不動産業の消費税とインボイス:賃貸・売買・仲介の課税区分と簡易課税(第6種)
不動産業の消費税は、取引の種類によって課税・非課税が分かれます。住宅の貸付けと、土地の譲渡・貸付けは非課税です。それ以外の貸付け、事業者が行う建物の譲渡、仲介や管理の手数料は課税です(消費税法6条1項・別表第二)。
取引ごとの課税・非課税【確定】
| 取引 | 消費税の扱い |
|---|---|
| 住宅の家賃 | 非課税(共益費、返還しない礼金・敷金を含む)。貸付期間が1か月未満のもの、ホテル・民泊など旅館業に当たる施設の貸付けは課税 |
| 事務所・店舗の家賃 | 課税(返還しない礼金・更新料・保証金を含む)。家賃を土地部分と建物部分に分けても総額が課税 |
| 駐車場 | 整備や管理をしていれば課税。整備も管理もしていない土地の貸付けや、住宅と一体で別料金を取らないもの(1戸1台分以上の確保などの条件あり)は非課税 |
| 土地 | 譲渡も貸付け(地代)も非課税。貸付期間が1か月未満の貸付けは課税 |
| 建物の譲渡 | 事業者が行うものは課税(事業に使っていた建物、賃貸用の建物の売却を含む)。個人が生活用の自宅を売る場合は課税されない |
| 仲介・管理の手数料 | 課税。住宅や土地の取引の仲介でも課税 |
| 敷金・違約金 | 返還する敷金・保証金、中途解約の違約金は課税の対象外(不課税) |
根拠は消費税法6条1項・別表第二第1号・第13号と、国税庁タックスアンサー No.6213・No.6225・No.6226・No.6261・No.3240です。条件と例外は賃貸の判定と売買の判定で、2026年10月からの変更は2026年10月1日からの変更点で説明しています。
【確定】2026年10月1日の前後に変わること(2026年9月26日時点)
不動産業に関係するのは次の3点です。一覧は2026年10月1日からの変更点にあります。
- 非居住者に対して行う国内の不動産の売買・貸借などの仲介は、2026年10月1日以後、輸出免税の対象から外れて課税されます(2026年3月31日までに締結した契約に基づくものを除きます)。
- インボイス発行事業者でない貸主・外注先などからの仕入れで控除できる割合が、2026年10月1日から80%から70%に下がります。
- 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者に限り、令和9年分・令和10年分に3割特例を使えます。
目次
賃貸:住宅の家賃は非課税、事務所・店舗の家賃は課税
【確定】土地の貸付けと住宅の貸付けは、消費税の非課税取引です(消費税法6条1項・別表第二第1号・第13号)。それ以外の建物や施設の貸付けは課税です。非課税の家賃は課税売上高に入らず、インボイス(適格請求書)を交付する取引でもありません。
住宅の貸付けとして非課税になる条件
非課税になるのは、次のどちらかに当たる住宅の貸付けです(国税庁 タックスアンサー No.6226、消費税法基本通達6-13-1〜6-13-11)。
- 契約で、人の居住の用に供することが明らかにされているもの
- 契約で用途が明らかにされていなくても、貸付けの状況からみて居住用であることが明らかなもの。例えば、借主が個人で、住宅が居住用に使われていないことを貸主が把握していない場合です。居住用・事業用のどちらにも使えるとする契約は、「用途が明らかにされていない場合」に含まれます。
次の場合は非課税になりません。
- 貸付期間が1か月未満の場合
- 旅館業法の旅館業に当たる施設の貸付け。ホテル、旅館、貸別荘、リゾートマンション、ウィークリーマンションなどは、利用期間が1か月以上でも非課税になりません。住宅宿泊事業(いわゆる民泊)も旅館業に当たり、非課税になりません。
住宅には、一戸建てのほか、マンション、アパート、社宅、寮、貸間などが含まれます。庭や塀、住宅と一体で貸す家具・照明・冷暖房設備なども住宅の貸付けに含まれますが、これらを別の賃貸借の目的物として賃料を別に定めている場合、その賃料は課税です。
- 店舗併設住宅:住宅部分だけが非課税です。一括して貸す場合は、家賃を住宅部分と店舗・事務所部分に合理的に区分します(基通6-13-5)。
- 用途の変更:住宅として貸していた建物を、当事者間の契約変更で事務所など住宅以外の用途にした場合、変更後の家賃は課税です(基通6-13-8)。
- 借主が住宅を事業に使う場合:住宅として借りた建物を、借主が貸主との契約を変えずに事業に使っても、その家賃は借主の課税仕入れになりません(基通6-13-8の注)。
家賃以外に受け取るもの(礼金・共益費・敷金・原状回復費用など)
| 受け取るもの | 住宅 | 事務所・店舗など | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 共益費(共用部分の費用の負担) | 非課税(家賃に含まれる) | 課税 | 基通6-13-9 |
| 礼金・権利金・更新料・保証金のうち返還しないもの | 非課税 | 課税 | No.6225、基通5-4-3・6-13-9 |
| 敷金・保証金のうち契約終了時に返還するもの | 課税の対象外 | 課税の対象外 | No.6225、基通5-4-3 |
| 家賃とは別に受け取る専有部分の電気・ガス・水道の料金 | 課税 | 課税 | No.6226 |
| 敷金などから差し引く原状回復工事の費用 | 課税 | 課税 | No.6261 |
| 中途解約の違約金(逸失利益の補塡) | 課税の対象外 | 課税の対象外 | No.6261 |
| 契約終了後も退去しない入居者からの割増賃料 | 非課税 | 課税 | No.6261 |
原状回復工事の費用は、借主に代わって貸主が工事を行う役務の提供の対価として課税です。中途解約の違約金は、逸失利益を補う損害賠償金として課税の対象外です(国税庁 タックスアンサー No.6261)。返還しない礼金・更新料などの扱いはNo.6225によります。
駐車場:整備や管理をしていれば課税
駐車場など施設の利用に伴って土地が使われる場合は、土地の貸付けに当たらず課税です。地面の整備やフェンス・区画・建物の設置をして駐車場として使わせる場合や、駐車している車両を管理している場合がこれに当たります(国税庁 タックスアンサー No.6213、基通6-1-5)。
