最新の税制改正 ~令和7年度税制改正の全体像と実務への影響~

2024年12月に決定された令和7年度税制改正大綱をもとに、約30年ぶりの「103万円の壁」見直しから防衛特別法人税の創設まで、経営者・実務担当者が知っておくべき主要な改正ポイントをわかりやすく解説します。

2024年12月20日、与党により「令和7年度税制改正大綱」が決定され、2025年3月31日に関連法案が成立しました。今回の改正は、物価上昇への対応、少子化対策、中小企業支援、そして防衛力強化の財源確保など、多岐にわたる内容となっています。

本記事では、経営者や実務担当者の皆様が押さえておくべき主要な改正ポイントを、実務に与える影響とともに詳しく解説します。

令和7年度税制改正の全体像

今回の税制改正は、4つの大きな柱から構成されています。

改正の4つの柱

  • 物価上昇への対応:基礎控除の引き上げ(約30年ぶり)
  • 少子化対策:特定親族特別控除の創設、生命保険料控除の拡充
  • 企業支援:中小企業経営強化税制の拡充、軽減税率特例の延長
  • 財源確保:防衛特別法人税の創設
令和7年度税制改正の全体像 物価上昇への対応 基礎控除の引き上げ 48万円 → 58万円 約30年ぶりの大幅改正で生活を支援 少子化対策の強化 特定親族特別控除 19〜22歳の子を支援 大学生世代の子育て世帯への新制度 企業活動の支援 中小企業経営強化税制 各種特例措置の延長 設備投資や雇用促進を税制面から支援 防衛力強化の財源 防衛特別法人税(仮称) 税率4%・基礎控除500万円 令和8年4月以後開始事業年度から適用 物価高対策・少子化対策・企業支援・財源確保 4つの柱で日本経済と国民生活を支える包括的な税制改正

図1:令和7年度税制改正の全体像

所得税・住民税の改正

「103万円の壁」が123万円へ引き上げ

約30年間据え置かれていた基礎控除が、物価上昇に対応して10万円引き上げられます。これにより、パートタイマーの就業調整の見直しが期待されます。

改正の背景

基礎控除は平成7年(1995年)から約30年間見直されていませんでした。この間、消費者物価指数は約10%上昇し、特に生活必需品を多く含む基礎的支出項目は約20%上昇しています。

103万円の壁から123万円への引き上げ 約30年ぶりの大幅改正 改正前 103万円 内訳 基礎控除 48万円 給与所得控除 55万円 就業調整の発生(103万円の壁) 改正 改正後 123万円 内訳 基礎控除 58万円 (+10万円) 給与所得控除 65万円 (+10万円) 働きやすい環境の実現 パート・アルバイトの方が年収を気にせず働ける環境へ

図2:103万円の壁から123万円への引き上げ

特定親族特別控除の創設

19歳以上23歳未満の大学生年代の子を持つ親の負担軽減策として、新たな控除制度が創設されます。

適用時期

令和7年分の所得税から適用(令和7年12月の年末調整から反映)され、令和8年度分の個人住民税から適用されます。

特定親族特別控除の仕組み 19歳〜22歳の子を持つ親への新たな支援 0 20 40 60 80 親の控除額(万円) 0 50 100 150 200 子の年収(万円) 103万円 150万円 188万円 控除額63万円 現行制度(103万円で控除消失) 新制度(段階的に控除減少) 重要ポイント 大学生世代の子を持つ親への支援により、子の就業機会が広がります

図3:特定親族特別控除の仕組み

法人税関連の改正

防衛特別法人税の創設

防衛力強化の財源確保のため、法人税に対する新たな付加税が創設されます。

税率・計算方法

防衛特別法人税額 = (基準法人税額 - 500万円) × 4%

年500万円の基礎控除があるため、多くの中小企業は課税対象外となります(法人全体の約6%が対象見込み)。

防衛特別法人税の仕組み 防衛力強化のための新たな財源 税額計算の流れ STEP 1 基準法人税額を確認 1,000万円 STEP 2 基礎控除を差し引く - 500万円 課税標準 = 500万円 × 税率4% = 20万円 影響を受ける企業 6% 94% 課税対象外 法人全体の約6%のみが対象 計算例1:法人税額1,000万円の場合 (1,000万円 - 500万円) × 4% = 20万円 課税あり 計算例2:法人税額400万円の場合 (400万円 - 500万円) = マイナス 課税なし 令和8年4月1日以後開始事業年度から適用

図4:防衛特別法人税の仕組み

消費税・インボイス制度の改正

インボイス制度の特例措置

免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の負担軽減策が拡充されます。

主な改正点

  • 2割特例:令和8年9月30日を含む課税期間まで適用(当初からの予定通り)
  • 少額特例:1万円未満の課税仕入れのインボイス保存不要(令和11年9月30日まで)
  • 返還インボイスの交付義務免除:税込1万円未満の値引き・返品等

