そこが知りたい ── 着物の美しい装い方
着物教室大はやりの昨今、着物は着てみたが、装い方がどうもという方の為に、京王百貨店、キモノコンサルタント、伊山英子さんに、これから着る機会の多い晴着を中心に着こなしのポイントをお伺い致しました。
先づ洋服との違いについて
きものは長い伝統に培われた民族衣裳としての約束事があり、時や場、目的に応じた着こなしが望まれます。
近年、形式にあまりとらわれない風潮がきものの世界にもはいりこみ、格式や序列の境界があいまいになってきたとはいえ、まだまだきものには、長い歴史の上で人づきあいを円滑にする知恵の結晶ともいうべき折目があり、慣習が生きています。洋服に比べると細かい心づかいが必要とされています。
着方の原則は
礼装
振袖、留袖、紋付、色無地
準礼装
訪問着、付下げ、型友禅
街着・おしゃれ着
小紋、お召、紬、絣
ただし、小紋の中でも江戸小紋など背に一つ紋を入れれば準礼装になり、この原則に必らずしもこだわる必要はありません。
例えば若い人の集まりや気のおけないパーティなどでは、意表をついたユニークな装いは人目を引き、効果的なことがあります。だが一歩間違うと無謀とか非常識の型破りにもなりかねません。
あくまでも基本をふまえたうえで、着る人の趣味を加味してこそ個性もきらめくといえましょう。
小物できまる振袖姿
帯はきものの後ろ姿。「帯にはきものの二倍をかける」と言われるほど、帯がきもの姿の美しさを左右します。振袖には格調の高さを大切にした金や銀を使った丸帯か袋帯を。
また文様は古典的な振袖には、現代的なものを合わせると上品で自然です。帯結びの型は、きものと帯の柄ゆきや体型とのバランスを見てお決めになる必要があります。
年始廻りの装いのコツ
親戚、知人、上役、親しい同僚や隣近所などへ、お正月の松の内に装いを改めて、新しい年のご挨拶に回ります。
家族そろって楽しんでいるところへあまり仰々しい装いでは、かえって親しみがなくなりますから、上役や先生などへの年始回りには、お嬢様なら、晴やかな付下げか友禅染の小紋に、帯は袋帯か織なごや帯の格調高いものを合わせます。
奥様は訪問着か付下げ、背に一つ紋の色無地のきものに、帯は袋帯もしくはなごや帯にします。
きものの着こなしの美しさは控えめに見せて目ざわりにならないというような姿になります。きものを派手やかなものにするより質のよい帯を締めることにより奥床しい美しさをだすのもコツの一つです。
同僚や隣近所などの年始回りには、外出着程度のきもので「新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしく、」とご挨拶する親しさのほうが、きものの格調よりも大切なことです。
できれば新しい年を迎えるにあたり、仕立ておろしの小紋か紬、シルクウールなどのきものに帯は染なごや帯、袋なごや帯など趣味的なものを合わせます。親しさのほうが大切といってもふだん着のままでは失礼になりますので注意しましょう。
年始のお客様を迎える立場は
新年は人の出入りが多くなります。お客様をお迎えする奥様の身だしなみは、お化粧は控えめにして新年らしい初々しい装いにします。
きものはあまり派手な色や柄は避けます。また台所への出入りがはげしくなりますので、水がはねて困るような生地のものは避けたほうが安心です。
できれば仕立おろしのきもので、清潔な感じの紬、シルクウールのきものに、帯は春らしい色彩の染なごや帯、袋なごや帯を合わせます。
成人式の個性的な装いは
成人式のきものというと、白地の縫取り訪問着がユニフォームのような時代がありました。最近でもまだそのユニフォーム傾向が残っていて、圧倒的に振袖姿が多いようですが、個性的な装いを見かけることが少ないようです。