- そうした整備をせず、車両の管理もしないで土地を駐車場として使わせる場合は、土地の貸付けとして非課税です(貸付期間が1か月未満のものを除きます。基通6-1-5の注1)。
- 集合住宅の駐車場は、入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保され、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられるなどの場合で、家賃とは別に駐車場使用料を受け取っていないときは、住宅の貸付けに含まれ非課税です。一戸建て住宅に付いた駐車場も、住宅の貸付けに含まれます(基通6-13-3)。
- 家賃とは別に駐車場使用料を定めて受け取る場合、その使用料は非課税になりません(基通6-13-1)。
土地の貸付け(地代)
- 地代は非課税です。土地には、地上権や土地の賃借権など土地の上に存する権利を含みます。借地権の更新料や名義書換料も非課税です(No.6225、基通6-1-2・6-1-3)。
- 貸付期間が1か月未満の土地の貸付けは課税です。期間は契約で定めた貸付期間で判定します(基通6-1-4)。
- 事務所・店舗などを貸す場合に家賃を土地部分と建物部分に分けて定めていても、総額が建物の貸付けの対価として課税されます(No.6225、基通6-1-5の注2)。
サブリース(転貸)と借上げ社宅
借主が自分では住まずに転貸する場合でも、貸主と借主の契約書などで、借主が住宅として転貸することが明らかであれば、その貸付けは住宅の貸付けとして非課税です。借主が行う転貸も非課税です(基通6-13-7、国税庁 No.6225のQ&A「建物を転貸する場合」)。
- 住宅のサブリース:オーナーからサブリース会社への貸付け(マスターリース)も、サブリース会社から入居者への転貸も非課税です。サブリース会社がオーナーに払う賃料は課税仕入れにならず、入居者から受け取る賃料は非課税売上げです。
- 借上げ社宅:貸主との賃貸借契約で社宅として使うことが明らかにされていれば、貸主に払う家賃も、社員から受け取る賃料も非課税です。
- 事務所・店舗のサブリース:住宅の貸付けに当たらないので、マスターリースも転貸も課税です。
契約で用途を定めていない場合でも、借主と入居者(転借人)との契約で居住用であることが明らかな場合などは、状況からみて居住用であることが明らかな場合に当たり、非課税です(基通6-13-11)。
売買:土地は非課税、事業者が売る建物は課税
【確定】土地(土地の上に存する権利を含みます)の譲渡は非課税です。建物の譲渡は、事業者が事業として行うものが課税の対象です(消費税法4条・6条1項・別表第二第1号)。
課税される売主・課税されない売主
- 不動産会社などの法人や個人事業者が売る建物は課税です。販売用の建物だけでなく、事業に使っていた建物や、住宅賃貸用・店舗賃貸用の建物を売った場合も課税の対象です(国税庁 タックスアンサー No.3240)。
- 個人が生活用の自宅を売る場合は、事業として行う取引ではないため課税されません(No.6109)。
- 会社員が行う建物の貸付けも、反復・継続・独立して行われるものは事業に当たり、課税の対象です。住宅の貸付けであれば非課税です(国税庁 質疑応答事例「会社員が行う建物の貸付けの取扱い」)。
- 住宅の家賃は課税売上高に入りませんが、建物の売却代金(税抜)は課税売上高に入ります。住宅だけを貸している個人でも、建物を売った年を基準期間とする2年後の課税期間に、課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になることがあります(No.6501)。納税義務の判定は消費税の基本(課税事業者と免税事業者)で説明しています。
土地と建物をまとめて売るときの代金の区分
土地と建物を同じ相手に同時に売る場合は、代金を土地と建物に合理的に区分し、建物部分だけに課税します(消費税法施行令45条3項)。
- 契約で土地と建物の代金を合理的に区分していれば、その金額によります。所得税・法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算で区分しているときは、その区分によります(基通10-1-5)。
- 区分していない場合の方法として、国税庁は、譲渡時の土地・建物の時価の比率、相続税評価額や固定資産税評価額、土地・建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子などを含む)による按分を挙げています(国税庁 No.6301のQ&A「建物と土地を一括譲渡した場合の建物代金」)。
- 買主から受け取る未経過の固定資産税などの精算金は、代金とは別に受け取っていても譲渡代金に含まれます(基通10-1-6)。建物に係る部分は建物の代金として課税です。
- 土地の売買の仲介手数料は、仲介という役務の対価なので課税です(基通6-1-6)。
当会の計算例(架空の設例):土地付き建物の売却
不動産会社(課税事業者、一般課税)が、他社から購入した土地付きの中古事務所ビルを、事業者にそのまま売る場合です。契約書で土地と建物の代金を区分し、建物の消費税額等も区分して記載しています。
| 項目 | 金額 | 消費税 |
|---|---|---|
| 土地 | 30,000,000 | 非課税 |
| 建物(税抜) | 19,000,000 | 課税(課税標準額) |
| 建物の消費税額等(10%) | 1,900,000 | 国 1,482,000(19,000,000 × 7.8%)、地方 418,000(1,482,000 × 22/78) |
| 合計(買主が支払う額) | 50,900,000 | — |
売主の課税売上高になるのは建物の19,000,000円だけです。土地の30,000,000円は非課税売上げで、課税売上割合の分母に入ります(課税売上割合)。売主が簡易課税を選んでいる場合、他の者が建築した建物を購入してそのまま事業者に売る取引は第1種事業です(簡易課税の事業区分)。
売買契約書の印紙税と消費税額の記載
