法人の税務

法人を設立し事業を営む上で、税務は避けて通れない重要な要素です。本記事では、法人が納めるべき主な税金の種類から計算方法、節税対策まで、中小企業の経営者や経理担当者の方々にとって必要な税務知識をわかりやすく解説します。

「税金の種類が多すぎて複雑」「どのような節税対策があるのかわからない」といった声をよく耳にします。法人の税務は確かに複雑ですが、基本的な仕組みを理解することで、適切な税務戦略を立てることができます。

本記事では、法人税を中心に、法人が納めるべき各種税金の仕組みと、中小企業が活用できる優遇制度について、具体例を交えながら解説していきます。

法人が納めるべき主な税金

法人が事業を営む上で納めなければならない税金は、大きく分けて「国税」と「地方税」があります。それぞれの税金の特徴と計算方法を理解することが、適切な税務管理の第一歩となります。

法人が納める税金の種類 法人 ¥ 国税 法人税 所得に対して課税 特別 特別法人事業税 法人事業税額×37% 消費税 売上に係る消費税 地方税 事業 法人事業税 都道府県に納付 法人住民税 ・法人税割 ・均等割 ※赤字でも均等割は発生 重要ポイント ・国税は国に納付、地方税は都道府県・市町村に納付 ・法人税と法人事業税は所得(利益)に対して課税 ・法人住民税の均等割は赤字でも必ず発生(年額7万円〜)

図1:法人が納める税金の種類

法人税(国税)

法人税は、法人の事業活動によって得た所得(利益)に対して課される国税です。個人でいう所得税に相当します。

中小法人の税率表 所得金額 税率 年800万円以下 の部分 15% 年800万円超 の部分 23.2% 令和7年4月1日以降の改正 ・所得金額が年10億円を超える中小法人:軽減税率が15%→17%に引き上げ ・過去3年間の平均所得が15億円超の法人:軽減税率の適用なし ・資本金5億円以上の法人の100%子会社:軽減税率の適用なし 軽減税率 適用

図2:中小法人の税率表

ポイント

中小法人(資本金1億円以下)は、所得金額800万円以下の部分について15%の軽減税率が適用されます。これは大法人の23.2%と比較して大きなメリットです。ただし、令和7年4月以降は条件が厳しくなるため注意が必要です。

実効税率と税負担の全体像

法人の実際の税負担を理解するには、法人税だけでなく、法人事業税や法人住民税を含めた「実効税率」を把握することが重要です。

法定実効税率の計算

実効税率の内訳(東京都・中小法人) 法人税 15.0% 法人事業税 約5.0% 特別法人事業税 約1.85% 法人住民税 約1.05% 合計 約22.9% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 計算例:所得500万円の場合の税額 法人税:500万円 × 15% = 75万円 法人事業税:約19.3万円(段階税率) 特別法人事業税:19.3万円 × 37% = 約7.1万円 法人住民税:75万円 × 7% + 均等割7万円 = 約12.25万円 総額:約113.65万円

図3:実効税率の内訳

重要

実効税率は所得金額や地域によって異なります。東京都の中小法人(所得800万円以下)の場合、実効税率は約22.9%となりますが、所得が増えると段階的に税率が上がります。

欠損金の繰越控除制度

青色申告法人は、ある事業年度で生じた赤字(欠損金)を、翌期以降の黒字と相殺することができます。この制度を活用することで、長期的な税負担を軽減できます。

欠損金繰越控除の仕組み 1年目 欠損金 ▲100万円 繰越 2年目 所得 50万円 相殺額 50万円 (残:50万円) 3年目 所得 80万円 相殺額 50万円 (相殺完了) 節税効果 相殺した所得100万円 × 税率15% = 15万円の法人税を節約 (その他の税金も含めると実効税率約22.9%分の節税) 最大10年間繰越可能

図4:欠損金繰越控除の仕組み

ポイント

欠損金の繰越控除を受けるためには、青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出する必要があります。中小法人は欠損金の全額を控除できますが、大法人は所得金額の50%が限度となります。

グループ通算制度

令和4年4月1日から開始された制度で、完全支配関係(100%の資本関係)にある企業グループ内で損益通算ができる制度です。グループ全体の税負担を最適化できる重要な制度です。

グループ通算制度のメリット 親会社 所得:+500万円 黒字 100% 100% 100% 子会社A 所得:+200万円 黒字 子会社B 所得:▲300万円 赤字 子会社C 所得:+100万円 黒字 通算 通算 グループ全体の課税所得 500万円 + 200万円 - 300万円 + 100万円 = 500万円 赤字会社の損失を黒字会社の利益と相殺 グループ全体で税負担を軽減

図5:グループ通算制度のメリット

重要

グループ通算制度を適用すると、グループ内に資本金1億円超の法人が1社でもある場合、全社が大法人扱いとなり、中小法人の優遇措置が受けられなくなります。また、電子申告が義務化されるため、事前の準備が必要です。

中小企業向けの税制優遇措置

中小企業の成長を支援するため、様々な税制優遇措置が用意されています。これらを上手く活用することで、大幅な節税が可能です。

主な優遇措置

中小企業投資促進税制

機械装置(1台160万円以上)、ソフトウェア(1つ70万円以上)などを取得した場合、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を選択できます。

中小企業経営強化税制

経営力向上計画の認定を受けた中小企業は、対象設備について即時償却(100%)または10%の税額控除を選択できます。

少額減価償却資産の特例

取得価額30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで即時損金算入できます。通常は10万円未満しか認められないため、大きなメリットです。

効果的な節税対策

適法な範囲での節税対策は、企業の財務体質強化につながります。決算前の対策と年間を通じた対策を組み合わせることが重要です。

節税対策チェックリスト 決算前にできる対策 設備投資のタイミング調整 在庫の評価方法の見直し(低価法) 不良債権の処理(貸倒処理) 固定資産の除却・廃棄 年間を通じた対策 役員報酬の最適化(定期同額給与) 退職金制度の整備(中退共加入) 生命保険の活用(法人契約) 経営セーフティ共済(年240万円まで) 節税対策の注意点 ・過度な節税は資金繰りを悪化させる可能性があります ・税務調査で否認されないよう、適正な処理を心がけましょう ・節税効果と実際のキャッシュフローを総合的に判断することが重要です 具体的な節税対策は 税理士等の専門家にご相談ください ¥

図6:節税対策チェックリスト

まとめ

法人の税務は複雑で多岐にわたりますが、基本的な仕組みを理解し、適切な対策を講じることで、税負担を適正化することができます。

税務カレンダー(3月決算法人の例) 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 5月31日 確定申告期限 11月30日 中間申告期限 4/10 源泉税 5/10 源泉税 12月〜1月 年末調整期間 重要期限 申告期限 定期納付 年次業務

図7:税務カレンダー

重要ポイント

  1. 税金の種類を把握:法人税、法人事業税、法人住民税、消費税など
  2. 中小企業の優遇措置を活用:軽減税率、投資促進税制、少額減価償却資産の特例など
  3. 欠損金制度の有効活用:青色申告により10年間の繰越控除が可能
  4. 計画的な節税対策:決算前の対策と年間を通じた対策の組み合わせ
  5. 専門家との連携:税理士と協力して最適な税務戦略を構築

税制は毎年改正されるため、最新の情報を把握し、自社に最適な税務戦略を立てることが重要です。不明な点は税理士等の専門家に相談し、適正な申告・納税を心がけましょう。

情報の出典: 国税庁ホームページ、財務省ホームページ、中小企業庁ホームページ
更新日: 2025年7月10日現在の税制に基づく
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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