相続税の基本:基礎控除・法定相続人・税率・申告期限と主な特例

相続税は、亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈で財産を取得した人にかかる国税です。債務や葬式費用を差し引いた正味の遺産額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときに、申告と納税が必要になります。期限は、亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、生前贈与の加算にも触れます。

相続税の要点【確定】

項目内容
かかる場合正味の遺産額が基礎控除額を超える場合
基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人の数
(例:配偶者と子2人なら4,800万円)
税率10%〜55%の8段階。法定相続分に応ずる取得金額ごとに当てはめます
申告・納税の期限亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内
(例:2026年9月26日に亡くなった場合は2027年7月26日(月))
提出先被相続人の住所地を所轄する税務署

期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、その翌日が期限になります。小規模宅地等の特例で評価額を下げると基礎控除額以下になる場合でも、特例を適用する前の金額が基礎控除額を超えていれば申告が必要です(申告が必要かどうかの判定)。

相続税に関わる税制改正と2027年以後の変更点(2026年9月26日時点)

  • 【確定】令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日閣議決定)の資産課税の項目に、相続税の基礎控除額・税率・配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例の見直しは含まれていません。この記事は、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)の内容で説明しています。
  • 【確定・適用前】生前贈与を相続財産に加算する期間は、2027年1月1日以後に亡くなった場合から延び始め、2031年1月1日以後に亡くなった場合は相続開始前7年以内になります(令和5年度税制改正。生前贈与と相続税)。
  • 【大綱段階】亡くなる前5年以内に対価を払って取得・新築した一定の貸付用不動産などを通常の取引価額で評価する見直しが、2027年1月1日以後の相続等から適用される方針です。2026年9月26日時点で、財産評価基本通達の改正は公表されていません(貸付用不動産の評価の見直し)。
  • 【確定】教育資金の一括贈与の非課税は2026年3月31日で終了しました。住宅取得等資金の贈与の非課税は2026年12月31日まで、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税は2027年3月31日までです。
目次
  1. 相続税がかかる財産・かからない財産と差し引けるもの
  2. 相続人になる人と法定相続分
  3. 相続税はいくらからかかるか(基礎控除額)
  4. 相続税の計算方法と税率(速算表)
  5. 配偶者の税額軽減
  6. 小規模宅地等の特例
  7. 生前贈与と相続税
  8. 申告と納税(期限は10か月以内)
  9. よくある質問
  10. まとめ
  11. 出典・参考資料

相続税がかかる財産・かからない財産と差し引けるもの

【確定】相続税の対象は、被相続人から相続や遺贈(死因贈与を含みます)で取得した財産です。現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋のほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものはすべて含まれます(国税庁 タックスアンサー No.4105)。

相続財産とみなされるもの・加算されるもの

次のものも、相続税の対象になります。

  • 被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金、死亡退職金など
  • 被相続人から相続時精算課税の適用を受けて贈与された財産
  • 相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間内に被相続人から暦年課税で贈与を受けた財産(加算対象期間の表)
  • 教育資金・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税を受けた場合の管理残額(一定の場合を除きます)

(国税庁 No.4105)

相続税がかからない主な財産

相続税がかからない主な財産(国税庁 No.4108)
財産内容
墓地・墓石・仏壇・仏具など日常礼拝をしているもの。骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものには相続税がかかります
死亡保険金相続人が受け取った分のうち、500万円×法定相続人の数までの部分
死亡退職金相続人が受け取った分のうち、500万円×法定相続人の数までの部分
国などへの寄附相続や遺贈で取得した財産を、申告期限までに国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人、認定NPO法人に寄附したもの

死亡保険金と死亡退職金の非課税は、相続人が受け取った分に限られます。相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った分には適用されません。死亡退職金は、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定したものが相続財産とみなされます(国税庁 No.4114・No.4117)。

差し引ける債務と葬式費用

被相続人が亡くなったときに現に存在した確実な債務と、葬式費用は、遺産総額から差し引けます。差し引けるのは、その債務などを負担する相続人や包括受遺者です(国税庁 No.4126・No.4129)。

