マグナム体験記

(株)小田急百貨店 物流部長 篠塚 孝

昨年(昭和62年)の夏休みを利用して、ロスアンジェルス、サンディエゴを旅しました。サンディエゴ郊外に住む元アメリカ海兵隊だった知人から誘いを受けていたためです。

その誘いとは、大型拳銃"マグナム"を実射することであった。

場所は、映画「トップガン」の舞台となったサンディエゴ郊外のミラマー海軍航空隊基地である。主演のトム・クルーズが今にも目の前に現われそうな錯覚におそわれる。

飛行場はさすがアメリカである。広い、見渡す限りの地平線まで、すべてが基地である。その基地の一隅に射撃練習場はあった。

射撃場はカリフォルニアブルーの空に覆われた砂漠の中、ぽつんとある感じだ。西部劇によく出て来る景色と共通する光景である。前面は2m程の高さに土が盛られ、ダンボール製の標的を掲げる簡単な支持物が、物干の如く並んでいた。標的までの距離は約25mである。

マグナム体験記
趣味のコーナー

まず、元海兵隊氏からマグナムの射ち方を教授された。持ち方(グリップ)は、右手でホールダーを握るまではわかっていたが、左手がうまく収まらない。いつもの癖でゴルフのグリップ同様右手と平行に添えるものと思ったが、そうではなく、ホールダーを下から支える感じの握り方であった。

足の位置(スタンス)はつい右足が前に出がちであるが、実際は左足を前に出すのが正しい。考えてみると右手で拳銃を持てば、体の右側に反動が来るので、右足が後へ下っていた方が射撃時の反動を体で支えられるからである。納得。あとはオモチャのピストルと同様に照準を合わせて引き金を引けばOKである。もう一つ、ステレオヘッドホン同様の耳カバーをつけて準備完了。

さて、第一発目の発射である。緊張は極度に高まっていたと思う。心臓の鼓動も相当数に達っしていたであろう。照準を定め、いざ撃とうと右手人差指を引いたがこれが重たい。マグナムは小型拳銃と違って小生の指の力では簡単に引き金を引けるものではなかった。

彼の地で日本男児として恥をかきたくない。渾身の力をこめて引き金を引いた。「バーン」銃口から38口径の弾が飛び出した。一瞬のうちに前方の土塁から砂煙が上った。失敗である。

反動は思ったより少なかったが、銃口がひとりでに上方へ動くのは西部劇のシーンそのものであった。元海兵隊氏から、「リラックス」の声が掛ってやっと我を取り戻した。

緊張の初体験を終えるとあとは気軽に連発を放った。的にも次第に当たるようになり、あたかもゴルフ練習場で#5アイアンを振っているような心境になった。

一つ間違うと強力な凶器になる代物であり、後で考えるとバカなことに夢中になったものと自省したが、男として発射快感を堪能でき、終生忘れられない思い出として、脳裏に残る一夏の貴重な体験であった。

編集後記

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