適格請求書の書き方:インボイス制度で必須の書類作成ガイド

2023年10月からスタートしたインボイス制度。この制度により、消費税の仕入税額控除を受けるためには「適格請求書(インボイス)」の発行と保存が必須となりました。本記事では、適格請求書の基本的な書き方から、電子インボイスへの対応、よくあるミスと対処法まで、実務で必要な知識を分かりやすく解説します。

「適格請求書には何を記載すればいいの?」「今までの請求書と何が違うの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

インボイス制度の導入により、請求書の作成方法が大きく変わりました。正しい適格請求書を発行できなければ、取引先が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があります。本記事で、実務に必要な知識をしっかりと身につけましょう。

適格請求書(インボイス)とは?

適格請求書(インボイス)とは、売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるために発行する請求書のことです。インボイス制度では、この適格請求書がないと、買い手は仕入税額控除を受けることができません。

従来の請求書との違い

これまでの「区分記載請求書」と比べて、適格請求書では以下の項目が追加されました:

適格請求書と従来の請求書の違い 従来の区分記載請求書 発行者:株式会社ABC商事 宛先:〇〇株式会社 御中 日付:2025年7月1日 品名    数量 単価  金額 事務用品   10 1,000 10,000 ※お弁当   5  500  2,500 10%対象      10,000円 8%対象       2,500円 合計        12,500円 ※印は軽減税率対象 適格請求書(インボイス) 発行者:株式会社ABC商事 登録番号:T1234567890123 宛先:〇〇株式会社 御中 日付:2025年7月1日 品名    数量 単価  金額 事務用品   10 1,000 10,000 ※お弁当   5  500  2,500 10%対象      10,000円 消費税額(10%)   1,000円 8%対象       2,500円 消費税額(8%)    200円 合計        13,700円 追加 追加 追加

図1:適格請求書と従来の請求書の違い

  • 登録番号(Tから始まる13桁の番号)
  • 適用税率(8%または10%)
  • 税率ごとに区分した消費税額等

適格請求書発行事業者とは

適格請求書を発行できるのは、税務署に登録申請を行い、「適格請求書発行事業者」として登録を受けた事業者のみです。登録を受けると、「T+13桁の数字」の登録番号が交付されます。

登録番号の構成 法人の場合 T1234567890123 T + 法人番号(13桁) 個人事業主の場合 T9876543210987 T + 新規付番番号(13桁)

図2:登録番号の構成

ポイント

法人の場合は既存の法人番号がそのまま使われますが、個人事業主の場合は新たに番号が付番されます。この登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。

適格請求書の記載事項(6つの必須項目)

適格請求書の6つの記載事項 1 登録番号 IDカード T+13桁の番号 2 取引年月日 📅 カレンダー 実際の取引日 3 取引内容 📦 商品 軽減税率の明示 4 税率ごとの合計額 🧮 電卓 8%・10%別々に 5 消費税額 ¥ 税額 税率ごとに記載 6 交付先の名称 🏢 建物 買い手の正式名称 ⚠️ 重要 これら6つの項目は必ず記載が必要です。1つでも欠けると適格請求書として認められません。 特に「登録番号」と「税率ごとの消費税額」は従来の請求書にはなかった項目なので注意しましょう。

図3:適格請求書の6つの記載事項

適格請求書には、以下の6つの項目を必ず記載する必要があります:

①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号

発行者:株式会社新宿商事
登録番号:T1234567890123

②取引年月日

請求書を発行する日付ではなく、実際に商品やサービスを提供した日付を記載します。

取引日:2025年7月1日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

商品名やサービス内容を具体的に記載し、軽減税率対象品目には「※」などの印を付けて明示します。

商品名     数量  単価   金額
事務用品     10個  1,000円 10,000円
※お弁当     5個   500円  2,500円

※印は軽減税率対象商品

④税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率

税率(8%・10%)ごとに、税抜価額または税込価額を集計して記載します。

10%対象  10,000円
8%対象   2,500円
合計    12,500円

⑤税率ごとに区分した消費税額等

各税率の消費税額を明記します。端数処理は、1つの適格請求書につき税率ごとに1回のみ行います。

消費税額(10%) 1,000円
消費税額(8%)   200円
消費税額合計   1,200円

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

買い手(請求書を受け取る側)の正式名称を記載します。

〇〇株式会社 御中

適格請求書の具体的な書き方

基本的な請求書フォーマット

以下は、適格請求書の基本的なレイアウト例です:

請 求 書 請求書番号:2025-001 発行日:2025年7月3日 〇〇株式会社 御中 株式会社新宿商事 登録番号:T1234567890123 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-1-1 TEL:03-1234-5678 下記のとおりご請求申し上げます。 ご請求金額  ¥13,700(税込) 品名 数量 単価 金額 税率 (2025/7/1) パソコン用品 2 5,000 10,000 10% ※食料品 5 500 2,500 8% 小計 12,500円 10%対象額 10,000円 8%対象額 2,500円 消費税等(10%) 1,000円 消費税等(8%) 200円 合計金額 13,700円 ※印は軽減税率(8%)対象商品 振込先:〇〇銀行△△支店 普通預金1234567

図4:適格請求書のサンプル(完成形)

端数処理のルール

適格請求書では、消費税の端数処理について以下のルールがあります:

  • 原則:1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理
  • 処理方法:切上げ、切捨て、四捨五入のいずれも可(任意)
  • 注意点:明細ごとの端数処理は認められません
端数処理の正誤例 正しい端数処理 (税率ごとに1回の端数処理) 10%対象商品合計:32,456円 消費税額:3,246円 (端数処理1回) 8%対象商品合計:15,678円 消費税額:1,254円 (端数処理1回) 消費税合計:4,500円 × 誤った端数処理 (明細ごとの端数処理) 商品A:1,234円 × 10% = 123.4円 → 123円(切捨て) 商品B:2,345円 × 10% = 234.5円 → 235円(四捨五入) 商品C:3,456円 × 10% = 345.6円 → 346円(四捨五入) 商品D:4,567円 × 10% = 456.7円 → 457円(四捨五入) 明細ごとに端数処理をしてはいけません!

図5:端数処理の正誤例

重要

端数処理を明細ごとに行うと、買い手と売り手で消費税額に差異が生じる可能性があります。必ず税率ごとに1回のみ端数処理を行ってください。

適格簡易請求書について

適格簡易請求書を発行できる事業者

以下の事業を行う場合は、適格簡易請求書の発行が認められています:

  • 小売業
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業(不特定多数の者に対するもの)
  • その他これらの事業に準ずる事業

適格簡易請求書の記載事項

適格簡易請求書では、以下の項目の記載が簡略化されています:

項目 適格請求書 適格簡易請求書
発行者の名称・登録番号 必要 必要
取引年月日 必要 必要
取引内容 必要 必要
税率ごとの合計額 必要 必要
消費税額または適用税率 消費税額の記載が必要 どちらか一方でOK
交付先の名称 必要 省略可能

ポイント

レシートのように不特定多数の顧客に交付する場合は、交付先の名称を省略できます。これにより、レジでの対応がスムーズになります。

電子インボイスへの対応

電子インボイスとは

電子インボイスとは、適格請求書を電子データで発行・保存するものです。PDFやメール添付での送付も電子インボイスに該当します。

電子帳簿保存法との関係

電子インボイスを利用する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります:

電子インボイスの保存要件 真実性の確保 (以下のいずれかの措置) 1. タイムスタンプの付与 2. 訂正削除できないシステム 3. 履歴が残るシステム 4. 事務処理規程の整備 ※タイムスタンプ:受領後最長2か月+7営業日以内 ※事務処理規程:国税庁HPにサンプルあり 可視性の確保 (すべて必要) 1 パソコン等の操作マニュアルの備付け 2 ディスプレイ・プリンタ等の備付け(画面・書面で確認できる状態) 3 検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先で検索可能) ⚠️ 注意 2024年1月以降、電子取引データの電子保存が義務化されています。 紙での保存は認められませんのでご注意ください。

図6:電子インボイスの保存要件

電子インボイスの保存期間

電子インボイスも紙の請求書と同様に、以下の期間保存が必要です:

  • 法人:7年間(欠損金が生じた年は10年間)
  • 個人事業主(課税事業者):7年間
  • 個人事業主(免税事業者):5年間

適格返還請求書(返還インボイス)について

適格返還請求書とは

商品の返品や値引き、販売奨励金の支払いなど、売上に係る対価の返還を行う場合に発行する書類です。

適格返還請求書 株式会社新宿商事 登録番号:T1234567890123 返還日:2025年7月10日 元取引日:2025年6月15日 〇〇株式会社 御中 下記のとおり返還させていただきます。 返還内容 数量 単価 返還額 税率 商品A 返品 5個 1,000円 -5,000円 10% 返還額(税抜) -5,000円 消費税額(10%) -500円 返還合計額 -5,500円 📢 令和5年度税制改正 税込1万円未満の少額な返還については、 適格返還請求書の交付義務が免除されました。

図7:適格返還請求書の記載例

記載事項(5項目)

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 対価の返還等を行う年月日
  3. 対価の返還等の基となった取引を行った年月日
  4. 対価の返還等の取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  5. 税率ごとに区分して合計した対価の返還等の金額

重要

令和5年度税制改正により、税込1万円未満の少額な返還については、適格返還請求書の交付義務が免除されました。これにより、少額の返品処理が簡素化されています。

修正インボイスの対応方法

修正インボイスとは

発行した適格請求書に誤りがあった場合に、その内容を訂正するために発行する書類です。

修正方法(2パターン)

パターン1:適格請求書を再発行する方法

  1. 正しい内容で適格請求書を作成し直す
  2. 「修正版」「再発行」などの文言を追加
  3. 買い手に送付し、誤った請求書の破棄を依頼

パターン2:修正事項を明示する方法

  1. 誤りがあった事項を明記した書面を作成
  2. 正しい内容を記載
  3. 修正年月日と発行者名を記載

保存について

  • 買い手側:修正インボイスのみ保存(誤った請求書の保存は不要)
  • 売り手側:修正インボイスの写しを保存

よくある質問(Q&A)

Q1. 登録番号はどこに記載すればよいですか?

A1. 登録番号は、発行者情報の近くに記載するのが一般的です。会社名の下や、住所・連絡先と一緒に記載することで、受け取る側が確認しやすくなります。

Q2. 値引きがある場合の記載方法は?

A2. 値引きは以下の2つの方法で記載できます:
1. 明細欄に値引き額をマイナス表示で記載
2. 小計後に値引き額を記載し、差し引く

Q3. 複数の税率が混在する場合の書き方は?

A3. 税率ごとに明細を分けて記載し、それぞれの小計と消費税額を明示します。軽減税率対象品目には必ず印を付けて区別してください。

Q4. 請求書を分割して発行する場合の注意点は?

A4. 複数の請求書で一つの適格請求書とすることも可能です。ただし、請求書相互の関連性を明確にし、全体で記載事項を満たす必要があります。

Q5. 外貨建て取引の場合の消費税額の記載は?

A5. 外貨建て取引の場合も、消費税額は日本円で記載します。為替レートは取引日のレートを使用し、その旨を明記することが望ましいです。

まとめ:適格請求書作成のポイント

適格請求書の作成で最も重要なのは、6つの記載事項を漏れなく正確に記載することです。

インボイス制度対応チェックリスト 登録番号の取得 適格請求書発行事業者として登録済みか確認 請求書フォーマットの更新 6つの記載事項をすべて含むフォーマットに変更 システムの対応確認 請求書発行システムが適格請求書に対応しているか 社内ルールの整備 端数処理方法、修正時の対応フローなどを明確化 取引先との情報共有 登録番号の相互確認、電子インボイスへの移行検討 保存体制の構築 7年間の保存義務への対応、電子保存の検討

図8:インボイス制度対応チェックリスト

インボイス制度への対応は、単に請求書の様式を変更するだけではありません。システムの見直し、社内ルールの整備、取引先との連携、保存体制の構築など、総合的な対応が必要です。

適格請求書の作成は、最初は手間に感じるかもしれません。しかし、正しい知識を身につけ、適切なシステムを導入することで、スムーズな対応が可能になります。本記事を参考に、自社に合った適格請求書の作成体制を構築してください。

情報の出典: 国税庁「インボイス制度の概要」、財務省
更新日: 2025年7月現在の法令に基づく
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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