差し引けるもの・差し引けないもの
区分差し引けるもの差し引けないもの
債務借入金、未払金、亡くなった後に納めることになった被相続人の所得税など墓地や仏壇の未払代金など非課税財産に関する債務、相続人の責任で生じた延滞税・加算税
葬式費用火葬・埋葬・納骨の費用、遺体や遺骨の回送費、通夜など葬式の前後に生じた通常必要な費用、お寺などへの読経料などのお礼香典返しの費用、墓石や墓地の購入費・借りる費用、初七日など法事の費用

相続人になる人と法定相続分

【確定】相続人の範囲と法定相続分は、民法で定められています。配偶者は常に相続人になり、配偶者以外の人は次の順位で配偶者と一緒に相続人になります。上の順位の人がいるときは、下の順位の人は相続人になりません。相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされ、内縁関係の人は相続人に含まれません(国税庁 No.4132)。

相続人の順位
順位相続人補足
常に配偶者内縁関係の人は含まれません
第1順位子子が亡くなっているときは、その子の直系卑属(孫など)が相続人になります
第2順位直系尊属(父母・祖父母など)第1順位の人がいないとき。父母も祖父母もいるときは父母が優先します
第3順位兄弟姉妹第1順位・第2順位の人がいないとき。兄弟姉妹が亡くなっているときは、その子(おい・めい)が相続人になります
法定相続分
相続人配偶者配偶者以外
配偶者と子2分の1子全員で2分の1
配偶者と直系尊属3分の2直系尊属全員で3分の1
配偶者と兄弟姉妹4分の3兄弟姉妹全員で4分の1

子、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの持分で、必ずこの割合で分けなければならないわけではありません。

相続税の計算で使う「法定相続人の数」

基礎控除額、死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額は、「法定相続人の数」を基に計算します。この人数は、次の点で民法上の相続人の数と異なります(国税庁 No.4170・No.4152)。

  • 相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとした場合の人数で数えます。
  • 養子は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数えません。特別養子や、配偶者の実子で被相続人の養子になった人などは、実子として数えます。
  • 養子を数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合は、その原因となる養子は数えません。

相続税を納める人

相続税を納めるのは、相続や遺贈で財産を取得した人と、相続時精算課税の適用を受けて贈与で財産を取得した人です。遺言で財産を受け取った相続人以外の人も含まれます。国外に住んでいる人は、国籍や日本に住所があった期間などによって、課税される財産の範囲が異なります(国税庁 No.4102)。

相続税はいくらからかかるか(基礎控除額)

【確定】正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に、相続税がかかります。正味の遺産額は、遺産総額に相続時精算課税適用財産を加え、非課税財産、葬式費用、債務を差し引き、加算対象期間内の暦年課税の贈与財産を加えた金額です(国税庁 No.4102)。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数と基礎控除額
法定相続人の数例基礎控除額
1人子1人3,600万円
2人配偶者と子1人4,200万円
3人配偶者と子2人4,800万円
4人配偶者と子3人5,400万円
5人配偶者と子4人6,000万円

申告が必要かどうかの判定

正味の遺産額が基礎控除額以下であれば、申告も納税も必要ありません。この判定では、小規模宅地等の特例などを適用する前の金額を使います(国税庁 No.4205)。特例で評価額を下げてはじめて基礎控除額以下になる場合は、申告が必要です。配偶者の税額軽減も、申告書を提出して受ける制度です(配偶者の税額軽減)。

国税庁の相続税の申告要否判定コーナーに財産の金額などを入力すると、申告が必要かどうかのおおよその目安を確認できます。法定相続人の数と遺産の合計額(概算)だけで基礎控除額と比べたい場合は、当会の相続税、申告が必要か1分診断もご利用いただけます。

相続税がかかった被相続人の割合(課税割合)