不動産の譲渡に関する契約書(第1号文書)は、消費税額等を区分して記載している場合や、税込価格と税抜価格を記載して消費税額等が明らかな場合、消費税額等を印紙税の記載金額に含めません。ただし、免税事業者が消費税額等として区分して記載しても、記載金額に含めます(国税庁 タックスアンサー No.6925)。また、2027年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書(契約金額10万円超)は、印紙税が軽減されています(No.7108)。
上の例の契約書は消費税額等を区分して記載しているので、記載金額は49,000,000円で、軽減後の税額は1万円(1,000万円超5,000万円以下)です。消費税額等を区分せず合計額50,900,000円だけを記載すると、記載金額は50,900,000円で、税額は3万円(5,000万円超1億円以下)になります(当会の当てはめ)。
宅地建物取引業者が消費者などから建物を買い取る場合
インボイス発行事業者でない者(消費者など)からの仕入れは、インボイスがないため、原則として仕入税額控除ができません(経過措置の対象となる場合を除きます)。ただし、宅地建物取引業者が、販売用の棚卸資産として、インボイス発行事業者でない者から建物を購入する場合は、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます(消費税法施行令49条1項1号ハ⑶、インボイスQ&A 問104・問106)。帳簿には通常の記載事項に加えて、この特例の対象となる旨と、相手方の住所または所在地を記載します(記載を省略できる場合があります。問110)。
土地は非課税なので、土地部分は仕入税額控除の対象になりません。また、買い取った建物が税抜1,000万円以上で、所有している間に住宅として貸さないことが明らかとはいえない場合(例えば、入居者がいる状態で買い取った場合)は、居住用賃貸建物に当たり、仕入税額控除ができません(基通11-7-1。次の節)。
居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限
【確定・2020年10月1日以後の仕入れから適用】住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産(一の取引単位で税抜1,000万円以上の棚卸資産・調整対象固定資産)または調整対象自己建設高額資産に当たるものを「居住用賃貸建物」といいます。その課税仕入れ等の税額は、仕入税額控除ができません(消費税法30条10項)。建物の附属設備も含まれ、取得後の資本的支出(価値を高める改良など)に係る税額も対象になります(基通11-7-5)。2020年3月31日までに締結した契約に基づく仕入れには適用されません(国税庁「消費税法改正のお知らせ」(令和2年4月、PDF))。
対象にならない建物と、一部が店舗の建物
「住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物」とは、構造や設備の状況などから住宅の貸付けに使わないことが客観的に明らかなものをいい、国税庁は次の例を挙げています(基通11-7-1)。
- 建物の全てが店舗などの事業用施設である建物
- 旅館・ホテルなど、旅館業に係る施設の貸付けに使うことが明らかな建物
- 棚卸資産として取得した建物で、所有している間、住宅の貸付けに使わないことが明らかなもの
判定は課税仕入れを行った日の状況によります。その日に住宅の貸付けに使わないことが明らかでなくても、その課税期間の末日までに明らかになった場合は、居住用賃貸建物に当たらないものとして差し支えありません(基通11-7-2)。建物の一部が店舗の構造になっている場合は、使用面積の割合などで住宅部分とそれ以外に合理的に区分していれば、店舗など住宅以外の部分の税額は控除の対象になります(消費税法施行令50条の2第1項、基通11-7-3)。自ら建設する建物は、建設費の累計額が税抜1,000万円以上となった課税期間以後の税額が対象です(同条2項、基通11-7-4)。
3年目までに事業用として貸した場合・売った場合の調整
控除できなかった税額は、次の場合に一定の割合で仕入控除税額に加算されます(消費税法35条の2)。調整期間は、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から、第三年度の課税期間(仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間)の末日までです。加算は課税事業者である課税期間に行います。
| 場合 | 加算する額 | 加算する課税期間 |
|---|---|---|
| 第三年度の課税期間の末日に保有していて、調整期間に住宅以外(事務所・店舗など)として貸した | 控除できなかった税額 × 課税賃貸割合(調整期間の賃料の合計のうち、住宅以外の貸付けの賃料の割合) | 第三年度の課税期間 |
| 調整期間に売った | 控除できなかった税額 × 課税譲渡等割合(仕入れ等の日から売った日までの賃料と売却代金の合計のうち、住宅以外の貸付けの賃料と売却代金の合計の割合) | 売った日の属する課税期間 |
賃料と売却代金は税抜きで、値引きなどがあれば差し引いた額です(国税庁「消費税法改正のお知らせ」令和2年4月)。第三年度の課税期間の末日より前に除却や譲渡をして保有していない場合、上の段の調整はありません(基通12-6-2)。
当会の計算例(架空の設例):賃貸マンションの一部を店舗として貸した場合
3月決算の法人(課税事業者、一般課税)が、2026年4月1日に賃貸マンション1棟を建物代金 税抜100,000,000円で取得して住宅として貸し、その後、1階の一部を店舗として貸した場合です。2029年3月31日にも建物を保有しているものとします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除できない課税仕入れ等の税額(国) | 100,000,000円 × 7.8% = 7,800,000円 |
| 第三年度の課税期間 | 2028年4月1日〜2029年3月31日 |
