免税店制度完全ガイド:インバウンド需要を取り込む税務戦略
訪日外国人観光客の急増により、免税店(輸出物品販売場)制度への注目が高まっています。本記事では、免税店制度の基本から実務上の注意点、そして2026年11月から導入される新しいリファンド方式まで、経営者の皆様が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。
1. 免税店制度とは
1.1 制度の概要
免税店制度(輸出物品販売場制度)とは、外国人旅行者などの非居住者が日本国内で購入し、国外へ持ち出す物品について、消費税を免除する制度です。この制度は、インバウンド消費の拡大を促進し、地域経済の活性化に貢献することを目的としています。
図1:免税店制度の概要図
1.2 免税の仕組み
免税店で外国人旅行者が商品を購入する際、以下の流れで免税が適用されます:
- 身分確認:パスポート等で非居住者であることを確認
- 免税手続き:電子システムで購入記録情報を作成・送信
- 物品の引き渡し:消耗品は特殊包装して引き渡し
- 出国時の確認:税関で物品の持ち出しを確認
1.3 免税対象者(非居住者)の定義
免税購入が可能な非居住者とは:
- 外国人旅行者:日本での滞在期間が6か月未満の者
- 日本人海外居住者:外国に2年以上居住している日本人で、一時帰国の滞在期間が6か月未満の者
2. 免税店の種類と特徴
図2:免税店の4つの種類比較表
2.1 一般型輸出物品販売場
特徴:
- 店舗内で独自に免税手続きを完結
- 自店舗での購入金額のみで免税要件を判定
- 免税手続きに必要な人員と設備を自前で用意
2.2 手続委託型輸出物品販売場
特徴:
- 商店街やショッピングモール内の免税手続カウンターに手続きを委託
- 複数店舗の購入金額を合算して免税要件を判定可能
- 承認免税手続事業者との契約が必要
2.3 自動販売機型輸出物品販売場
特徴:
- 2021年10月から導入された新形態
- 国税庁長官が指定する自動販売機で免税手続きを完結
- 人員配置が不要
2.4 臨時販売場制度
特徴:
- 7か月以内の期間限定で設置可能
- イベントや催事での免税販売に対応
- 既存の免税店事業者のみ利用可能
3. 免税対象物品と購入要件
3.1 免税対象者の判定フロー
図3:免税対象者の条件フローチャート
3.2 免税購入の手続きフロー
図4:免税購入の手続きフロー
3.3 免税対象物品の分類(現行制度)
図5:一般物品と消耗品の分類例
ポイント
現行制度では、一般物品と消耗品を別々に計算し、それぞれ5,000円以上の購入が必要です。ただし、2026年11月のリファンド方式導入後は、この区分が廃止される予定です。
4. 免税店になるための要件と手続き
4.1 許可要件
- 事業者要件:
- 消費税の課税事業者であること
- 国税の滞納がないこと
- 過去3年以内に免税店許可の取消しを受けていないこと
- 立地要件:
- 現に非居住者が利用する場所
- または非居住者の利用が見込まれる場所
- 設備・人員要件:
- 免税販売手続きに必要な人員の配置
- 電子化に対応したシステムの導入
4.2 申請手続き
必要書類:
- 輸出物品販売場許可申請書
- 事業内容説明書
- 販売場の見取図
- 取扱商品説明書
- 免税販売手続きマニュアル
申請先:納税地を所轄する税務署
審査期間:通常1~2か月程度
4.3 免税販売手続きの電子化(2021年10月~)
2021年10月1日から、免税販売手続きは完全電子化されました。紙での手続きは廃止され、すべての免税店で電子システムの導入が必須となっています。
電子化のメリット:
- ペーパーレス化:購入記録票の作成・保管が不要
- 手続きの迅速化:自動入力で時間短縮
- 不正防止:システムでの一元管理
- Visit Japan Web連携:2023年4月から連携開始
5. 実務上の注意点とコンプライアンス
図6:免税販売の注意点チェックリスト
重要