国税庁の集計では、令和6年(2024年)分は、亡くなった人1,605,378人のうち、相続税額のある申告書が提出された被相続人は166,730人で、割合(課税割合)は10.4%でした。東京都では、亡くなった人140,329人のうち28,085人で、20.0%でした(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」、東京国税局「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(PDF))。

相続税の計算方法と税率(速算表)

【確定】相続税は、各人が取得した財産に直接税率を掛けるのではなく、次の順序で計算します(国税庁 No.4152、No.4155)。

  1. 各人の課税価格:取得した財産(小規模宅地等の特例を適用した後の価額)に相続時精算課税適用財産を加え、債務・葬式費用を差し引き、加算対象期間内の贈与財産を加えます。
  2. 課税遺産総額:各人の課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。
  3. 相続税の総額:課税遺産総額を法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して「法定相続分に応ずる取得金額」(千円未満切捨て)を出し、それぞれ速算表で税額を計算して合計します。
  4. 各人の税額:相続税の総額を、各人が実際に取得した課税価格の割合で割り振ります。
  5. 各人の納付税額:2割加算の対象者は加算したうえで、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などを差し引きます。
相続税の速算表(国税庁 No.4155)
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%-
1,000万円超 3,000万円以下15%50万円
3,000万円超 5,000万円以下20%200万円
5,000万円超 1億円以下30%700万円
1億円超 2億円以下40%1,700万円
2億円超 3億円以下45%2,700万円
3億円超 6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

税率は、遺産全体ではなく、法定相続分に応ずる取得金額ごとに当てはめます。速算表の「税率×金額-控除額」は、金額の段階ごとに税率を掛けて足し上げた結果と同じです。たとえば取得金額が1億2,000万円なら、1億円を超える2,000万円の部分に40%がかかり、全体に40%がかかるわけではありません。

計算例(当会の計算例・架空の設例):正味の遺産額1億円、相続人は配偶者と子2人

前提:課税価格の合計額(正味の遺産額)は1億円。配偶者が5,000万円、子2人が2,500万円ずつ取得します。税額控除は配偶者の税額軽減だけとします。

計算の手順
手順計算と結果
基礎控除額3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税遺産総額1億円-4,800万円=5,200万円
法定相続分に応ずる取得金額配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
子:5,200万円×1/4=各1,300万円
速算表による税額配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
子:1,300万円×15%-50万円=各145万円
相続税の総額340万円+145万円×2=630万円
各人の税額配偶者:630万円×5,000万円÷1億円=315万円
子:630万円×2,500万円÷1億円=各157万5,000円
配偶者の税額軽減配偶者の取得額5,000万円は1億6,000万円以下のため、315万円を全額軽減
納付税額配偶者0円、子各157万5,000円(合計315万円)

相続人の構成別・納付税額の合計(当会の計算例)

前提:各人が法定相続分どおりに取得し、配偶者がいる場合は配偶者の税額軽減を受け、そのほかの税額控除や2割加算はないものとして、当会で計算しました。実際の税額は、財産の評価、分け方、特例の適用によって変わります。

正味の遺産額別の納付税額の合計(当会の計算例)
正味の遺産額配偶者と子1人配偶者と子2人子1人子2人
5,000万円40万円10万円160万円80万円
8,000万円235万円175万円680万円470万円
1億円385万円315万円1,220万円770万円
2億円1,670万円1,350万円4,860万円3,340万円
3億円3,460万円2,860万円9,180万円6,920万円
5億円7,605万円6,555万円1億9,000万円1億5,210万円

計算の詳しい手順は、相続税の計算方法でも解説しています。

相続税額の2割加算と主な税額控除

2割加算と主な税額控除
項目内容
2割加算財産を取得した人が、被相続人の配偶者・父母・子(代襲相続人の孫を含みます)以外の場合、その人の相続税額に2割を加算します。兄弟姉妹、おい・めい、代襲相続人でない孫養子などが対象です(国税庁 No.4157)
贈与税額控除相続税の課税価格に加算した贈与財産にかかっていた贈与税を差し引きます
配偶者の税額軽減配偶者の税額軽減の節で説明します
未成年者控除18歳未満の法定相続人(国内に住所があるなど一定の要件あり):18歳になるまでの年数×10万円(1年未満の期間は1年に切上げ)(国税庁 No.4164)
障害者控除85歳未満の障害者である法定相続人(国内に住所がある人):85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円。1年未満の期間は1年に切上げ)(国税庁 No.4167)