| 調整期間 | 2026年4月1日〜2029年3月31日 |
| 調整期間の賃料(税抜) | 住宅 18,000,000円、店舗 2,000,000円 |
| 課税賃貸割合 | 2,000,000 ÷ 20,000,000 = 10% |
| 第三年度の課税期間に加算する額 | 7,800,000円 × 10% = 780,000円 |
国税庁のお知らせにも同じ考え方の例があります(取得時の消費税額2,000万円、調整期間の住宅の賃料600万円・事業用の賃料400万円で、800万円を加算)。
居住用賃貸建物として控除できない場合でも、高額特定資産を取得したことによる特例は適用されます。一般課税で申告する課税期間に取得した場合は、その翌課税期間から、取得した課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで、免税事業者になれません。また、その3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までは、簡易課税制度選択届出書を出せません(国税庁 タックスアンサー No.6502)。
住宅の家賃や土地の売却がある場合の仕入税額控除(課税売上割合)
【確定】一般課税では、その課税期間の課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等の税額を全額控除できます。どちらかを満たさない場合は、個別対応方式か一括比例配分方式で、課税売上げに対応する部分だけを控除します(国税庁 タックスアンサー No.6401)。
課税売上割合は、課税売上高(輸出免税を含む)を、課税売上高と非課税売上高の合計で割った割合です(No.6405)。住宅の家賃や土地の売却代金は非課税売上高なので、多いほど課税売上割合が下がります。一般課税の計算手順は消費税の計算方法で説明しています。
- 個別対応方式:課税仕入れ等を「課税売上げにのみ要するもの」「非課税売上げにのみ要するもの」「共通して要するもの」に区分し、課税売上げにのみ要するものの税額 + 共通して要するものの税額 × 課税売上割合 を控除します。
- 一括比例配分方式:課税仕入れ等の税額の全体 × 課税売上割合 を控除します。選ぶと、2年間以上続けて適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。
不動産業での区分の例です(実際の区分は取引ごとに判断します)。
- 課税売上げにのみ要するもの:店舗・事務所として貸している部分の改装工事、仲介業務の広告費
- 非課税売上げにのみ要するもの:住宅として貸している部屋の修繕、土地の売却のための測量費
- 共通して要するもの:住宅と店舗が入った建物全体の共用部分の清掃・管理費、本社の事務所経費
当会の計算例(架空の設例):住宅と店舗を貸す法人
自社ビル(住宅と店舗・事務所)を貸し、駐車場の経営と、他のオーナーからの管理受託も行う法人です。課税期間は1年で、売上げは税抜き、課税仕入れは税込みの金額です。税率はすべて10%とします。
| 売上げ | 金額 | 区分 |
|---|---|---|
| 住宅の家賃(共益費を含む) | 36,000,000 | 非課税 |
| 店舗・事務所の家賃 | 12,000,000 | 課税 |
| 月極駐車場(区画を整備) | 2,400,000 | 課税 |
| 管理受託料 | 3,600,000 | 課税 |
| 課税売上割合 | 1/3 | 18,000,000 ÷ 54,000,000(約33.3%) |
| 区分 | 税込金額 | 仕入税額(国) |
|---|---|---|
| 課税売上げにのみ要するもの(店舗部分の改装) | 2,200,000 | 156,000 |
| 非課税売上げにのみ要するもの(住宅部分の修繕) | 3,300,000 | 234,000 |
| 共通して要するもの(共用部分の管理費など) | 4,400,000 | 312,000 |
| 合計 | 9,900,000 | 702,000 |
| 方式 | 控除する仕入税額(国) | 差引税額(国) | 地方消費税 | 納付税額の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 個別対応方式 | 156,000 + 312,000 × 1/3 = 260,000 | 1,144,000 | 322,600 | 1,466,600 |
| 一括比例配分方式 | 702,000 × 1/3 = 234,000 | 1,170,000 | 330,000 | 1,500,000 |
| (参考)簡易課税(第6種、40%) | 1,404,000 × 40% = 561,600 | 842,400 | 237,600 | 1,080,000 |
仕入税額(国)は税込金額 × 7.8/110、売上税額(国)は課税標準額18,000,000円 × 7.8% = 1,404,000円です。差引税額と地方消費税(差引税額 × 22/78)は百円未満を切り捨てています。簡易課税を使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、事前に届出をしている場合です。簡易課税では非課税の住宅の家賃は計算に入らず、課税売上げに係る税額にみなし仕入率を掛けるため、この例では一般課税より少なくなります。一方、大規模な改修工事などで課税仕入れが多い年でも、簡易課税では還付を受けられません。
同じ年に土地を売った場合と、課税売上割合に準ずる割合
上の法人が同じ課税期間に土地を90,000,000円で売ると、総売上高は144,000,000円、課税売上割合は18,000,000 ÷ 144,000,000 = 12.5%に下がります。個別対応方式の控除額は 156,000円 + 312,000円 × 12.5% = 195,000円 で65,000円減り、納付税額の合計は1,550,000円(83,400円の増加)になります(当会の計算例)。
