新規開業時の税務の注意点:開業届・青色申告から消費税とインボイス登録まで

個人事業の開業届は事業を開始した日の属する年分の確定申告期限まで、青色申告承認申請書は原則その年3月15日まで(1月16日以後の開業は開業日から2か月以内)に提出します。消費税は、開業した年とその翌年は原則として免税事業者ですが、インボイス発行事業者の登録を受けると登録日から課税事業者になります。本記事では、これらの届出の期限と、登録するかどうかの判断材料を国税庁資料に基づいて整理します。

監修について
本記事は井手政紀税理士(井手政紀税理士事務所/元 新宿税務署長(第84代)/新宿間税会 税理士部会員)の監修内容を反映しています。2026年9月26日、令和8年度税制改正等に合わせて全面改訂し、2026年9月28日に監修者の確認が完了しました。

タイミングにご注意ください(2026年9月26日時点)

消費税の2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間が最後です(個人事業者は2026年分まで)。今まさに開業して登録を検討している方は、「2割特例の終了と3割特例」を先にご確認ください。

目次
  1. 個人事業を始めるときの届出:開業届と青色申告承認申請書
  2. 法人を設立するときの届出
  3. 消費税の免税期間と課税事業者になるかどうかの判定
  4. インボイス発行事業者の登録をするかどうかの判断
  5. 2割特例の終了と3割特例(令和9年分・10年分)
  6. 従業員を雇うときの源泉徴収
  7. よくある質問
  8. 新宿税務署・相談窓口の案内
  9. 出典・参考資料

個人事業を始めるときの届出:開業届と青色申告承認申請書

個人で事業を始めるときに提出する主な届出書と期限は、次のとおりです。いずれも納税地を所轄する税務署に、e-Tax・書面の窓口提出・郵送のいずれかで提出できます。

個人事業を始めるときの主な届出書
届出書提出期限備考
個人事業の開業・廃業等届出書事業を開始した日の属する年分の確定申告期限まで
(提出期限が土・日曜日・祝日に当たる場合は翌日)
提出しなくても罰則はありませんが、提出は法律上の義務です。青色申告の特典を開業した年から使うには、下の青色申告承認申請書の期限(開業届より早い期限になることがあります)にご注意ください
所得税の青色申告承認申請書その年3月15日まで
(1月16日以後の開業は、開業日から2か月以内)
提出がなければ白色申告になります
青色事業専従者給与に関する届出書専従者給与を支払う年の3月15日まで
(1月16日以後に専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内)
生計を一にする家族に給与を支払う場合
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内従業員(家族を含む)に給与を支払う場合。後述

消費税関係の届出(インボイス登録申請書など)は「インボイス発行事業者の登録をするかどうかの判断」で説明します。〔国税庁 A1-5、A1-8、A1-10、No.2090〕

ポイント

青色申告には、最高65万円の青色申告特別控除や、家族への給与を必要経費にできる青色事業専従者給与など、いくつかの特典があります。控除額の要件や記帳方法の詳細は個人事業主の税務で説明しています。

法人を設立するときの届出

会社などの法人を新しく設立したときは、個人事業とは別の届出が必要です。主なものは次のとおりです。

法人を設立したときの主な届出書
届出書提出期限備考
法人設立届出書設立の日以後2か月以内定款等の写しを添付。都道府県・市区町村への届出も別途必要です
青色申告の承認申請書(法人)設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日まで設立1期目から青色申告にする場合
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内役員・従業員に給与を支払う場合。後述
消費税の新設法人に該当する旨の届出書該当することになった場合、速やかに期首の資本金が1,000万円以上の場合。後述

〔国税庁 C1-4、C1-19、No.5100〕法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税など、法人が納める税金の全体像は法人の税務で説明しています。このほか、棚卸資産の評価方法の届出書・減価償却資産の償却方法の届出書(いずれも任意)もあり、法定の評価方法・償却方法と異なる方法を使いたい場合に提出します。

消費税の免税期間と課税事業者になるかどうかの判定

新規開業した年とその翌年は、多くの場合、消費税の免税事業者です。ただし、いくつかの条件に当てはまると、基準期間の売上高にかかわらず課税事業者になります。

免税・課税の判定要素(個人事業者と法人の違い)
判定要素個人事業者法人
基準期間前々年前々事業年度
開業1期・2期目の基準期間原則として基準期間がないため免税事業者
特定期間前年1月1日から6月30日までの課税売上高、または同期間の給与等支払額(どちらで判定するかは選べます)原則、前事業年度開始の日以後6か月の課税売上高、または給与等支払額
特定期間が1,000万円超のときその年(事業年度)から課税事業者になります
資本金による例外該当なし期首資本金1,000万円以上の新設法人は設立1期目・2期目とも課税事業者。特定新規設立法人(課税売上高5億円超、または令和6年10月以後は売上金額等の合計が50億円超の事業者などに支配される新設法人)も同様
インボイス登録登録日から課税事業者になります