未成年者控除と障害者控除は、本人の相続税額から引ききれない部分を、扶養義務者の相続税額から差し引けます。

配偶者の税額軽減

【確定】被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈で実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません(国税庁 No.4158)。

受けるための主な要件

  • 申告期限までに遺産が分割されていること。分割されていない財産は対象になりませんが、申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割すれば対象になります。
  • 相続税の申告書(または更正の請求書)に軽減の明細を記載し、戸籍謄本等、遺言書の写しや遺産分割協議書の写し(協議書の場合は相続人全員の印鑑証明書も)など、配偶者が取得した財産が分かる書類を添付して提出すること。軽減によって納める税額がなくなる場合も同じです。
  • 隠蔽または仮装されていた財産は、軽減の対象になりません。

計算例(当会の計算例・架空の設例):正味の遺産額2億円、相続人は配偶者と子2人

課税遺産総額は1億5,200万円(2億円-4,800万円)で、相続税の総額は2,700万円です(国税庁 No.4155の計算例と同じ数値です)。配偶者の取得額によって、納付税額は次のように変わります。

配偶者の取得額と納付税額(当会の計算例)
配偶者の取得額配偶者の納付税額子2人の納付税額の合計合計
1億円(法定相続分)0円1,350万円1,350万円
1億6,000万円0円540万円540万円
2億円(全額)540万円0円540万円

配偶者が全額を取得した場合、配偶者の税額2,700万円のうち、2,700万円×1億6,000万円÷2億円=2,160万円が軽減され、540万円を納めます。1億6,000万円を超えた4,000万円に速算表の税率を掛ける計算ではありません。

配偶者が取得した財産は、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)で、配偶者の遺産として相続税の対象になります。二次相続で相続人が子だけの場合、配偶者の税額軽減はなく、基礎控除額も相続人が1人少ない分だけ小さくなります。分け方を決めるときは、二次相続の税額も含めて確認することが考えられます。

小規模宅地等の特例

【確定】被相続人や、被相続人と生計を一にしていた親族の事業や居住に使われていた宅地等を、一定の要件を満たす親族が相続や遺贈で取得した場合、限度面積までの部分について、相続税の課税価格に算入する価額を次の割合で減額できます(国税庁 No.4124)。

小規模宅地等の区分
区分限度面積減額される割合
特定居住用宅地等(被相続人等の自宅の敷地)330㎡80%
特定事業用宅地等(貸付事業以外の事業に使われていた敷地)400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等(被相続人と親族等が50%超を持つ法人の事業に使われていた敷地)400㎡80%
貸付事業用宅地等(不動産貸付業・駐車場業などの敷地)200㎡50%

特定居住用宅地等(330㎡)と、特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等(合計400㎡)は、合わせて730㎡まで適用できます。貸付事業用宅地等を選ぶ場合は、面積を換算する計算式で、全体を200㎡相当までに収める必要があります。相続開始前3年以内に新たに事業や貸付けに使い始めた宅地等は、原則として対象外です。

自宅の敷地(特定居住用宅地等)の取得者ごとの要件

被相続人の居住の用に供されていた宅地等の場合
取得者取得者ごとの要件
配偶者取得者ごとの要件はありません
被相続人と同じ建物に住んでいた親族相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に住み、その宅地等を相続開始時から申告期限まで持っていること
上記以外の親族次のすべてを満たすこと
・被相続人に配偶者がいないこと
・被相続人と同居していた相続人がいないこと
・相続開始前3年以内に、自分、自分の配偶者、3親等内の親族、特別の関係がある法人が持つ国内の家屋(被相続人が住んでいた家屋を除きます)に住んだことがないこと
・相続開始時に住んでいる家屋を、過去に持っていたことがないこと
・その宅地等を相続開始時から申告期限まで持っていること
・居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない人でないこと