国税庁は、土地の譲渡が単発のもので、土地の譲渡がなかったとした場合に事業の実態に変動がないと認められるときに限り、次のいずれか低い割合を「課税売上割合に準ずる割合」として承認して差し支えないとしています(国税庁 質疑応答事例「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」)。
- 土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
- 土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合
「事業の実態に変動がない」とは、営業の実態に変動がなく、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合です。適用を受けたい課税期間の末日までに「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を出し、末日の翌日から1か月を経過する日までに承認を受ければ、その課税期間から適用できます。適用した翌課税期間には不適用届出書を出します。課税売上割合に準ずる割合は個別対応方式で使うもので、一括比例配分方式には使えません(No.6417)。
簡易課税の事業区分(第6種ほか)と2割特例・3割特例
【確定】簡易課税制度では、売上げに係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を掛けた額を、仕入れに係る消費税額とみなします。不動産業は第6種事業(みなし仕入率40%)ですが、不動産の取引でも内容によって区分が変わります。事業区分は、原則として取引(課税資産の譲渡等)ごとに判定します(国税庁 タックスアンサー No.6509、基通13-2-1)。
| 取引の内容 | 事業区分(みなし仕入率) |
|---|---|
| 不動産の売買・賃貸の仲介、代理 | 第6種(40%) |
| 事務所・店舗などの賃貸、駐車場業、不動産管理業 | 第6種(40%)。住宅の貸付けは非課税なので計算に入りません |
| 他の者が建築した建物を購入し、そのまま事業者に販売 | 第1種(90%) |
| 他の者が建築した建物を購入し、そのまま消費者に販売 | 第2種(80%) |
| 自ら建築施工した建物の販売(施主として建築業者に施工させたものを含む) | 第3種(70%) |
| 中古住宅をリメイク(塗装、修理など)して販売 | 第3種(70%) |
| 自ら使っていた建物などの固定資産の売却 | 第4種(60%) |
出典:国税庁 質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-J金融業、保険業、K不動産業、物品賃貸業ほか)」、基通13-2-4(注2)・13-2-9、No.6509。土地の譲渡は非課税なので、どの区分にも入りません。事業区分ごとの具体例は簡易課税制度の事業区分でも説明しています。
簡易課税を使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間で、原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出している場合です。選んだら2年間は続けて適用し、還付は受けられません。2種類以上の事業を営む場合は事業ごとに課税売上げを区分し、区分していない部分には、そのうち最も低いみなし仕入率が適用されます(No.6505)。
仲介業者などの2割特例・3割特例
インボイス発行事業者の登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者などは、次の特例を選べます。売上税額に対する納付税額の割合は、簡易課税の第6種が60%、3割特例が30%、2割特例が20%です。
当会の計算例(架空の設例)です。個人で不動産の仲介を行う事業者(インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった)で、令和9年分の課税売上高(税抜)が6,000,000円だった場合、簡易課税(第6種)と3割特例の納付税額は次のとおりです。売上げはすべて仲介手数料(第6種)で、税率は10%とします。
| 区分 | 差引税額(国) | 地方消費税 | 納付税額 |
|---|---|---|---|
| 簡易課税(第6種、納付割合60%) | 280,800 | 79,200 | 360,000 |
| 3割特例(納付割合30%) | 140,400 | 39,600 | 180,000 |
売上税額(国)は6,000,000円 × 7.8% = 468,000円です。簡易課税の差引税額は468,000円 × 60%(1 − みなし仕入率40%)= 280,800円、3割特例の差引税額は468,000円 × 30% = 140,400円で、それぞれに地方消費税(差引税額 × 22/78)を加えた納付税額は、簡易課税が360,000円、3割特例が180,000円です。この設例では、3割特例の方が180,000円少なくなります(当会の計算例)。3割特例を使えるかどうかの要件は、次のとおりです。
- 2割特例:2026年9月30日を含む課税期間まで使えます。個人事業者は令和8年分(2026年分、申告期限は2027年3月31日)が最後です(消費税の2割特例はいつまで)。
- 3割特例:個人事業者だけが、令和9年分・令和10年分(2027年分・2028年分)に使えます。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが要件で、事前の届出は不要です。法人は使えません(3割特例の要件と業種別の簡易課税との比較)。
- 2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税にする場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば間に合います。翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間の末日までです(No.6505)。
住宅の家賃は課税売上高に入らないので、2割特例・3割特例の要件(基準期間の課税売上高1,000万円以下)も、住宅の家賃を除いた課税売上高で判定します。