免税販売における不正行為は、免税店許可の取消しだけでなく、重加算税の対象となる可能性があります。特に転売目的の購入や、同一人物による大量購入には十分注意してください。
5.1 本人確認の徹底
- パスポートの顔写真と本人の照合
- 滞在資格・期間の確認
- 偽造・変造パスポートへの注意
5.2 購入記録情報の管理
- 保存期間:7年間
- 保存内容:購入記録情報のデータ
- 日本人購入者の場合は証明書類の写しも保存
5.3 消耗品の特殊包装
- 開封が明確にわかる包装
- 出国まで開封厳禁の説明
- 十分な強度の確保
6. リファンド方式への移行(2026年11月~)
6.1 制度変更の背景
近年、免税品の国内転売など不正利用が社会問題化しており、制度の抜本的な見直しが必要となりました。欧州等で採用されているリファンド方式を導入することで、不正防止と制度の健全化を図ります。
図7:リファンド方式の仕組み(現行制度との比較)
6.2 主な変更点
- 販売方法の変更:
- 税込価格での販売に統一
- 免税・課税の区別なく販売
- 物品区分の廃止:
- 一般物品と消耗品の区分廃止
- 購入上限額(50万円)の撤廃
- 特殊包装の廃止
- 返金手続きの追加:
- 税関確認後の返金業務
- 承認送信事業者への委託可能
- 会計処理の変更:
- 販売時は課税売上で計上
- 税関確認後に免税売上へ振替
6.3 準備すべき事項
- システム改修:返金機能の追加
- 業務フローの見直し:返金手続きの整備
- スタッフ教育:新制度の理解と対応
- 契約関係の整理:承認送信事業者との契約見直し
7. 免税店経営のメリットとビジネスチャンス
図8:免税店経営のメリット
7.1 売上拡大効果
- 価格競争力:実質10%の価格優位性
- 集客力向上:「Tax Free」表示による誘客
- 客単価上昇:まとめ買いの促進
7.2 地域経済への貢献
- 観光地の魅力向上
- 雇用創出効果
- 地域ブランドの発信
7.3 成功のポイント
- 多言語対応:
- スタッフの語学力向上
- 多言語表示・案内の充実
- 商品構成の工夫:
- 外国人に人気の商品の品揃え
- 日本らしさを感じる商品の充実
- プロモーション:
- SNSでの情報発信
- 観光案内所との連携
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 小規模店舗でも免税店になれますか?
A: はい、可能です。手続委託型を選択すれば、初期投資を抑えて免税店になることができます。
Q2. オンラインショップは免税店になれますか?
A: いいえ、実店舗のみが対象です。対面での本人確認が必要なためです。
Q3. 免税販売の手数料はかかりますか?
A: 免税店自体に手数料はかかりませんが、電子化システムの利用料や手続委託型の場合の委託手数料が発生します。
Q4. 日本人でも免税で購入できる場合はありますか?
A: はい、海外に2年以上居住し、一時帰国している日本人は対象となります。
Q5. リファンド方式導入後も現行制度は使えますか?
A: いいえ、2026年11月1日以降は完全にリファンド方式に移行し、併用期間はありません。
まとめ
免税店制度は、インバウンド需要を取り込む重要な税務戦略です。2026年のリファンド方式導入に向けて、今から準備を始めることが成功の鍵となります。
制度を正しく理解し、適切に運用することで、外国人観光客の満足度向上と売上拡大の両立が可能です。不明な点は税務署や専門家に相談し、コンプライアンスを守りながら、ビジネスチャンスを最大限に活用しましょう。
本記事が、皆様の免税店経営の一助となれば幸いです。
情報の出典: 国税庁「輸出物品販売場における輸出免税について」、観光庁「免税店(輸出物品販売場)の手引き」
更新日: 2025年7月時点の法令に基づく
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。