個人事業主の消費税、税務調査で実際に確認されるポイント

国税庁は毎年、所得税・消費税の調査実績を「所得税及び消費税調査等の状況」として公表しています。この記事では、その公表資料と、国税庁のタックスアンサーなど一次資料から確認できる範囲で、個人事業主・小規模事業者の消費税の税務調査で実際に確認されやすいポイント、調査の一般的な流れ、日頃からできる備えを整理しました。特定の税理士の個人的な体験や見解ではなく、公表されている統計・資料に基づく一般的な内容です。

消費税の税務調査で確認されやすい項目

項目内容
インボイス等の保存適格請求書や帳簿の記載事項を満たしているか、必要な期間(原則7年)保存されているか
簡易課税・2割特例の要件基準期間の課税売上高など、それぞれの制度を使うための要件を満たしているか
売上の計上時期引渡し・役務提供の時期と異なる課税期間に計上していないか(期ずれ)
経費の家事按分自宅兼事務所の家賃・通信費などを、業務に対応する部分だけ区分して計上しているか
申告の有無基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているのに、無申告になっていないか
簡易課税の事業区分実際の事業の内容に合った第1種〜第6種の区分で計算しているか

いずれも国税庁の公表資料・タックスアンサーなどから確認できる一般的な項目です。個々の調査で実際に確認される内容は、事業の状況によって異なります。

目次
  1. 国税庁が公表している調査実績(令和6事務年度)
  2. 消費税の税務調査で確認されやすい項目
  3. 申告内容と実態が異なりやすいポイント
  4. 税務調査の一般的な流れ
  5. 日頃からできる備え
  6. よくある質問
  7. 出典・参考資料
  8. 改訂履歴

国税庁が公表している調査実績(令和6事務年度)

国税庁は、令和7年12月に「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。このうち「消費税(個人事業者)の調査等の状況」には、令和6年7月〜令和7年6月に行われた調査の件数・追徴税額がまとめられています。

個人事業者の消費税の調査等の状況(令和6事務年度)
区分令和6事務年度前事務年度
調査等件数(合計)18万5千件12万件
うち申告漏れ等の非違があった件数10万1千件7万8千件
実地調査(特別調査・一般調査)2万2千件2万2千件
実地調査(着眼調査)6千件5千件
簡易な接触15万7千件9万4千件
追徴税額(合計)421億円423億円
追徴税額(実地調査)355億円359億円
追徴税額(簡易な接触)65億円63億円
実地調査1件当たり追徴税額127万円135万円

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)「2 消費税(個人事業者)の調査等の状況」。件数は千の位以下を四捨五入した公表値です。

調査には性質の異なる3つの方法があります。国税庁の資料では、それぞれ次のように説明されています。

  • 実地調査(特別調査・一般調査):高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に、深度ある調査を行うものです。特に特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施されます。
  • 実地調査(着眼調査):資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に、実地に臨場して短期間で行う調査です。
  • 簡易な接触:原則として納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡、または来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

令和6事務年度は、簡易な接触を活用して幅広く対応した結果、調査等の件数が前年から約1.5倍に増えたと説明されています。実地調査だけでなく、簡易な接触も含めて申告内容の確認が行われていることがわかります。

無申告者・還付申告者への調査

同じ資料では、無申告者と還付申告者を対象にした調査の状況も示されています。

  • 消費税無申告者に対する実地調査:令和6事務年度は5,575件(前事務年度7,827件)実施され、1件当たりの追徴税額は296万円(同274万円)で過去最高となりました。これは、消費税の実地調査(特別調査・一般調査)全体の1件当たり追徴税額153万円の1.9倍にあたります。追徴税額の総額は165億円(同214億円)です。
  • 消費税の還付申告者に対する調査:令和6事務年度は1,008件(前事務年度910件)の実地調査が行われ、1件当たりの追徴税額は140万円(同162万円)、追徴税額の総額は14億円(同15億円)でした。

出典:同資料「4 無申告者に対する調査状況」「5 消費税の還付申告者に対する調査状況」。

消費税の税務調査で確認されやすい項目

ここからは、国税庁のタックスアンサーなど一次資料の記載事項をもとに、個人事業主・小規模事業者の消費税の調査で、申告内容の裏付けとして確認されやすい項目を整理します。具体的な指摘率などの数値は公表されていないため、ここでは確認される「観点」を説明します。

インボイス(適格請求書)等の保存状況

消費税の仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書等(適格請求書、適格簡易請求書、仕入明細書などとその電磁的記録を含みます)の両方の保存が必要です(消費税法30条7項)。保存期間は、原則として、帳簿はその閉鎖の日、請求書等はその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。このうち6年目と7年目は、帳簿と請求書等のいずれか一方の保存で足りるとされています。〔国税庁 タックスアンサー No.6496〕

調査では、保存されている請求書等が適格請求書として必要な記載事項(登録番号、税率ごとに区分した消費税額等など)を満たしているか、帳簿に相手方の氏名・取引年月日・取引内容・税率ごとの対価の額などが記載されているかが確認の対象になります。記載事項の詳細は適格請求書の書き方で説明しています。

