実務への影響 ~令和7年度税制改正による業務変更と対応策~
令和7年度税制改正は、企業の実務に多大な影響を与える大規模な改正となりました。特に「103万円の壁」の見直しは、給与計算、年末調整、人事管理など、企業実務の根幹に関わる変更です。本記事では、実務担当者が直面する具体的な課題と対応策を詳しく解説します。
図1:令和7年度税制改正が実務に与える影響の全体像
令和7年度税制改正は、基礎控除・給与所得控除の引き上げによる「103万円の壁」の見直しをはじめ、企業実務の根幹に関わる大規模な変更を含んでいます。
本記事では、「給与計算」「年末調整」「経理・財務」「人事・労務」「システム対応」の5つの観点から、実務担当者が取るべき対応策を詳細に解説します。
給与計算実務への影響
源泉徴収事務の変更点
令和7年度税制改正により、源泉徴収事務に大きな変更が生じます。特に重要なのは、実施時期が二段階に分かれていることです。
図2:源泉徴収事務の変更タイムライン
ポイント
令和7年11月までは現行の源泉徴収を継続し、12月の年末調整で新制度を適用、令和8年1月から新税額表での源泉徴収を開始します。この二段階での対応により、実務の混乱を最小限に抑えることができます。
給与計算システムの改修要件
給与計算システムには以下の改修が必要となります:
- 基礎控除額の変更(48万円→58万円、最大95万円)
- 給与所得控除の最低保障額変更(55万円→65万円)
- 特定親族特別控除の計算ロジック実装
- 源泉徴収税額表の切替機能
年末調整実務への影響
令和7年分年末調整の複雑化
令和7年分の年末調整は、新たな控除制度の導入により、従来よりも複雑な処理が必要となります。
図3:年末調整における新旧制度の比較
重要
特定親族特別控除の導入により、19歳以上23歳未満の親族について、所得金額に応じた段階的な控除額の計算が必要となります。これにより年末調整の計算が複雑化し、確認作業が増加します。
年末調整業務の効率化対策
複雑化する年末調整に対応するため、以下の効率化対策を推奨します:
- 電子申告システムの導入による記載ミスの削減
- 11月中の申告書配布と説明会の実施
- チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築
- システムチェックと目視確認の併用
経理・財務実務への影響
防衛特別法人税への対応
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額が500万円を超える企業に対して、防衛特別法人税が導入されます。
ポイント
防衛特別法人税は、基準法人税額から基礎控除500万円を差し引いた金額に4%の税率を適用します。中小企業の多くは基礎控除により実質的に非課税となりますが、大企業では年間税負担が約1%増加します。
税効果会計への影響
令和7年3月期決算では、以下の対応が必要です:
- 防衛特別法人税を考慮した実効税率の再計算
- 繰延税金資産・負債の再評価
- 税率変更の影響額に関する注記事項の追加
人事・労務実務への影響
パート・アルバイトの労働環境変化
「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられることで、パート・アルバイトの就業調整が緩和されます。
図5:パート・アルバイト雇用管理の見直しチェックリスト
採用戦略の見直し
労働時間の制約が緩和されることで、以下の対応が可能となります:
- 「扶養内勤務可」の条件を月額10.3万円(特例13.3万円)まで拡大
- 繁忙期における柔軟なシフト配置
- 人材確保の競争力向上
配偶者控除・配偶者特別控除の変更
配偶者に関する控除も大幅に見直され、働きやすい環境が整備されます。
ポイント
- 配偶者控除:配偶者の年収上限が103万円から123万円に引き上げ
- 配偶者特別控除:満額(38万円)適用の上限が150万円から160万円に引き上げ
- 201万円の壁:配偶者の年収が201万円を超えると控除がゼロになる仕組みは維持
各種「年収の壁」の整理
税制改正により複数の「年収の壁」が存在することになります。以下の表で整理します。
図5-2:各種「年収の壁」の比較一覧
重要な注意点
税制改正により「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられますが、社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」は別制度のため、これらの基準は変わりません。パート・アルバイトの就業調整を検討する際は、税制と社会保険の両面から総合的に判断する必要があります。
システム対応の全体像
統合的なシステム改修計画
税制改正に対応するため、給与計算、人事管理、会計システムの統合的な改修が必要です。
図4:統合的システム改修のガントチャート
システム連携の重要性
各システム間の連携を強化することで、以下のメリットが得られます:
- 給与計算と人事管理の従業員マスタ同期
- 給与計算と会計の仕訳データ自動生成
- 人事管理と勤怠管理の労働時間データ連携
業種別の実務影響
業種による影響度の違い
税制改正の影響は、業種によって大きく異なります。パート比率と法人税額の観点から分析します。
図6:業種別の実務影響度マトリックス
業種別の対応策
ポイント
小売・サービス業はパート比率が高いため年末調整の負担が大きく、製造業は防衛特別法人税の影響を受けやすい傾向があります。各業種の特性に応じた重点的な対応が必要です。
リスク管理と内部統制
税務リスクへの対応
税制改正に伴い、以下の税務リスクに注意が必要です:
図8:税制改正対応のリスク管理体制図
内部統制の強化ポイント
- 年末調整計算のダブルチェック体制構築
- システム処理の妥当性確認プロセス
- 防衛特別法人税の計算確認手順の文書化
- 定期的な内部監査の実施
実務担当者の年間スケジュール
図7:令和7年度 税制改正対応の年間スケジュール
まとめ:実務対応のロードマップ
令和7年度税制改正への対応は、全社的な取り組みが必要な大規模プロジェクトです。成功のポイントは以下の3点です:
- 早期準備の重要性:改正内容を正確に理解し、十分な準備期間を確保する
- 全社的な取り組み:経営層のコミットメントと部門横断的な連携を実現する
- 継続的な改善:PDCAサイクルを回し、課題を早期発見・対応する
特に重要なのは、令和7年10月~11月のシステム改修・テスト期間と、12月の年末調整実施時期です。この期間に集中的にリソースを投入し、確実な対応を行うことが求められます。
情報の出典: 財務省「令和7年度税制改正大綱」、国税庁「源泉徴収事務の手引き」
更新日: 2025年7月15日現在の法令に基づく
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。