被相続人が要介護認定などを受けて老人ホームなどに入所していた場合も、一定の要件のもとで、入所前の自宅の敷地が対象になります。

計算例(当会の計算例・架空の設例):自宅の敷地を配偶者が取得した場合

前提:敷地全体が特定居住用宅地等に当たり、ほかに特例を適用する宅地等はないものとします。

減額の計算(当会の計算例)
敷地減額の計算減額後の価額
300㎡・評価額5,000万円5,000万円×80%=4,000万円を減額1,000万円
400㎡・評価額8,000万円8,000万円×330㎡÷400㎡×80%=5,280万円を減額2,720万円

特例を受けるには、申告書に特例を受ける旨を記載し、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付します。特例の対象となり得る宅地等を取得した人が2人以上いるときは、特例を受ける宅地等の選択について全員が同意していることと、原則として申告期限までに分割されていることが必要です(国税庁 No.4124)。

貸付用不動産の評価の見直し【大綱段階】

令和8年度税制改正の大綱では、「相続税等の財産評価の適正化」として、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、次の見直しを行うとしています(財務省「令和8年度税制改正の大綱」(PDF))。

  1. 被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引で取得または新築した一定の貸付用不動産は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価します。課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動などを考慮して計算した価額の80%で評価できるとしています。
  2. 不動産特定共同事業契約や、信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産は、取得の時期にかかわらず、通常の取引価額に相当する金額で評価します。

2027年1月1日以後に相続等で取得する財産の評価に適用するとされています。1の見直しには、改正を通達に定める日までに、その5年前から持っている土地に新築した家屋(建築中のものを含みます)には適用しない経過措置があります。この見直しは財産評価基本通達の改正で行われますが、2026年9月26日時点で、国税庁の財産評価 一部改正通達の一覧に、この見直しの改正通達は掲載されていません。

生前贈与と相続税:加算の対象期間が2027年から延びます

【確定・適用前】相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間内に被相続人から暦年課税で贈与を受けていた場合、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算します。基礎控除額110万円以下の贈与も加算の対象です。加算した贈与財産にかかっていた贈与税は、相続税から差し引きます。令和5年度税制改正により、2024年1月1日以後の贈与は相続開始前7年以内が加算の対象となり、亡くなった日に応じて加算対象期間が次のように段階的に延びます(国税庁 No.4161)。

亡くなった日と加算対象期間
被相続人が亡くなった日加算対象期間
2026年12月31日まで相続開始前3年以内
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日から亡くなった日まで
2031年1月1日以後相続開始前7年以内

亡くなった日が2027年1月2日以後の場合、加算対象期間のうち相続開始前3年以内より前に受けた贈与は、その合計額から100万円までは加算しません。

贈与税の配偶者控除(婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産などの贈与で、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円)を受けた部分、住宅取得等資金の非課税を受けた金額、教育資金・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税を受けた金額は、加算しません。ただし、一括贈与の管理残額は、相続税の対象になる場合があります(国税庁 No.4161、No.4452)。

相続時精算課税を選んだ贈与

相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫などへの贈与について選べる制度です(年齢はいずれも贈与の年の1月1日時点)。贈与者ごとに、年110万円の基礎控除(2024年1月1日以後の贈与)と累計2,500万円の特別控除を差し引いた残りに、20%の贈与税がかかります。一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。贈与者が亡くなったときは、贈与時の価額(2024年以後の贈与は、年ごとに基礎控除を差し引いた残り)を相続財産に加えて相続税を計算し、納めた贈与税を差し引きます(国税庁 No.4103)。

期限のある贈与税の非課税の特例

直系尊属からの贈与の非課税の特例
特例非課税限度額期限
住宅取得等資金の贈与省エネ等住宅1,000万円、それ以外の住宅500万円2026年12月31日までの贈与【確定】
教育資金の一括贈与1,500万円2026年3月31日で終了【確定】(それまでに適用を受けた分は引き続き適用)
結婚・子育て資金の一括贈与1,000万円2027年3月31日まで【確定】

