10月1日以後に終わるなら、その翌課税期間の申告期限までに届出を出せば間に合います(2026年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間中に出します)。
出典・参考資料
いずれも2026年9月25日に内容を確認しました。
国税庁 2割特例・令和8年度税制改正
- 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
- 2割特例 特設ページ
- インボイス発行事業者の「2割特例」適用可否フローチャート(令和6年9月版、PDF)
- 2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(令和7年11月版、PDF)
- インボイス制度 令和8年度税制改正特集
- リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年5月改訂、PDF)
- 令和8年度税制改正特集(3割特例・簡易課税への移行・7・5・3割控除、PDF)
国税庁 インボイスQ&A(令和8年5月改訂)
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(全文、PDF)
- 問13(登録の取りやめ)、問114(2割特例)、問114-2(3割特例)
- 問115(2割特例の適用ができない課税期間①)、問116(同②)
- 問117(2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択)、問117-2、問117-3
国税庁 タックスアンサー
財務省・法令
- 財務省 第221回国会における財務省関連法律(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号。2026年3月31日成立・公布)
- 財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF)
- 消費税法(9条・9条の2・12条の2〜12条の4・37条・45条・45条の2)
- 国税通則法(10条)
改訂履歴と監修について
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2025年7月4日:公開
- 2026年9月25日:全面改訂(令和8年度税制改正への対応、個人・法人の決算月別の最後の課税期間と期限の早見表、使えない課税期間の一覧、申告書の記載方法、終了後の選択肢を追加。「もともと課税事業者だった場合」「課税事業者選択届出書を出した場合」を一律に対象外とした記述と、誤りを含む図を削除。計算例を法定の端数処理で計算し直し)
監修の状況は、冒頭の「監修について」のとおりです。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。