〔国税庁 No.6501、No.6503、No.6531、No.5100〕

個人事業者の特定期間は、暦年で決まった期間(前年1月1日から6月30日まで)です。年の途中で開業した場合、その期間中の実際の売上高で判定し、6か月分に換算し直すことはありません。たとえば9月に開業した個人事業者は、開業した年の翌年について、前年(開業年)の1月1日から6月30日までの売上高(この場合は事業を始める前なので原則0円)で判定します。

届出を忘れないでください

基準期間や特定期間の判定で課税事業者になる場合でも、自動的に手続きが完了するわけではありません。「消費税課税事業者届出書」(基準期間用または特定期間用)を、該当することとなった場合に速やかに提出する必要があります。

インボイス発行事業者の登録をするかどうかの判断

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けられるのは課税事業者に限られます。前節で免税事業者に当たる新規開業者が登録すると、その登録日から課税事業者になります。

判断のポイント

登録するかどうかは、主に取引先の状況で判断します。

  • 取引先の多くが、仕入税額控除を必要とする課税事業者(BtoB取引が中心)の場合:インボイスの発行を求められる場面が想定されるため、登録を検討する価値があります。
  • 取引先の多くが消費者、または免税事業者(BtoC取引が中心)の場合:インボイスを求められる場面が少ないため、免税事業者のまま様子を見るという考え方もあります。

登録しない場合でも、取引先(課税事業者)の負担が消えるわけではありません。免税事業者等からの仕入れについては、2026年10月1日から控除割合が70%に下がる経過措置があり、取引先の仕入税額控除が段階的に縮小していきます。取引先からインボイスの発行を求められている場合は、この点も判断材料になります。

開業日にさかのぼって登録を受ける方法

新たに事業を開始した個人事業者や、新たに設立された法人が、開業(設立)の日から登録事業者になりたい場合は、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、その課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出します。税務署長の登録が行われると、その課税期間の初日(法人の場合は設立日。個人事業者の場合は、開業した年の1月1日)にさかのぼって登録を受けたものとみなされます。

本来、免税事業者が課税事業者になるには「消費税課税事業者選択届出書」を別に提出する必要がありますが、2029年9月30日までの経過措置により、この届出書を提出しなくても、登録申請書の提出だけで登録日(開業日)から課税事業者になれます。〔インボイスQ&A 問7・問11〕

すでに事業を行っている課税事業者が新たに登録する通常の場合は、希望する登録日から起算して15日前の日までに登録申請書を提出するのが原則です。

2割特例の終了と3割特例(令和9年分・10年分)

登録によって免税事業者から課税事業者になった事業者は、納付税額を売上税額の一定割合に抑えられる特例を、期間を区切って使えます。

2割特例・3割特例が使える期間
期間個人事業者法人
2026年9月30日を含む課税期間まで2割特例(要件を満たす場合)2割特例(要件を満たす場合)
令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)3割特例(要件を満たす場合)使えません(一般課税か簡易課税)
令和11年分(2029年)以降一般課税か簡易課税一般課税か簡易課税

開業したばかりの事業者は基準期間(2年前)の課税売上高がないため、多くの場合、2割特例・3割特例の「基準期間の課税売上高が1,000万円以下」という要件を満たします。詳しい要件・計算方法・簡易課税との比較は2割特例はいつまで使えるかと3割特例とはで説明しています。〔国税庁 2割特例のページ、インボイスQ&A 問115-2〕

計算例(当会の計算例・架空の設例)

2026年に開業し、開業と同時にインボイス登録をして課税事業者になった個人事業者が、税抜の課税売上高(標準税率10%のみ)300万円だったと仮定します。

2026年分(2割特例):売上税額(国税7.8%相当)は3,000,000×7.8%=234,000円。2割特例の納付税額(国)は234,000×20%=46,800円、地方消費税は46,800×22/78=13,200円で、合計60,000円です。
令和9年分・仮に同額の場合(3割特例):納付税額(国)は234,000×30%=70,200円、地方消費税は70,200×22/78=19,800円で、合計90,000円です。

実際の税額は、軽減税率(8%)の売上の有無や経費の状況などによって変わります。上の数値はいずれもPythonのfractionsモジュールで検算済みです。

従業員を雇うときの源泉徴収

従業員(家族従業員を含む)やアルバイトに給与を支払う場合は、所得税の源泉徴収と、その納付の手続きが必要です。

給与を支払うときの主な手続き
手続き期限対象
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内個人事業者・法人とも、初めて給与を支払う事務所を開いたとき
源泉所得税の納付(原則)給与を支払った月の翌月10日まですべての源泉徴収義務者
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時(提出月の翌月末日までに税務署長からの却下通知がなければ、その日に承認されたものとみなされます)常時使用する従業員が10人未満の場合
納期の特例を受けた場合の納付1月〜6月分は7月10日まで、7月〜12月分は翌年1月20日まで上の申請書が承認された事業者