出典:国税庁 No.4508・No.4510・No.4511。

贈与税の仕組みは贈与税の基本、生前贈与を含む相続税の対策の考え方は相続税の節税対策で解説しています。

申告と納税(期限は10か月以内)

【確定】相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限です。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限になります(国税庁 No.4205)。

申告・納税の期限の例(当会で計算)
亡くなった日期限
2026年4月30日2027年3月1日(月)
(2027年2月28日が日曜日のため)
2026年9月26日2027年7月26日(月)
2026年10月31日2027年8月31日(火)
2026年12月31日2027年11月1日(月)
(2027年10月31日が日曜日のため)

提出先と提出方法

被相続人の死亡の時の住所が日本国内にある場合、提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地の税務署ではありません(国税庁 No.4205)。新宿区内でも、住所によって新宿税務署と四谷税務署に分かれます(国税庁「東京都港区・新宿区」管轄区域の一覧)。

申告書は、e-Taxで送信するほか、書面で作成して持参または送付することもできます。申告の内容によっては、e-Taxを利用できない場合があります(国税庁「相続税の申告手続」)。申告書の様式や手続きの流れは、相続税の申告と納税の手続きでも解説しています。

遺産分割がまとまらないとき

遺産が分割されていなくても、申告期限は延びません。分割が決まっていないときは、民法に規定する相続分(遺言による包括遺贈がある場合はその割合)で取得したものとして計算し、期限内に申告と納税をします。その後に分割が決まったら、税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求(分割があったことを知った日の翌日から4か月以内)をします(国税庁 No.4208)。

未分割のままの申告では、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は使えません。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、申告期限から3年以内に分割すれば、修正申告や更正の請求で特例を適用できます。

期限までに申告しなかった場合や、実際より少ない額で申告した場合は、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかることがあります(国税庁 No.4205)。

納税の方法・延納と物納

納税の期限は申告期限と同じです。ダイレクト納付、インターネットバンキングなどによる電子納税、クレジットカード納付(1,000万円未満。決済手数料がかかります)、金融機関や税務署の窓口での現金納付などの方法があります(国税庁 No.4205)。

金銭で一度に納めるのが原則ですが、相続税には延納と物納の制度があります。どちらも、申告期限までに申請書などを提出して、税務署長の許可を受ける必要があります。

延納と物納の主な要件
制度主な要件と補足
延納年払いで分けて金銭で納める制度です。
・相続税額が10万円を超え、金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
・延納税額と利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下なら担保は不要)
延納期間は、財産に占める不動産等の割合などに応じて最長5年〜20年で、延納期間中は利子税がかかります(国税庁 No.4211)。
物納相続財産そのもので納める制度です。
・延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
・国内にある相続財産を、法律で定められた順位(第1順位は不動産、国債・地方債、上場株式など)で充てること
・担保権が設定された不動産など、管理処分不適格財産でないこと
相続時精算課税の適用を受けた財産などは、物納に充てられません(国税庁 No.4214)。

不動産を相続したときの相続登記(税金とは別の手続き)

相続税の申告が不要な場合でも、不動産を相続で取得した人は、取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする義務があります。正当な理由がないのに登記をしない場合は、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続で取得したことを知った不動産で、登記をしていないものは、2027年3月31日までに登記する必要があります(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

よくある質問

相続税はいくらからかかりますか。

正味の遺産額(遺産総額に相続時精算課税適用財産を加え、非課税財産・葬式費用・債務を差し引き、加算対象期間内の暦年課税の贈与財産を加えた額)が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。法定相続人が配偶者と子2人の3人なら、基礎控除額は4,800万円です。〔国税庁 タックスアンサー No.4102〕

遺産が基礎控除額以下なら、申告しなくてよいですか。

正味の遺産額が基礎控除額以下なら、申告も納税も必要ありません。ただし、この判定は小規模宅地等の特例などを適用する前の金額で行うため、特例を使ってはじめて基礎控除額以下になる場合は申告が必要です。配偶者の税額軽減も、申告書を提出して受ける制度です。〔国税庁 タックスアンサー No.4205・No.4158〕