インボイス制度への対応(貸主・借主・管理会社)
貸主:登録は任意、住宅の家賃はインボイスを交付する取引ではない
- インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。登録すると、借主などの課税事業者から求められたときにインボイスを交付する義務があります。消費者など課税事業者以外への交付義務はありません(インボイスQ&A 問10)。
- インボイスは課税資産の譲渡等について交付するものなので、非課税の住宅の家賃には交付しません。
- 免税事業者が登録を受けると課税事業者となり、消費税の申告が必要になります。手続はインボイスの登録申請の手続きで説明しています。
借主:事務所の家賃は契約書と通帳などの保存で要件を満たせる
事務所・店舗の家賃を口座振替や振込で払い、請求書や領収書を受け取っていない場合でも、インボイスの記載事項のうち取引年月日以外の事項(登録番号など)が記載された契約書と、取引年月日の事実を示す通帳や、銀行が発行した振込金受取書をあわせて保存すれば、仕入税額控除の要件を満たします。2023年9月30日以前からの契約で契約書に登録番号などが書かれていない場合は、貸主から不足する事項の通知を受け、契約書とともに保存します。途中で貸主が登録をやめることもあるため、必要に応じて国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認します(インボイスQ&A 問95)。
貸主がインボイス発行事業者でない場合、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存すれば、家賃の仕入税額相当額のうち、2026年9月30日までの課税仕入れは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%を控除できます。同じ相手からの課税仕入れが年1億円(税込)を超える部分は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から、この経過措置の対象外です。家賃の場合にどの日で割合を判定するかは、免税事業者等からの仕入れの経過措置(割合を判定する日)で説明しています。
管理会社が家賃を集金する場合、共有物件の場合
管理会社がオーナーに代わって家賃の請求や集金を行う場合、オーナーと管理会社がどちらもインボイス発行事業者で、オーナーが登録を受けている旨を取引前までに管理会社に通知していれば、管理会社が自らの名称と登録番号を記載したインボイスを交付できます(媒介者交付特例)。管理会社は交付したインボイスの写しを保存し、その写しをオーナーに交付します。請求書の発行や集金の事務だけを委託している場合も対象です。管理会社がオーナーを代理して、オーナーの名称と登録番号を記載したインボイスを交付することもできます(インボイスQ&A 問48)。
共有の建物を売ったり貸したりする場合で、共有者の一部がインボイス発行事業者でないときは、所有者ごとに取引を合理的に区分し、インボイス発行事業者の所有割合(持分など)に応じた部分についてインボイスを交付します(問52)。
2026年10月1日からの変更点
【確定】令和8年度税制改正など(2026年9月26日時点)
| 変更点 | 時期 | 影響する場面 |
|---|---|---|
| 非居住者に対する国内不動産の仲介の課税化 | 2026年10月1日以後の役務の提供(2026年3月31日までに締結した契約に基づくものは改正前の扱い) | 海外に住む売主・買主・貸主・借主の仲介 |
| インボイス発行事業者でない者からの仕入れの控除割合(80%から70%)と1億円の上限 | 70%:2026年10月1日以後の課税仕入れ。上限:同日以後に開始する課税期間 | 免税事業者などの貸主・外注先への支払 |
| 2割特例の終了と3割特例(個人事業者のみ) | 2割特例:2026年9月30日を含む課税期間まで。3割特例:令和9年分・令和10年分 | 登録を機に課税事業者になった仲介業者・貸主 |
| 簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例 | 2割・3割特例の翌課税期間が2026年10月1日以後に終わる場合 | 2割・3割特例から簡易課税に移る場合 |
出典:国税庁 インボイス制度 令和8年度税制改正特集、国税庁 タックスアンサー No.6567、財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF)。
非居住者に対する国内不動産の仲介が課税に
【確定・2026年10月1日施行】非居住者に対する役務の提供は一般に輸出免税の対象ですが、令和8年度税制改正により、国内にある不動産(不動産の上に存する権利を含みます)の売買、交換または貸借の代理・媒介は、2026年10月1日以後に行われるものから輸出免税の対象外となり、課税されます。2026年3月31日までに締結した契約に基づくものは、改正前の規定により輸出免税の対象です。国内の不動産の管理や修理は、改正前から輸出免税の対象外です(No.6567)。
海外に住む顧客の売買・賃貸を仲介する場合は、2026年10月1日以後の仲介手数料に消費税がかかることを前提に、契約書や請求書の記載を確認します。輸出免税の要件全体は輸出入と消費税で説明しています。
申告と届出の期限
| 手続 | 期限 | 出典 |
|---|---|---|
| 個人事業者の確定申告・納付 | 翌年3月31日 | No.6601 |
| 法人の確定申告・納付 | 課税期間の終了の日の翌日から2か月以内。申告期限の延長特例を受けている法人は、事業年度終了の日の属する課税期間について1か月延長 | No.6601 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(2割特例・3割特例を使った翌課税期間から適用する場合は期限の特例あり) | No.6505 |
| 消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書 | 適用を受けたい課税期間の末日まで(末日の翌日から1か月を経過する日までに承認を受ければ、その課税期間から適用) | No.6417 |
