3割特例(小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置)
3割特例は、インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者が、令和9年分(2027年1月〜12月)と令和10年分(2028年1月〜12月)の消費税の納付税額を、売上にかかる消費税額(売上税額)の3割にできる経過措置です。法人は使えません。規定は令和8年度税制改正で設けられ、2026年10月1日に施行されますが、実際に使うのは令和9年分の確定申告(期限2028年3月31日)からです。
3割特例の要点
| 使える人 | インボイス発行事業者の登録を受けている個人事業者。登録(又は課税事業者選択届出書の提出)がなければ免税事業者となる年分に限ります。法人は使えません。 |
|---|---|
| 使える年分 | 令和9年分(2027年1月〜12月)と令和10年分(2028年1月〜12月) |
| 納める税額 | 売上税額の30%(売上税額の70%を仕入税額として控除します) |
| 主な要件 | 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなど |
| 手続き | 事前の届出は不要です。確定申告書に適用を受ける旨を付記します。 |
| 簡易課税への移行 | 3割特例を使った翌年分は、その年分の確定申告期限までに届出書を出せば、その年分から簡易課税を使えます。 |
【確定・2026年10月1日施行】「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号、2026年3月31日成立)による改正です。内容は国税庁の令和8年度税制改正特集とリーフレット(PDF)に基づきます。
【確定】2割特例との関係(2026年9月25日時点)
2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者は令和8年分(2026年分)が最後で、その申告期限は2027年3月31日(水)です。3割特例を初めて使うのは令和9年分の確定申告で、期限は2028年3月31日(金)です。2つの特例の違いは「2割特例との違い」にまとめています。
目次
3割特例とは:納付税額を売上税額の3割にする経過措置
【確定・2026年10月1日施行】
仕組みは、売上税額の7割を仕入れにかかった税額とみなして差し引くものです。その結果、納める税額は売上税額の3割になります(国税庁リーフレット、財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF)847〜848頁)。根拠は平成28年の改正法(所得税法等の一部を改正する法律、平成28年法律第15号)の附則51条の3で、令和8年法律第12号により加えられました。条文の見出しは「適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置」です(財務省「所得税法等の一部を改正する法律案」法律案(PDF)第14条)。国税庁のQ&Aやリーフレットは、「小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置(3割特例)」と呼んでいます。
控除する金額(特別控除税額)の正確な計算は、下の「計算の手順」で説明しています(国税庁 インボイスQ&A 問114-2(PDF))。
仕入れや経費にかかった消費税を実額で計算しないため、国税庁は、売上税額が分かれば納付税額を計算でき、その計算のために受け取ったインボイスを保存しておく必要はないと説明しています(国税庁 令和8年度税制改正特集(印刷用、PDF)のQ&A)。
設けられた理由と、法人が対象外になった理由
財務省の解説は、2割特例について、消費者が支払った消費税相当額の一部が納税されずに事業者の収入になっている面があることや、課税事業者である法人が新たに法人を設立して2割特例を適用させ、グループ全体の消費税の納付額を圧縮するなど、制度の不適切な利用と思われる事例があったことを挙げています。また、法人は個人事業者に比べて、複式簿記での記帳やより多くの決算書類の作成が求められ、相対的に高い事務処理能力が期待されるとしています。
そのうえで、事務負担への配慮がより必要と考えられる個人事業者に限り、2割特例の終了後さらに2年間、納付税額を売上税額の3割とする経過措置が設けられました(財務省「令和8年度税制改正の解説」847〜848頁、令和8年度税制改正の大綱(PDF)93頁)。
対象になる人と主な要件
【確定・2026年10月1日施行】
国税庁は、主な要件として次の3つを挙げています(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 個人事業者であること | 法人は使えません。 |
