薬茶同源
緑茶の路、シルクロード
中国の食思想は「医食同源」。薬も食事も同じものなのだから、ふだんの食事で病気を予防し、不老長寿、強壮強精を得ようというものです。
もちろん、お茶は医食同源の食事になくてはならないもの、もともと薬茶としてスタートし、その後、嗜好品として世界に広まりました。世界中の飲茶の風習はすべて中国から伝わったものなのです。
遠い昔、唐、宋のころ、中国はアジア大陸の西南端にあるアラビアと通商を行なっていました。
ところが、当時の海路往来では、新鮮な野菜の不足が深刻な問題。アラビア船では、壊血病で倒れる乗組員が後を絶ちません。
これに対し、中国船の乗組員はというと全員がいたって元気。ひとりとしてこの病にかかる者はいません。
その秘密は、毎日のお茶。ご存知のようにお茶にはビタミンCがたっぷり含まれています。航海中、毎日何回となくお茶を飲んでいた中国船の乗組員にとっては、野菜不足も平気だったんですね。
これを知ったアラビア人は、以来、お茶を病気よけの薬として珍重し、高価な値で取引する様になったといわれます。
蒙古の人々とお茶
また、砂漠に住み、慢性的な野菜不足に悩む蒙古の人々にとっても、お茶は、健康を維持するうえで無くてはならないものでした。
その昔は、戦いに備えて育てあげた大切な駿馬とお茶を交換し、近代でもお茶を得るためには、彼らの必需品である綿羊を提供したのだとか。
綿羊一頭の値にも等しい高価なものだからでしょう。お茶は何回も入れて飲み、最後には、茶葉までも食べてしまうというのが蒙古流。「お茶を飲みましょう」というときも、彼らの言葉で「お茶を食べましょう」というのだそうです。
日本とヨーロッパへの伝播
日本には、唐朝に遣唐使を送って以来、お茶が持ち込まれ、そのころから次第にお茶を飲む風習が伝わったのだろうと考えられています。
欧州に飲茶の風習を伝えたのは、元の時代に中国に滞在したマルコポーロ。お茶を扱う商人が登場するようになると、アジアとヨーロッパの連絡ルート、シルクロードは「緑茶の路」とも呼ばれました。
ところで、世界各国のお茶の呼び方は、英語のTEAをはじめ、フランス、スペイン、デンマークなどの「テ」、ギリシャ、トルコなどの「チャイ」のふたつに大きく分かれます。
広東省から陸路を使いヨーロッパにもたらされたお茶が「チャ」と呼ばれ、福建省から海路で西ヨーロッパに伝えられたのが「テ」と呼ばれているのだそうです。お茶、すべての路は中国に通ずなんですね。
お茶は不老長寿の健康飲料
茶栽培の発祥地である中国には、銘茶で知られる地が、広大な国土のいたるところにあります。
お茶の木はツバキ科の常緑植物で、温帯から熱帯地方にかけて生育していますが、栽培には年平均気温12度以上、年雨量1,400ミリ以上の気候温暖な土地がふさわしいといわれています。
中国で、お茶が生育するのは、黄河を境にして南側、福建省、広東省、雲南省などが特に産地として有名です。
また、5,000年以上も昔からお茶が薬として使われていたと伝えられる中国には、樹齢数100年の茶木がざらにあり、雲南省にはなんと樹齢2,000年を数える茶木が、今なお毎年、味わい深い茶葉を茂らせているそうです。
「古いものほどおいしく、健康にいい」と考える中国の人々にとって、こうした樹齢の古い茶木から摘まれたお茶は、たいへん価値あるもの。お茶を摘む時期になると、茶木には夜通しで見張りがつけられ、茶葉は他の木のものとは混ぜずに「1本の茂みからとれたお茶」として売り出されます。
世界広しといえどもほんのわずかしかないという希少価値、濃厚で香り高い味、そして多分、樹齢にあやかり、健康で長生きしたいという願いが「飲みたい」気持を募らせるのでしょう。
日本円に換算すれば1キロ当り30万円とも50万円ともいわれるこうしたお茶も、引っ張りだこの人気。雲南省の油頭には「お茶で身上つぶす」という言い方があるそうですが、おいしいお茶には金銭に糸目をつけないあたり、なるほどとうなずけようもの。
中国茶の6大分類
ところで中国には、数百種以上のお茶があるといわれていますが、その種類は、色、形、香り、味、そして生産地とその製造方法の違いから、緑茶、青茶、紅茶、黒茶、黄茶、白茶の6つに大別することができます。
製造方法の違いからいうと:
- 不発酵の緑茶
- 半発酵の青茶
- 完全発酵の紅茶
- 後発酵の黒茶
の4種類に分けられます。不発酵の緑茶は、あらゆるお茶の元祖ともいうべきもので、日本茶もこの緑茶の仲間になります。
烏龍茶 ── 中国茶の主流
私たちが、中国茶と聞いて、真っ先に思い浮かべるお茶といえば、やっぱり烏龍茶でしょうか。
中国では、烏も龍もめでたいもので、烏の羽のように黒く、龍のように曲がりくねった形から、縁起をかついで「烏龍茶」と名付けられたというこのお茶は、青茶の仲間。味は、緑茶と紅茶の中間の渋みで、飲んだあと、さわやかな渋みを感じさせてくれるというのが大きな特徴です。
中国でも全般的にいうと烏龍茶が主流を占めているそうで、同じ烏龍茶でも200種類ほどのお茶があるといいますから驚きですね。
烏龍茶のあぶらっぽさを取る力
ところで、中国茶ブームの一端をになった、中国茶のあぶらっぽさを取り除いてくれる作用は、日本茶同様、お茶に含まれるタンニンの働き。
広東料理の流れをくむ潮州料理では、必ず料理と料理の間に鉄観音茶を盃ほどの小ぶりの茶碗で飲み、食後は、ボールに入れたお茶で指先を洗います。口の中のあぶらっぽさを取り、指先のあぶらを洗い流すわけですね。
カロリーの高い食事をとっても、中国の人に肥りすぎが少なく、特に女性に均整のとれたプロポーションの持ち主が多いというのも、中国茶のおかげ? そう聞けば何やら中国茶に親しむ機会も増えそうではありませんか。