確定申告の期限が土曜日・日曜日・祝日などにあたる場合は、その翌日(休日明け)が期限です(国税通則法10条2項)。納付の方法や延滞税は消費税の納付期限、申告書の各欄は消費税申告書の書き方で説明しています。
よくある質問
住宅の家賃に消費税はかかりますか。
かかりません。契約で居住用であることが明らかな住宅の貸付け(契約で用途が決まっていなくても、状況から居住用であることが明らかなものを含みます)は非課税です。ただし、貸付期間が1か月未満のものと、ホテル・ウィークリーマンション・民泊など旅館業に当たる施設の貸付けは非課税になりません。共益費や、返還しない礼金・敷金も家賃に含まれ、非課税です。〔国税庁 タックスアンサー No.6226〕
事務所の家賃を土地部分と建物部分に分けて請求すれば、土地部分は非課税になりますか。
なりません。建物の貸付けに伴って土地を使わせる場合は、家賃を土地部分と建物部分に分けて定めていても、その総額が建物の貸付けの対価として課税されます。〔国税庁 タックスアンサー No.6225、消費税法基本通達6-1-5〕
月極駐車場の賃料は課税ですか。
地面の整備やフェンス・区画の設置をして駐車場として貸す場合や、車両を管理している場合は課税です。そうした整備も管理もせず土地を貸している場合は、土地の貸付けとして非課税です(貸付期間が1か月未満のものを除きます)。集合住宅の駐車場は、1戸当たり1台分以上が確保され自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられるなどの場合で、家賃とは別に駐車場使用料を受け取っていなければ、住宅の貸付けに含まれ非課税です。〔国税庁 タックスアンサー No.6213、消費税法基本通達6-1-5・6-13-3〕
退去時に敷金から差し引く原状回復費用や、中途解約の違約金に消費税はかかりますか。
敷金などから差し引いて受け取る原状回復工事の費用は、貸主が借主に代わって行う工事(役務の提供)の対価なので課税です。中途解約で受け取る違約金は、逸失利益を補う損害賠償金として課税の対象外です。〔国税庁 タックスアンサー No.6261〕
住宅のサブリースで、オーナーがサブリース会社から受け取る賃料は課税ですか。
住宅として転貸することが、オーナーとサブリース会社の契約書などで明らかであれば、オーナーからサブリース会社への貸付けも住宅の貸付けとして非課税です。サブリース会社から入居者への転貸も非課税です。事務所・店舗として転貸する場合は、どちらの貸付けも課税です。〔消費税法基本通達6-13-7、国税庁 No.6225のQ&A〕
土地付きの建物を売るとき、消費税はどう計算しますか。
土地の譲渡は非課税なので、建物部分だけが課税されます。契約で土地と建物の代金を合理的に区分していればその金額により、区分していない場合は、譲渡時の時価の比率、相続税評価額や固定資産税評価額、土地・建物の原価などを基に合理的に区分します。買主から受け取る固定資産税などの精算金も譲渡代金に含まれます。〔国税庁 No.6301のQ&A、消費税法施行令45条3項、消費税法基本通達10-1-5・10-1-6〕
個人が自宅や賃貸マンションを売った場合も消費税はかかりますか。
生活用の自宅を売る場合は、事業として行う取引ではないので課税されません。住宅賃貸用や店舗賃貸用の建物など、事業に使っていた建物を売った場合は、建物部分が課税の対象です(土地部分は非課税)。建物の売却代金はその年の課税売上高になるため、その年を基準期間とする2年後の課税期間に課税事業者になることがあります。〔国税庁 タックスアンサー No.3240・No.6109〕
住宅として貸す建物を買ったとき、消費税を仕入税額控除できますか。
住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物を除き、一の取引単位が税抜1,000万円以上の建物(居住用賃貸建物)は、仕入税額控除ができません。2020年10月1日以後の仕入れから適用されています。取得した課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間(第三年度の課税期間)の末日に保有していて、それまでに事務所・店舗などとして貸した場合や、その期間内に売った場合は、一定の割合で控除額を加算する調整があります。〔消費税法30条10項・35条の2、国税庁「消費税法改正のお知らせ」(令和2年4月)〕
不動産業の簡易課税は、すべて第6種(みなし仕入率40%)ですか。
すべてではありません。仲介、事務所・店舗や駐車場の賃貸、不動産管理は第6種です。他の者が建築した建物を買ってそのまま売る場合は第1種(事業者への販売)か第2種(消費者への販売)、自ら建築施工した建物(施主として建築業者に施工させたものを含む)や、中古住宅を塗装・修理などでリメイクして売る場合は第3種、自ら使っていた建物などの固定資産を売る場合は第4種です。〔国税庁 質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分」、消費税法基本通達13-2-4・13-2-9〕
住宅だけを貸している大家も、インボイスの登録が必要ですか。
登録するかどうかは事業者の任意です。住宅の家賃は非課税なので、インボイスを交付する取引ではありません。免税事業者が登録を受けると課税事業者となり、消費税の申告が必要になります。駐車場や事務所・店舗の家賃など課税の売上げがあり、借主が課税事業者の場合は、借主の仕入税額控除に影響します。〔インボイスQ&A 問10〕
2026年10月から、不動産の仲介で変わることはありますか。
2026年10月1日以後に非居住者に対して行う国内の不動産の売買・交換・貸借の代理や媒介(仲介)は、輸出免税の対象から外れ、課税されます。2026年3月31日までに締結した契約に基づくものは、改正前の取扱い(輸出免税)です。〔国税庁 タックスアンサー No.6567〕
インボイス発行事業者でない貸主から事務所を借りています。2026年10月から控除額は変わりますか。