| インボイス発行事業者の登録を受けていること | 登録していない課税事業者は使えません。 |
| 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること | 基準期間は適用を受ける年の2年前です。令和9年分は令和7年、令和10年分は令和8年の課税売上高で判定します。 |
さらに、3割特例を使えるのは、2割特例と同じように、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと、又は課税事業者選択届出書を提出したことにより、事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限られます(国税庁リーフレットの※2)。つまり、登録や課税事業者選択届出書の提出がなければ免税事業者になる年分だけが対象で、売上の規模などによって登録と関係なく課税事業者になる年分には使えません。課税事業者だった個人事業者が登録した場合も、登録した年の翌年分以後で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の年分は、原則として使えます(インボイスQ&A 問114-2の注)。
免税事業者になるかどうかは、基準期間のほか、特定期間(前年1月1日〜6月30日)でも判定します。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、原則としてその年分は登録と関係なく課税事業者になり、3割特例を使えません。ただし、特定期間の1,000万円の判定は課税売上高に代えて給与等の支払額の合計額で行うこともでき、どちらで判定するかは事業者が選べます。国外事業者は、給与等の支払額による判定はできません(国税庁 令和8年度税制改正特集の適用可否フローチャート、タックスアンサー No.6501)。
判定の例
次の表は、上の要件を当てはめた例です(当会作成。次の節の「3割特例を使えない年分」に当たらないことを前提にしています)。
| 事業者 | 判定 |
|---|---|
| 2023年10月1日に登録した個人事業者。令和7年の課税売上高は800万円 | 令和9年分は3割特例を使えます。令和10年分は、令和8年の課税売上高などで改めて判定します。 |
| 登録済みの個人事業者。令和7年の課税売上高は1,200万円 | 令和9年分は使えません(基準期間の課税売上高が1,000万円超)。令和10年分は、令和8年の課税売上高などで判定します。 |
| 登録済みの法人 | 使えません。 |
| 登録していない課税事業者の個人事業者 | 使えません。 |
3割特例を使えない年分
【確定・2026年10月1日施行】
個人事業者である適格請求書発行事業者でも、次の課税期間は3割特例を使えません(国税庁 インボイスQ&A 問115-2(PDF))。多くの個人事業者に関係するのは、売上が1,000万円を超えた場合の②③と、課税期間を短縮している場合の⑧です。⑤〜⑦は、一般課税(原則課税)で申告した年分に高額な資産などを仕入れた場合の制限です。
| 区分 | 使えない課税期間 |
|---|---|
| ① 国外事業者 | 課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者である課税期間 |
| ② 過去の売上 | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間 |
| ③ 過去の売上 | 特定期間の課税売上高による納税義務の免除の特例により、事業者免税点制度が使えない課税期間 |
| ④ 相続 | 相続があった場合の納税義務の免除の特例により、事業者免税点制度が使えない課税期間(相続のあった年分に限り、登録が相続日以前で、ほかの事由で制限されなければ使えます) |
| ⑤ 高額な資産 | 課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった後2年以内に、一般課税で調整対象固定資産(1取引単位の税抜価額が100万円以上の、棚卸資産以外の資産)の仕入れ等を行い、課税事業者選択不適用届出書を出せないことにより、事業者免税点制度が使えない課税期間(登録の経過措置により登録を受けた人は、課税事業者選択届出書を出していないので当たりません) |
| ⑥ 高額な資産 | 一般課税で高額特定資産(1取引単位の税抜価額が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)の仕入れ等を行ったこと(棚卸資産の調整を受けた場合を含む)により、事業者免税点制度が使えない課税期間 |