税込3万円未満の公共交通機関の利用など、一定の取引は帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる例外がありますが、対象となる範囲は限られています。〔国税庁 タックスアンサー No.6496〕

簡易課税・2割特例の適用要件を満たしているか

簡易課税制度を使うには、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であることと、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していることの両方が必要です(消費税法37条)。〔国税庁 タックスアンサー No.6505〕基準期間の課税売上高が要件を超えていないか、届出の効力がある課税期間かどうかは、簡易課税で申告する際の前提になる事項です。詳しい要件・計算方法は簡易課税制度とはで説明しています。

2割特例は、インボイス発行事業者の登録をしたことなどにより免税事業者から課税事業者になった場合に使える時限的な経過措置で、個人事業者は令和8年分(2026年分)を含む課税期間までとされています。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、そもそも2割特例の対象にならない課税期間に誤って適用していないかも、申告内容の前提として確認される事項です。要件・最終期間は消費税の2割特例で説明しています。

売上の計上時期(期ずれ)

消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等をした時に成立します。資産の譲渡等の時期は、原則として、その取引の態様に応じた資産の引渡しの時または役務の提供の時です。たとえば棚卸資産や固定資産は引渡しの日、請負による役務の提供は目的物の引渡しを要するものは目的物の全部を完成して引き渡した日、目的物の引渡しを要しないものは役務の全部を完了した日が基準になります。前受金を受け取った日ではなく、実際に引渡し・役務提供をした日が基準になる点に注意が必要です。〔国税庁 タックスアンサー No.6141〕

決算期や年末をまたぐ取引で、実際の引渡し・役務提供の時期と異なる課税期間に売上を計上してしまう「期ずれ」は、消費税に限らず税務調査で共通して確認される代表的な項目のひとつです。

経費の家事按分

個人の業務では、ひとつの支出が家事上と業務上の両方に関わる「家事関連費」が生じることがあります。店舗併用住宅に係る費用(地代家賃、水道光熱費など)が代表例です。家事関連費のうち必要経費にできるのは、取引の記録などに基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。〔国税庁 タックスアンサー No.2210、所得税基本通達45-1〕

消費税の仕入税額控除も、その課税仕入れが事業のために行われたものであることが前提になるため、家事按分の考え方は所得税の必要経費の考え方と共通します。面積・使用時間・使用日数など、按分の根拠を示せるようにしておくことが基本です。

申告内容と実態が異なりやすいポイント

無申告

前述のとおり、消費税の無申告者に対する実地調査は令和6事務年度に5,575件実施され、1件当たりの追徴税額は296万円で過去最高となりました。〔国税庁 令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況〕

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば、インボイス発行事業者の登録をしていなくても消費税の課税事業者になり、申告義務が生じます(消費税法9条)。売上の増加や、副業・複数の事業を合算した際に、自分が課税事業者になったことに気づかないまま無申告になるケースに注意が必要です。新たに事業を始める場合の届出や登録の要否は新規開業時の税務の注意点にまとめています。

簡易課税の事業区分の誤り

簡易課税制度では、事業を第1種(卸売業、みなし仕入率90%)から第6種(不動産業、みなし仕入率40%)までに区分し、それぞれの事業に係る課税売上高に区分の異なるみなし仕入率をかけて仕入控除税額を計算します。この判定は、原則として課税資産の譲渡等ごとに行う必要があります。〔国税庁 タックスアンサー No.6509〕

実務で判定を誤りやすい例として、次のようなものが挙げられています。

  • 仕入れた商品に軽微な加工を加えて販売する場合でも、同一の店舗で販売するのであれば、第2種事業(小売業)として扱って差し支えないとされていること
  • 飲食店業は第4種事業にあたること
  • ホテル・旅館の宿泊料に含まれる食事の提供は第5種事業(宿泊業を含むサービス業)にあたること(宿泊者以外も利用できるレストラン部門の売上げは飲食店業として第4種事業)
  • 自社で使用していた固定資産(機械や車両など)の売却は、その資産を使っていた事業の種類にかかわらず、第4種事業にあたること

複数の事業を営んでいるのに区分を分けずに一括して計算してしまう誤りも典型的です。事業区分の判定例は簡易課税制度とはでも紹介しています。

税務調査の一般的な流れ

事前通知

税務署が実地調査を行う場合、国税通則法74条の9により、原則として、納税者(税務代理人がいて同意がある場合はその税務代理人)に対し、調査を行う旨、実地調査を行う日時・場所、調査の目的、対象となる税目、対象となる期間、対象となる帳簿書類その他の物件、調査を行う職員の氏名・所属などを事前に通知することとされています。通知の時期そのものは法令上一律に定められていませんが、納税者が調査に向けて準備するための時間的余裕を持てるよう配慮するとされています。〔国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)〕