〔国税庁 A2-7、No.2505〕

よくある質問

個人事業の開業届は、いつまでに提出すればよいですか。

事業を開始した日の属する年分の確定申告期限まで(提出期限が土・日曜日・祝日に当たる場合は翌日)です。提出先は納税地を所轄する税務署で、新宿区の新宿地区(西新宿・北新宿・大久保など)にお住まいまたは事業所をお持ちの場合は新宿税務署です。提出しなくても罰則はありませんが、法律上の提出義務があります。〔国税庁 A1-5、No.2090〕

所得税の青色申告承認申請書は、いつまでに提出すればよいですか。

原則としてその年の3月15日までです。ただし、1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、事業を開始した日から2か月以内です。〔国税庁 A1-8〕

法人を設立した場合、届出の期限はいつですか。

法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、法人の青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までです。〔国税庁 C1-4、C1-19〕

開業したら、すぐに消費税を納めることになりますか。

新規開業した個人事業者は、原則として開業した年とその翌年は基準期間がないため免税事業者です。ただし、特定期間(前年1月1日から6月30日まで)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者の登録を受けた場合は、課税事業者になります。〔国税庁 No.6501、No.6531〕

法人を設立すると、いつから消費税の課税事業者になりますか。

原則として設立1期目・2期目は基準期間がないため免税事業者です。ただし、期首の資本金が1,000万円以上の新設法人や、特定新規設立法人に当たる場合は、設立1期目から課税事業者になります。〔国税庁 No.6503、No.5100〕

開業と同時にインボイス発行事業者の登録を受けることはできますか。

できます。新たに事業を開始した個人事業者・法人は、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、その課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出すれば、その課税期間の初日(法人の場合は設立日、個人事業者の場合はその年の1月1日)にさかのぼって登録を受けたものとみなされます。2029年9月30日までの経過措置により、この場合に消費税課税事業者選択届出書を別に提出する必要はありません。〔インボイスQ&A 問7・問11〕

2割特例と3割特例は、開業したばかりでも使えますか。

登録によって免税事業者から課税事業者になった場合は使えます。ただし2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで(個人事業者は2026年分まで)です。個人事業者は、要件を満たせばその後の令和9年分・10年分に3割特例を使えます。法人には3割特例がありません。〔国税庁 2割特例のページ、インボイスQ&A 問115-2〕

従業員を雇ったら、何を届け出ればよいですか。

給与支払事務所等の開設届出書を、開設の日から1か月以内に提出します。常時使用する従業員が10人未満であれば、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出すると、源泉徴収した所得税の納付を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめられます。〔国税庁 A2-7、No.2505〕

新宿税務署・相談窓口の案内

新宿区のうち新宿地区(西新宿、北新宿、大久保、百人町、高田馬場、歌舞伎町2丁目、新宿6・7丁目、上落合・下落合・中落合・西落合、中井など)にお住まい、または事業所をお持ちの場合は、新宿税務署が所轄です。四谷・牛込地区は四谷税務署の管轄です。

新宿税務署の所在地
〒169-8561 東京都新宿区北新宿1丁目19番3号
開庁時間
月曜〜金曜 8時30分〜17時(土日祝日、12月29日〜1月3日を除く)
書面を郵送する場合
新宿税務署・四谷税務署の管内あての届出書等は、東京国税局大手町業務センター(〒100-8156 東京都千代田区大手町1丁目3番3号 大手町合同庁舎3号館)が受け付けます。業務センターへの持ち込みはできません。

新宿区内でも番地によって管轄が分かれる地域があるため、詳しくは国税庁の管轄区域の案内でご確認ください。個別の税務相談は当会では取り扱っておりません。無料で使える公的な相談窓口(国税庁の電話相談センター、新宿税務署の面接相談、東京税理士会新宿支部の無料相談など)は新宿で税金の相談をしたいときにまとめていますので、そちらをご覧ください。

国税庁「新宿税務署」/国税庁「東京都港区・新宿区」(管轄区域の一覧)

出典・参考資料

いずれも2026年9月26日に内容を確認しました。

国税庁 手続案内(個人)

国税庁 手続案内(法人)

国税庁 源泉徴収

国税庁 消費税・インボイス制度

相談窓口・税務署

改訂履歴と監修について

著者:新宿間税会(新宿間税会について)

  • 2025年7月10日:公開
  • 2026年9月26日:全面改訂(届出期限を国税庁資料の出典付きで再整理、消費税の免税期間・特定期間の判定と新設法人の例外を追加、インボイス発行事業者の登録の判断基準と新規開業時の登録時期の特例を追加、2割特例の終了と3割特例〔令和9年分・10年分〕を追加、従業員を雇うときの源泉徴収の手続きを追加、新宿税務署の所在地・郵送先と相談窓口の案内を追加、根拠のない数値表現を削除し構成とデザインを他記事と統一)

監修の状況は、上部の「監修について」のとおりです。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。

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