| ⑦ 高額な資産 | 一般課税で金又は白金の地金等を仕入れた金額の合計額(税抜)が200万円以上であることにより、事業者免税点制度が使えない課税期間 |
| ⑧ 課税期間の短縮 | 「消費税課税期間特例選択届出書」で課税期間を1か月又は3か月に短縮している課税期間(課税期間の特例の適用・不適用により一の課税期間とみなされる課税期間を含みます) |
設備投資を予定している場合
3割特例や簡易課税では、通常、還付は生じません(国税庁 インボイスQ&A 問117-3(PDF))。多額の設備投資などで仕入れの税額が売上の税額を上回る年分に還付を受けるには、一般課税で申告します。ただし、一般課税で申告する年分に高額特定資産などを仕入れると、上の表の⑤〜⑦のとおり、その後の年分に3割特例を使えなくなる場合があります。例えば高額特定資産を購入した場合、個人事業者は、購入した年分の翌年分と翌々年分に事業者免税点制度が使えません(消費税法12条の4第1項(e-Gov法令検索))。このため、令和7年分(2025年)から令和9年分(2027年)までのいずれかの年分を一般課税で申告し、その年分に高額特定資産を購入した場合は、令和9年分・令和10年分の一方又は両方で3割特例を使えなくなります。一般課税で申告する(した)令和7年分・令和8年分に高額特定資産などを購入している場合は、所轄の税務署や税理士に確認してください。2026年・2027年に大きな資産の購入を予定している場合は、購入の前に確認してください。
計算方法と計算例
計算例は当会試算です(2026年9月25日時点の法令等に基づく)。
計算の手順
- 課税標準額:税込の課税売上 × 100/110(8%の分は100/108)。税率ごとに千円未満を切り捨てます。
- 売上税額:課税標準額 × 7.8%(8%の分は6.24%)
- 特別控除税額:(売上税額 − 売上げの返品・値引きなど対価の返還等に係る消費税額)× 70%
- 差引税額:売上税額 −(特別控除税額 + 対価の返還等に係る消費税額 + 貸倒れに係る消費税額)。百円未満を切り捨てます。
- 地方消費税:差引税額 × 22/78。百円未満を切り捨てます。
- 納付税額:差引税額 + 地方消費税
課税標準額の千円未満と差引税額の百円未満の切捨ては国税庁のタックスアンサー No.6371で、地方消費税の百円未満の切捨ては地方税法20条の4の2第3項(e-Gov法令検索)で確認できます。
なお、2028年4月1日以後は、特定少額資産の譲渡(国外から国内あてに通信販売で発送する資産の譲渡で、1つの資産の対価の額が税抜1万円以下のもの)の対価の額が、3割特例の計算の対象から除かれます(インボイスQ&A 問114-2の【参考】、国税庁「消費税法改正のお知らせ」(令和8年4月、PDF))。
計算例①(10%のみ、税込の課税売上5,500,000円)
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 課税標準額 | 5,500,000 × 100/110 | 5,000,000円 |
| ② 売上税額(国) | 5,000,000 × 7.8% | 390,000円 |
| ③ 特別控除税額 | 390,000 × 70% | 273,000円 |
| ④ 差引税額 | 390,000 − 273,000 | 117,000円 |
| ⑤ 地方消費税 | 117,000 × 22/78 | 33,000円 |
| ⑥ 納付税額 | 117,000 + 33,000 | 150,000円 |
税込の売上5,500,000円に含まれる消費税(国と地方の合計)は500,000円で、納付税額はその3割の150,000円です。同じ売上で2割特例を使えた場合の納付税額は100,000円なので、3割特例では50,000円増えます。
計算例②(10%と8%、端数あり)
税込の課税売上が、10%の分6,600,000円、8%の分2,160,000円の場合です。まず、税率ごとに課税標準額と売上税額を出します。
| 手順 | 10% | 8% |
|---|---|---|
| 税込の課税売上 | 6,600,000円 | 2,160,000円 |
| ① 課税標準額(千円未満切捨て) | 6,000,000円 | 2,000,000円 |
| ② 売上税額(×7.8%、×6.24%) | 468,000円 | 124,800円 |
次に、売上税額を合計して納付税額を出します。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ② 売上税額の合計 | 468,000 + 124,800 | 592,800円 |
| ③ 特別控除税額 | 592,800 × 70% | 414,960円 |
| ④ 差引税額 | 592,800 − 414,960 = 177,840(百円未満切捨て) | 177,800円 |