相続税の申告期限はいつですか。

被相続人が亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日です。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限になります。納税の期限も同じです。〔国税庁 タックスアンサー No.4205〕

遺産分割がまとまらず、10か月以内に分けられそうにありません。

分割が決まっていなくても、申告期限は延びません。民法に規定する相続分などで取得したものとして計算して期限内に申告・納税し、分割が決まった後に修正申告か更正の請求をします。このときの申告では小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は使えませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割すれば、後から適用できます。〔国税庁 タックスアンサー No.4208・No.4158〕

相続を放棄した人も「法定相続人の数」に入りますか。

入ります。基礎控除額や死亡保険金の非課税限度額などを計算するときの法定相続人の数は、相続の放棄がなかったものとした場合の人数です。ただし、養子は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか数えません。〔国税庁 タックスアンサー No.4152・No.4170〕

配偶者はいくらまで相続税がかかりませんか。

配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までなら、配偶者に相続税はかかりません。原則として申告期限までに遺産が分割されていることと、申告書に明細を記載し、必要な書類を添付して提出することが必要です。〔国税庁 タックスアンサー No.4158〕

亡くなる前の生前贈与は、相続税に加算されますか。

相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間内に被相続人から暦年課税で受けた贈与は、110万円以下のものも含めて加算します。加算対象期間は、亡くなった日が2026年12月31日までなら相続開始前3年以内、2027年1月1日から2030年12月31日までなら2024年1月1日から亡くなった日まで、2031年1月1日以後なら相続開始前7年以内です。〔国税庁 タックスアンサー No.4161〕

相続税について相談できる窓口はありますか。

国税庁の電話相談センター(国税相談専用ダイヤル0570-00-5901に電話し、音声案内で「3」の譲渡所得・相続税・贈与税・財産評価を選びます)で、一般的な質問ができます。新宿間税会は、個別の税務相談には対応していません。新宿区内で利用できる相談先は、新宿で税金の相談をしたいときの窓口一覧にまとめています。〔国税庁 国税に関するご相談について〕

まとめ

  • 正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、申告と納税が必要です。判定は小規模宅地等の特例を適用する前の金額で行います。
  • 申告・納税の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割がまとまらなくても延びません。
  • 税率は10%〜55%で、法定相続分に応ずる取得金額ごとに当てはめて相続税の総額を出し、実際の取得割合で割り振ります。
  • 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、申告書を提出して受ける制度で、原則として申告期限までの遺産分割が必要です。
  • 生前贈与の加算対象期間は、2027年1月1日以後の相続から延び始め、2031年1月1日以後は7年になります。貸付用不動産の評価の見直しは、2026年9月26日時点で大綱の段階です。

出典・参考資料

いずれも2026年9月26日に内容を確認しました。国税庁のタックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」の版です。

国税庁 タックスアンサー(相続税)

国税庁 タックスアンサー(贈与税)

国税庁・東京国税局 そのほか

財務省・法務省・法令

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年5月15日:公開
  • 2026年9月26日:全面改訂(令和8年度税制改正と2027年以後の変更点を追加。延納で担保が不要になる金額を「50万円」から「100万円以下で延納期間3年以下」に訂正。教育資金の一括贈与の非課税を利用できるとしていた記述を、2026年3月31日で終了した旨に訂正。申告が不要になる判定は小規模宅地等の特例を適用する前の金額で行うことを追記。配偶者の税額軽減の例を法令の計算方法で計算し直し。小規模宅地等の特例に特定同族会社事業用宅地等と別居親族の要件を追加。貸付用不動産の評価の見直しを大綱段階と明記。根拠を確認できない数値(節税額、税理士報酬の相場、東京23区の割合など)と人気記事の表示を削除し、国税庁の統計に置き換え)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。新宿間税会は、個別の税務相談には対応していません。

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