税務代理人がいる場合、その代理人が事前通知を受けることに納税者が同意していれば、事前通知は税務代理人に対して行われます。〔同FAQ〕

任意調査の性質

実地調査は、犯則調査(強制調査)とは異なり、任意調査として行われます。ただし、国税通則法の質問検査権(74条の2ほか)に基づく質問や検査、帳簿書類の提示・提出の要求に対して、正当な理由なく答弁を拒み、もしくは偽りの答弁をし、または検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となり得ます(国税通則法128条)。このため一般に、税務調査は「受忍義務のある任意調査」と説明されます。

帳簿書類の準備

実地調査が行われる場合は、事前通知で示された対象税目・対象期間について、帳簿、請求書・領収書等の原始書類、インボイス(適格請求書)の控え、預金通帳などを確認し、取引の内容を説明できるように整理しておくことが基本です。調査の結果、申告内容に誤りが判明した場合、納税者の同意が得られれば修正申告を行い、同意が得られない場合には税務署長が更正処分を行う、というのが一般的な流れです。

日頃からできる備え

帳簿・請求書等の保存

消費税の仕入税額控除の要件として、帳簿と請求書等(適格請求書・適格簡易請求書・仕入明細書等を含みます)は、原則として、その課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、納税地またはその事業に係る事務所等で保存する必要があります(6年目・7年目は、帳簿と請求書等のいずれか一方の保存で足ります)。〔国税庁 タックスアンサー No.6496〕

帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名または名称、取引年月日、取引の内容(軽減税率の対象品目である旨を含みます)、税率ごとに区分して合計した対価の額などの記載が必要です。〔国税庁 タックスアンサー No.6621〕記載事項の具体例は適格請求書の書き方で確認できます。

インボイスの管理

適格請求書発行事業者として交付したインボイスは、控え(写し)の保存も必要です。電子データで受領・交付したインボイスは、電子帳簿保存法に基づく保存方法にも注意が必要です。

取引先から受け取ったインボイスに、登録番号や税率ごとの消費税額等など、必要な記載事項が欠けていないかを日頃から確認しておくことで、あとから仕入税額控除ができないと判明するリスクを減らせます。インボイス発行事業者の登録手続はインボイスの登録申請の手続きで説明しています。

判断に迷う点がある場合は、新宿で税金の相談ができる公的な窓口を利用できます。

よくある質問

個人事業主の消費税の税務調査は、どれくらいの件数・追徴税額になっていますか。

国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、個人事業者の消費税に関する調査等(実地調査と簡易な接触の合計)の件数は18万5千件(前事務年度12万件)、追徴税額の合計は421億円でした。実地調査は2万8千件で、1件当たりの追徴税額は127万円でした。〔国税庁 令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況〕

消費税の税務調査では、具体的にどんな点を確認されますか。

一般的には、インボイス(適格請求書)や帳簿の保存状況、簡易課税・2割特例を使うための要件を満たしているか、売上の計上時期(期ずれ)、経費の家事按分の妥当性などが確認の対象になります。これらは国税庁の資料や一般的な実務解説から共通して挙げられる項目で、個々の調査で実際に確認される内容は事業の状況によって異なります。

無申告のまま消費税の課税事業者になっていた場合、どうなりますか。

国税庁の統計では、消費税の無申告者に対する実地調査が令和6事務年度に5,575件実施され、1件当たりの追徴税額は296万円で過去最高となりました。基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者となり、申告義務が生じます。〔国税庁 令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況〕

簡易課税を選んでいますが、事業区分は自分の判断で決めてよいのですか。

簡易課税の事業区分は、国税庁が示す第1種〜第6種の分類に沿って、原則として取引ごとに判定します。仕入商品に軽微な加工を加えて販売する場合の扱いや、飲食店業(第4種)と宿泊料に含まれる食事の提供(第5種)の違い、自社で使用していた固定資産の売却(第4種)など、実務では判定を誤りやすい例が知られています。〔国税庁 タックスアンサー No.6509〕

税務調査には事前に連絡がありますか。

実地調査を行う場合、国税通則法74条の9により、原則として、調査を行う旨や開始日時・場所・目的・対象税目・対象期間・対象となる帳簿書類などを事前に通知することとされています。税務代理人がいて同意がある場合は、税務代理人に通知されます。通知の時期は個々の事案により異なりますが、納税者が準備のための時間的余裕を持てるよう配慮するとされています。〔国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)〕

帳簿や請求書は何年間保存すればよいですか。

消費税の仕入税額控除の要件として、帳簿と請求書等(適格請求書・適格簡易請求書・仕入明細書等を含みます)は、原則として、その課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する必要があります。このうち6年目と7年目は、帳簿と請求書等のいずれか一方の保存で足りるとされています。〔国税庁 タックスアンサー No.6496〕

出典・参考資料

いずれも2026年9月28日に内容を確認しました。

調査実績(国税庁)

制度の解説(国税庁 タックスアンサー等)

調査手続(国税庁・法令)

改訂履歴

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2026年9月28日:公開(国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)とタックスアンサー等の一次資料に基づく)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。

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