| ⑤ 地方消費税 | 177,800 × 22/78 = 50,148.7…(百円未満切捨て) | 50,100円 |
| ⑥ 納付税額 | 177,800 + 50,100 | 227,900円 |
税込の売上に含まれる消費税(600,000円+160,000円=760,000円)の3割は228,000円ですが、法律で決まった端数処理により、納付税額は100円少ない227,900円になります。
年間の売上と仕入れから一般課税・簡易課税・2割特例の納税額を比べるには、当会の消費税の年間納税額シミュレーションを使えます。このツールは3割特例に対応していないため、3割特例の額は上の手順で計算してください。
簡易課税・一般課税との比較(業種別)
計算例は当会試算です。比べ方の考え方は国税庁 インボイスQ&A 問117-3によります。
3割特例の納付税額は、業種にかかわらず売上税額の30%です。簡易課税の納付税額は、売上税額 ×(1 − みなし仕入率)です。このため、みなし仕入率が70%より高い業種では簡易課税のほうが、70%より低い業種では3割特例のほうが、納付税額が少なくなります。国税庁のQ&A 問117-3も、小売業なら簡易課税のほうが納付税額が少なくなると説明しています。
業種別の比較表(簡易課税と3割特例)
| 事業区分・主な業種(みなし仕入率) | 簡易課税 | 3割特例 | 少ないほう |
|---|---|---|---|
| 第1種 卸売業(90%) | 50,000円 | 150,000円 | 簡易課税(100,000円少ない) |
| 第2種 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡)(80%) | 100,000円 | 150,000円 | 簡易課税(50,000円少ない) |
| 第3種 農林漁業(飲食料品の譲渡以外)・製造業・建設業など(70%) | 150,000円 | 150,000円 | 同額 |
| 第4種 飲食店業など、ほかの区分に当たらない事業(60%) | 200,000円 | 150,000円 | 3割特例(50,000円少ない) |
| 第5種 運輸通信業、金融業・保険業、サービス業(飲食店業を除く)(50%) | 250,000円 | 150,000円 | 3割特例(100,000円少ない) |
| 第6種 不動産業(40%) | 300,000円 | 150,000円 | 3割特例(150,000円少ない) |
売上税額(国)は5,000,000 × 7.8% = 390,000円です。簡易課税の差引税額は 390,000円 − 390,000円 × みなし仕入率、地方消費税はその22/78です(いずれも百円未満切捨て)。例えば第4種は、差引税額156,000円、地方消費税44,000円、合計200,000円です。事業区分とみなし仕入率はタックスアンサー No.6505によります。参考として、令和8年分まで使える2割特例では、業種にかかわらず100,000円です(計算例①)。
2種類以上の事業を営んでいる場合、簡易課税では事業区分ごとのみなし仕入率で計算するのが原則で、結果は上の表と変わります。事業区分の判定は、国税庁のタックスアンサー No.6505(簡易課税制度)で確認できます。
簡易課税を使うには、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることと、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要で、選んだら原則として2年間は続けて適用します(問117-3の注)。3割特例には事前の届出も継続適用の義務もなく、年分ごとに申告のときに選びます(問114-2)。
一般課税(原則課税)との比較
一般課税の納付税額は、実際の仕入れや経費にかかった消費税で決まるため、業種だけでは比べられません。上と同じ売上(税抜5,000,000円)で、課税仕入れ等がすべて10%で全額を控除できるものとし、割戻し計算で出すと次のとおりです。
| 税込の課税仕入れ等(仕入税額・国) | 一般課税の納付税額 | 3割特例との比較 |
|---|---|---|
| 2,200,000円(156,000円) | 300,000円 | 3割特例が150,000円少ない |
| 3,300,000円(234,000円) | 200,000円 | 3割特例が50,000円少ない |
| 3,850,000円(273,000円) | 150,000円 | 同額 |
| 4,400,000円(312,000円) | 100,000円 | 一般課税が50,000円少ない |
| 6,600,000円(468,000円) | 100,000円の還付 | 一般課税なら100,000円の還付(3割特例では150,000円の納付。通常、還付は生じません) |