せっかくの晴れの日なのですから、あまり型のはまったことはせず、自分のおしゃれを充分に楽しむ自由と勇気をもつことも大切です。
木綿やウールなどではゆきすぎですが、自分の好きなものを、自分なりに着こなしてみることが若さの特権でもあります。
振袖や訪問着を着るのでしたら、一時淡い色が流行りましたがなるべくなら濃い地色系統のものを選ばれるほうがよいでしょう。そのほうが帯や小物のコーディネイトがしっくりといきますし若々しさをより発揮できるからです。
色無地を着る場合は、自分のお顔にいちばん似合う色を選択し、帯はもとより、伊達衿や帯揚、帯などの小物にも心を配り、色合わせなどおおいにセンスを表現してみることです。
茶会におよばれしたのですが
茶道は侘び寂びの世界といわれます。従ってきものもあまり華美にならず、上品で落ち着いたものがよいでしょう。
格式ある茶事としての初釜や炉開きの場合には、亭主や正客は礼装の必要があります。礼装といっても黒留袖ではおおげさですので落ち着いた色留袖や紋付の裾模様などがよいでしょう。亭主はお客様より華やかにならないように心を配ることです。
お客様は正装であればよいのですが、お嬢様は振袖や色無地など、奥様であれば訪問着や色無地に一つ紋付で、帯は袋帯がよいのですが、お嬢様でもお太鼓結びにするほうが好ましいでしょう。
参考までに一般の茶会の時は礼装の必要はありませんが、茶室の雰囲気をこわさないように心がけます。ご年輩の方なら色無地や江戸小紋に一つ紋付、若いお嬢様は付下げや友禅小紋など古典的な柄のものがふさわしい装いです。
お茶会は着物以上に帯のよさが決め手となりますので、心配りがほしいものです。柄を選ぶうえで注意することは、羽箒や茶入れ、茶筅など、お茶と重なる柄は避けることです。
親戚など気軽な訪問の場合
染めのきものなら更紗の小紋、織りのきものなら大島紬や結城紬、手織紬などがよく、羽織は小紋染めのきものには絵羽羽織、紬類のきものには、紅型やろうけつ染の羽織などが合うでしょう。
色彩は調和のよい明るい感じのものを選びます。羽織のかわりに道行コートでもよく、また気分を変えてシルクウールのアンサンブルなどもよいでしょう。帯は袋なごや帯か染なごや帯など趣味的なものを合わせます。
友人宅を訪ねる時
友人宅への気軽な訪問といっても、目的によって違ってきます。
新築祝いとか入学祝いとかいうような相手に対して敬意を表す場合には、一つ紋付の無地や鮫小紋、あるいはお召しなどがよく、この時の帯は袋帯、織なごや帯などを締めて格をもたせます。
ごく気軽な訪問は、ウールのアンサンブルや絣のきもの、または紬などの趣味的なきものに、帯は染なごや帯か袋なごや帯などのくだけた柄のものが気楽に見せます。
お嬢様の卒業謝恩パーティには
最近は短大、大学などの卒業謝恩会を、ホテルなどで盛大に行なうケースが多く見られますが、この場合、恩師を主賓とした正式な場所ですから、くだけすぎた装いは先生に対して失礼ということになります。ある程度改まった装いが求められます。
しかし最近のように全て振袖ということにこだわらないで、色無地や小紋、友禅やお召しのきものに袋帯を合わせて、フォーマルな装いにしてみてもよいでしょう。
ただし紬や絣、更紗やろうけつ染小紋などの趣味性の強いものは避けるべきです。あくまでも謝恩の場であることをふまえたうえで、若々しい装いで出席しましょう。
和服の正しいお手入れ法
きものをいつまでも美しく保つために:
- 埃を十分払って、陰干しをし、風をあてる。
- 折りじわの出来ないよう大きくたたむ。
- 刺繍や箔が使われているところはあて紙または手拭きをあてる。
- 時々たとうをあけて空気を入れ替える。
- 季節の変わり目には必らず虫干しを。