電子帳簿保存法の改正

電子取引データ保存の要件緩和

JIIMA認証を受けたシステムなど、公的に要件適合が確認されたシステムを利用する場合の優遇措置が拡充されます。

適正な電子取引データ保存の重要性

電子取引データは、電子帳簿保存法の要件に従って適正に保存する必要があります。改ざん等の不正行為は重大なペナルティの対象となります。

電子帳簿保存法の要件緩和ポイント 検索要件の緩和 検索項目を3項目に限定 ・取引日付 ・取引金額 ・取引先 売上5百万円以下は免除 ダウンロード対応で緩和 タイムスタンプ要件 付与期間を最長約70日に延長 (最長2か月+7営業日) 訂正削除の履歴が残る システムでは不要 クラウドシステム活用推奨 その他の緩和措置 事前承認制度の廃止 受領者の自署不要 適正事務処理要件の廃止 青色申告控除65万円維持 入力者情報の確認不要 JIIMA 認証 JIIMA認証システムの活用 電子帳簿保存法の要件を満たすことが公的に確認されたシステム 認証システムの利用により、法令要件への適合が容易に ! 重要:適正な保存が必要です 電子取引データは法的要件に従って保存する必要があります 改ざん等の不正行為には重大なペナルティが科されます

図5:電子帳簿保存法の改正ポイント

子育て世帯への支援措置

特定親族特別控除の創設

19歳以上23歳未満の子を持つ世帯への新たな控除制度が創設されました。子の収入が一定額を超えても段階的に控除が適用されます。

特定親族特別控除の概要

  • 対象:19歳以上23歳未満の親族を持つ納税者
  • 子の年収150万円まで:63万円の控除
  • 子の年収188万円まで:段階的に控除額が減少
特定親族特別控除の仕組み 対象者 19〜22歳 大学生・専門学生世代 ※23歳未満の親族が対象 改正のポイント 150万円まで満額控除 123万円超で自動切替 段階的な控除減少 急激な手取り減を防止 控除額の段階的減少 123万円 150万円 160万円 170万円 188万円 63万円 51万円 31万円 0円 子の給与収入 控除額 制度の重要ポイント 従来の特定扶養控除 年収123万円まで 控除額:63万円 特定親族特別控除 年収123万円〜188万円 控除額:63万円〜0円 適用時期 令和7年分の所得から適用(令和8年度住民税)

図6:特定親族特別控除の仕組み

実務対応スケジュール

各改正の適用時期を把握し、計画的な準備を進めることが重要です。

重要な適用時期

  • 令和7年12月:年末調整での基礎控除引き上げ対応
  • 令和8年1月:源泉徴収税額表の改正適用
  • 令和8年4月:防衛特別法人税の適用開始
実務対応スケジュール(令和7年度〜令和8年度) 令和7年度(2025年) 令和8年度(2026年) 4月 税制改正法 施行予定 (原則) 12月1日 年末調整 新制度適用 ・基礎控除 ・給与所得控除 ・特定親族控除 1月1日 源泉徴収 税額表改正 月額・日額表 4月1日 防衛特別 法人税 適用開始 事前準備チェックポイント 〜令和7年11月 従来の源泉徴収事務 変更なし 令和7年12月まで ・システム改修完了 ・従業員への周知 令和8年3月まで ・防衛税の影響試算 ・税効果会計対応

図7:実務対応スケジュール

対応チェックリスト

税制改正への対応を確実に行うため、企業と個人それぞれのチェックリストを用意しました。

対応の重要性

税制改正への対応は、単なるコンプライアンスの問題ではありません。改正内容を正しく理解し、積極的に活用することで、企業の成長や個人の生活向上につなげることができます。

税制改正への対応チェックリスト 企業向け システム更新 ・給与計算システムの改修 ・源泉徴収税額表の更新 ・特定親族特別控除の判定機能 税務戦略見直し ・防衛特別法人税の影響評価 ・税効果会計の見直し ・設備投資計画の策定 電子化対応 ・電子帳簿保存法対応システム ・JIIMA認証製品の検討 ・内部統制の強化 人事労務対応 ・パートタイマーの就業時間見直し ・社会保険との兼ね合い確認 ・従業員への周知徹底 研修・教育 ・経理担当者への研修 ・管理職への制度説明 ・外部専門家の活用 個人向け 働き方見直し ・103万円→123万円の壁を意識 ・社会保険の加入要件(106万円) ・世帯全体での最適化 控除活用 ・基礎控除の引き上げ確認 ・特定親族特別控除の適用 ・生命保険料控除の拡充 申告準備 ・年末調整資料の整理 ・確定申告書類の準備 ・電子申告への移行検討 住宅・保険 ・住宅ローン控除の拡充確認 ・生命保険の見直し ・子育て世帯向け優遇の活用 情報収集 ・最新の税制改正情報 ・専門家への相談 ・税務セミナーへの参加

図8:税制改正への対応チェックリスト

まとめ

令和7年度税制改正は、物価上昇への対応、少子化対策、企業支援、財源確保という4つの大きな柱で構成されています。

特に注目すべきは、約30年ぶりとなる基礎控除の引き上げによる「103万円の壁」の見直しです。これにより、パートタイマーの就業調整が緩和され、労働力不足の解消に寄与することが期待されます。

一方で、防衛特別法人税の創設など、新たな税負担も生じます。企業経営者は、これらの改正を総合的に勘案し、最適な経営戦略を立案する必要があります。

税制改正への対応は、単なるコンプライアンスの問題ではありません。改正内容を正しく理解し、積極的に活用することで、企業の成長や個人の生活向上につなげることができます。

本記事を参考に、早期の準備と適切な対応を進めていただければ幸いです。

情報の出典: 令和7年度税制改正大綱(2024年12月20日)、関連法案(2025年3月31日成立)
更新日: 2025年7月14日現在の法令に基づく
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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