かっこ内は仕入税額(国)で、税込の課税仕入れ等 × 7.8/110 です。差引税額と地方消費税は百円未満を切り捨てています。例えば3,850,000円なら、3,850,000 × 7.8/110 = 273,000円で、3割特例の特別控除税額と同じになります。
この例のように、課税仕入れ等がすべて10%の場合、税抜の課税仕入れ等が税抜の課税売上高の70%を超える年分は、一般課税のほうが納付税額が少なくなります。一般課税で仕入税額控除を受けるには、インボイスなどの請求書等と帳簿の保存が必要です。また、インボイス発行事業者以外(免税事業者など)からの仕入れは、2026年10月1日から2028年9月30日までは仕入税額相当額の70%しか控除できません(免税事業者等からの仕入れの経過措置(70%控除と1億円上限))。一般課税の計算手順は消費税の計算方法で説明しています。
2割特例との違い
【確定・3割特例は2026年10月1日施行】
| 項目 | 2割特例 | 3割特例 |
|---|---|---|
| 使える事業者 | 個人事業者と法人 | 個人事業者のみ |
| 使える期間 | 2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間(個人事業者は令和8年分まで) | 令和9年分と令和10年分 |
| 納める税額 | 売上税額の20% | 売上税額の30% |
| 対象となる課税期間 | どちらも、登録(又は課税事業者選択届出書の提出)がなければ免税事業者となる課税期間に限られます。 | |
| 手続き | どちらも事前の届出は不要で、確定申告書に適用を受ける旨を付記します。 | |
| 簡易課税の届出期限の特例 | どちらも、特例を使った課税期間の翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間から簡易課税を使えます(翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合)。 | |
| 使えない課税期間 | インボイスQ&A 問115・問116 | インボイスQ&A 問115-2 |
| 根拠 | 平成28年改正法附則51条の2 | 平成28年改正法附則51条の3 |
出典は国税庁 2割特例のページ、国税庁 令和8年度税制改正特集、財務省「令和8年度税制改正の解説」847〜848頁です。2割特例の要件、法人の最後の事業年度、計算例は2割特例はいつまで使えるか(個人・法人別の最後の課税期間と要件)で説明しています。
手続き:事前の届出は不要、確定申告書に付記
【確定・2026年10月1日施行】
3割特例を使うのに、事前の届出は必要ありません。確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記します(平成28年改正法附則51条の3第3項、国税庁リーフレットの※3)。国税庁は、申告書の所定欄に適用を受ける旨を記載するだけで適用できると説明しています(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
簡易課税のような継続適用の義務はないため(インボイスQ&A 問114-2)、令和9年分と令和10年分のそれぞれについて、3割特例を使うかどうかを申告のときに選べます。
令和9年分の申告書のどの欄にどう書くかは、国税庁の申告書様式と記載の手引きでご確認ください。国税庁が令和9年分の申告の案内を公表したら、この記事にも追記します。
簡易課税制度選択届出書を出している場合(2026年9月25日時点)
2割特例については、簡易課税制度選択届出書を出していても申告の際に2割特例を選べると、国税庁が説明しています(国税庁「2割特例の概要」)。3割特例について、インボイスQ&A 問114-2は、2割特例と同様に事前の届出や継続適用の制限はないとしていますが、簡易課税制度選択届出書を出している場合の扱いを直接述べた国税庁の記載は、当会ではまだ確認できていません。該当する方は、所轄の税務署にご確認ください。
個人事業者の移行スケジュールと簡易課税の届出期限
【確定・2026年10月1日施行】(申告期限の曜日は当会で確認)
| 年分 | 使える特例 | 消費税の確定申告期限 |
|---|---|---|
| 令和8年分(2026年) | 2割特例(要件を満たす場合。最後の年分) | 2027年3月31日(水) |
| 令和9年分(2027年) | 3割特例(要件を満たす場合) | 2028年3月31日(金) |
| 令和10年分(2028年) | 3割特例(要件を満たす場合。最後の年分) | 2029年4月2日(月)(3月31日が土曜日のため) |