区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存していれば、家賃の仕入税額相当額のうち、2026年9月30日までの課税仕入れは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までの課税仕入れは70%を控除できます。家賃の課税仕入れの日は、原則として契約で支払うべきとされている日で、前払いした家賃は実際に借りた期間で判定します。〔国税庁 令和8年度税制改正特集、消費税法基本通達9-1-20・9-1-27〕
まとめ
- 住宅の家賃と、土地の譲渡・貸付けは非課税です。事務所・店舗の家賃、整備や管理をしている駐車場、事業者が売る建物、仲介・管理の手数料は課税です。
- 土地付き建物の売買は、代金を土地と建物に合理的に区分し、建物部分に課税します。固定資産税などの精算金も代金に含まれます。
- 住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物を除き、税抜1,000万円以上の建物(居住用賃貸建物)を取得したときの消費税は控除できません。第三年度の課税期間の末日までに事業用として貸した場合や売った場合は、調整があります。
- 住宅の家賃や土地の売却代金が多いと課税売上割合が下がり、一般課税の控除額が減ります。たまたま土地を売った場合は、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けられることがあります。
- 簡易課税では、仲介・賃貸・管理は第6種(40%)、購入した建物の販売は第1種・第2種、自ら建築した建物の販売は第3種、使っていた固定資産の売却は第4種です。
- 2026年10月1日以後、非居住者に対する国内不動産の仲介は課税になり、インボイス発行事業者でない者からの仕入れの控除割合は70%になります。
出典・参考資料
いずれも2026年9月26日に内容を確認しました。
国税庁 タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)
- No.6201 非課税となる取引
- No.6213 駐車場の使用料など
- No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など(Q&A「建物を転貸する場合」)
- No.6226 住宅の貸付け
- No.6261 建物賃貸借契約の違約金など
- No.6109 事業者が事業として行うものとは、No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税
- No.6301 課税標準のQ&A「建物と土地を一括譲渡した場合の建物代金」
- No.6401 仕入控除税額の計算方法、No.6405 課税売上割合の計算方法、No.6417 課税売上割合に準ずる割合
- No.6501 納税義務の免除、No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例
- No.6505 簡易課税制度、No.6509 簡易課税制度の事業区分
- No.6567 非居住者に対する役務の提供
- No.6601 申告と納税
- No.6925 消費税等と印紙税、No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
国税庁 通達・質疑応答事例・パンフレット
- 消費税法基本通達 5-4-3、第6章第1節(土地等の譲渡及び貸付け関係)、第6章第13節(住宅の貸付け関係)、9-1-20、10-1-5・10-1-6、第11章第7節(居住用賃貸建物)、第12章第6節(居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の調整)、第13章第2節(事業区分の判定)
- 質疑応答事例 日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-J金融業、保険業、K不動産業、物品賃貸業ほか)、たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認、会社員が行う建物の貸付けの取扱い
- 消費税法改正のお知らせ(令和2年4月、PDF)(居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限と調整)
国税庁 インボイス制度・令和8年度税制改正
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(全文、PDF):問10(登録の任意性)、問48(媒介者交付特例)、問52(共有資産の譲渡等)、問95(口座振替・口座振込による家賃の支払)、問104・問106・問110(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合)
- インボイス制度 令和8年度税制改正特集、リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(PDF)
財務省・法令
- 財務省「令和8年度税制改正の解説」消費税法等の改正(PDF)
- 消費税法(4条・6条・30条・35条の2・別表第二)、消費税法施行令(8条・16条の2・45条・49条・50条の2)、国税通則法(10条)
改訂履歴
著者:新宿間税会(新宿間税会について)
- 2026年5月15日:公開
- 2026年9月26日:全面改訂(令和8年度税制改正等への対応。住宅の貸付けの条件、駐車場・サブリースの扱い、土地付き建物の代金の区分、居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限、課税売上割合と準ずる割合、簡易課税の事業区分、インボイスへの対応、非居住者に対する国内不動産の仲介の課税化を追加。サブリースのマスターリースを課税仕入れとした記述、駐車場の扱い、出典のない業界統計・仕入率の目安・節税の記述を削除し、計算例を法定の端数処理で計算し直し)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家や、所轄の税務署にご相談ください。