| 令和11年分(2029年)以後 | 2割特例・3割特例はありません。簡易課税か一般課税で申告します。 | 令和11年分は2030年4月1日(月)(3月31日が日曜日のため) |
個人事業者の消費税の確定申告期限は翌年3月31日で、土曜日・日曜日に当たるときは翌月曜日です(国税庁 令和8年度税制改正特集の適用可否フローチャート)。2割特例の最後の年分は国税庁リーフレットの※1によります。
簡易課税に移るときの届出期限の特例
簡易課税を使うには、原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税を使う場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間から簡易課税を使えます(平成28年改正法附則51条の2第6項・51条の3第5項、国税庁 インボイスQ&A 問117(PDF))。この特例は、翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合に使えます。
| 特例を使った年分 | 簡易課税を始める年分 | 届出書の提出期限 |
|---|---|---|
| 令和8年分に2割特例 | 令和9年分 | 2028年3月31日(金) |
| 令和9年分に3割特例 | 令和10年分 | 2029年4月2日(月) |
| 令和10年分に3割特例 | 令和11年分 | 2030年4月1日(月) |
令和11年分の例は国税庁リーフレットに載っている例です。ほかの2つは、同じ決まりに当てはめて当会が日付を確認しました。
例えば小売業(第2種)の個人事業者は、上の比較のとおり3割特例より簡易課税のほうが納付税額が少なくなります。令和8年分まで2割特例を使い、令和9年分から簡易課税にする場合は、2028年3月31日までに届出書を出せば間に合います(問117-3)。届出の手続きは簡易課税制度の届出と手続きで説明しています。
【予定・法案未成立】飲食料品の消費税率が1%になった場合
2026年9月25日時点の状況
2026年9月15日に「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。法案はまだ成立していません。国税庁の資料も、今後、法案が国会に提出され、可決・成立した場合の内容として公表されています。
大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品(現在の軽減税率の対象となっている飲食料品と同じ範囲)の消費税率を1%(国と地方の合計)にするとしています。3割特例を使える年分のうち、令和9年分の4月以降と令和10年分の全体が、この期間に当たります。
大綱と国税庁のQ&A(問3-6)では、簡易課税を使う場合、1%の対象となる飲食料品の売上税額と同じ額を仕入税額として控除し、それ以外の売上税額には現在の簡易課税の計算を当てはめる特例が示されています。2割特例・3割特例を使う場合も同様とされています。3割特例では、1%対象の売上税額は全額を控除し、それ以外の売上税額に3割特例を当てはめることになります(大綱(内閣官房、PDF)、国税庁 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(PDF))。
法案が成立し、確定した取扱いが示されたら、この記事を更新します。引下げの内容と事業者の準備は、国税庁 消費税率引下げ特設サイトをご覧ください。
令和9年分に向けて確認しておくこと
- 令和7年(令和9年分の基準期間)の課税売上高が1,000万円以下か。令和10年分は令和8年の課税売上高で判定します。
- 令和8年1月〜6月(令和9年分の特定期間)の課税売上高が1,000万円以下か。超える場合は、同じ期間の給与等の支払額が1,000万円以下か(どちらで判定するかは選べます)。
- 自分の事業区分のみなし仕入率が70%より高いか(卸売業・小売業など)。高い場合は、1種類の事業だけを営んでいれば簡易課税のほうが納付税額が少なくなります。令和9年分から簡易課税にするなら、届出書の提出期限は2028年3月31日です。
- 一般課税で申告する(した)令和7年分・令和8年分に、高額特定資産などを購入していないか。2026年・2027年に大きな設備投資を予定していないか。一般課税の年分に高額特定資産などを購入すると、令和9年分・令和10年分に3割特例を使えなくなる場合があります。還付が見込まれる年分は、一般課税との比較が必要です。
- 課税期間を短縮する届出を出していないか。
よくある質問
3割特例はいつからいつまで使えますか?
令和9年分(2027年1月〜12月)と令和10年分(2028年1月〜12月)の2年分です。規定は2026年10月1日に施行されますが、最初に使うのは令和9年分の確定申告(期限は2028年3月31日)です。〔国税庁 令和8年度税制改正特集〕
法人も3割特例を使えますか?
使えません。3割特例は個人事業者に限られます。法人は、2割特例を使える最後の課税期間(2026年9月30日を含む課税期間)の後は、一般課税か簡易課税で申告します。〔国税庁 令和8年度税制改正特集、財務省「令和8年度税制改正の解説」〕
3割特例を使うのに届出は必要ですか?
事前の届出は不要です。確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記して使います。〔国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」〕
2割特例を使っていた人は、3割特例も必ず使えますか?
必ずではありません。年分ごとに判定し、基準期間(令和9年分は令和7年、令和10年分は令和8年)の課税売上高が1,000万円を超える年分や、課税期間を短縮している年分などは使えません。〔国税庁 インボイスQ&A 問115-2〕
もともと課税事業者だった個人事業者が登録した場合も使えますか?
登録した課税期間の翌課税期間以後の課税期間で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として使えます。〔国税庁 インボイスQ&A 問114-2〕
3割特例と簡易課税では、どちらの納付税額が少なくなりますか?
業種によります。1種類の事業だけを営む場合、みなし仕入率が90%の卸売業(第1種)と80%の小売業など(第2種)は簡易課税、70%の第3種は同額、60%以下の第4種〜第6種は3割特例のほうが少なくなります。簡易課税を使うには届出書の提出が必要です。〔国税庁 インボイスQ&A 問117-3、タックスアンサー No.6505(比較は当会の計算)〕
3割特例を使った翌年から簡易課税にするには、いつまでに届出書を出せばよいですか?
簡易課税を始める年分の確定申告期限までです。例えば、令和10年分に3割特例を使い、令和11年分から簡易課税にする場合は、2030年4月1日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出します。〔国税庁リーフレット、インボイスQ&A 問117〕
3割特例で消費税の還付を受けられますか?
通常、還付は生じません。多額の設備投資などで仕入れの税額が売上の税額を上回り、還付を受けたい年分は、一般課税で申告します。〔国税庁 インボイスQ&A 問117-3〕
飲食料品の消費税率が1%になった場合、3割特例の計算は変わりますか?
2026年9月25日時点では閣議決定の段階で、法案は成立していません。成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日までの1%対象の飲食料品の売上税額は、その全額を仕入税額として控除し、それ以外の売上税額に3割特例を適用する特例が示されています。〔飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(2026年9月15日閣議決定)、国税庁 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A 問3-6〕
出典・参考資料
いずれも2026年9月25日に内容を確認しました。
国税庁 インボイス制度・改正関係
- 令和8年度税制改正特集(インボイス制度)(主な適用要件、適用可否フローチャート、簡易課税への円滑な移行措置)
- リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年4月、5月改訂、PDF)(※1〜※3、届出期限の例)
- 令和8年度税制改正特集 印刷用(PDF)(3割特例のQ&A)
- インボイスQ&A 問114-2 3割特例の内容(PDF)(注、【参考】)
- インボイスQ&A 問115-2 3割特例の適用ができない課税期間(PDF)
- インボイスQ&A 問117 2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択(PDF)
- インボイスQ&A 問117-3 3割特例を適用するよりも簡易課税制度を適用した方が納付税額が少なくなる場合(PDF)
- 2割特例のページ、2割特例の概要
- 消費税法改正のお知らせ(令和8年4月、PDF)(特定少額資産の譲渡の定義)
国税庁 タックスアンサー
財務省
- 令和8年度税制改正の解説「消費税法等の改正」(PDF)(847〜848頁)
- 令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日閣議決定、PDF)(93頁)
- 第221回国会における財務省関連法律(所得税法等の一部を改正する法律、令和8年法律第12号)、同 法律案(PDF)(第14条。平成28年改正法附則51条の3の条文)
法令(e-Gov法令検索)
【予定・法案未成立】飲食料品の消費税率1%の関係
改訂履歴
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2026年9月25日:公開
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。